無料の学習ツール「在外子会社換算ラボ」の読み方ガイドです。ラボの設例タブから、税効果と持分法の事例(事例G・H)を1つずつ、先生と生徒の会話形式で見ていきます。左の図はラボの図そのものです。重要な節の最後には、ラボで30秒だけ手を動かす小さな実習を置いています。
今日の事例
設例・応用タブの2つの事例(金額は千円)
| 事例G 為替換算調整勘定の税効果 | S社を100%で設立(400千ドル・@150) |
| 事例Gのレート | @125 → @110 → @115(3年目末に売却) |
| 事例Gの税率 | 30%(1年目末に売却の意思決定) |
| 事例H 在外持分法適用会社 | A社に30%を出資(300千ドル・@130) |
はじめに
今日の題材 ── 事例G・H
📍 ラボの場所:設例・応用タブ
ハルカ
先生、今日はいよいよ税効果ですね。少し身構えています。
先生
事例Gは、円高で為替換算調整勘定がマイナスになった子会社を、売ると決めて、3年目に売る話だよ。事例Hは、同じ換算を持分法の会社に当てはめる話なんだ。どちらも、ここまでの考え方の組み合わせだから安心していいよ。
ハルカ
Gは3年分を通しで見るんですね。
先生
そうだよ。繰延税金資産がどう増えて、どう消えるかを、年ごとに追っていこうか。
ラボの設例・応用タブを開きながら読むと分かりやすいですラボで開く ▶
📕 事例G ステップ2
事例G
円高で▲11,350 ── 将来減算一時差異になる理由
📍 ラボの場所:設例・応用タブ 事例G ステップ2
ハルカ
投資全体では、連結61,250の方が個別60,000より大きいのに、将来減算一時差異なんですか。
先生
左の本文を見て。投資の一時差異は、取得後の利益の部分と為替換算調整勘定の部分に分けて考えるんだ。為替換算調整勘定▲11,350の部分は、連結上の価額を個別より小さくする向きだから、売ったときに税金を減らす。だから将来減算なんだよ。
迷いポイント 取得後の利益12,600の部分の税効果も、ここで計算する?
ハルカ
利益の部分も一緒に税効果を計算した方が、すっきりしませんか。
先生
そちらは留保利益の税効果という別の論点なんだ。このラボでは扱わずに、為替換算調整勘定の部分だけを取り出して見ているよ。
ハルカ
プラスとマイナスが混ざっているのに、片方だけ見るなんて、お弁当のおかずだけ先に食べるみたいでちょっと落ち着きません。
先生
おかずとご飯は、別の論点として順番に食べればいいんだ。今日はおかずの方だよ。
💡 そうだったのか!
為替換算調整勘定がマイナスなら、その部分は将来減算一時差異。取得後の利益の部分(留保利益)は別の論点です。📕 事例G ステップ3・4
事例G
売却の意思決定 → 繰延税金資産3,405、翌年は5,820へ
📍 ラボの場所:設例・応用タブ 事例G ステップ3・ステップ4
ハルカ
1年目末に売却を決めたら、繰延税金資産3,405を計上するんですね。
先生
左の上の式のとおり、11,350×30%=3,405だよ。相手は為替換算調整勘定だから、連結B/Sの為替換算調整勘定は▲7,945になるんだ。2年目は下の仕訳のとおり、開始仕訳で3,405を戻してから、増えた2,415を足して5,820にするよ。
迷いポイント 繰延税金資産は、決めた年に一度計上したら終わり?
ハルカ
一度計上したら、そのまま置いておけばいいんですよね。
先生
毎期末の為替換算調整勘定に合わせて残高を見直すんだ。2年目末は▲19,400に広がったから、繰延税金資産も5,820に増えたんだよ。繰延税金資産なら、回収可能性の判断もその都度必要なんだ。
ハルカ
レートと一緒に、繰延税金資産も毎年ゆれるんですね。
💡 そうだったのか!
繰延税金資産は毎期末の為替換算調整勘定に合わせて見直し、相手は為替換算調整勘定です(3,405 → 5,820)。⏱ 30秒だけラボで試す
- 「事例G」を読み込む(下のボタンでシミュレーションが開きます)
- 「何年分を計算する?」を 2年 にする
- 「繰延税金資産の回収可能割合(%)」を 100 → 50 にする
👀 2年にした時点で繰延税金資産 5,820・連結B/Sの為替換算調整勘定 ▲13,580。回収可能割合を50%にすると、繰延税金資産 2,910・為替換算調整勘定 ▲16,490 になります。
ラボを開く ▶📕 事例G ステップ5
事例G
3年目:売却で、繰延税金資産も取り崩す
📍 ラボの場所:設例・応用タブ 事例G ステップ5
ハルカ
3年目に売ったら、繰延税金資産5,820はどうなるんですか。
先生
左の仕訳を上から見て。まず開始仕訳で前期末の5,820を戻して、売却で一時差異が解消するから、同じ5,820を取り崩すんだ。相手は計上したときと同じ為替換算調整勘定だよ。そのうえで、為替換算調整勘定▲16,480を損益へ移して、連結上は売却損14,180になるんだ。
迷いポイント 開始仕訳を書かずに、取崩しだけ書いてもいい?
ハルカ
戻してすぐ取り崩すなら、開始仕訳は省いてもいいのでは。
先生
連結修正は毎期やり直すから、前期末の5,820をまず戻さないと、取り崩す相手がないんだ。2本そろって、期末の繰延税金資産が0になるよ。
ハルカ
レシートがないと返品できないのと同じですね。まず「持っていた」ことを示さないと。
先生
そういうことだよ。開始仕訳がレシートの役目なんだ。
💡 そうだったのか!
売却の年は、開始仕訳で前期末の繰延税金資産を戻してから取り崩します。期末の残高は0です。📕 事例G ステップ6・7
事例G
包括利益の税効果と、売却の意思がない場合
📍 ラボの場所:設例・応用タブ 事例G ステップ6・ステップ7
ハルカ
左の上の図で、3年目の包括利益は3,880になっていますね。
先生
売却損▲14,180を含めた額だよ。その他の包括利益は、当期発生額と組替調整額を税効果控除前で示して、税効果額▲5,820を一括して加減し、控除後は13,580になるんだ。下の表は、売却の意思がなかった場合との比べっこだよ。
迷いポイント 売却の意思がなくても、マイナスなら繰延税金資産を計上する?
ハルカ
マイナスなら、いつかは税金が減るんだから、計上してもいいのでは。
先生
売却の意思が明確でなければ、税効果は認識しないんだ。下の表のとおり、2年目末の連結B/Sは税効果前の▲19,400のままになるよ。プラス(将来加算)の場合も、親会社が売却を決められて、その意思がなければ繰延税金負債は計上しないんだ。
ハルカ
「いつか売るかも」では、会計は動いてくれないんですね。
💡 そうだったのか!
税効果は売却の意思が明確で要件を満たすときだけ。意思がなければ、連結B/Sは税効果前の額のままです。📕 事例H ステップ2・3
事例H
在外持分法適用会社 ── 同じ換算を、投資勘定1行で
📍 ラボの場所:設例・応用タブ 事例H ステップ2・ステップ3
ハルカ
関連会社のA社も、子会社と同じように円に換算するんですか。
先生
換算の方法は子会社と同じだよ。違うのは、財務諸表を合算せずに投資勘定1行に反映するところなんだ。左の仕訳のとおり、1年目は利益の持分8,280と、為替換算調整勘定4,920が投資有価証券に加わるよ。
迷いポイント 非支配株主持分への振替は、持分法でも必要?
ハルカ
子会社と同じなら、70%の他の株主の分を振り替えるんですよね。
先生
持分法では、はじめから持分相当額だけを計上するから、振替はないんだ。下の図のとおり、2年目末の投資勘定53,676は「外貨の純資産の持分×決算時レート」と一致するよ。包括利益計算書では「持分法適用会社に対する持分相当額」として一括して出すんだ。
ハルカ
30%しか持っていないのに、換算の手間は子会社と同じ…。短時間のアルバイトなのに、研修だけはフルコースを受けている気分です。
先生
手間は同じでも、載せるのは投資勘定の1行だけだから、まとめるのは楽なんだ。
💡 そうだったのか!
在外持分法適用会社も子会社と同じ換算で、持分相当額だけを投資勘定1行に反映します。非支配株主持分への振替はありません。事例Hは設例のみで、シミュレーションはありません。ステップを順に開いて確かめてくださいラボで開く ▶
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今日のまとめ ── 設例ごとの結論
| 設例 | 迷いポイント | 答え |
|---|---|---|
| 事例G ステップ2 | 投資全体が連結>個別なのに将来減算? | 為替換算調整勘定の部分だけ見れば将来減算。利益の部分は別の論点 |
| 事例G ステップ3・4 | 繰延税金資産は一度計上したら終わり? | 毎期末の為替換算調整勘定に合わせて見直す(3,405 → 5,820) |
| 事例G ステップ5 | 売却の年は取崩しだけ? | 開始仕訳で前期末の5,820を戻してから取り崩す |
| 事例G ステップ6・7 | 意思がなくても計上する? | 売却の意思が明確で要件を満たすときだけ。なければ▲19,400のまま |
| 事例H | 持分法でも非支配株主へ振り替える? | 持分相当額だけ計上するので振替はない |
おわりに
今日のふりかえり
先生
今日のまとめだよ。為替換算調整勘定の税効果は、売却の意思が明確で要件を満たすときに、相手を為替換算調整勘定にして計上する。毎期見直して、売った年は開始仕訳で戻してから取り崩すんだ。持分法の会社も、換算は同じで持分相当額だけだよ。
ハルカ
引き出しの旅行のドル、「今度の夏に使う」と決めたので、心の中で繰延税金資産を計上しておきます。
先生
決意表明はいいね。ただ、個人の外貨に税効果会計はないから、心の中の仕訳は自由だよ。
ハルカ
じゃあ、夏になったらパン屋さんで取り崩します。開始仕訳も忘れずに。
先生
シリーズはここまでだよ。基礎編から読み返すと、図の見え方がきっと変わるよ。
参考資料
移管指針第2号「外貨建取引等の会計処理に関する実務指針」/企業会計基準適用指針第28号「税効果会計に係る会計基準の適用指針」/企業会計基準第25号「包括利益の表示に関する会計基準」/移管指針第7号「持分法会計に関する実務指針」(いずれも企業会計基準委員会)。ラボの事例の数値は、各基準の設例と同じパターンを独自の数値で組み立てたものです。
このシリーズの記事:基礎編/応用編/設例・換算編(事例A〜C)/設例・持分変動編(事例D〜F)
