無料の学習ツール「持分法ラボ」の読み方ガイドです。ラボの設例・基礎タブから、取得と翌年度の事例(事例A〜C)を1つずつ、先生と生徒の会話形式で見ていきます。左の図はラボの図そのものです。重要な節の最後には、ラボで30秒だけ手を動かす小さな実習を置いています。
📘 事例A ラボの画面
はじめに
今日の題材 ── 事例A〜C
📍 ラボの場所:設例・基礎タブ 事例A〜C
ハルカ
先生、設例・基礎タブには事例が3つありますね。どこが違うんですか。
先生
3つとも、同じA社の株式を合わせて30%持って関連会社にする事例だよ。違うのは買い方なんだ。事例Aは30%を一度に買う一括取得、事例Bと事例Cは10%と20%の2回に分けて買う段階取得だよ。
ハルカ
事例Bと事例Cは、買い方まで同じなんですか。
先生
買い方も値段も同じで、計算のやり方だけが違うんだ。事例Bが原則法、事例Cが簡便法だよ。まず事例Aで取得日と2年目の流れを押さえてから、2つを見比べていこうか。
設例・基礎タブの事例Aを開きながら読むと分かりやすいですラボで開く ▶
📘 事例A ラボの画面
事例A
取得日 ── 連結修正仕訳はなく、持分計算表が出発点
📍 ラボの場所:設例・基礎タブ 事例A ステップ2・3
ハルカ
事例Aは30%を750で一度に買うだけですよね。取得日には、どんな仕訳を切るんですか。
先生
左の計算式を見て。土地の含み益500のうちP社の分150を足して、A社の資本のP社持分は660。取得価額750との差の90がのれんだよ。ただ、持分法ではA社のB/Sを合算しないから、P社の個別財務諸表では投資有価証券750/現金預金750の取得の仕訳を切るけれど、持分法で入れる連結修正仕訳は「仕訳なし」なんだ。
迷いポイント 連結修正仕訳がないなら、計算した660や90は記録に残らない?
ハルカ
連結修正仕訳がないなら、660や90はメモ用紙に書いておしまいですか。
先生
そこで使うのが持分計算表だよ。左の下の表のように、資本金300・利益剰余金210・評価差額150で持分660、のれん90、合わせて750を1行に並べる。個別の投資額も750なので、この時点の投資の修正額は0なんだ。この表を、1年ごとに1行ずつ伸ばしていくよ。
💡 そうだったのか!
取得日には、個別の取得仕訳はあっても持分法の連結修正仕訳はありません。そのかわり、持分計算表に持分・のれん・個別の投資額を並べて、翌年からの出発点にします。⏱ 30秒だけラボで試す
- シミュレーションタブ →「🎮 事例から始める」で「事例A 一括取得(0%→30%)」を選ぶ
- 「取得価額(段階取得は2回目の取得価額)」を 750 → 720 に変える
👀 のれんが 90 → 60、X2年3月期の持分法による投資損益が 222 → 228 に変わります。のれん償却が年18から年12に減るためです。
ラボを開く ▶📘 事例A ラボの画面
事例A
2年目 ── 開始仕訳で、前の年の修正を入れ直す
📍 ラボの場所:設例・基礎タブ 事例A ステップ5・6
ハルカ
1年目の処理は基礎編で見ました。2年目のX3年3月期は、1年目の続きから書き足せばいいんですよね。
先生
左の持分計算表の最後の行を見て。X2年3月末の合計は912、個別の投資額は750で、差の162が投資の修正額だよ。ただ、連結財務諸表は毎期、個別財務諸表から作り直すから、個別の帳簿には162はどこにも残っていないんだ。
迷いポイント 2年目は、前の年の続きから仕訳を書き足す?
ハルカ
じゃあ、2年目はどうやって162を取り戻すんですか。そのまま足せばいいんでしょうか。
先生
期首に開始仕訳を入れるんだ。左の仕訳のとおり、借方は投資有価証券162、貸方は利益剰余金期首残高162。前の年の持分法による投資利益は、もう当期の損益ではなく、利益剰余金の期首残高に入っているからだよ。そのあと当期の利益・配当・償却を同じ手順で足して、X3年3月末の投資有価証券は1,074になるんだ。
ハルカ
毎年、去年の分をもう一度入れ直すんですか。毎朝、昨日たたんだ洗濯物を、もう一回たたみ直している気分です。
先生
たたみ直すのは前期末までの修正だけで、相手はいつも利益剰余金期首残高なんだ。慣れると一瞬だよ。
💡 そうだったのか!
2年目は開始仕訳から始めます。前期までの持分法の修正は、損益ではなく利益剰余金期首残高で引き継ぎます。事例Aのステップ6では、開始仕訳と、投資の帳簿価額の動き(750 → 912 → 1,074)が並んでいますラボで開く ▶
📘 事例B ラボの画面
事例Bの前提(段階取得)
| X0年3月末:A社株式10%を取得(その他有価証券・原価法) | 200 |
| X1年3月末:20%を追加取得(合計30%で関連会社に) | 560 |
| 取得原価の合計 | 760 |
| 1回目の日のA社:利益剰余金/土地の時価 | 500/700 |
| 関連会社になった日のA社:利益剰余金/土地の時価 | 700/900 |
事例B
段階取得の前提 ── 10%のときは、まだ関連会社ではない
📍 ラボの場所:設例・基礎タブ 事例B ステップ1
ハルカ
事例Bは、30%をいっぺんに買うのではないんですね。
先生
左の表のとおり、1回目のX0年3月末は10%を200で買っただけ。この時点では関連会社ではなく、その他有価証券(非上場なので原価法)なんだ。2回目のX1年3月末に20%を560で買い増して、合計30%になったところで初めて関連会社になり、持分法を始めるよ。
迷いポイント 1回目の取得日から、持分法をさかのぼって始める?
ハルカ
関連会社になったなら、1回目の10%を買った日までさかのぼって、持分法をやり直すんですか。
先生
さかのぼらないよ。持分法を始めるのは、関連会社になったX1年3月末からなんだ。ただ、1回目の10%をどう計算に入れるかで、原則法と簡便法の2つのやり方がある。原則は原則法で、簡便法は条件を満たすときに使えるやり方だよ。1回目の日のA社は利益剰余金500・土地の時価700で、X1年3月末の700・900とは違うよね。この差がどう効くかを、事例Bと事例Cで見比べていこうか。
💡 そうだったのか!
段階取得では、関連会社になった日から持分法を始めます。取得日ごとの数字を使うのが原則法、関連会社になった日の数字でまとめるのが簡便法(原則法と結果が著しく違わない場合などに限る)です。設例・基礎タブの事例Bを開くと、2回の取得が時系列で並んでいますラボで開く ▶
📘 事例B ラボの画面
事例B
原則法 ── 取得日ごとの時価で測り、利益剰余金へ振り替える
📍 ラボの場所:設例・基礎タブ 事例B ステップ2・3
ハルカ
原則法では、土地の評価差額はいくらになるんですか。
先生
左の計算式のとおり、取得日ごとに、その日の時価で測るんだ。X0年3月末の10%分は(700-400)×10%=30、X1年3月末の20%分は(900-400)×20%=100。合わせて130だよ。のれんも取得日ごとに計算して、1回目が20、2回目が120、合計140になるんだ。
迷いポイント 1回目の取得後にA社が稼いだ利益の持分は、持分法による投資利益にする?
ハルカ
1回目のあと、A社の利益剰余金は500から700に増えています。10%分の20は、持分法を始めた年の利益ですよね。
先生
それが、そうではないのだよ。この20は持分法を始める前に生じたものなので、損益を通さず、利益剰余金に直接振り替えるんだ。左の仕訳のとおり、借方は投資有価証券20、貸方は「持分法適用会社の増加に伴う利益剰余金増加高」だよ。同じ額だけ、投資有価証券も増えるんだ。
ハルカ
「持分法適用会社の増加に伴う利益剰余金増加高」…。科目名を、一息で読み切れませんでした。
先生
長いけれど、名前がそのまま中身なんだ。損益を通らずに利益剰余金が増える、ということだよ。
💡 そうだったのか!
原則法は取得日ごとの時価で評価差額とのれんを計算し、持分法を始める前の利益の持分は利益剰余金に直接振り替えます。⏱ 30秒だけラボで試す
- シミュレーションタブ →「🎮 事例から始める」で「事例B 段階取得・原則法(10%→30%)」を選ぶ
- 「先に持っていた株式」の「その日のA社 利益剰余金」を 500 → 600 に変える
👀 のれんが 140 → 130、X3年3月末の投資の修正額が 324 → 318 に変わります。1回目ののれんと利益剰余金への振替が、どちらも 20 → 10 に減るためです。
ラボを開く ▶📘 事例C ラボの画面
事例C
簡便法 ── 関連会社になった日に、まとめて測る
📍 ラボの場所:設例・基礎タブ 事例C ステップ2・3
ハルカ
同じ買い方で、簡便法だとどう変わるんですか。
先生
左の計算式を見て。持分法を始めるX1年3月末の時価900で、30%をまとめて評価するから、評価差額は(900-400)×30%=150。のれんも、取得原価の合計760とその日のA社の資本の持分をまとめて比べて、760-(1,700×30%+150)=100になるんだ。
迷いポイント 簡便法でも、1回目のあとの利益20を利益剰余金に振り替える?
ハルカ
原則法と同じように、20の振替はありますよね。
先生
簡便法では振替はないんだ。X1年3月末の利益剰余金700の30%をまとめて投資と相殺するから、1回目のあとに増えた分も、その相殺の中に入ってしまうんだよ。だから、左の連結修正仕訳(適用開始日)は「仕訳なし」なんだ。
ハルカ
のれんが、原則法の140から100へ、40も小さくなりました。同じ株を同じ値段で買ったのに、なんだか損した気分です。
先生
損も得もしていないよ。40の差は、利益剰余金への振替20と、評価差額の差20(150-130)が、のれんの中に入るかどうかの違いなんだ。
ハルカ
40も小さくなるなら、簡便法を選べば、毎年の償却も軽くなって得ですね。
先生
そこが注意点なんだ。簡便法を使えるのは、原則法で計算した結果と著しく違わない場合などに限られる。この事例のように、のれんが140と100で40も違うなら、まず原則法で計算して差を確かめることになるよ。ラボでは、違いを見比べるために、同じ数字で両方を計算しているんだ。
💡 そうだったのか!
簡便法は、原則法と結果が著しく違わない場合などに使える方法です。関連会社になった日の時価と資本でまとめて計算し、利益剰余金への振替はありません。⏱ 30秒だけラボで試す
- シミュレーションタブ →「🎮 事例から始める」で「事例B 段階取得・原則法(10%→30%)」を選ぶ
- 「取得のパターン」で「③段階取得:簡便法(適用開始日の時価)」を選ぶ
👀 のれんが 140 → 100、X2年3月期の持分法による投資損益が 212 → 220、X3年3月末の投資有価証券が 1,084 → 1,080 に変わり、事例Cと同じ数字になります。
ラボを開く ▶今日のまとめ ── 設例ごとの結論
| 設例 | 迷いポイント | 答え |
|---|---|---|
| 事例A | 取得日に持分法の仕訳を切る? | 個別の取得仕訳はあるが、持分法の連結修正仕訳はなし。持分計算表に持分660・のれん90・投資額750を並べる |
| 事例A | 2年目は前の年の続きから書き足す? | 期首に開始仕訳。前期までの修正162は利益剰余金期首残高で引き継ぐ |
| 事例B | 1回目の取得日までさかのぼる? | 関連会社になった日から持分法。1回目の10%はそれまでその他有価証券 |
| 事例B | 1回目のあとの利益の持分は損益? | 原則法では利益剰余金へ直接振替(20)。時価は取得日ごと(評価差額130) |
| 事例C | 簡便法はいつでも使える? | 原則法と結果が著しく違わない場合などに限る。使うときは関連会社になった日にまとめて計算し、振替なし(のれん100) |
おわりに
今日のふりかえり
先生
今日のまとめだよ。取得日は持分法の連結修正仕訳がなく、持分計算表が出発点。2年目は開始仕訳で前期までの修正を利益剰余金期首残高として入れ直すんだ。段階取得は関連会社になった日から持分法を始めて、原則法は取得日ごとの時価と利益剰余金への振替、簡便法は、原則法と結果が著しく違わないときなどに、その日にまとめて計算するよ。
ハルカ
段階取得、私もしていました。いつものパン屋さんで、先週クロワッサンを1個買って、今週まとめて3個買い足したんです。
先生
それは取得というより、ただの買い物だね。個人の家計に会計基準は要らないから、安心していいよ。
ハルカ
でも、先週の1個は今より20円安かったので、私の中では取得日ごとの時価で記録しています。
先生
考え方の練習としては満点だよ。次の未実現利益・債務超過編では、P社とA社の間の売り買いと、A社の大きな損失を見ていこうか。
参考資料
企業会計基準第16号「持分法に関する会計基準」/移管指針第7号「持分法会計に関する実務指針」(同・設例)(いずれも企業会計基準委員会)。ラボの事例の数値は、指針の設例と同じパターンを独自の数値で組み立てたものです。設例・基礎タブの事例は税効果なしで計算しています。
このシリーズの記事:基礎編 ── 関連会社・のれん・投資損益/応用編 ── 未実現利益・持分変動・債務超過/設例・未実現利益・債務超過編(事例D・I)/設例・持分変動編(事例E〜H)