MENU

【国税庁タックスアンサー|消費税】No.6214 身体障害者用物品に該当する自動車

国税庁タックスアンサーの「No.6214 身体障害者用物品に該当する自動車」について解説します。

目次

解説動画

概要

「身体障害者用物品に該当する自動車」は、消費税の非課税対象とされます。非課税となる自動車は、主に二つのタイプに分けられます。

一つ目は、運転免許の条件に従い、手動装置や左足用アクセルなどの補助手段が講じられた自動車で、身体障害者による運転に支障がないように改造されたものです。二つ目は、車椅子や電動車椅子を使用する人を搬送できるよう、車椅子等昇降装置と固定手段を装備した自動車です。

これらの自動車の譲渡、貸付け、製作の請負、および関連する補助手段や昇降装置に係る修理が非課税とされます。ただし、一般の自動車を購入した後に非課税対象に改造する場合、当初の一般自動車の購入は課税となり、改造代金のみが非課税となります。また、補助手段に使用される部品や装置自体の譲渡は非課税の対象外です。

身体障害者用自動車の消費税非課税制度についての実務解説

1. 導入:なぜこの知識が実務で重要なのか

消費税は、原則として国内におけるほぼ全ての物品の販売やサービスの提供を課税対象としています。しかし、社会政策的な配慮から、特定の取引については消費税が課されない「非課税取引」が定められています。その中でも、身体障害者の方々の社会生活に不可欠な自動車に関する非課税制度は、実務上、特に注意を要する分野の一つです。なぜなら、単に「福祉車両」という名称だけで非課税になるわけではなく、消費税法で定められた特定の構造や機能、さらには取引の形態によって課税関係が細かく分かれているからです。この制度に関する正確な知識がなければ、誤った申告や税務調査での指摘につながるリスクを抱えることになります。

本稿は、この複雑な制度を体系的に整理し、実務担当者の皆様が自信を持って判断できるようになることを目的としています。顧客への的確なアドバイスや、経理処理の正確性を確保することは、我々専門家が提供する付加価値そのものです。この解説を通じて、身体障害者用自動車に関わる消費税の取扱いについて、深くご理解いただければ幸いです。

まずは結論から先に示します。次のセクションでは、具体的な取引シーンごとに課税関係がどうなるのかを一覧できる早見表をご用意しました。

2. 結論:取引ごとの消費税課税関係の早見表

多忙な実務家の皆様が、即座に結論を把握できるよう、このセクションでは最も重要なポイントを早見表に凝縮しました。複雑な法令の条文を覚える前に、まずは具体的なケースで「課税」となるのか「非課税」となるのか、その大枠を理解することが、実務上の間違いを防ぐための確実な第一歩となります。

取引内容消費税の取扱い補足
完成した非課税対象自動車の購入非課税改造済みの車両全体の譲渡代金が非課税となります。
非課税対象自動車のリース非課税法令上、譲渡だけでなく「貸付け」も非課税取引と定められています。
一般自動車を購入後、別途改造を依頼
 ① 一般自動車の購入代金課税この時点では、まだ非課税対象自動車に該当しないためです。
 ② 非課税対象にするための改造代金非課税他者の自動車を改造する行為は「製作の請負」に該当し、非課税となります。
非課税対象部分の修理代金非課税運転補助手段や車椅子等昇降装置等、非課税の根拠となる特定部分に係る修理のみが対象です。
改造用部品(装置)のみの購入課税部品や装置そのものを物品として譲渡(販売)する場合は、非課税取引に該当しません。

この早見表は、日々の業務における判断の出発点となるものです。では、なぜこのような結論になるのでしょうか。次のセクションで、この結論を導き出すための根拠となる、法律上の詳細な要件について深く掘り下げていきましょう。

3. 詳細解説:非課税となる「身体障害者用物品」自動車の要件

3.1. はじめに:非課税対象の全体像

前章で示した結論の根拠となる、法律上の具体的な要件をこのセクションで解説します。実務で最も重要なことは、単に「福祉車両」という一般的な名称で判断するのではなく、消費税法で非課税対象として明確に定められた「特殊な性状、構造または機能」を有する自動車に該当するかどうかを正確に見極めることです。

ここでは、まず「どのような自動車が対象となるのか」、そして「どのような取引が非課税となるのか」という二つの側面から、制度の全体像を詳細に分析していきます。

3.2. 非課税対象となる自動車の具体的な要件

消費税が非課税となるのは、身体障害者の方の使用に供するものとして、特殊な性状、構造又は機能を有する乗用自動車に限られます。具体的には、法令等で以下の2つの類型が定められています。

• 類型1:運転者の身体の状態に応じた補助手段が講じられている自動車 
身体障害者の方が運転するにあたり支障がないよう、その身体の状態に応じて補助手段が講じられている自動車が該当します。これは道路交通法第91条に定められた運転免許の条件に基づき認められている補助手段であり、具体的には以下のようなものが挙げられます。
◦ 手動装置
◦ 左足用アクセル
◦ 足踏式方向指示器
◦ 右駐車ブレーキレバー
◦ 足動装置
◦ 運転用改造座席

• 類型2:
車椅子等の搬送を可能とする特殊な構造を持つ自動車 車椅子や電動車椅子(以下、車椅子等)を使用する方を、車椅子等と一緒に搬送できる構造を持つ自動車が該当します。具体的には、以下の両方の要件を満たす必要があります。
◦ 車椅子等昇降装置を装備していること
◦ 車椅子等を固定するために必要な手段が施されていること
(補足) 
なお、乗車定員が11人以上の普通自動車については、上記に加えて「車椅子等を使用する者を専ら搬送するもの」という追加要件が課されますのでご注意ください。

3.3. 非課税となる取引の範囲

上記の要件を満たす自動車であれば、どのような取引でも非課税になるわけではありません。非課税となる取引の範囲も、以下のように限定されています。

• 対象自動車の譲渡(販売など)

• 対象自動車の貸付け(リースなど)

• 対象自動車の製作の請負(一般の自動車を、上記3.2で解説した非課税対象車へ改造する行為もこれに含まれます)

• 対象自動車の特定の修理(類型1に掲げられた運転補助手段や、類型2の車椅子等昇降装置・固定手段に係る部分の修理に限られます)

これらの詳細な要件を理解した上で、実務で特に判断に迷いやすい点や、注意すべき点について、最後の章でまとめて確認していきましょう。

4. まとめ:実務上の重要注意点

これまでの解説を踏まえ、この最終セクションでは、特に経理担当者や我々会計事務所のスタッフが実務で判断を誤りやすい、あるいは顧客から質問を受けやすい重要ポイントを3点に絞って解説します。

注意点1:
自動車の購入と改造のタイミング 実務上、最も注意が必要なのがこの点です。最初から改造済みの非課税対象車を完成品として購入する場合、その譲渡代金全体が非課税となります。一方で、一般の自動車をディーラー等から購入し、その後に別の業者へ改造を依頼する場合、課税関係が大きく異なります。 この場合、まず「① 一般自動車の購入代金」は、その時点では非課税要件を満たしていないため課税取引となり、仕入税額控除の対象となります。その後に行う「② 改造費用」は、「製作の請負」に該当するため非課税取引となります。請求書を処理する際には、車両本体と改造費用がどのように計上されているかを正確に確認し、仕入税額控除の計算を誤らないよう、細心の注意が必要です。

注意点2:
改造という「役務の提供」と「物品の譲渡」の区別 非課税の対象となるのは、他者の自動車を改造する「製作の請負」という役務の提供(サービス)部品や装置そのものを物品として販売(譲渡)する取引は、課税対象となります。例えば、修理工場が顧客の車を預かって改造を行う場合の代金は非課税ですが、その工場が改造業者に部品だけを販売する場合は課税される、ということです。契約内容や請求書の内訳が、「改造工事一式」なのか「部品代」なのかを明確に区別することが、正しい経理処理の鍵となります。

注意点3:
根拠法令の確認 我々プロフェッショナルとして、クライアントにアドバイスを行う際には、その判断の根拠となる法令を常に意識しておくことが重要です。本稿で解説した内容に関する主な根拠法令等は以下の通りです。より詳細な確認が必要な場合や、複雑な事案に直面した際には、これらの条文を参照してください。
• 消費税法第6条、同法別表第二 第十号
• 消費税法施行令第14条の4
• 消費税法基本通達6-10-1~4
• 平成3年厚生省告示第130号

本稿で解説した内容は、あくまで実務の基本です。税法は改正されることもあり、個別の事案によっては解釈が分かれるケースも存在します。少しでも疑問に思う点があれば、必ず国税庁のウェブサイトで最新の情報を確認するか、顧問税理士などの専門家に相談する姿勢を忘れないでください。それが、専門家としての信頼を守る上で最も大切なことだと考えます。

ガイド:Q&A

1. 消費税が非課税となる乗用自動車は、どのような要件を満たす必要がありますか? 

身体障害者の使用に供するものとして、特殊な性状、構造または機能を有することが必要です。具体的には、身体障害者の運転を補助する改造が施されているか、車椅子等を搬送するための特殊な装置が装備されている自動車が該当します。

2. 車椅子等を使用する人を搬送するための自動車が非課税となるには、どのような装置や手段が求められますか? 

車椅子および電動車椅子(車椅子等)を、使用者とともに搬送できるよう、車椅子等昇降装置を装備している必要があります。さらに、車椅子等を車両に固定するために必要な手段が施されていなければなりません。

3. 非課税対象となる自動車の「譲渡」や「貸付け」以外に、どのような取引が非課税とされますか? 

非課税対象となる自動車の「製作の請負」と、特定の「修理」が非課税とされます。修理については、運転補助手段や車椅子等昇降装置といった、非課税の根拠となる部分に係るものに限られます。

4. 一般の自動車を、非課税対象となる身体障害者用自動車に改造する行為は、税法上どのように扱われますか? 

他の者からの委託を受けて、一般の自動車を非課税対象となる自動車に改造する行為は、「製作の請負」に該当します。そのため、その改造にかかる代金は非課税となります。

5. 一般の自動車を購入した後に改造を行う場合、当初の自動車購入代金と改造代金の消費税の扱いはどうなりますか? 

この場合、当初の一般自動車の購入は課税対象となります。その後の改造にかかる代金についてのみが、非課税として扱われます。

6. 非課税対象となる自動車の修理のうち、具体的にどの部分の修理が非課税の対象となりますか? 

非課税となる修理は、その自動車が非課税とされる理由となっている部分に限定されます。具体的には、運転のための補助手段に係る修理と、車椅子等昇降装置および固定等に必要な手段に係る修理が対象です。

7. 身体障害者の運転を補助するために講じられる「補助手段」の具体例を3つ挙げてください。 

手動装置、左足用アクセル、足踏式方向指示器が挙げられます。その他にも、右駐車ブレーキレバー、足動装置、運転用改造座席などがあります。

8. 乗車定員が11人以上の普通自動車の場合、車椅子利用者を搬送する車両が非課税となるための特別な要件は何ですか? 

乗車定員が11人以上の普通自動車の場合、単に車椅子を搬送できるだけでなく、「車椅子等を使用する者を専ら搬送するもの」である場合に限り、非課税の対象となります。

9. 非課税対象車両に使用される「補助手段の部品」や「装置自体」を単独で購入した場合、その取引は非課税となりますか? 

いいえ、非課税とはなりません。補助手段の部品や装置自体の譲渡は課税対象であり、非課税となるのは、それらが取り付けられた自動車の譲渡や、取り付け改造の請負、取り付け部分の修理に限られます。

10. この非課税措置の根拠となる法令には、どのようなものがありますか? 

根拠法令等として、消費税法第6条、同法別表第二十号、消費税法施行令第14条の4、消費税法基本通達6-10-1~4、および平成3年厚生省告示第130号が挙げられています。

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

コメント

コメントする

目次