連結決算の概要について、各種会計基準をもとに基礎的な部分を中心に解説します。
全体の流れ
- 連結決算の概要
- 連結の範囲
- 持分法の適用範囲
- 子会社の決算期のズレの対応
- 親会社と子会社の会計方針の統一
- 子会社取得時の資産・負債の時価評価
- 資本連結
- 内部取引消去
- 未実現利益消去
- 非支配株主持分への按分
- 持分法の会計処理
- 在外子会社の外貨換算
- 在外子会社のIFRS適用と例外項目
①連結決算の全体像
連結決算とは、支配従属関係にある企業集団を単一の組織体とみなして、親会社がグループ全体の財政状態や経営成績、キャッシュ・フローを総合的に報告する手続きです。
全体像として、まず各社の個別財務諸表を基礎とし、同一性質の取引については原則として会計方針を統一します。主な修正には、親会社の投資と子会社の資本を相殺する資本連結があり、発生した差額はのれんとして計上します。さらに、グループ内の債権債務や取引高の相殺消去、資産に含まれる未実現損益の消去を行い、親会社に帰属しない部分は非支配株主持分として計上します。これにより集団の状況を適正に開示します。
②連結の範囲
連結の範囲とは、親会社の支配下にある企業集団を構成する対象範囲です。原則として、親会社が支配しているすべての子会社を連結の範囲に含めます,,。
支配の判定は、単なる所有割合だけでなく、実態に即した支配力基準により行われます,。議決権の過半数所有に加え、40%以上であっても、役員の派遣や資金提供、契約関係等を通じて意思決定機関を支配している場合は子会社とみなされます,。
ただし、支配が一時的な場合や、連結により利害関係者の判断を誤らせる恐れがある企業は除外されます,。また、資産や売上規模からみて重要性が乏しい小規模子会社も、連結の範囲に含めないことができます。
③持分法の適用範囲
持分法は、原則として非連結子会社および関連会社に対して適用されます。これは、被投資会社の資本や損益の変動に応じて、投資会社が連結決算日ごとに投資の額を修正する手法です。
関連会社は、実態を重視する「影響力基準」で判定されます。具体的には、議決権の20%以上を所有している場合、または15%以上であっても役員の派遣、重要な資金・技術提供、主要な取引関係などを通じて、その企業の財務や営業の方針決定に重要な影響を与えることができる場合が対象となります。
ただし、連結財務諸表に与える影響が重要でない会社については、適用範囲から除外することが認められています。なお、重要な子会社については原則として連結の範囲に含める必要があり、連結せずに持分法を適用することは認められません。
④子会社の決算期のズレの対応
子会社の決算日が連結決算日と異なる場合、原則として子会社は連結決算日に仮決算を行う必要があります。ただし、決算日の差異が3か月以内であれば、子会社の正規の決算を基礎として連結することが認められています。
この例外を適用する場合、ズレの期間中に発生した連結グループ間の取引などで会計記録に重要な不一致が生じているときは、適切に整理・調整を行わなければなりません。在外子会社については、為替相場に重要な変動があった場合に、連結決算日に準ずる仮決算が必要となります。なお、決算日が異なる旨や採用した決算手続の概要は、連結財務諸表への注記が必要です。
⑤親会社と子会社の会計方針の統一

連結財務諸表では、同一環境下における同一性質の取引について、親会社と子会社の会計方針を原則として統一する必要があります。これは、企業集団を単一の組織とみなし、グループ全体の状況を適正に報告するためです。
原則として個別財務諸表の作成段階で統一を図りますが、不一致がある場合は連結手続上で修正を行います。在外子会社についてはIFRSや米国基準の利用が認められていますが、のれんの償却など特定の項目は日本基準に合わせた修正が必要です。ただし、重要性が低い場合や合理的な理由がある場合は例外も認められます。例えば、資産の評価方法や減価償却方法などは、事務処理の経済性を考慮し必ずしも統一を要しないとされています。
これは、「異なる言語で書かれた各社の報告書を、共通の言語に翻訳して一つの物語としてまとめる作業」に似ています。
⑥子会社取得時の資産・負債の時価評価
連結貸借対照表の作成にあたっては、支配獲得日において、子会社の資産および負債のすべてを時価で評価する全面時価評価法を適用します。この時価評価額と個別貸借対照表上の簿価との差額は、評価差額として子会社の資本(純資産)に計上されます。
評価差額が税効果会計上の一時差異に該当する場合には、繰延税金資産または繰延税金負債を計上し、評価差額から直接加減しなければなりません。なお、個々の項目で重要性が乏しい場合には、例外として簿価による評価も認められます。取得後にこれら評価替えされた資産を償却・売却した際は、連結手続上で修正額を調整し、グループの損益を適正に算定します。
これは、「中古住宅を購入する際、前所有者の購入価格ではなく、現在の市場価値で家財や土地を数え直して資産価値を決める作業」に例えられます。
⑦資本連結
資本連結とは、親会社の子会社に対する投資と、それに対応する子会社の資本(純資産)を相殺消去する手続きです,。企業集団を単一の組織体とみなすため、内部の投資・資本関係を合算後の財務諸表から取り除きます。
具体的には、支配獲得日における親会社の投資額と、親会社に帰属する子会社の資本額を照合します,。この際、投資額が資本を上回れば「のれん」として計上し、原則20年以内に償却します。また、子会社の資本のうち親会社に帰属しない部分は「非支配株主持分」として計上します,,。支配獲得後は、子会社の損益を親会社と非支配株主に持分比率に応じて配分する処理を毎期継続します。
これは、「家族全員の財布を一つにまとめる際、親が子供に渡したお小遣い(投資)と子供が持っているお金(資本)を相殺し、家族全体としての純粋な財産だけを数え直す作業」に例えられます。
⑧内部取引の消去
内部取引の消去とは、企業集団を単一の組織体とみなすため、連結グループ内で行われた取引を連結財務諸表から除外する手続きです。 具体的には、連結会社間の売上高等の取引高や債権債務を相殺消去します。
これは、「家庭内での貸し借りを家族の家計簿から除き、外部との収支のみを把握する作業」に例えられます。
⑨未実現利益の消去
連結グループ内取引で、資産が外部へ転売される前に生じた利益を未実現利益と呼び、連結決算上これを消去します。企業集団を単一の組織体とみなし、内部での「利益の上乗せ」を排除してグループ全体の適正な業績を報告するためです。
具体的には、棚卸資産の期末残高に含まれる内部利益を全額消去します。減価償却資産では、売却時に利益を一旦全額消去し、その後は買手側での減価償却を通じて、毎期規則的に利益を「実現」させていく修正を行います。
子会社が売手となる「アップストリーム」取引では、消去した利益を親会社と非支配株主に持分比率に応じて配分します。持分法適用会社との取引でも、原則として投資会社の持分相当額を消去する等の調整が必要です。
これは、「家族の間で物を売って利益が出たとしても、一家全体の財布としてはお金が増えていないため、家計簿をつける際にその身内向けの利益を差し引いて、正味の財産を数え直す作業」に例えられます。
⑩非支配株主への按分
連結決算では、子会社の資本や損益のうち親会社に帰属しない部分を非支配株主持分として計上します。
具体的な按分の場面は主に3点あります。第一に、支配獲得時の資本です。子会社の資本(時価評価後の諸資産・負債を含む)を持分比率に基づき按分し、親会社分は投資と相殺消去し、残りを非支配株主持分とします。第二に、支配獲得後の損益です。子会社の当期純損益を持分比率に応じて配分し、非支配株主分を連結損益計算書で調整します。第三に、内部取引の調整です。子会社が売手となる取引で生じた未実現損益の消去額や、在外子会社の換算で生じる為替換算調整勘定も、持分比率に応じて非支配株主に按分されます。
これは、「共同経営する店舗の利益や資産を、メインオーナーと他の出資者がそれぞれの出資比率に応じて分配し、それぞれの取り分を明確にする作業」に例えられます。
⑪持分法の会計処理
持分法は、被投資会社の資本や損益の変動のうち、投資会社に帰属する部分に応じて、投資の額を連結決算日ごとに修正する手法です。
処理の基礎として、原則として親子会社間で会計方針を統一します。適用開始時には、被投資会社の資産・負債を部分時価評価法(投資会社の持分相当額のみ)により時価評価します。投資額と資本の持分相当額との差額は、のれん(または負ののれん)として処理します。
期中処理では、被投資会社の当期純損益のうち持分相当額を「持分法による投資損益」として計上し、投資有価証券の額を増減させます。また、グループ間の取引による未実現損益を消去し、受取配当金は投資の額から減額します。
これは、「投資先の成長や損失を、自分の持ち株の価値にリアルタイムで反映させ、共に歩む家計簿」のようなものです。
⑫在外子会社の外貨換算
在外子会社の外貨表示財務諸表を円換算する際は、項目ごとに異なる相場を用います。
資産および負債は、原則として連結決算日の直物為替相場で換算します。純資産については、支配獲得時の株主資本等は支配獲得時の為替相場を適用し、支配獲得後に生じた利益剰余金等は発生時の為替相場(又は期中平均相場)を用います。一方、収益および費用は、原則として期中平均相場で換算します。
これらの換算によって生じた差額は、「為替換算調整勘定」として貸借対照表の純資産の部に計上し、親会社と非支配株主に按分します。また、のれんも外貨で把握され、期末残高を決算時相場、償却額を期中平均相場で換算するため、同様に調整勘定が発生します。
これは、「海外旅行の家計簿をつける際、持ち込んだ現金(資産)は今のレートで計算し、旅行中に稼いだお金(収益)はその時の平均的なレートで記録し、そのズレを調整用の箱にまとめておく作業」に似ています。
⑬在外子会社のIFRS適用と例外項目
在外子会社の財務諸表がIFRS(国際財務報告基準)そのまま利用することが認められています。ただし、日本基準との考え方の乖離を埋め、当期純利益を適正に算出するため、以下の5項目は原則として修正が必要です。
1. のれんの償却:20年以内の規則的な償却の実施。
2. 退職給付会計:数理計算上の差異の費用処理。
3. 研究開発費:資産計上された支出の費用化。
4. 固定資産等:投資不動産の時価評価や再評価モデルの取得原価への修正。
5. 金融商品:その他包括利益(OCI)に表示した株式の売却損益等の組替調整。
これらは重要性が乏しい場合を除き、必ず修正しなければならない例外項目です。
これは、「海外拠点ごとに現地の定規(IFRS)で測った報告書を合算する際、特に重要な利益に関わる目盛り(例外項目)だけは、共通の基準で測り直して正確な全体像を把握する作業」に似ています。

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