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内部取引消去ラボ【応用編】|先生と一緒に図で学ぶ有税の引当金・照合差異の直し方・決算日のズレ

無料の学習ツール「内部取引消去ラボ」の読み方ガイドです。ラボの応用タブから、実務で迷いやすい論点を選んで、先生と生徒の会話形式で見ていきます。基礎タブの内容は基礎編で扱っています。左の図はラボの図そのものです。重要な節の最後には、ラボで30秒だけ手を動かす小さな実習を置いています。

📙 応用 ラボの早見表
差異の原因どちらを直す?連結精算表での修正(借方 / 貸方)利益への影響
未達商品
売手は出荷済み・買手は未着
買手棚卸資産 / 買掛金あり
在庫の未実現利益を消去
未達送金
買手は支払済み・売手は未入金
売手現金預金 / 売掛金なし
計上時点の違い
出荷基準と検収基準など
買手(未達と同じ処理)
根本対応はルール統一
棚卸資産 / 買掛金あり
在外子会社の換算レート
取引高が合わない
子会社の換算額売上原価 / 為替差損益
親会社が使った為替相場に合わせる
なし
科目が入れ替わるだけ
決算日の違い
3か月以内・正規の決算を使用
子会社
ズレ期間の重要な取引を取り込む
棚卸資産 / 買掛金、現金預金 / 借入金 などあり
取り込んだ在庫の未実現利益
誤り
二重計上・計上漏れ・相手先違い
誤った側売上高 / 売掛金、売上原価 / 買掛金 などあり
個別の利益そのものが変わる
原因不明の小さな残差
提案 許容額以内なら方針どおり
小さい方の金額で相殺(残差はB/Sに残す)
または 雑損失・雑収入で調整
方法による
はじめに

照合差異の原因別 対応早見表

📍 ラボの場所:応用タブの冒頭
ハルカ
先生、基礎編の続きです。応用タブは何から見ればいいですか。
先生
冒頭の早見表だよ。左の表は、グループ内の数字が合わないときの原因ごとの直し方をまとめたものなんだ。未達商品・未達送金・計上時点の違い・換算レート・決算日の違い・誤り、そして原因不明の小さな残差の7行だよ。
ハルカ
「利益への影響」の列が、「あり」と「なし」に分かれていますね。
先生
そこが今日のポイントのひとつなんだ。未達送金や換算替えは科目や場所を直すだけだけれど、未達商品や決算日の違いは在庫の未実現利益につながり、誤りは個別の利益そのものを変える。今日は、A 債権債務と貸倒引当金、B 照合差異、C 決算日の違いの順に進もうか。
ラボの応用タブを開きながら読むと分かりやすいですラボで開く ▶
📙 応用 A-1・A-2 ラボの図
債権者 P社(親会社)債務者 S社(子会社)売上高0仕入高(売上原価)0相殺売掛金0買掛金0相殺貸付金3,000借入金3,000相殺受取利息60支払利息60相殺貸倒引当金▲1,200← 相手はグループ内。連結では債権がなくなるので、引当金も不要減額する貸倒引当金(期末残高)1,200 の行き先360繰延税金資産の減少840利益剰余金(親会社株主)税効果は債権者の税率 30%。債権者が親会社なので、全額が親会社株主の利益になります。
🧾 仕訳で確認
個別で計上した繰延税金資産と同額の繰延税金負債を計上して相殺(結果として繰延税金資産が減る)
借方金額貸方金額
法人税等調整額150繰延税金資産150

事例D:当期の増加 500 × 30% = 150。相殺後の表示なので、相手科目は繰延税金資産です。

応用 A-1・A-2

業績不振の子会社への貸付金 ── 有税の個別引当と税効果

📍 ラボの場所:応用タブ A-1・A-2
ハルカ
業績の悪い子会社への貸付金に、P社が個別に引当金を積んでいる場合ですね。
先生
左の図は事例Dで、貸付金 3,000 に個別引当 1,200 を積んでいる(前期末は 700)。連結では貸付金と借入金を相殺するから、この引当金も全額を戻すんだ。子会社の損失は、合算した時点で連結にもう入っているからね。
迷いポイント 有税の引当金なら、税効果はいつも「引当金 × 税率」で相殺する?
ハルカ
有税なら、1,200 × 30% = 360 を相殺すると決まっていますよね。
先生
相殺するのは、個別で実際に計上した繰延税金資産と同額なんだ。回収可能性の判断で一部しか計上していなければ、その額だけを相殺するよ。左下の仕訳は全額計上の場合で、当期の増加 500 × 30% = 150 を繰延税金資産から減らしているんだ。全く計上していなければ、税効果はなしになるよ。
ハルカ
翌期に引き継ぐ税効果も、実際に計上した額なんですね。
先生
そうだよ。当期末に個別で計上した額を、そのまま翌期の開始仕訳で引き継ぐんだ。
💡 そうだったのか!
有税の引当金を消したときの税効果は、個別で実際に計上した繰延税金資産と同額を相殺します。
⏱ 30秒だけラボで試す
  1. シミュレーションタブ →「💴 債権債務と貸倒引当金」→ プリセット「事例D」
  2. 「個別で計上した繰延税金資産(期末・空欄=全額計上)」に 180 を入れる

👀 税効果(期末の繰延税金)が 360 → 180、親会社株主に帰属する当期純利益への影響が 350 → 530 に変わります。

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📙 応用 A-3 ラボの要点
  • S社が振り出した手形をP社が銀行で割り引くと、個別ではP社に偶発債務(割引手形)、S社に支払手形が残ります。
  • 連結では、グループが銀行に対して負っている債務なので、借入金に振り替えます。
  • 手形の裏書譲渡など、注10に書かれていない取引は、同じ考え方(グループ外に対する債務かどうか)で判断します。
🧾 仕訳で確認
S社が振り出しP社が銀行で割り引いた手形 350 を、連結B/Sでは借入金に振り替える
借方金額貸方金額
支払手形350短期借入金350
応用 A-3

グループ内の手形を銀行で割り引いたとき

📍 ラボの場所:応用タブ A-3
ハルカ
S社が振り出した手形を、P社が銀行で割り引いたらどうなりますか。
先生
個別では、P社に割引手形(偶発債務)、S社に支払手形が残る。でもグループ全体で見れば、手形を担保に銀行からお金を借りたのと同じなんだ。だから左下の仕訳のとおり、支払手形 350 を短期借入金に振り替えるよ。
迷いポイント グループ内の手形なので、相殺して消してしまえばいい?
ハルカ
P社とS社の間の手形なので、ほかの債権債務と同じように消せばいいですよね。
先生
お金を出したのは銀行だから、グループの外に対する債務が残っているんだ。消してしまうと、銀行からの借入れが連結B/Sから消えてしまうよ。
ハルカ
手形がグループの外に旅に出て、帰ってきたら「借入金」という名前になっていた…。出世して名字が変わった親戚みたいです。
先生
中身は、銀行から借りたお金だけれどね。
💡 そうだったのか!
グループ内の手形でも、銀行で割り引いたら借入金に振り替えます。判断の軸は「グループの外に対する債務かどうか」です。
📙 応用 B-1 ラボの図
照合差異の「直し方」を定めた基準はない。ただし、周りの一次情報が求めていることは読み取れる会計基準連結会計基準 第31項・第35項:相殺消去する注4:決算日の違いから生じる「重要な不一致」は整理する注1:重要性の原則/第17項:会計方針の統一法令会社計算規則 第64条第2項・連結財務諸表規則 第12条第2項決算日の違いによる重要な不一致は「調整をしなければならない」会社法施行規則 第100条第1項第5号イ:子会社から親会社への報告体制内部統制内部統制実施基準 Ⅱ2(2):決算・財務報告プロセス「連結修正…など連結財務諸表作成のための仕訳とその内容を記録する手続」→ 全社的な観点で評価する手続の例に挙げられている監査監基報600 第38項(2):連結のための修正・組替の適切性・網羅性・正確性を監査人が評価するA28項:連結プロセスにはグループ内取引・残高の消去が含まれる誤りの訂正過年度遡及会計基準 第4項(8):データの収集・処理上の誤りも「誤謬」第21項:過去の誤謬は修正再表示(重要性が乏しければ当期の損益で処理)読み取れる枠組み:① 原因を調べる ② 直せるものは直す ③ 記録を残す ④ 残りは重要性で判断するこのラボの「5ステップ」は、この枠組みを手順にした提案です(基準の定めではありません)
応用 B-1

基準の地図 ── 直接の定めはないが、周りの一次情報がある

📍 ラボの場所:応用タブ B-1
ハルカ
照合差異の直し方は、会計基準のどこに書いてあるんですか。
先生
直接の定めはないんだ。連結会計基準の本文には「未達」「照合」という言葉がなく、「不一致」は決算日の違いを扱う注4に出てくるだけだよ。そこで左の図のように、会計基準・法令・内部統制・監査・誤りの訂正の一次情報を並べて、何が求められているかを読み取っているんだ。
迷いポイント 基準に書いていないなら、会社の好きに処理していい?
ハルカ
定めがないなら、各社の自由ということですよね。
先生
自由というより、プロセスが求められているんだ。内部統制の実施基準は連結修正の仕訳とその内容を記録する手続を挙げ、監査の基準は修正の適切性・網羅性・正確性の評価を求めている。読み取れるのは「原因を調べる・直せるものは直す・記録を残す・残りは重要性で判断する」という枠組みだよ。
ハルカ
地図に目的地の名前は書いてないけれど、周りの道路標識で方向は分かる、ということですね。私、標識を見ずにスマホの地図だけで歩いて、よく反対方向に進みます。
先生
今日はラボの標識どおりに進もうか。
💡 そうだったのか!
照合差異の直し方を定めた基準はありませんが、一次情報からは「調べる・直す・記録する・重要性で判断する」というプロセスが読み取れます。
📙 応用 B-2 ラボの図
① 照合する相手先別・通貨別に残高と取引高を突き合わせる② 原因を分ける未達/時点の違い/換算・決算日/誤り③ 個別を直す未計上の側で計上誤りは正しい金額に④ 相殺消去修正後の金額で債権債務・取引高を消す⑤ 残差を判定許容額以内か確認方針どおり処理・記録③までで差異の大半は消える。⑤の残差が毎期ふくらむなら、②の原因調査が足りないサイン
帳簿の差異 545 を原因ごとに分ける(原因が分かった額 533、債権債務の残差 12)売手の売掛金(帳簿)2,935未達送金(売手で入金を計上)▲150売手の過大計上を取消▲45修正後の売掛金2,740買手の買掛金(帳簿)2,390未達商品(買手で仕入を計上)+320買手の計上漏れを追加+18修正後の買掛金2,728① 債権債務(売掛金 − 買掛金)の残差 = 2,740 − 2,728 = 12 → 許容額 20 以内② 取引高(売上高 − 仕入高)の残差 = 9,820 − 9,808 = 12 → 許容額 20 以内
🧾 仕訳で確認
未達商品:買手で仕入を計上(期末在庫に加える)
借方金額貸方金額
棚卸資産320買掛金320
未達送金:売手で入金を計上
借方金額貸方金額
現金預金150売掛金150
売手の誤り:過大に計上した売上を取り消す
借方金額貸方金額
売上高45売掛金45
買手の誤り:計上漏れの仕入を追加する
借方金額貸方金額
売上原価18買掛金18
応用 B-2

提案 照合差異への対応5ステップ

📍 ラボの場所:応用タブ B-2
ハルカ
その枠組みを、実際の決算の手順にするとどうなりますか。
先生
左の図の5ステップだよ。①照合する、②原因を分ける、③個別を直す、④相殺消去、⑤残差を判定。これは基準の定めではなく、このラボの提案なんだ。下の図は事例Eで、帳簿の差異 545 のうち 533 の原因が分かり、残差は 12 だよ。
迷いポイント 原因が分かった 533 は、全部「連結精算表の上だけ」で直す?
ハルカ
未達も誤りも、連結精算表の上で直せば同じですよね。
先生
未達と誤りは性質が違うんだ。未達は翌期に各社が自分で計上するから、連結精算表の上の修正で済む。売手の過大計上 45 や買手の計上漏れ 18 のような誤りは、各社の帳簿そのものを直すよ。左下の仕訳のとおり、誤りの修正は個別の利益も連結の利益も変えるんだ。
💡 そうだったのか!
5ステップは「照合 → 原因 → 個別を直す → 相殺 → 残差の判定」。未達は連結精算表の上で、誤りは各社の帳簿で直します。
⏱ 30秒だけラボで試す
  1. シミュレーションタブ →「🔍 照合差異」→ プリセット「事例E」
  2. 「残差の許容額」を 20 → 5 に変える

👀 ① 債権債務の残差 12 と ② 取引高の残差 12 が、どちらも許容額 5 を超えたという警告に変わり、原因の調査を続けるよう表示されます。

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📙 応用 B-4 ラボの要点
  • 収益認識の適用指針は、国内販売で出荷から支配移転までが通常の期間であれば、出荷時などに収益を認識することを認めています。
  • 売手がこの取扱いを使い、買手が検収時に仕入を計上すると、輸送中の商品が毎期「未達」になります。
  • その期の差異は未達商品と同じように直します。根本的には、グループ内取引の計上時点をグループ経理規程でそろえるのが有効です。
  • 連結会計基準は、同一環境下の同一の性質の取引について、会計方針を原則として統一するよう求めています。
応用 B-4

計上時点の違い ── 出荷基準と検収基準

📍 ラボの場所:応用タブ B-4
ハルカ
毎年、期末になると同じような差が出る会社があるそうですね。
先生
よくあるのが計上時点の違いだよ。売手は出荷した日に売上を計上し、買手は検収した日に仕入を計上していると、輸送中の商品が毎期末に「未達」になるんだ。
迷いポイント 毎期出る差だから、毎期同じように直していれば十分?
ハルカ
毎年直しているなら、それで問題ないですよね。
先生
その期の差は、未達商品と同じように買手で計上して直すよ。でも根本的には、グループ内取引の計上時点をそろえるのが有効なんだ。連結会計基準も、同じ環境で行われた同じ性質の取引について、会計方針を原則として統一するよう求めているよ。
ハルカ
売手は「もう送りました」、買手は「まだ届いていません」…。私と宅配ボックスの毎週末のすれ違いと同じ構図です。
先生
グループ経理規程で、受け取りの時刻をそろえておこうか。
💡 そうだったのか!
毎期出る差は、計上時点のルールの違いが原因のことが多いです。その期は未達と同じように直し、根本はグループ経理規程でそろえます。
📙 応用 B-5 ラボの図
帳簿の差異 0 を原因ごとに分ける(原因が分かった額 0、債権債務の残差 0)売手の売掛金(帳簿)1,300修正後の売掛金1,300買手の買掛金(帳簿)1,300修正後の買掛金1,300① 債権債務(売掛金 − 買掛金)の残差 = 1,300 − 1,300 = 0 → 一致② 取引高(売上高 − 仕入高)の残差 = 7,800 − 7,800 = 0 → 一致
🧾 仕訳で確認
在外子会社の仕入を親会社の換算額に合わせ、差額は為替差損益
借方金額貸方金額
売上原価160為替差損益160
応用 B-5

在外子会社との取引 ── 換算レートの違い

📍 ラボの場所:応用タブ B-5
ハルカ
在外子会社との取引で、残高は合うのに取引高だけ合わないことがあるそうですね。
先生
事例Fがそれだよ。親会社の売上高は 7,800 なのに、子会社の仕入高を期中平均相場で換算すると 7,640 になる。差は 160 なんだ。
迷いポイント 換算の差 160 は、小さい方の 7,640 で相殺して片づける?
ハルカ
換算で出る差は仕方ないので、7,640 で消してしまえばいいですよね。
先生
親会社との取引による収益・費用は、親会社が換算に用いる為替相場で換算するんだ。左下の仕訳のとおり、子会社の仕入高を 7,800 に合わせて、差額 160 を為替差損益にする。売上原価と為替差損益が入れ替わるだけだから、利益の合計は変わらないよ。
ハルカ
債権債務の方は、換算の差が出ないんですか。
先生
決算日が同じなら、双方とも決算時の為替相場で換算されるから、通常は一致するんだ。
💡 そうだったのか!
在外子会社との取引高は、親会社の換算額に合わせ、差額を為替差損益にします。利益の合計は変わりません。
⏱ 30秒だけラボで試す
  1. シミュレーションタブ →「🔍 照合差異」→ プリセット「事例F」
  2. 「仕入高の換算替え(親会社の金額 − 子会社の換算額)」を 160 → 0 に変える

👀 ② 取引高の残差(修正後)が 0 → 160 になり、許容額 10 を超えた警告が出ます。換算替えをしないと、内部売上高 160 が片側だけ残ることが分かります。

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📙 応用 B-6 ラボの要点
  • 許容額は事前に決める:相手先ごとの額と、グループ合計の額の2段階で、グループ経理規程に書きます。差異を見てから決めるのは避けます。
  • 水準の考え方:判断の基準は「利害関係者の判断を誤らせない」こと(注1)です。内部統制基準が例示する「連結税引前利益のおおむね5%」は開示すべき重要な不備の判断の目安で、消去差異の許容額ではありません。許容額はそれよりずっと小さい水準に置きます。
  • 処理方法:実務では、親会社(売手)の金額で消去する、大きい方の金額で消去する、差額をその他の流動資産・負債に計上する、などの方法が紹介されています(解説記事による二次情報)。
  • 本来は、原因を解明して全額を消去します。ここから先は、調べても原因が分からない小さな残差だけについての、このラボの仮定です。
  • このラボの提案:その残差は「小さい方の金額で相殺し、残差はB/Sに残す」。利益を動かさず、残差が見える形で残るからです。損益で調整する方法は、許容額以内に限ります(事例J)。どちらも基準が定める原則ではありません。
  • 毎期同じ方法で処理し、残差の累計を追いかけます。毎期ふくらむなら、原因調査が足りていません。
🧾 仕訳で確認

B/Sに残す方法(事例E)

債権と債務を相殺(小さい方の金額)
借方金額貸方金額
買掛金2,728売掛金2,728

損益で調整する方法(事例J)

債権と債務を相殺(許容額以内の残差は損益で調整)
借方金額貸方金額
買掛金2,728売掛金2,740
雑損失12
応用 B-6

提案 残差の扱い ── 許容額と処理方針を事前に決める

📍 ラボの場所:応用タブ B-6
ハルカ
調べても原因が分からない、小さな差が残ったらどうするんですか。
先生
本来は、原因を解明して全額を消去するんだ。そのうえで、調べても分からない小さな残差だけについて、許容額と処理方針を事前に決めて毎期同じように扱う、というのがこのラボの提案だよ。許容額は、差異を見てから決めないことが大事なんだ。
迷いポイント 残差は「小さい方で相殺」すれば、利益には何の影響もない?
ハルカ
このラボの提案どおり小さい方で相殺すれば、利益はまったく動かないんですよね。
先生
相殺の仕訳そのものは利益を動かさないよ。でも残差が取引高にあると、内部売上高か売上原価の片側だけが連結P/Lに残って、その額は連結の売上総利益に含まれたままになるんだ。だから「利益に影響しない」とは言えない。原因を調べ、分かれば個別の数字を直すよ。左の下の仕訳が、損益で調整する事例Jの方法で、これは許容額以内に限っているんだ。
💡 そうだったのか!
残差の扱いは基準に定めのないラボの提案です。取引高の残差が片側に残ると、その額は連結の売上総利益に含まれたままになります。
⏱ 30秒だけラボで試す
  1. シミュレーションタブ →「🔍 照合差異」→ プリセット「事例E」
  2. 「許容額以内の残差の扱い」を「損益で調整(雑損失・雑収入)」に切り替える

👀 税金等調整前当期純利益への影響(修正仕訳による増減)が ▲143 → ▲155 に変わります。債権債務の残差 12 を雑損失にした分です(事例Jと同じ)。

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📙 応用 C-1 ラボの図
① 仮決算(原則)② 正規の決算を基礎にする(3か月以内)
子会社の決算連結決算日に、正規の決算に準ずる合理的な手続で決算子会社の決算日の正規の決算をそのまま使う
決算日の差の条件なし3か月を超えない
グループ内取引の差異原則として生じないズレ期間の取引で生じる → 重要な不一致を整理
子会社の負担決算を年2回行うことになる追加の決算は不要。ズレ期間の取引の把握が必要
連結P/Lに入る期間親会社と同じ12か月子会社の会計期間の12か月(ズレたまま)
注記決算日が違う子会社の内容と、仮決算を行ったかどうかを注記同左
会計期間のズレ(子会社の決算日が 3 か月早い) ── 仮決算で連結決算日にそろえる当期のズレ期間前期のズレ期間S社の決算日P社(親会社)当期の会計期間(12か月)S社(子会社)仮決算:連結決算日までの12か月連結決算日当期のズレ期間に起きたグループ内の取引(仮決算なのでS社の決算に入っている)内部売上(P→S)600仮決算に含まれる → 整理は不要買掛金の支払(S→P)400仮決算に含まれる → 整理は不要貸付(P→S)1,000仮決算に含まれる → 整理は不要前期のズレ期間の内部売上 450:前期の連結で取り込み済み(利益率 30%)。その未実現利益 135 は当期に実現します。
応用 C-1

2つの方法を比べる

📍 ラボの場所:応用タブ C-1
ハルカ
決算日が違う子会社の2つの方法は、何が違うんですか。
先生
左の表のとおり、①仮決算は、子会社が連結決算日に正規の決算に準ずる手続で決算をするから、グループ内取引の差異は原則として出ない。その代わり、決算を年2回することになるんだ。②正規の決算を基礎にする方法は追加の決算が要らないけれど、決算日の差が3か月以内であることが条件で、ズレ期間の重要な不一致の整理がいるよ。
迷いポイント 仮決算なら、決算日の違いによる調整はいつも不要?
ハルカ
仮決算を選べば、もう何も考えなくていいんですよね。
先生
連結決算日に仮決算をするなら、差異は原則として出ないよ。ただ、相当の理由があって、連結決算日から3か月を超えない範囲の別の日に仮決算をするなら、その間の重要な不一致の調整、または外部の会社との取引などの重要な変動の調整が必要なんだ。どちらの方法でも、決算日が違う子会社の内容と、仮決算かどうかを注記するよ。
ハルカ
年に2回決算をする子会社の経理の人、夏休みはいつ取るんでしょう。私なら、間違えて3回目の決算を始めそうです。
先生
3回目は要らないから、安心して休んでもらおうか。
💡 そうだったのか!
仮決算は手間が大きい代わりに差異が出ない、正規の決算を使う方法は手間が少ない代わりにズレ期間の整理がいる、という関係です。
📙 応用 C-3 ラボの図
会計期間のズレ(子会社の決算日が 3 か月早い)当期のズレ期間前期のズレ期間S社の決算日P社(親会社)当期の会計期間(12か月)S社(子会社)S社の正規の決算(12か月)連結決算日当期のズレ期間に起きたグループ内の取引(S社の正規の決算には入っていない)内部売上(P→S)600S社の仕入・買掛金・在庫が未計上 → 整理して取り込む買掛金の支払(S→P)400S社の買掛金が減っていない → 整理して取り込む貸付(P→S)1,000S社の借入金・現金が未計上 → 整理して取り込む前期のズレ期間の内部売上 450:前期の連結で取り込み済み(利益率 30%)。その未実現利益 135 は当期に実現します。
🧾 仕訳で確認
前期に取り込んだ在庫 450 の未実現利益 135(前期の利益率 30%)と税効果 40.5(前期の税率 30%)が当期に実現(開始仕訳と実現をまとめて表示)
借方金額貸方金額
利益剰余金期首残高94.5売上原価135
法人税等調整額40.5
当期に取り込んだ在庫 600 × 親会社の利益率 30%
借方金額貸方金額
売上原価180棚卸資産180
未実現利益の消去に係る税効果(売手P社の税率 30%)
借方金額貸方金額
繰延税金資産54法人税等調整額54
応用 C-3

取引高のズレ ── 当期と前期のズレ期間

📍 ラボの場所:応用タブ C-3
ハルカ
決算日がズレると、取引高もズレるんですか。
先生
左の図の事例Gで見ようか。P社の内部売上高は、重なる期間 4,800 + 当期のズレ期間 600 = 5,400。S社の内部仕入高は、重なる期間 4,800 + 前期のズレ期間 450 = 5,250。差は 150 だよ。
迷いポイント 前期のズレ期間 450 の仕入は、当期もそのまま残しておく?
ハルカ
S社の決算に入っている 450 は、S社の数字なので残しておきますよね。
先生
その 450 は、前期の連結ですでに取り込んだものなんだ。当期はこれを振り戻して、当期のズレ期間の 600 を取り込むから、取引高が一致するよ。未実現利益も同じで、前期に取り込んだ在庫の分 135 が実現し、当期に取り込んだ在庫の分 180 を消去する。税金等調整前で ▲45、税効果 13.5 を加えて、当期純利益への影響は ▲31.5 なんだ。
💡 そうだったのか!
決算日のズレは、前期に取り込んだ分を振り戻し、当期のズレ期間を取り込むことで、取引高も未実現利益もそろいます。
⏱ 30秒だけラボで試す
  1. シミュレーションタブ →「📅 決算日の違い」→ プリセット「事例G」
  2. 「P社の利益率(売価に対する%)」を 30 → 20 に変える

👀 当期純利益への影響(税効果後)が ▲31.5 → ▲21 に変わります(前期の利益率も空欄=当期と同じ扱い)。

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今日の内容を、ラボで確かめてみませんか?

この記事の図は、すべて内部取引消去ラボの画面そのものです。応用タブを開けば、同じ図を見ながら読み返せます。

内部取引消去ラボを開く ▶

今日のまとめ ── 迷いポイント早見表

迷いポイント答えラボ
有税なら「引当金 × 税率」を相殺?個別で実際に計上した繰延税金資産と同額を相殺応用A-1・A-2
割り引いた手形も相殺して消す?銀行に対する債務なので借入金に振り替える応用A-3
基準に書いていないなら自由?調べる・直す・記録する・重要性で判断するプロセスが求められる応用B-1
誤りも連結精算表の上だけで直す?誤りは各社の帳簿を直し、個別・連結の利益も変わる応用B-2
毎期出る差は毎期直せば十分?根本は計上時点のルールをグループ経理規程でそろえる応用B-4
換算の差は小さい方で相殺?親会社の換算額に合わせ、差額は為替差損益応用B-5
小さい方で相殺すれば利益は無関係?取引高の残差は片側に残り、連結の売上総利益に含まれたまま応用B-6
仮決算ならいつも調整不要?連結決算日の仮決算なら原則不要。別の日の仮決算は調整がいる応用C-1
前期のズレ期間の仕入は残す?前期に取り込み済みなので振り戻し、当期分を取り込む応用C-3
おわりに

今日のふりかえり

先生
今日のまとめだよ。照合差異の直し方を定めた基準はないけれど、原因を調べて直し、記録を残すプロセスが求められている。未達は連結精算表の上で、誤りは各社の帳簿で直す。原因不明の小さな残差は、許容額と方針を先に決めて、毎期同じように扱うんだ。そして決算日のズレは、ズレ期間の重要な取引を取り込んで整理するよ。
ハルカ
週末のパン屋さんのスタンプカード、お店のレジでは押してもらったのに、アプリには反映されていませんでした。これは未達ですね。お店の記録と照合します。
先生
いい練習だね。ただ、アプリへの反映待ちなら、未達というより計上時点の違いに近いかもしれないよ。
ハルカ
ちなみに、クロワッサンにするかメロンパンにするかで毎回15分迷うのは…、許容額を超えた残差として、原因を調査中です。
先生
原因はたぶん、どちらもおいしいことだね。次の設例編では、事例A・B・D・Hの数字で、貸倒引当金の修正をステップごとに追っていこうか。

参考資料

企業会計基準第22号「連結財務諸表に関する会計基準」(第16項・第31項・第35項・注1・注4・注10・注12)/企業会計基準適用指針第28号「税効果会計に係る会計基準の適用指針」(第32項・第33項・第34〜37項)/外貨建取引等会計処理基準 三3/会社計算規則 第64条/連結財務諸表規則 第12条・第13条/企業会計基準第24号(過年度遡及)第4項(8)・第21項。ラボの事例の数値は、すべて独自の数値です。照合差異への対応(許容額・残差の扱い)は、基準に定めのない部分についてのラボの提案です。
このシリーズの記事:基礎編設例・債権債務と貸倒引当金編(事例A・B・D・H)設例・照合差異編(事例C・E・F・J)設例・決算日の違い編(事例G・I)
連結決算ラボ シリーズ:連結範囲ラボ資本連結ラボ持分法ラボ

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この記事を書いた人

TaxJudge編集部|公認会計士・税理士(実務25年)による企画・監修。会計基準・税法・裁決・有価証券報告書などの一次情報をもとに、検索できるデータベースと計算・判定・文書作成ツールを制作しています。