持分法ラボ【基礎編】|先生と一緒に図で学ぶ関連会社・のれん・持分法による投資損益
無料の学習ツール「持分法ラボ」の読み方ガイドです。ラボの基礎タブを上から順に、先生と生徒の会話形式で見ていきます。左の図はラボの図そのものです。重要な節の最後には、ラボで30秒だけ手を動かす小さな実習を置いています。
今日の事例
事例A(P社とA社・単位なし)
| P社が取得したA社株式 | 30% |
| 取得価額 | 750 |
| A社の資本金 | 1,000 |
| A社の利益剰余金 | 700 |
| A社の土地(簿価→時価) | 400 → 900 |
| 1年目のA社の当期純利益 | 800 |
| 1年目のA社の配当 | 200 |
| のれんの償却年数 | 5年 |
はじめに
今日の題材 ── 事例A
📍 ラボの場所:基礎タブ全体
ハルカ
先生、持分法を最初から教えてください。図に出てくる会社はどこですか。
先生
全部この事例Aだよ。P社がA社の株式を30%だけ持っている、という一本の話を最後まで使う。左の表を手元に置いて、ラボの「基礎」タブを上から順に読んでいこう。
先生
そうだよ。だから合算はしない。ここが持分法の出発点なんだ。
📗 基礎 ① ラボの図
基礎 ①
持分法とは?
📍 ラボの場所:基礎タブ ①
先生
左の図の左半分が連結だよ。現金も売掛金も土地も、科目ごとに足し合わせる。右半分が持分法。足すのは「投資有価証券」と「持分法による投資損益」の1行だけなんだ。
迷いポイント 1行しか動かさないなら、連結より利益が小さくなるのでは?
ハルカ
合算しないぶん、取り込む利益も減りますよね。
先生
それが、そうではないのだよ。取り込むのはA社の利益のうちP社の持分で、連結して非支配株主持分を引いた後の金額と原則として一致する。親会社株主に帰属する当期純利益も純資産も、連結と同じになるように作られているんだ。
ハルカ
1行で済むなら、連結の仕事も1行で終わりませんか。
先生
終わらないよ。その1行を出すために、裏で同じ計算をしているからね。
ハルカ
見た目が違うだけで、最終利益に与える影響は同じなんですね。
💡 そうだったのか!
持分法は「一行連結」。
売上や資産は増えないのに、利益と純資産への影響は連結と同じになります。
📗 基礎 ② ラボの図
基礎 ②
いつ持分法を使うのか
📍 ラボの場所:基礎タブ ②
先生
目安としては合っているよ。ただし左の図の軸は自己の計算で持っている議決権の割合で、20%はあくまで入口なんだ。15%以上20%未満でも、役員を送っている・重要な融資をしている・重要な取引があるなら関連会社になるよ。
迷いポイント 自分で20%持っていないと、関連会社にはならない?
先生
そこが落とし穴。自己の計算では1株も持っていなくても、緊密な者や同意している者の議決権と合わせて20%以上になり、所定の要件に当たれば関連会社になる。図の下にも赤字で書いてあるよ。
ハルカ
線を1本またぐかどうか、では決まらないんですね。
💡 そうだったのか!
20%は
入口の目安。実際は「重要な影響を与えられるか」で決まり、議決権を1株も持たない場合も含まれます。
📗 基礎 ③ ラボの図
基礎 ③
取得したとき ── 投資とA社の資本の差が「のれん」
📍 ラボの場所:基礎タブ ③
ハルカ
750で買ったのに、A社の資本の持分は660。差の90は何ですか。
先生
それがのれんだよ。計算はこう。(資本金1,000+利益剰余金700)×30%=510、そこに土地の含み益(900−400)×30%=150を足して660。750との差の90がのれんだ。
迷いポイント のれんは貸借対照表に「のれん」として出る?
ハルカ
連結B/Sに「のれん90」と並ぶんですよね。
先生
出ないんだ。持分法ののれんは投資有価証券の中に含めたまま持つ。だから取得した日の連結修正仕訳も無い。持分計算表で対応関係を確かめるだけだよ。
ハルカ
仕訳がないのに、のれんはちゃんと効いてくるんですか。
先生
効くよ。次の年から償却が始まって、持分法による投資損益を押し下げるんだ。
💡 そうだったのか!
持分法ののれんは
科目として表に出ない。投資有価証券の中に隠れていて、償却だけが損益に出てきます。
⏱ 30秒だけラボで試す
- 「シミュレーション」タブを開き、左の「事例A(一括取得)」を読み込む
- 「取得価額」を 750 から 800 に変える
👀 のれんが 90 → 140 に増え、X2年3月期の持分法による投資損益が 222 → 212 に下がります(償却が年18→年28になるため)。
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📗 基礎 ④ ラボの図
基礎 ④
利益が出たら ── 持分だけ投資を増やす
📍 ラボの場所:基礎タブ ④
ハルカ
A社が800もうけたら、P社はどうするんですか。
先生
持分の30%だけを取り込む。800×30%=240を投資有価証券に足して、同じ額を持分法による投資利益にする。左の図のとおりだよ。
迷いポイント P社の個別の帳簿も直すの?
ハルカ
投資有価証券が240増えるなら、単体の決算も直すんですよね。
先生
直さないんだ。P社の個別では株式は取得原価750のままだよ。連結の修正仕訳の中だけで動かす。だから毎年、前期までの修正を開始仕訳でやり直すことになるんだ。
ハルカ
個別と連結で金額が違ったままでいいんですね。
💡 そうだったのか!
持分法の処理は
連結上だけ。個別の投資有価証券は取得原価のまま動きません。
⏱ 30秒だけラボで試す
- 「シミュレーション」タブで「事例A(一括取得)」を読み込む
- 「A社の当期純利益」を 800 から 1000 に変える
👀 持分法による投資損益(X2年3月期)が 222 → 282 に、X3年3月末の投資有価証券が 1,074 → 1,134 に増えます。増えるのは差額200の30%=60ぶんだけです。
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📗 基礎 ⑤ ラボの図
基礎 ⑤
配当を受けたら ── 投資を減らす
📍 ラボの場所:基礎タブ ⑤
ハルカ
配当をもらったら、収益が増えてうれしいはずですよね。
先生
個別ではそうだね。受取配当金60が立つ。でも連結ではその受取配当金を消して、投資有価証券を60減らすんだ。
迷いポイント もらったお金を、なぜ収益にしないの?
ハルカ
現金は入ってきているのに、収益にしないのは変な感じです。
先生
A社が稼いだ時点で、④のとおり240をもう利益に取り込んで、同じ240だけ投資有価証券を増やしているだろう。配当でもう一度収益にしたら二重計上になる。配当は、その増やした投資を現金で払い戻してもらうことだから、こんどは投資有価証券を減らすんだ。
ハルカ
配当をもらっても連結の利益は増えない…。少しがっかりします。
ハルカ
利益で積み上げた投資から、配当のぶんを下ろしたようなものですね。
💡 そうだったのか!
持分法では、
利益を取り込むのが先、配当は投資の払い戻し。受取配当金は連結では消えます。
⏱ 30秒だけラボで試す
- 「シミュレーション」タブで「事例A(一括取得)」を読み込む
- 「A社の配当」を 200 から 0 に変える
👀 持分法による投資損益は 222 のまま変わらず、X3年3月末の投資有価証券だけ 1,074 → 1,134 に増えます。配当は損益ではなく投資を動かすことが分かります。
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📗 基礎 ⑥ ラボの図
基礎 ⑥
のれんの償却も「持分法による投資損益」
📍 ラボの場所:基礎タブ ⑥
先生
20年以内で償却するんだ。事例Aは5年だから年18だ。ただし置き場所が独特で、販管費の「のれん償却額」ではなく持分法による投資損益に含める。だから240−18=222になり、同じ18だけ投資有価証券も減るんだ。
迷いポイント のれんの償却は営業利益を減らす?
ハルカ
子会社ののれんと同じで、営業利益が減りますよね。
先生
減らないんだ。持分法による投資損益は営業外だからね。同じ「のれんの償却」でも、連結(子会社)なら営業利益の下、持分法なら営業外。ここは実務でもよく取り違えるところだよ。
ハルカ
営業利益を見ている人には見えない費用なんですね。
💡 そうだったのか!
持分法ののれん償却は
営業利益に影響しません。営業外の投資損益に紛れて出てきます。
⏱ 30秒だけラボで試す
- 「シミュレーション」タブで「事例A(一括取得)」を読み込む
- 「のれん償却年数」を 5 から 10 に変える
👀 年の償却が18→9になり、持分法による投資損益(X2年3月期)が 222 → 231 に増えます。X3年3月末の投資有価証券も 1,074 → 1,092 に増えます。
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📗 基礎 ⑦ ラボの図
事例Aの2年間:個別の簿価(取得原価)と連結の投資有価証券
| X1年3月末 取得時 | X2年3月末 1年後 | X3年3月末 2年後 |
|---|
| 個別の簿価 | 750 | 750 | 750 |
連結の投資有価証券 (マイナスは振替前の持分法上の額) | 750 | 912 | 1,074 |
| 差(投資の修正額) | 0 | 162 | 324 |
基礎 ⑦
投資の帳簿価額はこう動く(時系列)
📍 ラボの場所:基礎タブ ⑦
先生
左のグラフが全部だよ。取得原価750から始まって、利益の持分+240、配当−60、のれん償却−18で、1年後は912。灰色の棒が個別の750で、動かないままだよ。
迷いポイント 個別と連結の差は、何を表している?
先生
ズレじゃなくて投資の修正額、つまり連結の利益剰余金への累積の影響なんだ。取得後の利益の持分から、受け取った配当とのれん償却の累計を引いた残りだね。
ハルカ
個別より投資有価証券が162増えた分だけ、連結の利益剰余金も162増えているんですね。
💡 そうだったのか!
個別と連結の投資有価証券の差が、そのまま
連結の利益剰余金への累積の影響になります。
⏱ 30秒だけラボで試す
- 「シミュレーション」タブで「事例A(一括取得)」を読み込む
- 「土地の時価」を 900 から 400 に変える(含み益をなくす)
👀 A社の資本の持分が660→510に下がるぶん、のれんが 90 → 240 に増え、償却が年48になります。X3年3月末の投資有価証券は 1,074 → 1,014 に下がります。
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📗 基礎 ⑧ ラボの図
基礎 ⑧
表示 ── 営業外損益に一括
📍 ラボの場所:基礎タブ ⑧
先生
営業外収益(または営業外費用)に一括で1行。利益の持分ものれんの償却も減損も、負ののれんも、全部この1行にまとめるんだ。
迷いポイント 内訳は表に出さなくていいの?
先生
だから注記があるんだ。持分法を適用した非連結子会社・関連会社の範囲や、その重要な変更と理由を書く。連結を作っていない会社でも、持分法を当てはめたときの投資額と損益を注記するなら、この基準によるよ。
ハルカ
本表は1行、説明は注記、という分担なんですね。
💡 そうだったのか!
P/Lは
営業外に1行だけ。内訳は本表ではなく注記で伝えます。
今日の内容を、ラボで確かめてみませんか?
この記事の図は、すべて持分法ラボの画面そのものです。基礎タブを開けば、同じ図を見ながら読み返せます。
持分法ラボを開く ▶今日のまとめ ── 迷いポイント早見表
参考資料
企業会計基準第16号「持分法に関する会計基準」/移管指針第7号「持分法会計に関する実務指針」/実務対応報告第24号「持分法適用関連会社の会計処理に関する当面の取扱い」(いずれも企業会計基準委員会)。ラボの事例の数値は、指針の設例と同じパターンを独自の数値で組み立てたものです。
この記事を書いた人
TaxJudge編集部|公認会計士・税理士(実務25年)による企画・監修。会計基準・税法・裁決・有価証券報告書などの一次情報をもとに、検索できるデータベースと計算・判定・文書作成ツールを制作しています。