無料の学習ツール「資本連結ラボ」の読み方ガイドです。ラボの応用タブから、実務で迷いやすい論点を選んで、先生と生徒の会話形式で見ていきます。基礎タブの内容は「基礎編」で扱っています。左の図はラボの図そのものです。重要な節の最後には、ラボで30秒だけ手を動かす小さな実習を置いています。
📙 応用 持分が変わったときの処理早見表
はじめに
応用タブの見取り図 ── 持分が変わったらどうなる?
📍 ラボの場所:応用タブ(処理早見表)
ハルカ
先生、基礎編で支配獲得日の仕訳はわかりました。でも実務では、そのあと買い増したり売ったりしますよね。
先生
そこが応用タブの中心だよ。左の早見表は、持分が変わる場面ごとに「時価評価し直す?」「のれんは動く?」「差額は損益?資本剰余金?」をまとめたものだ。
ハルカ
支配獲得のときだけ時価評価とのれんが「する・発生」で、追加取得や一部売却は「しない・動かない」…。
先生
その違いの理由を、段階取得から順に見ていこう。数字は基礎編と同じ事例A(70%を1,380で取得、のれん330)がベースだよ。
📙 応用 ラボの図
応用 ①
すでに株式を持っていた場合(段階取得)
📍 ラボの場所:応用タブ
先生
左の事例は、前期に15%を240で買い、当期末に55%を1,265で買い足して70%にしたケース。同じ株なのに1%あたり16と23、値段が2つあるね。
迷いポイント 段階取得ののれんは、実際に払った合計1,505で計算する?
ハルカ
払ったのは240+1,265=1,505だから、それをもとにのれんを計算するんですよね?
先生
連結では、支配を獲得した瞬間に、持っていた15%を時価でいったん売って買い直したと考える。15%の時価は345だから、差額105が段階取得に係る差益。投資額は345+1,265=1,610になって、のれんはこの金額から計算するんだ。
ハルカ
P社の個別決算書では、1,505のままなんですか?
先生
そうだよ。差益が出るのは連結だけ。持分法を適用していた会社なら、比べる相手は取得原価ではなく持分法による投資評価額だよ(図⑤)。
💡 そうだったのか!
段階取得では、既存の持分を支配獲得日の時価で評価し直し、差額を段階取得に係る損益にする。のれんは時価ベースの投資額から計算する。⏱ 30秒だけラボで試す
- 「シミュレーション」タブで「🏁 支配を獲得するとき」を開き、右の「事例から始める」で「事例B その他有価証券15%→70%」を選び、次に「事例K 段階取得で差損」を選ぶ
👀 事例Bは段階取得に係る損益105(差益)・のれん420。事例Kは▲55(差損)になる。
ラボを開く ▶📙 応用 ラボの図
応用 ②
持分比率の計算
📍 ラボの場所:応用タブ
ハルカ
持分比率は、親会社の持株数を発行済株式数で割ればいいですよね?
迷いポイント 持分比率の分母は、発行済株式数?
先生
左の例では、S社の発行済株式100株のうち10株が子会社自身の自己株式。これは分母から除くから、63÷90=70%になる。63÷100の63%ではないんだ。
先生
他の子会社も株式を持っていれば、その持株数にその子会社の持分比率を掛けた数を分子に加えるよ。
💡 そうだったのか!
持分比率の分母は、発行済株式数から子会社が持つ自己株式を除いた数。事例では63÷90=70%。📙 応用 ラボの図
応用 ③
税効果との関係
📍 ラボの場所:応用タブ
先生
基礎編では省略していたけど、実務では時価評価の差額に税効果がかかる。左は事例Aの土地、税率30%の例だよ。
迷いポイント 時価評価の税効果は、法人税等調整額で処理する?
ハルカ
税効果なら、P/Lの法人税等調整額に出てくるんですよね?
先生
この税効果は法人税等調整額を通さず、評価差額から直接控除する。時価との差300から繰延税金負債90を引いて、評価差額は210になるんだ。
ハルカ
評価差額が小さくなると、のれんは…?
先生
受け取った持分が小さくなるから、のれんは330 → 393に増える。税効果を入れるかどうかで、のれんの金額まで変わるんだ。
💡 そうだったのか!
時価評価の税効果は評価差額から直接控除する(P/Lを通さない)。評価差額が減る分、のれんは増える。📙 応用 ラボの図
応用 ④
決算日が違う子会社
📍 ラボの場所:応用タブ
ハルカ
P社は3月決算で、S社は12月決算です。S社の決算書をそのまま使っていいんですか?
迷いポイント 決算日が違う子会社は、いつも仮決算が必要?
先生
差が3か月以内なら、子会社の決算日の決算書で連結できる。12月決算なら差は3か月だからOKだよ。ただし、決算日の違いから生じる連結会社間取引の重要な不一致は調整するんだ。
先生
9月決算のように差が3か月を超えるなら、連結決算日に正規の決算に準じた仮決算が必要だよ。
💡 そうだったのか!
決算日の差が3か月以内なら子会社の決算書を使える(重要な不一致は調整)。3か月を超えるなら仮決算が必要。📙 応用 ラボの図
応用 ⑤
個別の簿価と連結上の簿価(投資の修正額)
📍 ラボの場所:応用タブ
先生
P社の個別B/Sでは、S社株式はずっと取得原価1,380のまま。でも連結上の中身は「S社の資本の持分+のれん」で、毎年変わっていくよ。
迷いポイント 子会社株式の簿価は、個別でも連結でも同じ?
ハルカ
同じS社株式なのに、個別と連結で金額が違うんですか?
先生
1年後を見て。利益の持分で+175、のれん償却で▲33。連結上は1,522で、個別との差142が投資の修正額だ。配当を受け取ったり損失が出たりすると減るよ。
先生
この差は、売却や支配を失ったときに効いてくる。次の2つの論点の土台になるから、覚えておいてね。
ハルカ
個別ではずっと1,380のまま…。連結だけ成長していますね。
先生
個別は買った値段、連結は中身を映すからね。
💡 そうだったのか!
個別のS社株式は取得原価のまま、連結上は持分+のれんで子会社の成長を反映する。その差が投資の修正額で、売却や支配喪失のときに効いてくる。📙 応用 ラボの図
応用 ⑥
時価評価した資産を償却・売却したとき
📍 ラボの場所:応用タブ
先生
事例Aの土地は、連結上は時価900。その半分を500で売ったらどうなるかが左の図だよ。
迷いポイント 子会社が資産を売ったら、個別の売却益がそのまま連結の利益?
ハルカ
個別では売却価額500-簿価300で、売却益200ですよね。
先生
連結上の簿価は、個別の簿価300に時価との差の半分150を足した450。だから連結の売却益は50で、個別から150を差し引く修正をするんだ。
先生
この修正は非支配株主にも影響するから、親会社105、非支配株主45に配分するよ。
💡 そうだったのか!
時価評価した資産を売ると、連結上の簿価が大きい分だけ連結の売却益は個別より小さくなる。修正額は持分比率で親会社と非支配株主に配分する。📙 応用 ラボの図
応用 ⑦
追加取得(支配獲得後に買い増した場合)
📍 ラボの場所:応用タブ
先生
翌年度末、P社はS社株式10%を200で買い増して80%にした。S社の資本は1,750だから、増えた持分は175だね。
迷いポイント 買い増した差額25は、のれん?
ハルカ
200払って175の持分だから、差額25はのれんですよね?
先生
支配がすでにある中での買い増しは、株主どうしの取引(資本取引)。差額は資本剰余金で、のれんも損益も出ない。時価評価もやり直さないよ。
💡 そうだったのか!
支配獲得後の追加取得は資本取引。差額は資本剰余金で、のれんは増えず、時価評価もやり直さない。⏱ 30秒だけラボで試す
- 「シミュレーション」タブで「🔁 支配獲得後」に切り替え、右の「事例から始める」で「事例D 追加取得(70%→80%)」を選ぶ
- 「追加取得の価額」を200から150に変える
👀 資本剰余金の増減が▲25 → +25に変わる。のれんは297のまま動かない。
ラボを開く ▶📙 応用 ラボの図
応用 ⑧
子会社株式を売却した場合
📍 ラボの場所:応用タブ
先生
売却は、左のフローのとおり売った後も支配が続くかで処理が分かれる。下の例は14%を300で売って、70%から56%になったケースだよ。
迷いポイント 子会社株式を売れば、個別の売却益がそのまま連結の利益?
ハルカ
個別では売却益24が出ていますね。
先生
支配が続くなら、これも資本取引。個別の売却益24は消して、売却価額300と売却した持分245の差55を資本剰余金にする。連結P/Lには損益が出ないんだ。
先生
一方、支配を失って関連会社になるなら、残る株式は持分法の評価額にして、個別の売却損益を投資の修正額の分だけ修正する。前の論点の「修正額」がここで効いてくるよ。
ハルカ
売ったのに連結のP/Lには出ない。個別の売却益が、行き場をなくしていますね。
先生
行き場ならあるんだ。資本剰余金だよ。
💡 そうだったのか!
売却はまず支配が続くか。続くなら差額は資本剰余金でP/Lに出ない。支配を失えば、個別の売却損益を連結上の簿価で修正する。⏱ 30秒だけラボで試す
- 「シミュレーション」タブで「🔁 支配獲得後」に切り替え、右の「事例から始める」で「事例E 一部売却・支配継続」を選び、次に「事例F 一部売却・支配喪失」を選ぶ
👀 事例Eは個別の売却益24に対し、連結は資本剰余金55。事例Fは個別の売却益110が、連結上は5になる(原典の設例に合わせ、のれん償却なしの前提)。
ラボを開く ▶基礎から読む:基礎編 ── ラボの基礎タブを上から順に解説しています。基礎編を読む ▶
今日のまとめ ── 迷いポイント早見表
| 迷いポイント | 答え | ラボ |
|---|---|---|
| 段階取得ののれんは払った合計で計算? | 既存持分を時価で評価し直し、差額は段階取得に係る損益 | 応用① |
| 持分比率の分母は発行済株式数? | 子会社が持つ自己株式を除く | 応用② |
| 時価評価の税効果は法人税等調整額? | 評価差額から直接控除。のれんが増える | 応用③ |
| 決算日が違えば必ず仮決算? | 差が3か月以内なら子会社の決算書で可 | 応用④ |
| 子会社株式の簿価は個別と連結で同じ? | 違う。差が投資の修正額 | 応用⑤ |
| 子会社の資産売却益はそのまま連結の利益? | 時価との差の分だけ小さくなる | 応用⑥ |
| 買い増しの差額はのれん? | 資本剰余金。のれんは増えない | 応用⑦ |
| 子会社株式の売却益はそのまま連結の利益? | 支配が続けば資本剰余金。失えば修正額で調整 | 応用⑧ |
参考資料
移管指針第4号「連結財務諸表における資本連結手続に関する実務指針」(旧 会計制度委員会報告第7号)/企業会計基準第22号「連結財務諸表に関する会計基準」第28項・第29項ほか/企業会計基準第21号「企業結合に関する会計基準」第25項ほか(2026年9月19日確認。ラボの根拠表示に準拠)
