令和4年(2022年)に出された徴収関係の裁判例31件を整理した年度版インデックスです。更正処分など「課税の当否」を争う課税関係判決とは別に、滞納処分・差押え・取立訴訟・第二次納税義務・詐害行為取消し・納税義務の承継など「徴収」をめぐる争いだけを集めています。各事案名から検索ツールで要旨を開けます。
収録31件のうち国側勝訴方向が30件、納税者側が主張を通したのは1件(高松高裁・国税徴収法38条「事業の譲渡の時」)にとどまりました。争点は「第二次納税義務(徴収法38条・39条)」「徴収権の消滅時効」「差押債権の取立訴訟」「詐害行為取消し・債権者代位」に集約されます。
1. 数字で見る令和4年の徴収関係判決
課税関係(令和4年は納税者の一部以上勝率が約7%)と同様、徴収関係も納税者勝訴は限られます。多くが滞納処分の適法性や第二次納税義務を争うもので、勝ち負け以上に「どの論点でどう判断されたか」を確認する実務的価値が中心になります。
2. 徴収関係でよく争われた論点(令和4年)
第二次納税義務(国税徴収法38条・39条)
令和4年の徴収関係で最も多く争われたのが第二次納税義務です。事業の譲渡に係る特殊関係者の責任(38条/順号2022-5・22)、無償譲渡や債務免除に基因する責任(39条/順号2022-9・13・14・27)など、納付告知処分の適否が問われました。唯一の納税者勝訴(順号2022-22)も38条の「事業の譲渡の時」の判定をめぐるものです。
徴収権の消滅時効と督促・承認
徴収権の消滅時効と、その中断(督促・納付誓約書による「承認」・催告)が繰り返し争点になりました(順号2022-8・10・11・12・17)。長期滞納事案で、督促や納付誓約が時効中断に当たるかが分かれ目です。
差押債権の取立訴訟(国税徴収法62条・67条)
差し押さえた債権の取立訴訟も複数登場しました。執行債権(租税債権)の存否(順号2022-20)、賃貸保証金(敷金)返還請求権と賃貸人の地位の承継(62条/順号2022-28)、貸付金債権の成立と消滅時効(順号2022-29)など、対象債権ごとに論点が分かれました。
詐害行為取消し・債権者代位による徴収保全
滞納者の責任財産を確保するため、詐害行為取消し(旧民法424条/順号2022-3・25)や債権者代位(順号2022-16・30)が用いられた事案です。租税債権を被保全債権とする保全の可否が争われました。
訴えの利益・被告適格・審査請求前置(訴訟要件)と公売・配当
滞納処分の取消しをめぐり、訴えの利益・原告/被告適格・審査請求前置といった訴訟要件が数多く争われました(順号2022-12・15・17・21・23)。公売公告・売却決定・配当処分の適否(順号2022-11・15・17・23)も併せて問題となっています。
3. 代表的な事例
令和4年の徴収関係判決から、論点ごとの代表例をピックアップしました(先頭は唯一の納税者勝訴)。
新設分割・資産譲渡と徴収法38条「事業の譲渡の時」の特殊関係者該当性
高松高等裁判所・令和4年8月30日(確定)
滞納法人から新設分割と資産譲渡で事業を引き継いだ控訴人に対する徴収法38条の第二次納税義務告知処分が争われた事案。積極財産が移転した本件資産譲渡②の時点では控訴人は既に親会社の完全子会社で滞納法人の被支配会社ではなく特殊関係者に当たらないとして、原判決を取り消し処分を取り消した事例。
第二次納税義務(徴収法39条)の前提となる無償譲渡等(寄附)の存否
東京地方裁判所・令和4年4月14日(控訴)
NPO法人代表者Aから土地の寄附を受けた原告が、徴収法39条の第二次納税義務に基づく差押処分の取消しを求めた事案。本件各土地は売買により原告でなくAが取得し、寄附で原告に無償譲渡されたと認められ、無償譲渡等は存在し納付告知処分は無効でないとして、差押処分を適法とし請求を棄却した事例。
国税通則法73条1項4号の督促による徴収権の時効中断
東京高等裁判所・令和4年4月14日(上告)
滞納国税の徴収権が時効消滅したとして差押処分の取消しを求めた控訴審。通則法73条1項4号により督促による徴収権の時効中断は明確に法定されており、民法の催告(153条)の中断効規定を優先適用すべきとはいえないとして、請求を棄却した原判決を維持し控訴を棄却した事例。
滞納会社から代表取締役への弁済の詐害行為性と被保全債権
名古屋高等裁判所・令和4年2月1日(上告)
法人税等の租税債権を有する国が、滞納会社が代表取締役(控訴人)へ行った借入金の弁済は詐害行為に当たるとして取消し等を求めた事案の控訴審。本件各弁済は差し迫った必要があったとはいえず通謀による詐害行為に当たり、被保全債権額は弁済額を超えるとして、請求を認容した原判決を維持し控訴を棄却した事例。
敷金(保証金)返還請求権の差押え後の賃貸人地位の承継と取立て
東京地方裁判所・令和4年11月8日(確定)
国が滞納会社の借家保証金(敷金)返還請求権を差し押さえた後、建物所有権の移転で賃貸人の地位を承継した被告が滞納会社へ弁済した事案。差押えにより履行が禁止された状態の権利義務関係を承継した被告は弁済による支払免れを主張できないとして、国の取立請求を認容した事例。
4. 令和4年 徴収関係判決 全31件
全31件の一覧(順号順)を開く/閉じる
5. 関連まとめ
まとめ
令和4年の徴収関係判決31件は、納税者側の勝訴1件という結果でした。徴収局面では国側勝訴方向が中心ですが、第二次納税義務(徴収法38条・39条)、徴収権の消滅時効、差押債権の取立訴訟、詐害行為取消し・債権者代位といった論点が、滞納者側の防御の分かれ目になります。

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