在外子会社換算ラボ【基礎編】|先生と一緒に図で学ぶ円換算と為替換算調整勘定
無料の学習ツール「在外子会社換算ラボ」の読み方ガイドです。ラボの基礎タブを上から順に、先生と生徒の会話形式で見ていきます。左の図はラボの図そのものです。重要な節の最後には、ラボで30秒だけ手を動かす小さな実習を置いています。
今日の事例
事例A(P社が米国S社の70%を取得・金額は千円)
| 取得原価 | 924千ドル × 130円 = 120,120 |
| S社の純資産(時価評価後) | 1,020千ドル |
| 1年目の利益 | 120千ドル(期中平均 138円) |
| 1年目の期末レート | 145円(円安) |
| S社の換算で生じた為替換算調整勘定 | 16,140 |
| 連結B/Sの為替換算調整勘定 | 14,301 |
はじめに
今日の題材 ── 事例A
📍 ラボの場所:基礎タブ全体
ハルカ
先生、海外の子会社を連結すると出てくる「為替換算調整勘定」が、どうしても腹落ちしません。
先生
基礎の図は、ほぼ全部この事例Aの数字だよ。P社が米国のS社の株式を70%買って、1年たったら円安が進んでいた、という一本の話なんだ。左の表を手元に置いて、ラボの「基礎」タブを上から順に読んでいこうか。
ハルカ
16,140と14,301、似た数字が2つありますね。
先生
よく気づいたね。16,140はS社の換算で生まれた差額の全体、14,301は連結B/Sに載る親会社の分なんだ。この2つがどうつながるかが、今日のゴールだよ。
📗 基礎 ① ラボの図
基礎 ①
在外子会社の換算とは? ── 外貨の決算書を円に直して、連結する
📍 ラボの場所:基礎タブ ①
ハルカ
海外の子会社の連結は、国内の子会社とまったく別の手続なんですか。
先生
左の図の①〜⑤を見て。まずレートを決めて円に換算する。そこで差額が生まれて、それを持分で分ける。のれんも換算する。違うのはこの「換算」が入るところだけで、そのあとの資本連結の考え方は国内と同じなんだ。
迷いポイント 換算で生まれた差額は、為替差損益としてP/Lに出る?
ハルカ
円安で円の値打ちが変わったなら、為替差益ですよね。
先生
それが、そうではないのだよ。まだS社株式を売っていないから、この差額は含み損益のようなものなんだ。損益にはせず、純資産の「その他の包括利益累計額」に溜めておく。これが為替換算調整勘定だよ。
ハルカ
前の旅行で余ったドルを引き出しにしまっているんですけど、円安のニュースを見るたびに、ちょっとお金持ちになった気がしていました。
先生
そこは区別しておきたいところだよ。会社が持っているドルの現金なら、決算のたびに円に換算して、差額は原則として為替差損益になるんだ。損益にせず純資産に溜めるのは、在外子会社の決算書を丸ごと換算したときの差額だけだよ。
💡 そうだったのか!
換算で生まれる差額は、売るまでは
損益にせず純資産に溜めます。損益になるのは、支配を失う売却や清算のときです。
📗 基礎 ② ラボの図
基礎 ②
どのレートを使う? ── 資産・負債は「いま」、純資産は「むかし」
📍 ラボの場所:基礎タブ ②
ハルカ
全部の項目を、期末のレートで換算すればいいんですよね。
先生
左のB/Sの図を見て。資産・負債は決算時レート(145円)、取得時の資本と評価差額は取得時レート(130円)で固定、取得後の利益剰余金は発生時レート、つまりP/Lを期中平均レート(138円)で換算した額を積み上げるんだ。
迷いポイント 純資産も決算時レートで換算してよい?
ハルカ
純資産だけ昔のレートにする理由が分かりません。
先生
取得時の資本は、P社が120,120で買ったときに投資と相殺した金額なんだ。そこを毎期レートで動かすと、投資との相殺がずれてしまう。だから「むかしのレート」で固定するんだよ。その結果、資産・負債とのあいだで貸借が合わなくなる。これが次の話だね。
ハルカ
いまのレートとむかしのレートが、同じB/Sに同居しているんですね。
💡 そうだったのか!
資産・負債は
決算時、取得時の資本は
取得時、取得後の利益は
発生時(期中平均の積み上げ)、収益・費用は
期中平均が原則です。
📗 基礎 ③ ラボの図
🧾 換算表で確認
| S社(第1期末) | 外貨(ドル) | レート | 円貨 |
|---|
| 資産 | 1,740 | 145 | 252,300 |
| 負債 | 600 | 145 | 87,000 |
| 資本金 | 500 | 取得時 130 | 65,000 |
| 利益剰余金:取得時 | 320 | 取得時 130 | 41,600 |
| 利益剰余金:取得後 | 120 | 発生時 | 16,560 |
| 評価差額 | 200 | 取得時 130 | 26,000 |
| 為替換算調整勘定 | ― | 差額 | 16,140 |
| 純資産合計 | 1,140 | 145 | 165,300 |
事例A:P社が米国S社の70%を 924千ドル(@130円)で取得。S社の資本金 500・利益剰余金 320・土地の含み益 200(千ドル)。1年目の利益 120千ドル。換算は仕訳ではなく、この表で行います。
基礎 ③
為替換算調整勘定はなぜ生まれる? ── 貸借の「差額」
📍 ラボの場所:基礎タブ ③
ハルカ
為替換算調整勘定は、どんな仕訳で計上するんですか。
先生
S社の換算表の中で、差額として算定するんだ。連結修正仕訳に出てくるのは、あとで見る非支配株主持分への振替や、のれんの換算の方だよ。左の換算表を見て。純資産1,140千ドルを145円で換算すると165,300。一方、むかしのレートで換算した純資産の項目を足すと149,160。この差額の16,140が、為替換算調整勘定として表の中で出てくるんだよ。
迷いポイント 為替換算調整勘定は、資産の換算差額?
ハルカ
資産が円安で増えた分だから、252,300から昔の資産を引けばいいんですね。
先生
資産も負債も決算時レートだから、効くのは差額の純資産なんだ。中身は「取得時の純資産×(145−130)」と「取得後の利益×(145−138)」の合計だよ。1,020×15=15,300と、120×7=840で、足すと16,140になるね。
ハルカ
じゃあ、為替換算調整勘定は「つじつま合わせ係」なんですね。いつも最後に出てきて、残りを全部引き受ける。
先生
引き受けているのは、ちゃんと理由のある差額だよ。レートの差と純資産の大きさで決まるんだ。
💡 そうだったのか!
為替換算調整勘定は
換算表の貸借の差額。中身は「純資産 ×(決算時レート − 換算に使ったむかしのレート)」の積み上げです。
⏱ 30秒だけラボで試す
- シミュレーション(換算と為替換算調整勘定)で「事例A」を読み込む
- 第1期の「決算時レート(円)」を 145 → 160 にする
👀 換算で生じた為替換算調整勘定が 16,140 → 33,240、連結B/Sの為替換算調整勘定が 14,301 → 29,106 に増えます。
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📗 基礎 ④ ラボの図
基礎 ④
円安・円高でどう動く? ── 純資産がプラスなら、円安でプラス・円高でマイナス
📍 ラボの場所:基礎タブ ④
ハルカ
左の図は、決算時レートが118円になっていますね。
先生
これは同じS社で、1年目が円高(130円→118円)だった場合だよ。外貨の純資産の円での値打ちが下がるから、為替換算調整勘定は▲12,960になる。図では、マイナスの分を資産の下に赤い点線で置いて、左右の高さをそろえているんだ。
迷いポイント 為替換算調整勘定がマイナスでも、毎年積み上げていく?
ハルカ
前の年のマイナスに、今年のマイナスを足していくんですか。
先生
毎期末に残高を計算し直すんだ。前期末との差が、その期の「その他の包括利益」になるよ。レートが戻れば、残高も戻っていくんだ。
ハルカ
レートが戻れば戻る。一喜一憂しなくていいんですね。
💡 そうだったのか!
純資産がプラスの子会社なら、ほかの条件が同じとき
円安で増え、円高で減ります。残高は毎期末に計算し直し、その差がその期の包括利益です。
⏱ 30秒だけラボで試す
- シミュレーション(換算と為替換算調整勘定)で「円高の年(為替換算調整勘定がマイナス)」を読み込む
👀 換算で生じた為替換算調整勘定が ▲12,960、連結B/Sの為替換算調整勘定が ▲11,466、非支配株主持分が 49,590 → 40,356 になります。
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📗 基礎 ⑤ ラボの図
🧾 仕訳で確認
当期純利益の非支配株主持分への振替(120 × 138円 × 30%)| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|
| 非支配株主に帰属する当期純利益 | 4,968 | 非支配株主持分 | 4,968 |
為替換算調整勘定の非支配株主持分への振替(16,140 × 30%)| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|
| 為替換算調整勘定 | 4,842 | 非支配株主持分 | 4,842 |
基礎 ⑤
非支配株主持分への振替 ── 為替換算調整勘定も持分で分ける
📍 ラボの場所:基礎タブ ⑤
ハルカ
16,140は全部、P社のものですよね。P社が持っている子会社なので。
先生
左の図の上の帯を見て。16,140は、S社の純資産全体から生まれているんだ。S社には30%の非支配株主がいるから、その分の 4,842 は非支配株主持分へ振り替えるよ。左の仕訳のとおりだね。残りの11,298が親会社持分だよ。
迷いポイント 振り替えた後の非支配株主持分は、どう確かめる?
ハルカ
振り替えた金額が合っているか、自信がありません。
先生
いい検算があるよ。振替後の非支配株主持分49,590は、「外貨の純資産1,140 × 決算時レート145 × 30%」とぴったり一致するんだ。為替換算調整勘定まで持分で分けたから、非支配株主持分がいまのレートの価値になるんだよ。
💡 そうだったのか!
為替換算調整勘定は
持分比率で分け、非支配株主の分は非支配株主持分へ。振替後の非支配株主持分は「外貨の純資産×決算時レート×持分比率」と一致します。
⏱ 30秒だけラボで試す
- シミュレーション(換算と為替換算調整勘定)で「事例A」を読み込む
- 「P社の持分比率(%)」を 70 → 80 にする
👀 非支配株主持分へ振り替える額が 4,842 → 3,228、うち親会社持分が 11,298 → 12,912 になります(のれんも変わるので、連結B/Sの残高は 14,456.4)。
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📗 基礎 ⑥ ラボの図
🧾 仕訳で確認
のれんの償却(外貨の償却額 21 × 期中平均 138円)| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|
| のれん償却 | 2,898 | のれん | 2,898 |
のれんの換算で生じた為替換算調整勘定(全額が親会社持分)| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|
| のれん | 3,003 | 為替換算調整勘定 | 3,003 |
基礎 ⑥
のれんの換算 ── 外貨で把握して、毎期換算し直す
📍 ラボの場所:基礎タブ ⑥
ハルカ
のれんは、買ったときの27,300のまま、円で償却していけばいいんですよね。
先生
在外子会社ののれんは、外貨建ての資産と考えるんだ。左の図のとおり、210千ドルで把握して、残高は決算時レート、償却額は期中平均レートで換算するよ。1年目は、償却 21×138=2,898、残高 189×145=27,405 だね。
迷いポイント のれんの換算差額も、非支配株主に分ける?
ハルカ
S社の換算と同じように、30%を非支配株主持分へ振り替えるんですよね。
先生
のれんは親会社の持分だけに対応しているから、換算差額の3,003は全額が親会社持分なんだ。だから連結B/Sの為替換算調整勘定は、11,298+3,003=14,301になるよ。
ハルカ
のれんって、円で払ったのに、ドルの顔をしてB/Sに座っているんですね。
先生
そういうことだよ。子会社の一部として、ドルで数え直すんだ。
💡 そうだったのか!
のれんは
外貨で把握し、残高は決算時・償却額は期中平均で換算します。換算差額は
全額が親会社持分です。
⏱ 30秒だけラボで試す
- シミュレーション(換算と為替換算調整勘定)で「事例A」を読み込む
- 「のれんの償却年数」を 10 → 5 にする
👀 のれん残高が 27,405 → 24,360、のれんの換算分が 3,003 → 2,856、連結B/Sの為替換算調整勘定が 14,301 → 14,154 になります。
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📗 基礎 ⑦ ラボの図
🧾 仕訳で確認
配当金の相殺(配当決議日レート 148円)| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|
| 受取配当金 | 6,216 | 配当金(利益剰余金) | 8,880 |
| 非支配株主持分 | 2,664 | | |
基礎 ⑦
配当があったとき ── 配当決議日レートで換算。差は調整勘定に残る
📍 ラボの場所:基礎タブ ⑦
ハルカ
2年目にS社が配当をしたら、円に替えたときに為替差損益が出そうです。
先生
左の図は事例Bの2年目だよ。S社の配当60千ドルは配当決議日のレート148円で8,880。P社の受取配当金も同じレートだから、連結では左の仕訳のとおりそのまま相殺できるんだ。相殺そのものからは、為替差損益は出ないよ。
迷いポイント 配当したら、その分の為替換算調整勘定は消える?
ハルカ
配当で利益剰余金が減ったなら、その分の為替換算調整勘定も一緒に減りますよね。
先生
S社の利益剰余金は、稼いだときのレートで積み上げて、配当決議日のレートで減らすよね。そのレートの差は為替換算調整勘定に残り続けるんだ。S社株式を売却・清算するまで消えないよ。ただし、P社が未収配当金を計上してから入金までにレートが動いた分は、P社の個別上の為替差損益だよ。
ハルカ
配当は親から子への仕送りの逆…子から親への仕送りですね。家族の中でお金が動いただけなのに、記録だけはちゃんと残る。
先生
グループの中の資金移動、という見方で合っているよ。レートの差の記録が残るところまで、よく押さえられているね。
💡 そうだったのか!
配当は
配当決議日レートで換算し、受取配当金とそのまま相殺します。稼いだときとのレートの差は、
為替換算調整勘定に残ります。
⏱ 30秒だけラボで試す
- シミュレーション(取得後の変動)で「事例B」を読み込む
- 第2期の「配当決議日レート(円)」を 148 → 160 にする
👀 連結B/Sの為替換算調整勘定が 10,920 → 11,424、当期発生額(親会社持分)が ▲3,381 → ▲2,877 に変わります。
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📗 基礎 ⑧ ラボの図
基礎 ⑧
どこに表示される? ── 純資産の部と、包括利益計算書
📍 ラボの場所:基礎タブ ⑧
ハルカ
最後に、16,140と14,301はB/Sのどこに出るんですか。
先生
左の図の上を見て。連結B/Sの「その他の包括利益累計額」に出るのは、親会社持分とのれんの換算分の14,301だけだよ。非支配株主の分の4,842は「非支配株主持分」の49,590の中に入っているんだ。
迷いポイント 包括利益計算書の為替換算調整勘定も、親会社の分だけ?
ハルカ
包括利益計算書も、B/Sと同じ14,301ですよね。
先生
連結包括利益計算書には、非支配株主の分も含めた増減額を出すんだ。左の図の下のとおり、S社の換算分16,140とのれんの換算分3,003を足した 19,143 だよ。その内訳として、親会社株主14,301・非支配株主4,842が示されるんだ。
ハルカ
B/Sは14,301、包括利益計算書は19,143。見ている範囲が違うんですね。
💡 そうだったのか!
連結B/Sの残高は
親会社持分+のれんの換算分(14,301)。包括利益計算書の増減は
非支配株主の分も含めた額(19,143)です。
今日の内容を、ラボで確かめてみませんか?
この記事の図は、すべて在外子会社換算ラボの画面そのものです。基礎タブを開けば、同じ図を見ながら読み返せます。
在外子会社換算ラボを開く ▶今日のまとめ ── 迷いポイント早見表
おわりに
今日のふりかえり
先生
今日のまとめだよ。資産・負債はいまのレート、純資産はむかしのレートで換算するから、差額の為替換算調整勘定が生まれる。売るまでは損益にせず純資産に溜めて、非支配株主の分は振り替え、のれんの分は全額が親会社持分なんだ。
ハルカ
引き出しの旅行のドル、今日の考え方だと、両替するまでは「為替換算調整勘定」ということですね。
先生
個人の家計に会計基準は要らないけれど、考え方の練習にはちょうどいいね。ただ、会社が持っている外貨の現金そのものは、換算差額が為替差損益になるんだ。純資産に溜めるのは、在外子会社の決算書を丸ごと換算したときの話だよ。
ハルカ
じゃあ、あのドルでアメリカのパン屋さんを巡るまでは、損も得もなし。いつか実現させます。
先生
いい目標だね。次の応用編では、評価差額の換算や、株式を買い増したり売ったりしたときに、為替換算調整勘定がどこへ行くかを見ていこうか。
参考資料
外貨建取引等会計処理基準/移管指針第2号「外貨建取引等の会計処理に関する実務指針」/企業会計基準第22号「連結財務諸表に関する会計基準」/企業会計基準適用指針第8号「貸借対照表の純資産の部の表示に関する会計基準等の適用指針」/企業会計基準第25号「包括利益の表示に関する会計基準」(いずれも企業会計基準委員会)。ラボの事例の数値は、各基準の設例と同じパターンを独自の数値で組み立てたものです。
このシリーズの記事:応用編/設例・換算編(事例A〜C)/設例・持分変動編(事例D〜F)/設例・税効果と持分法編(事例G・H)
連結決算ラボの関連:資本連結ラボ/持分法ラボ/連結決算ラボ(総合ナビ)
この記事を書いた人
TaxJudge編集部|公認会計士・税理士(実務25年)による企画・監修。会計基準・税法・裁決・有価証券報告書などの一次情報をもとに、検索できるデータベースと計算・判定・文書作成ツールを制作しています。