令和4年(2022年)に国税不服審判所が公表した裁決を21件収録し、税目・結論・争点を一覧で整理しました。裁判所に持ち込む前段階である「審査請求」で、この1年どんな処分が争われ、どこで納税者の主張が通ったのかを俯瞰できる年度版インデックスです。
裁決は匿名化されており、課税関係に加え徴収関係(公売・差押え等)も含みます。裁判所の判決をまとめた令和4年 課税関係 税務裁判例まとめ、滞納・徴収局面は令和4年 徴収関係判決まとめとは別シリーズです。
1. 数字で見る令和4年の裁決
裁判所より「審判所」のほうが納税者は救済されやすい
同じ令和4年でも、裁判所の判決と審判所の裁決では結果の傾向が大きく異なります。
令和4年は、裁判所の約7%に対し審判所は約86%。公表裁決は原処分が見直された事例が多く採録される傾向があり、審査請求が訴訟より納税者の主張が通る余地が大きいという実務上のセオリーがこの年も表れています。※いずれも公表・収録分に基づく数値です。
2. 税目別の内訳
| 税目 | 件数 | 全部取消 | 一部 | 棄却等 |
|---|---|---|---|---|
| 共通・通則・徴収 | 7 | 0 | 5 | 2 |
| 所得税 | 7 | 0 | 6 | 1 |
| 相続税・贈与税 | 1 | 1 | 0 | 0 |
| 法人税 | 4 | 1 | 3 | 0 |
| 消費税 | 2 | 0 | 2 | 0 |
3. 処分が覆った18件
令和4年の裁決のうち、全部または一部で原処分が取り消された事例です。「どんな主張が審判所で通ったのか」は実務の指針になります。
太陽光発電への取組に係る損失は、事業所得(損益通算可)か雑所得か
裁決 令和4年12月14日
会社役員である請求人が、太陽光発電への取組に係る損失を事業所得の計算上生じたもの(他の所得と損益通算)として申告したのに対し、原処分庁が雑所得の計算上生じたものだとして更正処分をした事案。当該取組は所得税法27条1項の「事業」に該当しないとされ、審判所認定額により一部取消しとなった。
米国で一括取得した賃貸用土地建物の建物取得価額は、固定資産税評価額按分か鑑定評価額按分か
裁決 令和4年11月8日
米国e州で一括取得された賃貸用土地建物について、原処分庁が各々の固定資産税評価額の割合で区分して建物取得価額を算定し減価償却費が過大として更正したのに対し、請求人が不動産鑑定評価額の割合で区分すべき等と主張した事案。固定資産税評価額の割合で区分するのが合理的とされ、認定額により一部取消しとなった。
飲食店の売上げを脱漏していた法人の青色承認取消し・重加算税は適法か
裁決 令和4年12月21日
飲食店等を経営する法人が売上高の一部・専売料収入の一部を帳簿に記録せず脱漏して過少申告したとして、青色承認取消処分・法人税等及び消費税等の更正処分等を受けた事案。青色承認取消処分は適法かつ相当、カード売上げ等に隠蔽の事実が認められ、営業代行報酬は帳簿保存がないとされ、審判所認定額により一部取消しとなった。
仕入れて輸出した取引で、請求人は輸出免税の適用を受けられるか(架空仕入れの有無も)
裁決 令和4年10月25日
日用雑貨等の輸出業を営む法人が商品仕入れに係る消費税額を仕入税額控除して申告した事案で、原処分庁が商品仕入れの一部は架空計上・帳簿等の保存なし等として消費税更正・重加算税、法人税の青色承認取消等を行った。輸出取引は請求人による本邦からの輸出(輸出免税の対象)と認められた一方、架空仕入れ等の点で一部取消しにとどまった。
帳簿の不備による青色取消し・仕入税額控除否認の事案で、課税売上げの過大計上が認められるか
裁決 令和4年10月25日
日用雑貨等の販売・輸出を行う法人(129-05と同一請求人の関連事案)について、原処分庁が帳簿書類の不備を理由に法人税の青色承認取消・更正、消費税は仕入税額控除の帳簿等を保存しない場合に当たるとして更正をした事案。青色取消事由あり・帳簿等保存なしとされつつ、課税売上げの過大計上が認められ一部取消しとなった。
弟名義の農産物取引の収益は誰に帰属するか(仕入税額控除の帳簿等保存も)
裁決 令和4年11月9日
農業を営む請求人について、原処分庁が弟名義の農産物取引に係る収益は請求人に帰属するとして青色承認取消・所得税等及び消費税等の更正・源泉所得税の納税告知等をした事案。収益は請求人に帰属するとされた一方、仕入税額控除の保存要件を一部充足等として、主文は一部却下・一部取消し・一部棄却となった。
帳簿を作成せず期限後申告した法人に、重加算税の「隠蔽又は仮装」が認められるか
裁決 令和4年7月1日
太陽光発電関連事業を営む法人が法人税等・消費税等の期限後申告をしたところ、原処分庁が隠蔽又は仮装及び偽りその他不正の行為があるとして重加算税を賦課した事案。調査手続の違法、隠蔽仮装・偽りその他不正の行為が争われ、いずれも隠蔽仮装等は認められず重加算税相当部分が取り消された。
売買契約書の土地建物価額が不合理な場合、建物取得価額は固定資産税評価額比で按分すべきか
裁決 令和4年9月9日
賃貸用の土地建物を一括購入した請求人が、売買契約書記載の建物価額で取得価額を算定して減価償却費を計上したのに対し、原処分庁が、契約書の土地建物価額(一律3対7等)は著しく不合理として固定資産税評価額比で建物取得価額を算定すべきとして更正した事案。契約書の内訳価額は著しく不合理とされ、固定資産税評価額比あん分が合理的として一部取消しとなった。
使途不明とされた電子マネーの購入代金は、売上原価として損金算入できるか
裁決 令和4年8月4日
電子マネーの購入金額を売上原価として損金算入した法人に対し、原処分庁が使途不明として損金不算入とした事案。費途が確認できず業務との関連性が明らかでないものは損金不算入とされた一方、電子マネーを関連会社へ譲渡したと認められる分は譲渡棚卸資産の取得価額=売上原価として損金算入できるとして、一部取消しとなった。
役員給与に「不相当に高額な部分」はあるか(形式基準限度額の決定の有無)
裁決 令和4年7月1日
取締役に対する役員給与の額に不相当に高額な部分があるとして損金不算入とされた法人が、不相当に高額な部分はないとして争った事案。原処分庁主張の形式基準限度額を決定した事実を認める証拠はなく、実質基準による不相当に高額な部分も認められないとして、過大役員給与の損金不算入が取り消された(一部取消し)。
生命保険の一時金等を申告しなかった行為に、重加算税の「隠蔽又は仮装」は認められるか
裁決 令和4年4月15日
年金受給者である請求人が、生命保険契約等に基づく一時金等を一時所得等に含めるなどして修正申告したところ、原処分庁が過少申告について隠蔽仮装の事実があるとして重加算税を賦課した事案。隠蔽仮装にも、当初から申告しない意図を外部からうかがい得る特段の行動を伴う過少申告にも当たらず、重加算税の賦課要件を満たさないとして一部取消しとなった。
被相続人名義の貯金を申告しなかったことに、重加算税の「隠蔽又は仮装」は認められるか
裁決 令和4年5月10日
相続税の修正申告をした請求人に対し、原処分庁が被相続人名義の貯金を申告していなかったことに隠蔽又は仮装の行為があるとして重加算税を賦課した事案。当該貯金の不申告に隠蔽又は仮装に該当する事実はないとされ、重加算税の賦課要件を満たさないとして一部取消しとなった。
相続財産(株式)の一部を申告しなかったことに、重加算税の「隠蔽」は認められるか
裁決 令和4年6月24日
相続税の修正申告をした請求人に対し、原処分庁が相続財産(株式)の一部を申告していなかったことに隠蔽の行為があるとして重加算税を賦課した事案。隠蔽の行為そのものや、当初から過少申告を意図し外部からうかがい得る特段の行動は認められないとされ、重加算税の賦課要件を満たさないとして一部取消しとなった(127-04と対をなす)。
他の相続人(母)の隠蔽行為を、請求人の行為と同視して重加算税を課せるか
裁決 令和4年6月24日
相続税の修正申告をした請求人に対し、原処分庁が、他の相続人(母)の相続財産の隠蔽行為を請求人の行為と同視できるとして重加算税を賦課した事案。母にも隠蔽の行為や当初から過少申告を意図した特段の行動が認められず、同視の前提を欠くとして重加算税の賦課要件を満たさず、一部取消しとなった(127-03と対をなす)。
デジタルWEBコンテンツの購入代金は、販売あっせん事業の必要経費に算入できるか
裁決 令和4年3月4日
デジタルWEBコンテンツの販売をあっせんする事業で報酬を得ていた請求人が、コンテンツの購入代金は必要経費に該当するとして更正の請求をしたところ、原処分庁が更正をすべき理由がない旨の通知処分をした事案。会員ID取得のための支出(初期登録費用)は客観的に事業と直接関係し事業遂行上必要として必要経費に算入できるとされ、一部取消しとなった。
ふるさと納税の返礼品に係る一時所得の金額は、いくらで評価するか
裁決 令和4年2月7日
ふるさと納税を行った請求人が受けた返礼品に係る経済的利益は一時所得に該当するとされた事案で、その総収入金額に算入すべき価額が争われた。返礼品の経済的利益の価額は各地方公共団体の評価額(返礼品調達価格)によるのが相当とされ、平成30年分について審判所認定額により一部取消しとなった。
別法人名義で行われた土地売買取引等の収益は、請求人に帰属するか
裁決 令和4年1月12日
請求人とは別法人名義で行われた土地売買取引等の収益が請求人に帰属するとして、青色承認取消・法人税等及び消費税等の更正・源泉所得税の納税告知等がされた事案。本件取引の業務主体は請求人とは認められず、収益は請求人に帰属しないとして、各処分が全部取り消された。
家族名義の口座から出金された現金や家族名義の預貯金は、被相続人の相続財産か
裁決 令和4年2月15日
相続税の申告で課税価格に算入されていた被相続人・家族名義の各預貯金口座から出金された現金、及び算入されていなかった家族名義の預貯金が相続財産であるとして更正された事案。これらは被相続人に帰属する相続財産とは認められないとして、各更正処分等が全部取り消された。
4. 令和4年の争点トレンド
重加算税・加算税の賦課要件に加え、令和4年は財産評価・推計課税・国際課税や、徴収関係(公売・差押え)の論点が目立ちました。
5. 令和4年 公表裁決 全21件 一覧
全21件の一覧(税目順)を開く/閉じる
関連まとめ
まとめ
令和4年の公表裁決21件のうち、原処分が一部以上で取り消されたのは18件(約86%)。裁判所より高い救済率は、審査請求という手続の特性と、公表裁決の採録傾向を示しています。重加算税の賦課要件、財産評価、徴収手続(公売・差押え)が令和4年の主な論点でした。本ページは新たな公表分を反映して更新していきます。

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