こんにちは!ビジネスや投資の世界に足を踏み入れると、「WACC(ワック)」というアルファベット4文字を目にすることがあります。「なんだか難しそう…」「自分には関係ないかも」と思ってしまうかもしれません。
でも、WACCは「会社の健康状態」や「投資のモノサシ」を知る上で、とても大切な考え方なんです。
この記事では、金融初心者の方でも「WACCってそういうことだったのか!」とスッキリ理解できるように、世界一わかりやすく解説します。
解説動画
図解
WACC
(加重平均資本コスト)
会社の資金調達にかかる
「平均利息」のこと
なぜWACCが重要なのか?
① 投資判断のハードル
WACCは、新しいビジネスを始めるときの「最低合格ライン」です。これより低い利益率の事業は却下されます。
② 会社の価値が決まる
WACC(調達コスト)が低いほど、将来の価値が高く評価され、会社全体の価値が上がります。
WACCの2つの材料
会社がお金を集める方法は大きく分けて2つ。「借金」と「出資」です。
負債コスト (借金)
銀行からの借入など。利息を払う必要がある。
Point: 節税効果がある株主資本コスト (出資)
株主からの出資。返済不要だが、期待値が高い。
Point: コストは高め計算イメージ:ミックスジュース
例えば、株主資本(コスト10%)を多く使い、負債(コスト4%)を少しだけ使っている会社の場合、WACCはどうなるでしょうか?
計算結果 (WACC)
7.12%
※ (10%×0.6) + (2.8%×0.4)
2つのコストが混ざり合ってWACCが決まります
高いWACC vs 低いWACC
🚀 WACCが高い会社
例:ベンチャー企業
- • 信用がまだ低いため、銀行金利が高い
- • リスクが高く、投資家が高いリターンを求める
- • 投資のハードル:激高
🏢 WACCが低い会社
例:電力・インフラ大手
- • 経営が安定しており、低金利で借りられる
- • 倒産リスクが低く、投資家の要求も手堅い
- • 投資のハードル:低め
WACCを一言でいうと?
WACC(ワック)とは、「会社が事業を行うために、銀行や株主からお金を集めるのに、平均していくら『コスト』がかかっているか」を示す割合(%)のことです。
日本語では「加重平均資本コスト(かじゅうへいきん しほんコスト)」と呼ばれます。
例えるなら、「会社の資金調達の『平均利息』」のようなイメージです。
もしあなたの会社のWACCが5%なら、会社は平均して年利5%のコストを払ってお金を集めている、ということになります。
なぜWACCがそんなに大事なの?
「平均コストなんて、知って何になるの?」と思いますよね。WACCが重要な理由は、主に2つあります。
1. 投資判断の「ハードル」になるから
会社は集めたお金を使って、新しい工場を建てたり、新しい商品を開発したり(=投資)します。
このとき、「その投資が、お金を集めるコスト(WACC)を上回る利益を生み出せるか?」を厳しくチェックする必要があります。
- WACC(調達コスト)が 5%
- 新しい事業の予想リターン(利益率)が 3%
この場合、わざわざ5%のコストを払ってお金を集めてきても、3%のリターンしか生み出せません。これではやればやるだけ損ですよね?(赤字の投資)
- WACC(調達コスト)が 5%
- 新しい事業の予想リターン(利益率)が 8%
この場合、コストの5%を上回る8%のリターンを生み出せるので、「この投資はやる価値がある!」と判断できます。
このように、WACCは会社が新しい投資をすべきかどうかを判断するための「超えるべき最低ライン(ハードルレート)」として使われます。
2. 「会社の価値」を測るモノサシになるから
(少し発展的な内容ですが)会社の本当の価値(企業価値)を計算するとき、将来その会社が生み出すであろうキャッシュ(現金)を「現在の価値」に換算する、という難しい計算をします。
このとき、「割引率(わりびきりつ)」というものを使うのですが、WACCがまさにその割引率として使われるのです。
WACCが低い(=低いコストで資金調達できる)ほど、将来の価値が現在高く評価され、会社全体の価値は高くなります。
WACCの2つの材料:「借金」と「出資」
では、WACCはどうやって計算されるのでしょうか? 会社がお金を集める方法は、大きく分けて2つの「財布」があります。
1. 「借金」の財布(負債コスト)
銀行からの借入金や、社債の発行など、「返済義務がある」お金です。 これにかかるコストが「負債コスト(支払利息)」です。
特徴
支払う利息は、税務上の「経費」として認められます。そのため、利息を払うとその分税金が安くなる「節税効果」があります。
2. 「出資」の財布(株主資本コスト)
投資家が「その会社を応援したい」「儲かりそう」と期待して出すお金、つまり「株式」のことです。「返済義務がない」お金ですね。 これにかかるコストが**「株主資本コスト(株主の期待リターン)」**です。
特徴
会社は株主に「配当」を支払ったり、株価を上げることで応えようとします。株主は銀行よりも高いリスク(会社が倒産したら出資したお金が戻らないリスク)を取っているため、その分、銀行の利息よりも高いリターンを期待します。
WACCの計算イメージ:「加重平均」って?
WACCの「W(Weighted=重み付けされた)」と「A(Average=平均)」がキモです。
なぜ「加重平均」なのでしょうか? それは、会社が「借金」と「出資」のどちらを、どれくらいの割合で使っているかによって、全体の平均コストが変わってくるからです。
ミックスジュースで例えてみよう
ここに2種類のジュースがあります。
- オレンジジュース(=株主資本コスト)
- 原価(コスト):10%(=株主は10%のリターンを期待)
- リンゴジュース(=負債コスト)
- 原価(コスト):4%(=銀行への利息は4%)
この2つを混ぜて「ミックスジュース(=WACC)」を作ります。
【ケースA】オレンジ60%、リンゴ40%で混ぜる
もし単純に平均したら (10% + 4%) ÷ 2 = 7% ですが、これでは割合が考慮されていません。 「加重平均」で計算します。
(10% × 60%) + (4% × 40%) = 6% + 1.6% = 7.6%
【重要】節税効果を忘れずに!
実際には、リンゴジュース(負債コスト)には「税金が安くなる効果」があります。 もし税率が30%なら、リンゴジュースの実質コストは 4% × (1 – 30%) = 2.8% になります。
これを踏まえて、もう一度計算します。
(10% × 60%) + (2.8% × 40%) = 6% + 1.12% = 7.12%
これが、この会社のWACCです。
【ケースB】もし借金(リンゴ)の割合を増やしたら?
もし会社が信用されて、安い利息のリンゴジュース(負債)の割合を増やせたら、WACCはもっと下がるかもしれません。(ただし、借金を増やしすぎると倒産リスクが高まり、株主(オレンジ)が要求するコストが上がるので、バランスが重要です)
WACCが高い・低いってどういうこと?
WACCが高い会社
- 資金調達コストが高いということです。
- 理由(例):
- 設立したばかりのベンチャー企業で、信用が低く、高い利息でないと銀行がお金を貸してくれない。
- 事業のリスクが高いため、株主が非常に高いリターン(ハイリスク・ハイリターン)を要求している。
- 影響:
投資のハードルが非常に高くなります。WACCが20%なら、20%以上の利益を生む事業でないと手を出せません。
WACCが低い会社
- 資金調達コストが低いということです。
- 理由(例):
- 経営が安定している大手企業やインフラ企業(電力・ガスなど)で、信用が抜群。
- 低い利息で銀行からお金を借りられる。
- 株主も「安定が一番」と考え、高いリターンを要求しない。
- 影響:
投資のハードルが下がります。WACCが3%なら、3%以上の利益が見込める事業なら挑戦する価値が出てきます。
まとめ
最後にWACCのポイントをおさらいしましょう。
- WACCとは?
- 会社が資金調達する際の「平均コスト(利率)」のこと。
- 何に使うの?
- 投資判断の「ハードル(最低ライン)」として使う。
- 会社の価値を計算するときにも使う。
- どう計算するの?
- 「負債コスト(借金)」と「株主資本コスト(出資)」の2つを、それぞれの「割合(ウェイト)」で平均(加重平均)して計算する。
- 負債コストには「節税効果」があるのを忘れない。
WACCは、その会社がどれだけ効率よくお金を集め、それを使ってどれだけ上手に稼ごうとしているかを見るための、大切な「成績表」の一つです。 この基本がわかれば、ニュースや決算書に出てくるWACCという言葉も、もう怖くありませんね!
最後にスライド解説














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