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【国税庁タックスアンサー|消費税】No.6102 消費税の軽減税率制度

国税庁タックスアンサーの「No.6102 消費税の軽減税率制度」について解説します。

目次

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概要

消費税の軽減税率制度は、令和元年10月1日から消費税率の引き上げ(8%から10%へ)と同時に実施されました。税率は、標準税率10パーセント軽減税率8パーセントの複数税率です。

軽減税率の適用対象は、酒類や外食・ケータリング等を除く飲食料品と、週2回以上発行される定期購読契約に基づく新聞です。事業者は税率ごとに経理を区分する区分経理が必要であり、令和5年10月1日からは、仕入税額控除の適用を受けるために適格請求書等保存方式(インボイス制度)が導入されています。

解説:消費税の軽減税率制度:実務家向け徹底解説

1. 導入:軽減税率制度が実務で重要な理由

2019年10月1日の消費税率引き上げは、日本の経理実務に恒久的な変化をもたらしました。税率が複数存在することが常態となった現代において、消費税の軽減税率制度を正確に理解することは、もはや一部の専門家だけの課題ではありません。この制度の正確な運用は、顧問先の追徴課税リスクを回避し、税務調査を円滑に進めるための第一歩であり、我々実務家の腕の見せ所でもあります。

制度が導入された経緯を振り返ると、令和元年10月1日をもって、消費税および地方消費税の税率が8%から10%に引き上げられました。そして、国民生活への配慮から、それと同時に特定の品目については税率を8%に据え置く「消費税の軽減税率制度」が実施されることとなったのです。この結果、事業者は日々の取引において、どの税率が適用されるのかを正確に判断し、会計処理に反映させるという新たな責務を負うことになりました。

では、具体的にどのようなルールになっているのか、まずは結論から見ていきましょう。

2. 結論:実務における基本的な考え方

詳細な規定に入る前に、日々の業務で担当者が常に意識すべき最も重要な結論を提示します。この制度の核心を掴む鍵は、全ての取引を2つの税率に正確に仕分ける、という一点に集約されます。この基本原則を頭に入れておくことで、複雑に見えるルールも体系的に理解することができます。

現在、消費税率は標準税率(10%)と軽減税率(8%)の複数税率となっています。

• 標準税率: 10% (消費税率7.8%、地方消費税率2.2%)

• 軽減税率: 8% (消費税率6.24%、地方消費税率1.76%)

そして、実務上最も重要な「何が軽減税率(8%)になるのか」という問いに対する答えは、以下の2つのカテゴリに集約されます。

• 飲食料品(酒類を除く)
• 週2回以上発行される定期購読契約に基づく新聞

ただし、このシンプルな原則には実務上注意すべき例外や詳細な条件が存在します。次の章で、その具体的な判断基準を詳しく解説します。

3. 詳細解説:軽減税率の対象品目と判断基準

軽減税率制度の適用を誤ることは、税務申告の誤り、ひいては追徴課税といった重大な経営リスクに直結します。それを防ぐためには、表面的な理解だけでなく、具体的な品目の範囲と判断基準を一つひとつ正確に把握することが不可欠です。本章では、実務上、特に判断の分かれ目となる論点を抽出し、その判断基準を明確にしていきます。

3.1 「飲食料品」の範囲と例外

軽減税率の対象となる「飲食料品」とは、食品表示法に規定する食品、すなわち「人の飲用または食用に供されるもの」と定義されています。ここでいう食品には、医薬品、医薬部外品、再生医療等製品は含まれません。一方で、食品衛生法に規定される添加物は食品として扱われる点に注意が必要です。

しかし、「飲食料品」に該当するものであっても、提供方法によっては軽減税率の対象から外れる重要な例外が存在します。

• 外食 
「飲食店業等の事業者が飲食に用いられる設備がある場所において行う食事の提供」と定義されます。これは、単に食品を販売する「譲渡」とは異なり、食事をする場所の提供という「役務の提供」が含まれるため、軽減税率の対象外となり、標準税率(10%)が適用されます。ポイントは、単なる「モノの販売」か、「サービスを伴う食事の提供」かという本質的な違いを常に意識することです。例えば、フードコートのテイクアウトとイートインで税率が変わるのは、この「場所の提供」という役務の有無が判断基準となるためです。

• ケータリング等 
「相手方が指定した場所において行う加熱、調理または給仕等の役務を伴う飲食料品の提供」を指します。こちらも、出張して調理や配膳といったサービス(役務の提供)が伴うため、外食と同様に軽減税率の対象には含まれません。

• 酒類 
食品表示法上の食品には該当しますが、酒税法に規定する「酒類」は、政策的な理由から軽減税率の対象から明確に除外されています。

3.2 特殊なケース:「一体資産」の判定

実務で判断に迷うのが、おもちゃ付きのお菓子のように、食品と食品以外の資産があらかじめ一体となって販売されている「一体資産」です。これらが軽減税率の対象となるか否かは、以下の2つの条件を両方とも満たす必要があります。

1. その資産の税抜価額が1万円以下であること。

2. その資産の価額のうち、食品の価額が占める割合が3分の2以上であること。

注意点:
一体資産の判定ルール 上記の条件を一つでも満たさない場合、その一体資産は全体が標準税率(10%)の対象となります。この判定は資産全体に適用されるため、食品部分のみを分離して軽減税率を適用する、といった処理は一切認められません。

3.3 「新聞」の範囲

すべての新聞が軽減税率の対象となるわけではありません。対象となるのは、以下の2つの条件を満たすものに限られます。

• 政治、経済、社会、文化等に関する一般社会的事実を掲載する、週2回以上発行されるもの
• 定期購読契約に基づくもの

したがって、駅の売店やコンビニでその都度購入する新聞は、定期購読契約に基づかないため、標準税率(10%)の対象となります。逆に、電子版の新聞は「モノの譲渡」ではなく「電気通信利用役務の提供」に該当するため、たとえ定期購読契約であっても軽減税率の対象外となり、標準税率10%が適用される点にも注意が必要です。

これらの品目ごとのルールを理解した上で、次はその情報をどのように会計処理に落とし込むべきか、実務上の必須対応について見ていきましょう。

4. まとめ:経理実務における必須対応と注意点

ルール理解がゴールではありません。それを業務フローに落とし込み、監査に耐えうる証憑を確保することこそが、我々経理実務家の責務です。ここでのミスは、過去の全ての努力を無に帰す可能性があります。本章では、そのための具体的な手続きと注意点を整理します。

4.1 区分経理の徹底

軽減税率制度の導入により、事業者は取引を税率ごとに区分して記帳する「区分経理」を行う必要があります。売上も仕入も、8%対象のものと10%対象のものを明確に分けて管理しなければなりません。この区分経理こそが、正確な消費税申告の基礎となります。

4.2 適格請求書等保存方式(インボイス制度)への対応

令和5年10月1日から開始された「適格請求書等保存方式(インボイス制度)」は、複数税率下における仕入税額控除の根幹をなす仕組みです。仕入税額控除の適用を受けるためには、原則として、取引先から交付された「適格請求書(インボイス)」を保存しなければなりません。

この適格請求書には、従来の請求書に加えて、以下の事項が記載されている必要があります。

• 登録番号
• 適用税率
• 税率ごとに区分した消費税額等

受け取った請求書がこれらの要件を満たしているかを確認する作業は、経理担当者の重要な役割の一つです。

4.3 経過措置の理解と活用

インボイス制度への移行には、急激な変化を緩和するための経過措置が設けられています。具体的には、令和5年10月1日から令和11年9月30日までの期間は、免税事業者など適格請求書発行事業者以外の者からの課税仕入れであっても、仕入税額相当額の一定割合を控除することが可能です。この「一定割合」とは、具体的には令和8年9月30日までは仕入税額相当額の80%、令和11年9月30日までは同50%です。この期間と割合を正確にシステムに設定し、適用することが求められます。

この経過措置の適用を受けるためには、通常の帳簿記載事項に加え、「経過措置の適用を受ける課税仕入れである旨」を帳簿に記載し、請求書等と共に保存する必要があります。

軽減税率制度への対応は、一見複雑に思えるかもしれません。しかし、その本質は「品目分類の正確な知識」と、インボイス制度に準拠した「証憑の適切な管理」という両輪を確実に回していくことにあります。

日々の地道な確認作業が、企業の信頼と財務の健全性を支えます。経理担当者の皆様、特にこの分野に新たに取り組む方々にとっては挑戦も多いかと存じますが、一つひとつの取引を丁寧に処理していくことが、確かな専門性へと繋がります。貴社の事業の根幹を支える重要な役割として、自信を持って業務に臨んでください。

ガイド:Q&A

1. 日本の消費税軽減税率制度はいつ導入され、それに伴い標準税率はどのように変更されましたか?

消費税の軽減税率制度は、令和元年10月1日に導入されました。この導入と同時に、消費税および地方消費税の標準税率は8%から10%へ引き上げられました。

2. 現在の標準税率と軽減税率、およびそれぞれの内訳(国税としての消費税率と地方消費税率)を説明してください。

標準税率は10%(消費税率7.8%、地方消費税率2.2%)です。一方、軽減税率は8%(消費税率6.24%、地方消費税率1.76%)であり、日本の消費税はこれら複数の税率で構成されています。

3. 軽減税率の対象となる品目は、大きく分けて2つのカテゴリーに分類されます。その2つのカテゴリーとは何ですか?

軽減税率の対象となる品目は、「飲食料品(酒類を除く)」と「新聞(週2回以上発行されるもので、定期購読契約に基づくもの)」の2つのカテゴリーです。

4. 軽減税率の対象となる「飲食料品」の定義について説明し、対象外となるものを3つ挙げてください。

「飲食料品」とは、食品表示法に規定する食品で、人の飲用または食用に供されるものを指します。対象外となるのは、酒類、外食、ケータリング等です。また、医薬品や医薬部外品も含まれません。

5. どのような条件を満たした新聞が軽減税率の対象となりますか?

軽減税率の対象となる新聞は、一定の題号を用い、政治、経済、社会、文化等に関する一般社会的事実を掲載するものです。さらに、週2回以上発行され、定期購読契約に基づくものである必要があります。

6. 「一体資産」とは何かを定義し、それが軽減税率の対象となるための2つの条件を挙げてください。

「一体資産」とは、おもちゃ付きのお菓子のように、食品と食品以外の資産があらかじめ一体となっている商品のことです。これが軽減税率の対象となるには、税抜価額が1万円以下であり、かつ食品の価額が全体の3分の2以上を占めるという2つの条件を満たす必要があります。

7. 軽減税率の対象外となる「外食」と「ケータリング等」は、それぞれどのように定義されていますか?

「外食」とは、飲食店業等を営む者が飲食用の設備がある場所で食事を提供するものを指します。「ケータリング等」は、相手方が指定した場所で加熱、調理、給仕等のサービスを伴って飲食料品を提供することです。

8. 令和5年10月1日から開始された「適格請求書等保存方式(インボイス制度)」の主な目的は何ですか? また、仕入税額控除を受けるために事業者は何を保存する必要がありますか?

インボイス制度の主な目的は、複数税率に対応した仕入税額控除の方式を確立することです。事業者が仕入税額控除の適用を受けるためには、帳簿と、登録を受けた適格請求書発行事業者から交付された「適格請求書(インボイス)」等の保存が必要です。

9. 適格請求書発行事業者以外の者からの課税仕入れに関して、令和11年9月30日まで設けられている経過措置とはどのような内容ですか?

この経過措置は、適格請求書発行事業者以外の者からの課税仕入れであっても、仕入税額相当額の一定割合を仕入税額とみなして控除できる制度です。この適用を受けるには、帳簿に「経過措置の適用を受ける課税仕入れである旨」を追記するなどの要件を満たす必要があります。

10. 令和元年10月1日から令和5年9月30日までの間、中小事業者を対象に設けられていた税額計算の特例について説明してください。

この特例は、基準期間の課税売上高が5,000万円以下の中小事業者が対象でした。売上げを税率ごとに区分することが困難な事情がある場合に、特別な計算方法を用いて売上税額を算出することが認められていました。

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