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【組織再編】支配関係及び完全支配関係|法人税法施行令第4条の2 ( 支配関係及び完全支配関係)

法人税法施行令4条の2 (支配関係及び完全支配関係)をもとに組織再編に関する支配関係について解説します。

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【組織再編】「支配関係」と「完全支配関係」|法人税法施行令4条の2 (支配関係及び完全支配関係) 法人税法施行令4条の2 (支配関係及び完全支配関係)をもとに組織再編に関する支配関係について解説します。■この動画のスライド資料・詳細解説はこちら(ブログ) ■関連...

概要

直接支配関係とは、一の者(個人とその特殊関係者を含む)が法人の発行済株式等の総数または総額の100分の50を超える株式または出資を保有する場合の関係です。この50%超の保有は、直接保有だけでなく、直接支配関係にある法人を通じた間接保有も含まれるとみなされます。

一方、直接完全支配関係は、当該一の者が発行済株式等の全部を保有する関係を指します。完全支配関係を判定する際、法人の役員や使用人等が取得した特定の株式(例えば、使用人組合が取得した株式や、役員等に付与された新株予約権の行使で取得された株式など)は、合計数が発行済株式の100分の5に満たない場合、発行済株式等の総数から除かれます,

解説:法人税法における「支配関係」と「完全支配関係」の実務

1. 導入: なぜこの知識が実務で重要なのか

企業の経理・財務をご担当される皆様、そして我々の事務所の若手スタッフの皆さん、日々の業務お疲れ様です。今回は、法人税務の根幹をなす非常に重要な概念、「支配関係」「完全支配関係」について解説します。なぜこのテーマが重要なのでしょうか。それは、グループ法人税制をはじめとする多くの税務規定が、この「関係性」の有無を適用の大前提としているからです。例えば、完全支配関係があればグループ内の寄附金は全額損金不算入となり、受贈益も益金不算入となるため、グループ全体の納税額に直結します。

これらの関係性を正しく理解し、自社(あるいはクライアント企業)がどの関係に該当するのかを正確に判定することは、予期せぬ税務リスクを回避し、適切な税務戦略を立案するための不可欠なスタート地点なのです。このレポートを通じて、実務で必ず役立つ知識をしっかりと身につけていきましょう。

2. 結論: 結局、どのような場合に該当するのか

詳細な解説に入る前に、まず結論から押さえておきましょう。この二つの関係性の最も重要なポイントは、その持株割合にあります。

• 支配関係とは: 
一の者が法人の発行済株式等の50%超を保有する関係。

• 完全支配関係とは: 
一の者が法人の発行済株式等の100%を保有する関係。

非常にシンプルですが、これが全ての基本となります。そして、どちらの関係性を判定する上でも共通する重要なルールがあります。それは、直接的に株式を保有している場合だけでなく、子会社などを通じて間接的に保有している株式も合算して判定するという「みなし保有」の規定です。

では、これらの定義について、条文のポイントを紐解きながら、より深く理解していきましょう。

3. 詳細解説: 条文のポイントを理解する

3.1. 「支配関係」の定義と判定

まず、「支配関係」から見ていきます。この関係の有無を判断することは、関連会社間の取引における税務処理を検討する上での出発点となります。法人税法施行令第4条の2第1項に基づくと、その成立要件は以下の3つのポイントに整理できます。

1. 判定の主体(一の者) 
判定の基準となる株主を「一の者」と呼びます。この「一の者」が個人の場合、その個人だけではなく、その特殊な関係にある個人が保有する株式も合算して判定することに注意が必要です。この特殊な関係には、配偶者や6親等内の血族、3親等内の姻族などが含まれ、同族経営の企業では特に注意が必要です。

2. 持株割合(50%超)
最も重要な基準が持株割合です。条文では「100分の50を超える」と規定されています。これは、ちょうど50.0%の保有では「支配関係」に該当しないことを意味します。わずか一株でも50%を超えることで、初めてこの関係が成立するのです。この「超える」という文言の厳密な理解が、実務では極めて重要になります。

3. 間接保有(みなし規定) 
直接の親子関係だけでなく、孫会社のような間接的な資本関係も考慮されます。これは、ある者(A社)と支配関係にある法人(B社)が、さらに別の法人(C社)の株式を保有している場合、法律上、A社はB社が保有するC社株式を「直接保有しているものとみなす」というルールです。この「みなし規定」が、判定の鍵となります。

4. 【設例】 
A社がB社の株式を60%保有(→A社・B社間に支配関係あり)し、そのB社がC社の株式を70%保有しているとします。この場合、A社はB社が保有するC社株式を直接保有しているものとみなされるため、結果としてA社とC社の間にも「支配関係」が成立します

このみなし保有のルールは、複数の子会社が介在する場合にも適用されます。例えば、A社がB社を、B社がC社を、C社がD社を、それぞれ支配している場合、A社はD社との間にも支配関係があると判定されます。

このように、グループ全体の資本関係を俯瞰的に捉える必要があります。次に、より結びつきの強い「完全支配関係」について見ていきましょう。

3.2. 「完全支配関係」の定義と判定

「完全支配関係」は、法人を一つの経済的実体と見なすグループ法人税制など、より一体性の強い企業グループに適用される様々な税制の基礎となります。そのため、その定義を正確に押さえることが不可欠です。

法人税法施行令第4条の2第2項によれば、その要件は一の者が法人の発行済株式等の「全部を保有する場合」、つまり100%保有が原則です。

そして、「支配関係」と同様に、この100%保有関係も間接保有が考慮されます。親会社が子会社の株式を100%保有し、その子会社が孫会社の株式を100%保有している場合、親会社は孫会社の株式を直接保有しているものとみなされ、親会社と孫会社との間にも「完全支配関係」が成立します。このルールは、間に何社の完全支配関係にある法人が介在していても同様に適用されます。

しかし、この厳格な100%ルールには、実務上の慣行に配慮した重要な例外規定が存在します。次にその特例を解説します。

3.3. 「完全支配関係」判定における特例:除外される株式

100%保有が原則である「完全支配関係」ですが、形式的に100%でなくなっても、実質的な支配関係が維持されていると認められるケースがあります。これは、従業員の福利厚生やインセンティブプランとして導入されることが多い、従業員持株会やストックオプション制度に配慮した特例です。

この特例が適用される大原則として、これから説明する株式の合計数が、その法人の発行済株式総数の5%未満でなければなりません。

この条件を満たす場合、以下の株式は「発行済株式等の総数」の計算から除外することができ、結果として100%保有関係(完全支配関係)が成立すると判定される可能性があります。

• ケース1:従業員持株会などが保有する株式 
その法人の従業員のみで構成され、自社の株式を取得することを主たる目的とする組合(民法上の組合)が保有する株式が対象となります。

• ケース2:役員・従業員がストックオプション(新株予約権)の行使により取得した株式 
その法人の役員や従業員(退職者やその相続人を含む)が、会社から付与された新株予約権を行使して取得し、保有している株式が対象です。これには、過去の商法改正前の旧制度に基づく権利によって取得された株式も含まれます。

これらの詳細な解説を通じて、「支配関係」と「完全支配関係」の定義と判定方法の骨子がご理解いただけたかと思います。最後に、これらの知識を実務でどのように活かすべきか、注意点をまとめます。

4. まとめ: 実務上の注意点

このレポートで解説した内容は、法人税務の基本でありながら、非常に奥深い論点です。明日からの実務で特に意識していただきたい点を、4つのポイントにまとめました。

• 持株比率の正確な把握 
まずは自社(クライアント)グループの現状を正確に把握することから始めましょう。資本関係図を作成し、直接保有だけでなく、子会社・孫会社を通じた間接保有の状況を可視化することが有効です。特に個人が株主の場合は、その親族などの特殊関係者が保有する株式まで含めて、グループ全体の株主構成を漏れなく把握してください。

• 「50%超」の厳密な判定 
支配関係の判定では、「50%超」という基準を厳密に適用してください。持株比率がちょうど50.0%の会社は、支配関係には該当しません。このわずかな差が、税務上の取り扱いを大きく分けることを常に念頭に置きましょう。

• 完全支配関係における特例の確認 
100%子会社だと安易に判断する前に、従業員持株会や役員・従業員によるストックオプション由来の株式保有がないかを必ず確認してください。もし存在する場合は、その合計持株数が発行済株式総数の5%未満であるかを検証するプロセスを徹底することが、正確な判定につながります。

• 税制への影響の理解 
最も重要なことは、これらの関係性の判定はゴールではなく、あくまでスタート地点であるということです。判定結果に基づき、「では、この関係性があるからグループ法人税制が適用される」「寄附金の損金不算入や受贈益の益金不算入の規定を検討しなければならない」といった次のステップに進む必要があります。この判定が、どの税制にどう影響するのかを理解して初めて、実務で活きた知識となるのです。

このレポートが、皆様の税務実務の一助となれば幸いです。ご不明な点があれば、いつでもご相談ください。

ガイド:Q&A

問1: 法令で定義される「支配関係」とは、どのような関係を指しますか?

「支配関係」とは、一の者が法人の発行済株式等の総数または総額の100分の50を超える数または金額を保有する場合における、その一の者と法人との間の関係を指します。この関係は、政令で定める関係として規定されています。

問2: 「支配関係」の判定において、間接的な所有はどのように扱われますか?「みなし保有」の規定について説明してください。

はい、扱われます。一の者Aと法人Bの間に直接支配関係があり、AおよびB、またはBのみが別の法人Cの発行済株式等の50%超を保有する場合、AはCの株式の50%超を保有するものとみなされます。これにより、直接的な所有関係がない場合でも支配関係が成立します。

問3: 法令で定義される「完全支配関係」とは、どのような関係を指しますか?

「完全支配関係」とは、一の者が法人の発行済株式等の全部を保有する場合における、その一の者と法人との間の関係を指します。ただし、特定の株式は、その合計が発行済株式総数の5%未満である場合に限り、計算から除外されることがあります。

問4: 「完全支配関係」の判定において、「支配関係」と同様に間接的な所有を考慮する規定はありますか?ある場合はその内容を説明してください。

はい、あります。一の者Aと法人Bの間に直接完全支配関係があり、AおよびB、またはBのみが別の法人Cの発行済株式等の全部を保有する場合、AはCの株式の全部を保有するものとみなされます。これにより、間接的な完全支配関係が成立します。

問5: 支配関係または完全支配関係を判定する際の「一の者」が個人である場合、その範囲はどのように定義されますか?

「一の者」が個人である場合、その個人本人だけでなく、前条第1項に規定される「特殊の関係のある個人」も含まれます。したがって、判定の際にはこれらの個人が保有する株式を合算して考える必要があります。

問6: 一の者が法人の発行済株式等の50%超を直接保有する場合、その関係の名称は何ですか?

その関係は「直接支配関係」と呼ばれます。これは、一の者が他の法人の株式の過半数を直接的に保有することによって成立する、最も基本的な支配関係の形態です。

問7: 一の者が法人の発行済株式等の全部を直接保有する場合、その関係の名称は何ですか?

その関係は「直接完全支配関係」と呼ばれます。これは、一の者が他の法人の発行済株式等の全てを直接的に保有することによって成立する、完全な支配関係の基礎となります。

問8: 「完全支配関係」を判定する際、発行済株式等の総数から除外される可能性のある株式が存在しますが、その除外が認められるための条件は何ですか?

除外が認められるためには、除外対象となる株式の合計数が、法人の発行済株式(自己株式を除く)の総数のうちに占める割合が100分の5に満たないことが条件となります。

問9: 「完全支配関係」の判定で除外される可能性がある株式のうち、従業員の組合が取得した株式について、どのような条件が定められていますか?

従業員の組合が取得した株式が除外されるためには、その組合が民法第667条第1項の組合契約によるもので、組合員が当該法人の使用人に限られている必要があります。また、組合の主たる目的が当該法人の株式を取得することであり、その目的に従って株式が取得されたものでなければなりません。

問10: 「完全支配関係」の判定で除外される可能性がある株式のうち、役員や使用人が新株予約権の行使によって取得したものについて説明してください。

それは、会社の決議により法人の役員または使用人等に付与された新株予約権の行使によって取得された株式で、当該役員等が保有するものに限られます。これには、旧商法等の規定に基づき付与された権利や新株引受権の行使により取得された株式も含まれます。

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