無料の学習ツール「未実現利益消去ラボ」の読み方ガイドです。ラボの設例・基礎タブから、連結子会社との取引の事例(事例A〜C)を1つずつ、先生と生徒の会話形式で見ていきます。左の図はラボの図そのものです。重要な節の最後には、ラボで30秒だけ手を動かす小さな実習を置いています。
今日の事例
設例・基礎タブの3つの事例
| 事例A 親→子の商品(ダウン) | 在庫1,200×25%=300 |
| 事例B 子→親の商品(アップ) | 在庫1,000×35%=350・非支配20% |
| 事例C 親→子の機械(償却資産) | 1,500−簿価900=600・5年 |
| 税率(3事例とも) | 30% |
はじめに
今日の題材 ── 事例A〜C
📍 ラボの場所:設例・基礎タブ
ハルカ
先生、基礎タブで考え方は分かりました。実際の仕訳を1本ずつ見たいです。
先生
今日は設例・基礎タブの事例A〜Cを使うよ。Aが親から子への商品、Bが子から親への商品、Cが親から子への機械なんだ。全部のステップは追わずに、各事例の要のステップだけを取り出して見ていこうか。
ハルカ
A・Bは商品で、Cだけ機械なんですね。
先生
そうだよ。AとBの違いは「誰が負担するか」、AとCの違いは「いつ実現するか」なんだ。
ラボの設例・基礎タブを開きながら読むと分かりやすいですラボで開く ▶
📘 事例A ステップ2・4
事例A
取引高の相殺と、300の消去
📍 ラボの場所:設例・基礎タブ 事例A ステップ2・ステップ4
ハルカ
ステップ2で売上高3,000を消していますね。利益も3,000減るんですか。
先生
左の上の仕訳を見て。売上高3,000と売上原価3,000を同じ額だけ相殺しているから、利益は動かないよ。利益を動かすのは、下の仕訳の「売上原価300/棚卸資産300」の方なんだ。
迷いポイント 消去の相手は、売上高? 売上原価?
ハルカ
利益を消すなら、売上高を300減らすのが自然な気がします。
先生
事例Aは商品の期末在庫だから、売上原価を増やす形で消すんだ。期末在庫を減らせば、その分だけ売上原価が増えるよね。それと同じ動きを連結でするんだよ。棚卸資産は売手の原価900に戻るんだ。
ハルカ
3,000の売上が一瞬で消えて、手品を見ている気分でした。
先生
種も仕掛けも、同じ額の仕入れを一緒に消しているだけだよ。
💡 そうだったのか!
取引高の相殺は利益に影響なし。未実現利益300は売上原価/棚卸資産で消します。📘 事例A ステップ5
事例A
税効果 ── 300×30%=90
📍 ラボの場所:設例・基礎タブ 事例A ステップ5
ハルカ
ステップ5の税効果は、左の式どおり 300×30%=90 ですね。
先生
そうだよ。売手のP社がすでに払った税金90を繰延税金資産にして、法人税等調整額を貸方に立てるんだ。税金費用が90減るから、当期純利益への影響は ▲300+90=▲210 になるよ。
迷いポイント 子会社S社の税率が40%なら、40%で計算する?
ハルカ
在庫を持っているのはS社なので、S社の税率ではないんですか。
先生
日本基準は売却元、つまりP社の税率30%を使うよ。払ったのはP社だからね。課税所得の上限がかかると、ここが min(300、課税所得)×30% に変わるんだ。
ハルカ
P社が払った税金を、P社の税率で前払いにするんですね。
💡 そうだったのか!
税効果は売手の税率で。当期純利益への影響は ▲210、全額が親会社株主の負担です。⏱ 30秒だけラボで試す
- 「事例A」を読み込む(下のボタンでシミュレーションが開きます)
- 「売却元の売却年度の課税所得」に 100 と入れる
👀 繰延税金資産が 90 → 30、親会社株主に帰属する当期純利益への影響が ▲210 → ▲270 になります。
ラボを開く ▶📘 事例B ステップ5・6
事例B
非支配株主に負担させる ── 70と21
📍 ラボの場所:設例・基礎タブ 事例B ステップ5・ステップ6
ハルカ
事例Bは子会社が売手なので、非支配株主の仕訳が増えていますね。
先生
左の上の仕訳を見て。消去額350の20%、70を非支配株主持分から減らして、相手は「非支配株主に帰属する当期純利益」なんだ。下の仕訳は税効果105のうち20%の21を、逆向きに非支配株主に戻しているよ。
迷いポイント 非支配株主の負担は、350×20%の70で終わり?
ハルカ
非支配株主の負担は70ですよね。
先生
税効果も按分するから、差し引き 70−21=49 なんだ。税効果控除後の245×20%と同じだよ。親会社株主の負担は残りの196になるね。
ハルカ
非支配株主さんには、菓子折りを持って説明に行くべきでしょうか。
先生
仕訳2本で伝わるから、菓子折りはいらないよ。
💡 そうだったのか!
非支配株主の負担は消去額の20%(70)から税効果の20%(21)を引いた49。親会社株主は196です。⏱ 30秒だけラボで試す
- 「事例B」を読み込む
- 「誰が売手?」を ①親会社 → 子会社(ダウン) にする
👀 非支配株主の負担が 49 → 0、親会社株主に帰属する当期純利益への影響が ▲196 → ▲245 になります(税効果控除後の全額が親会社株主の負担に)。
ラボを開く ▶📘 事例C ステップ3・5
事例C
機械の売却益600を消し、同じ年に120を実現させる
📍 ラボの場所:設例・基礎タブ 事例C ステップ3・ステップ5
ハルカ
事例Cは、売却益600を消したあと、すぐ減価償却費を減らしていますね。
先生
左の上が消去で「固定資産売却益600/機械装置600」、下が実現で「減価償却累計額120/減価償却費120」だよ。S社は1,500で減価償却しているけれど、連結では売手の簿価900で償却したことにしたいから、差の600÷5年=120だけ毎年の減価償却費を減らすんだ。
迷いポイント 1年目は、消去した600がそのまま残る?
ハルカ
1年目の期末には、600が丸ごと残っているんですよね。
先生
同じ年に120が実現しているから、期末に残るのは480なんだ。税効果も180のうち36を取り崩して、残りは144。当期純利益への影響は ▲600+180+120−36=▲336 だよ。
ハルカ
毎年120ずつ戻ってくるのは、スマホの分割払いの逆みたいです。私のは残り19回、払う一方ですけど。
先生
スマホは払う側、こちらは戻る側だね。5年たつと累計でゼロに戻るんだ。
💡 そうだったのか!
償却資産は消去と実現が同じ年に起きる。事例Cの1年目は期末残高480、当期純利益への影響は ▲336 です。📘 事例C ステップ7
事例C
翌期の開始仕訳 ── 総額で引き継ぐ
📍 ラボの場所:設例・基礎タブ 事例C ステップ7
ハルカ
翌期の開始仕訳は、借方が2行になっていますね。
先生
「利益剰余金期首残高480・減価償却累計額120/機械装置600」だよ。機械装置は取得価額の差600を丸ごと減らして、前期までに実現した120は累計額の側で戻しているんだ。純額で480だけ減らすのではなく、総額で直すのがポイントだよ。
迷いポイント 償却が終わる6年目には、開始仕訳もなくなる?
ハルカ
5年たったら、開始仕訳もなくなりますよね。
先生
損益への影響はゼロになるけれど、機械を持っている限り「減価償却累計額600/機械装置600」は残るよ。ラボで「何年目か」を6にすると確かめられるんだ。
ハルカ
純額がゼロでも、総額の修正は残り続けるんですね。
💡 そうだったのか!
償却資産の開始仕訳は総額で。償却が終わっても、保有中は累計額600/機械装置600を引き継ぎます。⏱ 30秒だけラボで試す
- 「事例C」を読み込む
- 「何年目か」を 1 → 6 にする
👀 KPIはすべて 0 ですが、当期の連結修正仕訳に「減価償却累計額 600/機械装置 600」の開始仕訳が出ます。
ラボを開く ▶続けて読む📘 設例・持分法編(事例D〜F) ▶
今日のまとめ ── 設例ごとの結論
| 設例 | 迷いポイント | 答え |
|---|---|---|
| 事例A | 取引高の相殺で利益が減る? | 減らない。未実現利益300は売上原価/棚卸資産で消す |
| 事例A | 税率は買手(S社)の税率? | 売手(P社)の税率。300×30%=90、影響 ▲210 |
| 事例B | 非支配株主の負担は70? | 税効果21を引いた49。親会社株主は196 |
| 事例C | 1年目は600が丸ごと残る? | 同じ年に120が実現。期末480、影響 ▲336 |
| 事例C | 償却が終われば開始仕訳は不要? | 保有中は累計額600/機械装置600を引き継ぐ |
おわりに
今日のふりかえり
先生
今日のまとめだよ。事例Aでは、取引高の相殺は利益に影響せず、300を売上原価/棚卸資産で消した。事例Bでは非支配株主の負担が 70−21=49。事例Cでは、消去と実現が同じ年に起きて、開始仕訳は総額で引き継ぐんだ。
ハルカ
モンステラ用に買った大きな棚、もし家具屋さんが実家の父の会社だったら、連結で見ると父の売却益を消して、毎年少しずつ戻すんですか。
先生
考え方としてはそうだね。ただ、あなたとお父さんのお店は連結グループではないから、帳簿を付ける必要はないよ。棚は長く大事に使えば十分なんだ。
ハルカ
耐用年数5年なら、あと4年は引っ越せませんね。棚のために。
先生
棚に合わせて住まいを決めるのは、なかなかの経済的インセンティブだね。次の設例・持分法編では、関連会社との取引(事例D〜F)を見ていこうか。
参考資料
企業会計基準第22号「連結財務諸表に関する会計基準」/企業会計基準適用指針第28号「税効果会計に係る会計基準の適用指針」(いずれも企業会計基準委員会)。ラボの事例の数値は、各基準の設例と同じパターンを独自の数値で組み立てたものです。
このシリーズの記事:基礎編/応用編/設例・持分法編(事例D〜F)/設例・特殊論点編(事例G・H)