持分法ラボ【設例・未実現利益・債務超過編】|先生と一緒に図で学ぶ事例D・I ダウンストリーム・アップストリーム・持分法適用に伴う負債
無料の学習ツール「持分法ラボ」の読み方ガイドです。ラボの設例・応用タブから、持分30%のまま1年の中で起こる事例(事例D・事例I)を1つずつ、先生と生徒の会話形式で見ていきます。左の図はラボの図そのものです。重要な節の最後には、ラボで30秒だけ手を動かす小さな実習を置いています。
📕 事例D ラボの画面
X1年3月末
A社株式 30% を取得
750
関連会社(事例Aと同じ)
▶
X2年3月期
A社の利益 800・配当 200
P社⇄A社の取引で在庫が残る
▶
取得日(X1年3月末)のA社
資本金1,000
利益剰余金700
土地簿価 400 → 時価 900
税効果:実効税率 30% 評価差額・未実現利益の税効果 あり / 留保利益・のれん償却の税効果 認識しない(売却の予定がなく、配当を受け取っても追加の税負担は生じないものとする)
X2年3月期末:A社の在庫のうちP社から仕入れた分 700(P社の売上総利益率 40%・売価に対する割合)、P社の在庫のうちA社から仕入れた分 400(A社の売上総利益率 30%・売価に対する割合)。
はじめに
今日の題材 ── 事例Dと事例I
📍 ラボの場所:設例・応用タブ 事例D・事例I
ハルカ
先生、設例・応用タブは、税率30%の税効果が付くんですね。今日はどの事例ですか。
先生
持分30%のまま、1年の中で起こる2つの難所だよ。事例Dは、P社とA社の間で売り買いした商品が在庫に残る未実現利益。事例Iは、A社が大きな損失を続けて出す債務超過なんだ。どちらも、取得の条件は事例Aと同じだよ。
先生
設例・応用タブでは評価差額に税効果を付けるから、のれんが変わるんだ。次の節で確かめようか。
設例・応用タブの事例Dを開きながら読むと分かりやすいですラボで開く ▶
📕 事例D ラボの画面
事例Aと同じ取得ですが、評価差額に税効果(税率30%)を付けるので、A社の資本のP社持分が小さくなり、のれんが大きくなります。
評価差額(P社分) = (900 - 400)× 30% = 150 / 繰延税金負債 = 150 × 30% = 45
A社の資本のP社持分 = (1,000 + 700)× 30% + 150 - 45 = 615
のれん = 750 - 615 = 135(5年で償却 → 年 27)
持分法の連結修正仕訳(取得日)| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|
| 仕訳なし |
事例D〜I 共通
税効果ありの取得 ── のれんが90から135に
📍 ラボの場所:設例・応用タブ 事例D ステップ2
先生
左の計算式を見て。評価差額150に30%の繰延税金負債45が付くので、A社の資本のP社持分は(1,000+700)×30%+150-45=615。取得価額750との差で、のれんは135になるんだ。
迷いポイント 税効果を付けたら、のれんは小さくなる?
ハルカ
税金の分だけ評価差額が減るなら、のれんも一緒に減りそうです。
先生
のれんは、取得価額から持分を引いた残りだよ。持分が45小さくなるぶん、のれんは45大きくなるんだ。年の償却も、18から27に増えるよ。なお、留保利益には税効果を付けていないよ。A社株式を売る予定がなく、配当を受け取っても追加の税負担は生じないものとしているからなんだ。
💡 そうだったのか!
評価差額に税効果を付けると、持分が
繰延税金負債の分だけ小さくなり、のれんはその分大きくなります(135、年27の償却)。事例D〜Iはすべてこの取得から始まります。
📕 事例D ラボの画面
利益・配当・のれん償却に加えて、P社とA社の間の取引で在庫に残った未実現利益を消去します。
当期純利益 800 のうち持分 30%| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|
| 投資有価証券 | 240 | 持分法による投資利益(当期純利益) | 240 |
剰余金の配当 200 のうち持分 30%(受取配当金を投資の減額に置き換える)| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|
| 受取配当金 | 60 | 投資有価証券 | 60 |
P社→A社の棚卸資産の未実現利益 280 のうち 持分 30% を消去| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|
| 売上高(未実現利益消去) | 84 | 投資有価証券(棚卸資産) | 84 |
上記の税効果(売手の投資会社で繰延税金資産)| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|
| 繰延税金資産(投資会社) | 25 | 法人税等調整額(投資会社) | 25 |
A社→P社の棚卸資産の未実現利益 120 のうち持分 30% を消去| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|
| 持分法による投資利益(未実現利益消去) | 36 | 棚卸資産(投資会社) | 36 |
上記の税効果(売手のA社で繰延税金資産)| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|
| 投資有価証券(繰延税金資産の増加) | 11 | 持分法による投資利益(法人税等調整額) | 11 |
のれんの償却 27| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|
| 持分法による投資利益(のれん償却) | 27 | 投資有価証券(のれん) | 27 |
連結修正仕訳(X2年3月期・まとめたもの)
連結修正仕訳(上記の合計)| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|
| 投資有価証券 | 80 | 持分法による投資利益 | 188 |
| 受取配当金 | 60 | 法人税等調整額 | 25 |
| 売上高 | 84 | 棚卸資産 | 36 |
| 繰延税金資産 | 25 | | |
事例D
ダウンストリーム ── P社が売った利益は、売上高と投資から消す
📍 ラボの場所:設例・応用タブ 事例D ステップ3
ハルカ
P社がA社に売った商品700が、A社の在庫に残っています。P社の売上総利益率(売価に対する割合)は40%です。
先生
在庫に残っている利益は700×40%=280。そのうちP社の持分30%に当たる84だけを消すんだ。左の仕訳のとおり、借方は売上高84、貸方は投資有価証券84。売ったのはP社なので、税効果もP社の繰延税金資産25で付けるよ。
迷いポイント 未実現利益280は、全額消す?
ハルカ
グループの中で動いただけなら、280全部を消すものだと思っていました。
先生
関連会社との取引では、原則として持分相当額の84だけを消すんだ。P社はA社の利益を30%しか取り込んでいないからだよ。残りの70%は、ほかの株主のぶんと考えるよ。
ハルカ
週末に買ったメロンパンを、妹に買値より少し高く売りました。妹がまだ食べずに持っているうちは、姉妹全体では、まだもうかっていないんですね。
先生
妹さんが30%の関連会社なら、消すのはその30%のぶんだけだよ。
💡 そうだったのか!
関連会社との取引の未実現利益は、
原則として持分相当額だけ消去します。ダウンストリームは
売上高と投資有価証券で消し、税効果は売手のP社で付けます。
⏱ 30秒だけラボで試す
- シミュレーションタブ →「🎮 事例から始める」で「事例D 未実現利益(ダウン・アップ)」を選ぶ
- 「X2年3月期」の「そのP社の売上総利益率(売価に対する%)」を 40 → 50 に変える
👀 「X2年3月期の連結修正仕訳」で売上高の消去が 84 → 105 に増えますが、持分法による投資損益は 188 のままです。ダウンストリームの消去は、売上高で行うためです。
ラボを開く ▶
📕 事例D ラボの画面
原典の設例と同じ形の持分計算表です。黄色の行が、この事例のポイントです。
| 摘要 | P社の持分(A社の資本のうち P社の分) | 投資額個別の簿価 | P社(連結会社)側の修正 |
|---|
| 資本金 | 利益剰余金取得時 | 利益剰余金取得後 | 未実現利益A社が売手 | 評価差額 | 繰延税金A社 | 合計 | のれん | 合計 | 未実現利益P社が売手 | 繰延税金P社 | 利益剰余金連結への影響 | 棚卸資産P社の資産から控除 |
|---|
| X1年3月期末(取得) |
| 取得(30%) | 300 | 210 | ― | ― | 150 | ▲45 | 615 | 135 | 750 | 750 | ― | ― | ― | ― |
| 期末残高(30%) | 300 | 210 | 0 | 0 | 150 | ▲45 | 615 | 135 | 750 | 750 | 0 | 0 | 0 | 0 |
| X2年3月期(期首の持分比率 30%) |
| 期首残高 | 300 | 210 | 0 | 0 | 150 | ▲45 | 615 | 135 | 750 | 750 | 0 | 0 | 0 | 0 |
| 当期純利益 | ― | ― | 240 | ― | ― | ― | 240 | ― | 240 | ― | ― | ― | 240 | ― |
| 剰余金の配当 | ― | ― | ▲60 | ― | ― | ― | ▲60 | ― | ▲60 | ― | ― | ― | ▲60 | ― |
| 未実現利益(ダウン・棚卸資産) | ― | ― | ― | ― | ― | ― | ― | ― | ― | ― | ▲84 | 25 | ▲59 | ― |
| 未実現利益(アップ・棚卸資産) | ― | ― | ― | ▲36 | ― | 11 | ▲25 | ― | ▲25 | ― | ― | ― | ▲25 | ▲36 |
| のれん償却 | ― | ― | ― | ― | ― | ― | ― | ▲27 | ▲27 | ― | ― | ― | ▲27 | ― |
| 期末残高(30%) | 300 | 210 | 180 | ▲36 | 150 | ▲34 | 770 | 108 | 878 | 750 | ▲84 | 25 | 69 | ▲36 |
| X3年3月期(期首の持分比率 30%) |
| 期首残高 | 300 | 210 | 180 | ▲36 | 150 | ▲34 | 770 | 108 | 878 | 750 | ▲84 | 25 | 69 | ▲36 |
| 未実現利益の実現(ダウン) | ― | ― | ― | ― | ― | ― | ― | ― | ― | ― | 84 | ▲25 | 59 | ― |
| 未実現利益の実現(アップ) | ― | ― | ― | 36 | ― | ▲11 | 25 | ― | 25 | ― | ― | ― | 25 | 36 |
| 当期純利益 | ― | ― | 270 | ― | ― | ― | 270 | ― | 270 | ― | ― | ― | 270 | ― |
| 剰余金の配当 | ― | ― | ▲90 | ― | ― | ― | ▲90 | ― | ▲90 | ― | ― | ― | ▲90 | ― |
| のれん償却 | ― | ― | ― | ― | ― | ― | ― | ▲27 | ▲27 | ― | ― | ― | ▲27 | ― |
| 期末残高(30%) | 300 | 210 | 360 | 0 | 150 | ▲45 | 975 | 81 | 1,056 | 750 | 0 | 0 | 306 | 0 |
▲はマイナス。表は横にスクロールできます。合計(のれん込み)が連結上の投資の中身、投資額がP社の個別の簿価です。利益剰余金=合計-投資額+P社側の修正(=連結の利益剰余金への累積の影響)。A社が売手の未実現利益はP社の棚卸資産から控除するため、連結B/Sの投資有価証券=合計+P社が売手の未実現利益-棚卸資産の欄 になります。
投資の帳簿価額の動き(個別と連結)
| X1年3月末 取得時 | X2年3月末 1年後 | X3年3月末 2年後 |
|---|
| 個別の簿価 | 750 | 750 | 750 |
連結の投資有価証券 (マイナスは振替前の持分法上の額) | 750 | 830 | 1,056 |
| 差(投資の修正額) | 0 | 80 | 306 |
事例D
アップストリーム ── A社が売った利益は、投資損益と棚卸資産から消す
📍 ラボの場所:設例・応用タブ 事例D ステップ3・6
ハルカ
逆向きに、A社がP社に売った商品400が、P社の在庫に残っている場合はどうですか。
先生
A社の売上総利益率30%で未実現利益は120、その30%の36を消すよ。今度はA社の利益なので、借方は持分法による投資利益36、貸方はP社の棚卸資産36なんだ。税効果もA社の側で付けるから、投資有価証券11と持分法による投資利益11になるよ。
迷いポイント アップストリームでも、相手科目は投資有価証券?
ハルカ
ダウンと同じで、在庫の利益を消すなら投資有価証券から引くんですよね。
先生
在庫を持っているのはP社だから、原則としてP社の棚卸資産から消すんだ(判断を著しく誤らせなければ、投資有価証券から消すこともできるよ)。左の持分計算表の黄色の行を見て。アップの36は「未実現利益 A社が売手」の欄と、右端の「棚卸資産 P社の資産から控除」の欄に入っているよ。表の下の注記のとおり、X2年3月末の連結B/Sの投資有価証券は 878-84+36=830 になるんだ。
💡 そうだったのか!
アップストリームは、原則として
持分法による投資利益とP社の棚卸資産で消し、税効果は売手のA社の側で付けます。
⏱ 30秒だけラボで試す
- シミュレーションタブ →「🎮 事例から始める」で「事例D 未実現利益(ダウン・アップ)」を選ぶ
- 「X2年3月期」の「そのA社の売上総利益率(売価に対する%)」を 30 → 40 に変える
👀 X2年3月期の持分法による投資損益が 188 → 179 に減り、在庫が売れるX3年3月期は 268 → 277 に増えます。2期の合計 456 は変わりません。
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📕 事例D ラボの画面
前期末の在庫が外部に売れたので、消去していた未実現利益を戻し入れます(税効果も取り崩し)。
前期末の未実現利益 84 の実現(A社が外部に販売)| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|
| 投資有価証券(棚卸資産) | 84 | 売上高(未実現利益の実現) | 84 |
上記の税効果の取崩し(投資会社)| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|
| 法人税等調整額(投資会社) | 25 | 繰延税金資産(投資会社) | 25 |
前期末の未実現利益(A社→P社)36 の実現| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|
| 棚卸資産(投資会社) | 36 | 持分法による投資利益(未実現利益の実現) | 36 |
上記の税効果の取崩し(A社の繰延税金資産)| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|
| 持分法による投資利益(法人税等調整額) | 11 | 投資有価証券(繰延税金資産の取崩し) | 11 |
事例D
翌期の実現 ── 在庫が売れたら、消した利益を戻す
📍 ラボの場所:設例・応用タブ 事例D ステップ4
ハルカ
X3年3月期に、その在庫が外部に売れました。
先生
左の仕訳のとおり、前期に消した84と36を、同じ科目で逆向きに戻すんだ。税効果の25と11も取り崩すよ。連結財務諸表は毎期作り直すから、期首の開始仕訳で前期の消去をもう一度入れ、そのあと実現の仕訳で戻す、という流れになるよ。
迷いポイント 戻した利益は、利益剰余金に直接入れる?
ハルカ
前の年に消した利益なら、利益剰余金期首残高に戻すんですよね。
先生
戻すのは当期の損益なんだ。外部に売れて利益が実現したのは当期だから、ダウンなら売上高84、アップなら持分法による投資利益36として当期に計上するよ。X3年3月期の持分法による投資損益268には、この実現の分が入っているんだ。
ハルカ
翌期に戻ってくるなら、消した年の苦労は何だったんでしょう…。
先生
利益が出る年がずれるだけで、2年間の合計は同じなんだ。在庫が外に売れた年に利益を出す、ということだよ。
💡 そうだったのか!
在庫が外部に売れたら、消した未実現利益を
当期の損益で戻し入れます。消した年と戻す年がずれるだけで、合計は変わりません。
事例Dのステップ6の持分計算表では、消去と実現の行が黄色で並んでいますラボで開く ▶
📕 事例I ラボの画面
A社が大きな損失を出したので、その持分だけ投資を減らします。投資の額がマイナスになったら、期末に貸付金・「持分法適用に伴う負債」へ振り替えます。
当期純損失 2500 のうち持分 30%| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|
| 持分法による投資損失(当期純損失) | 750 | 投資有価証券 | 750 |
のれんの償却 27| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|
| 持分法による投資利益(のれん償却) | 27 | 投資有価証券(のれん) | 27 |
投資の額がゼロを下回る部分 27 を貸付金に振り替える| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|
| 投資有価証券 | 27 | 貸付金 | 27 |
連結修正仕訳(X2年3月期・まとめたもの)
連結修正仕訳(上記の合計)| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|
| 持分法による投資損失 | 777 | 投資有価証券 | 750 |
| | 貸付金 | 27 |
持分法上の投資の額(振替前) = ▲27 → 投資有価証券は 0 とし、貸付金を 27 減額として表示する
事例I
投資がマイナスに ── ゼロを下回った分は貸付金へ
📍 ラボの場所:設例・応用タブ 事例I ステップ3
ハルカ
事例Iでは、A社がX2年3月期に2,500の損失を出しています。
先生
損失の30%の750と、のれん償却27で、投資を777減らすんだ。取得時の750から777を引くと▲27。投資の額がゼロを下回ったので、左の仕訳のとおり、期末に27を貸付金に振り替えて、投資有価証券は0と表示するよ。P社はA社に300を貸していて、さらにほかの株主とともに持分割合に応じてA社の債務を保証しているんだ。だから、投資額を超える損失も持分割合で負担する前提だよ。
迷いポイント 投資がゼロになったら、そこで損失の取り込みはやめる?
ハルカ
投資は750しかないのだから、損失の取り込みも750で止まりそうです。
先生
原則はゼロで打ち止めだけれど、貸付金や債務保証などで投資額を超えて損失を負担する立場にあるなら、取り込み続けるんだ。この事例はその前提なので、貸付金を減らす形で表示するよ。
ハルカ
投資有価証券がマイナスになったら、B/Sから逃げ出して、貸付金の後ろに隠れるんですね。
先生
隠れるというより、表示する場所を移すだけなんだ。次の期首には、振替前の▲27から始めるよ。
💡 そうだったのか!
投資の額がゼロを下回ったら、
貸付金を減らす形で表示します。損失の取り込みを続けるのは、投資額を超えて負担する立場にあるときです。
⏱ 30秒だけラボで試す
- シミュレーションタブ →「🎮 事例から始める」で「事例I 債務超過(大きな損失が続く)」を選ぶ
- 「投資額を超えて損失を負担する」のチェックを外す
👀 持分法による投資損益が、X2年3月期は ▲777 → ▲750、X3年3月期は ▲477 → 0 に変わります。投資がゼロになったところで、取り込みが止まるためです。
ラボを開く ▶
📕 事例I ラボの画面
前期末の振替(貸付金 27)は表示の組替えなので、期首の開始仕訳は振替前の数字から始めます。当期も損失の持分だけ投資を減らし、期末に改めて振り替えます。
開始仕訳:前期末までの持分法の修正を引き継ぐ| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|
| 利益剰余金期首残高 | 777 | 投資有価証券 | 777 |
期首のできごとの後の持分比率(30%)で、利益・配当を取り込み、のれんを償却します。
当期純損失 1500 のうち持分 30%| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|
| 持分法による投資損失(当期純損失) | 450 | 投資有価証券 | 450 |
のれんの償却 27| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|
| 持分法による投資利益(のれん償却) | 27 | 投資有価証券(のれん) | 27 |
投資の額がゼロを下回る部分 504 を貸付金・持分法適用に伴う負債に振り替える| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|
| 投資有価証券 | 504 | 貸付金 | 300 |
| | 持分法適用に伴う負債 | 204 |
連結修正仕訳(X3年3月期・まとめたもの)
連結修正仕訳(上記の合計)| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|
| 利益剰余金期首残高 | 777 | 投資有価証券 | 750 |
| 持分法による投資損失 | 477 | 貸付金 | 300 |
| | 持分法適用に伴う負債 | 204 |
持分法による投資損益(X3年3月期) = ▲477 / X3年3月末の投資有価証券(連結B/S) = 0
持分法上の投資の額(振替前) = ▲504 → 投資有価証券は 0 とし、貸付金を 300 減額、残り 204 は「持分法適用に伴う負債」として表示する
事例I
2年目 ── 振替前の数字から始め、足りない分は負債に
📍 ラボの場所:設例・応用タブ 事例I ステップ4・5
ハルカ
X3年3月期も1,500の損失です。期首は、前期末の投資有価証券0から始めるんですよね。
先生
期首の開始仕訳は振替前の数字から始めるんだ。左の開始仕訳のとおり、借方は利益剰余金期首残高777、貸方は投資有価証券777。前期末の貸付金への振替は表示の組替えなので、開始仕訳には入れないよ。
迷いポイント 貸付金300を超えた損失は、表に出さなくてよい?
ハルカ
当期の損失450と償却27で、振替前の投資は▲504です。貸付金は300しかないので、足りない204は、もう表に出さなくていいんですよね。
先生
出すんだ。P社は持分割合に応じてA社の債務を保証しているから、その負担分として、貸付金を300まで減らしたうえで、残りの204を「持分法適用に伴う負債」として負債に表示するよ。X3年3月期の持分法による投資損益は▲477、投資有価証券は0なんだ。なお、のれんが残っている関連会社がここまで損失を出したときは、のれんの減損も検討が必要だよ。ラボの計算は償却だけで進めているんだ。
💡 そうだったのか!
期首は
振替前の数字から始めます。貸付金を超えて負担する分は「
持分法適用に伴う負債」に表示します。
⏱ 30秒だけラボで試す
- シミュレーションタブ →「🎮 事例から始める」で「事例I 債務超過(大きな損失が続く)」を選ぶ
- 「P社からA社への貸付金」を 300 → 600 に変える
👀 「X3年3月期の連結修正仕訳」で、貸付金の減額が 300 → 504 になり、持分法適用に伴う負債 204 がなくなります。持分法による投資損益 ▲477 は変わりません。
ラボを開く ▶
今日の内容を、ラボで確かめてみませんか?
この記事の図は、すべて持分法ラボの画面そのものです。設例タブを開けば、同じ図を見ながら、ステップを1つずつ読み返せます。
持分法ラボを開く ▶今日のまとめ ── 設例ごとの結論
おわりに
今日のふりかえり
先生
今日のまとめだよ。未実現利益は原則として持分相当額だけ消し、ダウンは売上高と投資有価証券、アップは持分法による投資利益と棚卸資産で消す。在庫が売れたら当期の損益で戻すんだ。損失で投資がマイナスになったら、貸付金、その次は持分法適用に伴う負債へ表示を移すよ。
ハルカ
実は、妹に売ったメロンパンの代金、まだもらっていません。
ハルカ
妹が債務超過になる前に、貸付金に振り替えて回収します。
先生
回収できたら何よりだね。次の持分変動編では、持分が増えたり減ったりしたときに、差額がどこへ行くかを見ていこうか。
参考資料
企業会計基準第16号「持分法に関する会計基準」/移管指針第7号「持分法会計に関する実務指針」(同・設例)(いずれも企業会計基準委員会)。ラボの事例の数値は、指針の設例と同じパターンを独自の数値で組み立てたものです。設例・応用タブの事例は実効税率30%、繰延税金資産は回収可能性があるものとして計算しています。事例D・Iでは、A社株式を売却する予定がなく、配当を受け取っても追加の税負担は生じないものとして、留保利益の税効果を認識していません。事例Iは、P社がほかの株主とともに持分割合に応じてA社の債務を保証している前提です。
このシリーズの記事:基礎編 ── 関連会社・のれん・投資損益/応用編 ── 未実現利益・持分変動・債務超過/設例・取得編(事例A〜C)/設例・持分変動編(事例E〜H)
この記事を書いた人
TaxJudge編集部|公認会計士・税理士(実務25年)による企画・監修。会計基準・税法・裁決・有価証券報告書などの一次情報をもとに、検索できるデータベースと計算・判定・文書作成ツールを制作しています。