この記事で判断できること:仕入税額控除の対象となるもの・ならないもの
国税庁タックスアンサーの「No.6451 仕入税額控除の対象となるもの」について解説します。
解説動画
毎日の仕訳で「この支払は仕入税額控除の対象か」を判断する、その出発点になるのが国税庁タックスアンサー No.6451 です。内容を「課税仕入れの定義と除かれるもの」「課税仕入れとなる取引と人件費の境界」「特定課税仕入れと控除の制限」の3点に絞って整理します。控除の時期は No.6355、出張旅費・通勤手当は No.6459、インボイスの保存は No.6496 で扱います。
この記事の結論
課税仕入れとは、事業者が事業として他の者から資産の譲り受けや借り受けを行うこと、または役務の提供を受けることです。ただし非課税・免税となる取引と給与等の支払は含まれません。人件費は、雇用の対価か、事業者が行う労働やサービスの対価かで分かれます。
清掃会社への委託料を、人件費だからと課税仕入れから外す
控除の取りこぼし
給与は対象外、派遣料・委託料・加工賃は課税仕入れとして区分する
原文どおりの区分
- 1商品・原材料の購入、機械・建物・車両・器具備品の購入または賃借、広告宣伝費・厚生費・接待交際費・通信費・水道光熱費、事務用品・消耗品・新聞図書、修繕費、外注費は課税仕入れです。
- 2給与等は課税仕入れになりませんが、加工賃・人材派遣料・警備や清掃の委託料は課税仕入れです。事業者が行う労働やサービスの提供の対価には消費税が課税されるからです。
- 3国外事業者から受けた事業者向け電気通信利用役務の提供・特定役務の提供は特定課税仕入れで、受けた国内事業者が申告納税します(リバースチャージ方式)。密輸品・免税購入品と知りながら行った課税仕入れや居住用賃貸建物の取得は控除が制限されます。
要点1 課税仕入れの定義と、除かれる3つ
消費税の納付税額は、課税期間中の課税売上げに係る消費税額から、その課税期間中の課税仕入れ、特定課税仕入れ等に係る消費税額を控除(仕入控除税額)して計算します。課税仕入れとは、事業者が、事業として他の者から資産の譲り受けや借り受けを行うこと、または役務の提供を受けることをいいます。
ただし、非課税や免税となる取引、給与等の支払は含まれません。土地の購入や保険料のような非課税取引(No.6201)、輸出取引などの免税取引は、支払っても控除の対象になる消費税がありません。給与等は事業として受ける役務の提供の対価ではないので、課税仕入れの定義から外れます。
要点2 課税仕入れとなる取引と、人件費の境界線
原文は課税仕入れとなる取引として、(1)商品などの棚卸資産の購入、(2)原材料等の購入、(3)機械や建物等のほか、車両や器具備品等の事業用資産の購入または賃借、(4)広告宣伝費、厚生費、接待交際費、通信費、水道光熱費などの支払、(5)事務用品、消耗品、新聞図書などの購入、(6)修繕費、(7)外注費を挙げています。
なお、給与等の支払は課税仕入れとなりませんが、加工賃や人材派遣料のように事業者が行う労働やサービスの提供の対価には消費税が課税されます。したがって、加工賃や人材派遣料、警備や清掃などを外部に委託している場合の委託料などは課税仕入れとなります。境界線は「人が働いた対価かどうか」ではなく、「雇用契約に基づく給与か、事業者のサービスの対価か」です。
要点3 特定課税仕入れと、控除が制限される取引
特定課税仕入れとは、課税仕入れのうち、事業として他の者(国外事業者)から受けた事業者向け電気通信利用役務の提供(例:広告の配信等)及び特定役務の提供(例:芸能人等の役務提供)をいいます。特定課税仕入れについては、その役務の提供を受けた国内事業者が申告納税を行います(リバースチャージ方式)。ただし当分の間、一般課税で課税売上割合が95%以上の課税期間や、簡易課税・2割特例が適用される課税期間は、特定課税仕入れはなかったものとされます(No.6118)。
また、課税仕入れに当たっても、密輸品または免税購入品と知りながら行った課税仕入れや居住用賃貸建物の取得については、仕入税額控除が制限されています。課税仕入れの定義に当てはまるかどうかと、控除が認められるかどうかは、別に確かめる必要があります。
要点4 出向者の給与負担金は課税仕入れにならない
人件費の境界線で、実務家が必ずぶつかるのが出向です。No.6475 によると、出向とは、使用人等が出向元事業者と雇用関係を維持しながら、出向先事業者との間においても雇用関係に基づき勤務する形態をいいます。役務の提供が雇用契約に基づくもので、支払った対価が給与所得となる場合には課税仕入れに該当しません。
そのため、出向元が給与の全額を払って出向先に請求する方法、出向先が全額を払って出向元に請求する方法、双方が一部ずつ払う方法のいずれでも、出向者に対して給与を支給したものとして扱い、給与負担金について課税関係は生じません。一方、人材派遣は雇用関係が人材派遣会社との間にしかないので、派遣料は派遣先の課税仕入れになります。請求書の名目が似ていても、契約の形で結論が逆になります。
設例で確かめる
製造業のG社(一般課税、課税売上割合95%以上)の1か月の支払を区分します。金額は架空で、相手はいずれも国内の適格請求書発行事業者(⑧を除く)とします。
| ① 原材料の購入 | 課税仕入れ |
| ② 工場の機械のリース料 | 課税仕入れ(事業用資産の賃借) |
| ③ 工場用地の地代 | 非課税(課税仕入れに含まれない) |
| ④ 従業員の給与 | 課税仕入れに含まれない |
| ⑤ 人材派遣会社への派遣料 | 課税仕入れ |
| ⑥ 親会社への出向者給与負担金 | 課税仕入れに含まれない(No.6475) |
| ⑦ 外部への加工賃・清掃委託料 | 課税仕入れ |
| ⑧ 国外事業者のネット広告(事業者向け) | 特定課税仕入れ。当課税期間はなかったものとされる |
④と⑥はどちらも雇用契約に基づく給与の性格なので課税仕入れに含まれず、⑤と⑦は事業者のサービスの対価なので課税仕入れです。⑧はG社が一般課税で課税売上割合95%以上なので、当分の間、特定課税仕入れはなかったものとされ、申告に含める必要はありません(No.6118)。課税売上割合が95%未満なら、G社が申告納税し、同時に仕入税額控除の対象にもなります。
例外と注意点
- 課税仕入れでも控除が制限される取引がある密輸品・免税購入品と知りながら行った課税仕入れ、居住用賃貸建物の取得等は仕入税額控除が制限されます。
- 特定課税仕入れには当分の間の措置がある一般課税で課税売上割合95%以上の課税期間、簡易課税・2割特例が適用される課税期間は、特定課税仕入れはなかったものとされます(No.6118)。
- 控除には帳簿と請求書等の保存が必要課税仕入れに当たっても、原則として帳簿と適格請求書等の保存がなければ控除できません。出張旅費等のように帳簿のみで足りる取引もあります(No.6496・6459)。
- 全額を控除できるとは限らない課税売上高5億円超または課税売上割合95%未満の課税期間は、個別対応方式か一括比例配分方式で計算します(No.6401)。
よくある間違い
- 人材派遣料・清掃委託料を人件費として対象外にしている事業者のサービスの対価なので課税仕入れです。
- 出向者負担金を課税仕入れにしている給与負担金は給与を支給したものとして扱い、課税関係は生じません(No.6475)。
- 土地の賃借料や保険料を課税仕入れにしている非課税取引なので課税仕入れに含まれません(No.6201)。
- 海外のネット広告を常に対象外で処理している事業者向けなら特定課税仕入れです。当分の間の措置に当たるかを、課税期間ごとに確かめます(No.6118)。
- 居住用賃貸建物の取得で全額控除している仕入税額控除が制限される取引です。
実務の確認手順
- 事業として他の者から受けたものか資産の譲り受け・借り受け、役務の提供を受けたものかを確かめる。
- 除かれる3つに当たらないか非課税取引・免税取引・給与等の支払を外す。
- 人に払うお金は雇用関係を確かめる給与・出向負担金は対象外、派遣料・加工賃・委託料は課税仕入れ。
- 国外事業者からの役務か特定課税仕入れなら、当分の間の措置の対象となる課税期間かを確かめる(No.6118)。
- 控除の制限と保存要件を確かめる密輸品・免税購入品・居住用賃貸建物に当たらないか。帳簿と適格請求書等を保存しているか(No.6496)。
根拠と関連記事
結論欄の評価は TaxJudge 編集部の目安です。頻出度=経理の実務でこの論点に出会う頻度(★5:ほぼ毎月〜★1:まれ)。難易度=基礎:原則を知れば判断できる/標準:例外や他の制度との関係まで見る必要がある/応用:個別事情の判断や複数制度の横断が必要。
根拠:国税庁タックスアンサー No.6451 仕入税額控除の対象となるもの(令和8年4月1日現在法令等。消費税法2条・4条・5条・30条、消費税法基本通達11-1-1〜3)、No.6475 使用人の出向・人材派遣など(消費税法基本通達5-5-10〜11、11-1-2)、No.6118 国境を越えた役務の提供に係る消費税の課税関係(いずれも2026年10月確認)。先生とハルカは架空の人物で、会話は制度を理解するための学習用です。個別の判断は国税庁の原文と最新の法令で確認してください。
Q&A
読んだ内容の確認用です。質問を押すと答えが開きます(全10問)。
Q1消費税の「仕入税額控除」とは何か、その概要を説明してください。答えを見る ▼閉じる ▲
消費税の納付税額を計算する際に、課税期間中の課税売上げに係る消費税額から、同期間中の課税仕入れ等に係る消費税額を差し引くことを指します。この控除額が仕入控除税額となります。
Q2「課税仕入れ」とは何かを定義してください。また、課税仕入れに含まれない取引の例を挙げてください。答えを見る ▼閉じる ▲
事業者が事業として、他の者から資産を譲り受けたり借り受けたりすること、または役務の提供を受けることです。ただし、非課税取引、免税取引、給与等の支払は課税仕入れには含まれません。
Q3「特定課税仕入れ」について説明し、その具体例を2つ挙げてください。答えを見る ▼閉じる ▲
課税仕入れのうち、事業として国外事業者から受けた特定のサービスを指します。具体例として、「事業者向け電気通信利用役務の提供(広告の配信等)」と「特定役務の提供(芸能人等の役務提供)」が挙げられます。
Q4特定課税仕入れに関連する「リバースチャージ方式」とは、どのような納税方法ですか?答えを見る ▼閉じる ▲
特定課税仕入れにおいて、サービス(役務)の提供を受けた国内事業者が、その取引に係る消費税を申告・納税する方式のことです。
Q5事業用の資産に関する取引で、課税仕入れとなるものの例を2つ挙げてください。答えを見る ▼閉じる ▲
例として、「機械や建物等の事業用資産の購入」や「車両や器具備品等の事業用資産の賃借」が挙げられます。
Q6日常的な事業経費の支払いで、課税仕入れとなるものの例を3つ挙げてください。答えを見る ▼閉じる ▲
例として、「広告宣伝費」、「厚生費」、「接待交際費」、「通信費」、「水道光熱費」などの支払いが挙げられます。
Q7「給与等の支払」は課税仕入れに該当しますか?その理由も説明してください。答えを見る ▼閉じる ▲
いいえ、該当しません。給与等の支払は、事業者が行う労働やサービスの提供の対価とは見なされないため、課税仕入れには含まれません。
Q8人材派遣料や業務委託料はなぜ課税仕入れとなるのですか?答えを見る ▼閉じる ▲
これらは事業者が行う労働やサービスの提供に対する対価と見なされ、消費税が課税されるためです。したがって、これらの費用を支払うことは役務の提供を受けることに該当し、課税仕入れとなります。
Q9仕入税額控除が制限されるケースとして、どのようなものが挙げられていますか?答えを見る ▼閉じる ▲
密輸品または免税購入品と知りながら行った課税仕入れや、居住用賃貸建物の取得に関する課税仕入れが挙げられています。これらの場合、仕入税額控除が制限されます。
Q10消費税の納付税額は、どのように計算されますか?答えを見る ▼閉じる ▲
課税期間中の「課税売上げに係る消費税額」から、その課税期間中の「課税仕入れ、特定課税仕入れ等に係る消費税額(仕入控除税額)」を控除して計算します。
