資本連結ラボ【応用編】|先生と一緒に図で学ぶ段階取得・追加取得・一部売却
無料の学習ツール「資本連結ラボ」の読み方ガイドです。ラボの応用タブから、実務で迷いやすい論点を選んで、先生と生徒の会話形式で見ていきます。基礎タブの内容は「基礎編」で扱っています。各行の図はラボの図そのものです。重要な節の最後には、ラボで30秒だけ手を動かす小さな実習を置いています。
🎧 動画で聞く資本連結【応用編】段階取得・追加取得・一部売却を図で(8分)
この記事の先生とハルカの会話と、ラボの図で解説する音声動画です。段階取得で支配を獲得したときの評価替え、支配獲得後の追加取得と一部売却の処理を扱います。クリックすると再生が始まります(YouTubeで開く)
📙 応用 持分が変わったときの処理早見表
| 状況 | 子会社の資産・負債を時価評価し直す? | のれんは? | 差額の行き先 | 損益への影響 | 残る投資の評価 |
|---|
| 支配獲得(一括取得) | する 支配獲得日の時価で全面評価 | 発生 20年以内で償却 | 投資と親会社持分の差 → のれん(負ならば負ののれん) | 負ののれん発生益のみ | 子会社として連結 |
| |
| 支配獲得(段階取得) | する 支配獲得日の時価で全面評価 | 発生 持分法時代ののれんも含めて計算し直す | 既存持分を支配獲得日の時価で評価し直してから、のれんを計算 | 段階取得に係る損益 | 子会社として連結 |
| |
| 追加取得(支配が続く) | しない | 動かない 新たに発生しない | 追加取得した持分と追加投資額の差 → 資本剰余金 | なし | 子会社のまま |
| |
| 一部売却(支配が続く) | しない | 動かない 償却も続ける | 売却した持分と売却価額の差 → 資本剰余金(個別の売却損益は消す) | なし | 子会社のまま |
| |
| 子会社の時価発行増資(支配が続く) | しない | 動かない | 親会社持分の増減額と払込額の差 → 資本剰余金 | なし | 子会社のまま |
| |
| 一部売却 → 関連会社へ(支配喪失) | ―(連結から除外) | 子会社としてののれんはなくなる(残る持分に対応する分は持分法の投資に含まれる) | 個別の売却損益を、投資の修正額のうち売却した分で修正 | 子会社株式売却損益 | 持分法による評価額 時価で評価し直さない |
| |
| 売却 → 関連会社でもない(支配喪失) | ―(連結から除外) | なくなる | 個別の売却損益を、投資の修正額のうち売却した分で修正 | 子会社株式売却損益 | 個別上の帳簿価額 投資の修正額は取り崩す |
| |
はじめに
応用タブの見取り図 ── 持分が変わったらどうなる?
📍 ラボの場所:応用タブ(処理早見表)
ハルカ
先生、基礎編で支配獲得日の仕訳はわかりました。でも実務では、そのあと買い増したり売ったりしますよね。
先生
そこが応用タブの中心だよ。左の早見表は、持分が変わる場面ごとに「時価評価し直す?」「のれんは動く?」「差額は損益?資本剰余金?」をまとめたものだ。
ハルカ
支配獲得のときだけ時価評価とのれんが「する・発生」で、追加取得や一部売却は「しない・動かない」…。
先生
その違いの理由を、段階取得から順に見ていこう。数字は基礎編と同じ事例A(70%を1,380で取得、のれん330)がベースだよ。
📙 応用 ラボの図
① 何が起きたのか ── 同じS社株式を、違う値段で2回買った
② 考え方 ── 支配を獲得した瞬間に「売って、買い直した」とみなす
③ 面積で見ると ── 横が持分、縦が1%あたりの値段(面積=金額)
④ 個別と連結で数字が違う ── 差益が出るのは連結だけ
⑤ 持分法から子会社になった場合 ── 比べる相手は「持分法の評価額」(事例C)
応用 ①
すでに株式を持っていた場合(段階取得)
📍 ラボの場所:応用タブ
先生
左の事例は、前期に15%を240で買い、当期末に55%を1,265で買い足して70%にしたケース。同じ株なのに1%あたり16と23、値段が2つあるね。
迷いポイント 段階取得ののれんは、実際に払った合計1,505で計算する?
ハルカ
払ったのは240+1,265=1,505だから、それをもとにのれんを計算するんですよね?
先生
連結では、支配を獲得した瞬間に、持っていた15%を時価でいったん売って買い直したと考える。15%の時価は345だから、差額105が段階取得に係る差益。投資額は345+1,265=1,610になって、のれんはこの金額から計算するんだ。
ハルカ
P社の個別決算書では、1,505のままなんですか?
先生
そうだよ。差益が出るのは連結だけ。持分法を適用していた会社なら、比べる相手は取得原価ではなく持分法による投資評価額だよ(図⑤)。
💡 そうだったのか!
段階取得では、既存の持分を
支配獲得日の時価で評価し直し、差額を段階取得に係る損益にする。のれんは時価ベースの投資額から計算する。
⏱ 30秒だけラボで試す
- 「シミュレーション」タブで「🏁 支配を獲得するとき」を開き、右の「事例から始める」で「事例B その他有価証券15%→70%」を選び、次に「事例K 段階取得で差損」を選ぶ
👀 事例Bは段階取得に係る損益105(差益)・のれん420。事例Kは▲55(差損)になる。
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📙 応用 ラボの図
子会社が自己株式を持っている場合
応用 ②
持分比率の計算
📍 ラボの場所:応用タブ
ハルカ
持分比率は、親会社の持株数を発行済株式数で割ればいいですよね?
迷いポイント 持分比率の分母は、発行済株式数?
先生
左の例では、S社の発行済株式100株のうち10株が子会社自身の自己株式。これは分母から除くから、63÷90=70%になる。63÷100の63%ではないんだ。
先生
他の子会社も株式を持っていれば、その持株数にその子会社の持分比率を掛けた数を分子に加えるよ。
💡 そうだったのか!
持分比率の分母は、発行済株式数から
子会社が持つ自己株式を除いた数。事例では63÷90=70%。
📙 応用 ラボの図
評価差額から税効果を控除する(事例Aの土地、税率30%の例)
応用 ③
税効果との関係
📍 ラボの場所:応用タブ
先生
基礎編では省略していたけど、実務では時価評価の差額に税効果がかかる。左は事例Aの土地、税率30%の例だよ。
迷いポイント 時価評価の税効果は、法人税等調整額で処理する?
ハルカ
税効果なら、P/Lの法人税等調整額に出てくるんですよね?
先生
この税効果は法人税等調整額を通さず、評価差額から直接控除する。時価との差300から繰延税金負債90を引いて、評価差額は210になるんだ。
先生
受け取った持分が小さくなるから、のれんは330 → 393に増える。税効果を入れるかどうかで、のれんの金額まで変わるんだ。
💡 そうだったのか!
時価評価の税効果は
評価差額から直接控除する(P/Lを通さない)。評価差額が減る分、のれんは増える。
📙 応用 ラボの図
子会社の決算日と連結決算日の差
応用 ④
決算日が違う子会社
📍 ラボの場所:応用タブ
ハルカ
P社は3月決算で、S社は12月決算です。S社の決算書をそのまま使っていいんですか?
迷いポイント 決算日が違う子会社は、いつも仮決算が必要?
先生
差が3か月以内なら、子会社の決算日の決算書で連結できる。12月決算なら差は3か月だからOKだよ。ただし、決算日の違いから生じる連結会社間取引の重要な不一致は調整するんだ。
先生
9月決算のように差が3か月を超えるなら、連結決算日に正規の決算に準じた仮決算が必要だよ。
💡 そうだったのか!
決算日の差が
3か月以内なら子会社の決算書を使える(重要な不一致は調整)。3か月を超えるなら仮決算が必要。
📙 応用 ラボの図
個別は取得原価のまま、連結は子会社の成長を反映する
時系列で見る:投資の修正額はこう増減する(事例A・のれん10年償却)
| 支配獲得日 | 1年後 | 2年後 | 3年後 | 4年後 |
|---|
| + 当期純利益の持分(70%) | | 175 | 210 | 140 | ▲140 |
| - 配当の持分 | | | | ▲105 | |
| - のれん償却 | | ▲33 | ▲33 | ▲33 | ▲33 |
| 当期の増減 | | 142 | 177 | 2 | ▲173 |
| 投資の修正額(累計) | 0 | 142 | 319 | 321 | 148 |
| 連結上の投資(持分+のれん) | 1,380 | 1,522 | 1,699 | 1,701 | 1,528 |
- 利益が出ると増える:S社の利益のうち親会社の持分だけ、連結上の投資が大きくなります(1年後 +175、2年後 +210)。
- のれんの償却で毎年減る:のれんは毎年 33 ずつ小さくなり、投資の修正額を押し下げます。
- 配当を受け取ると減る:S社の利益剰余金が配当で減るので、持分も 105 減ります。個別ではP社が受取配当金を計上しますが、連結ではグループ内の移動なので消去します(S社株式の取得原価は変わりません)。
- 損失が出ると減る:4年後の純損失で、修正額は 321 → 148 に減りました。
- 個別のS社株式(点線)はずっと 1,380 のままなので、点線と棒の頂上の差が、その時点の投資の修正額です。
応用 ⑤
個別の簿価と連結上の簿価(投資の修正額)
📍 ラボの場所:応用タブ
先生
P社の個別B/Sでは、S社株式は、減損などがなければずっと取得原価1,380のまま。でも連結上の中身は「S社の資本の持分+のれん」で、毎年変わっていくよ。
迷いポイント 子会社株式の簿価は、個別でも連結でも同じ?
ハルカ
同じS社株式なのに、個別と連結で金額が違うんですか?
先生
1年後を見て。利益の持分で+175、のれん償却で▲33。連結上は1,522で、個別との差142が投資の修正額だ。配当を受け取ったり損失が出たりすると減るよ。
先生
この差は、売却や支配を失ったときに効いてくる。次の2つの論点の土台になるから、覚えておいてね。
ハルカ
個別ではずっと1,380のまま…。連結だけ成長していますね。
💡 そうだったのか!
個別のS社株式は取得原価のまま、連結上は
持分+のれんで子会社の成長を反映する。その差が投資の修正額で、売却や支配喪失のときに効いてくる。
📙 応用 ラボの図
事例Aの土地(時価との差300)の半分を500で売却した場合
応用 ⑥
時価評価した資産を償却・売却したとき
📍 ラボの場所:応用タブ
先生
事例Aの土地は、連結上は時価900。その半分を500で売ったらどうなるかが左の図だよ。
迷いポイント 子会社が資産を売ったら、個別の売却益がそのまま連結の利益?
ハルカ
個別では売却価額500-簿価300で、売却益200ですよね。
先生
連結上の簿価は、個別の簿価300に時価との差の半分150を足した450。だから連結の売却益は50で、個別から150を差し引く修正をするんだ。
先生
この修正は非支配株主にも影響するから、親会社105、非支配株主45に配分するよ。
💡 そうだったのか!
時価評価した資産を売ると、連結上の簿価が大きい分だけ
連結の売却益は個別より小さくなる。修正額は持分比率で親会社と非支配株主に配分する。
📙 応用 ラボの図
追加取得(10%を200で買い増し、70%→80%)
連結修正仕訳
追加取得(10%)| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|
| 非支配株主持分 | 175 | S社株式 | 200 |
| 資本剰余金 | 25 | | |
応用 ⑦
追加取得(支配獲得後に買い増した場合)
📍 ラボの場所:応用タブ
先生
翌年度末、P社はS社株式10%を200で買い増して80%にした。S社の資本は1,750だから、増えた持分は175だね。
迷いポイント 買い増した差額25は、のれん?
ハルカ
200払って175の持分だから、差額25はのれんですよね?
先生
支配がすでにある中での買い増しは、株主どうしの取引(資本取引)。差額は資本剰余金で、のれんも損益も出ない。時価評価もやり直さないよ。
💡 そうだったのか!
支配獲得後の追加取得は資本取引。
差額は資本剰余金で、のれんは増えず、時価評価もやり直さない。
⏱ 30秒だけラボで試す
- 「シミュレーション」タブで「🔁 支配獲得後」に切り替え、右の「事例から始める」で「事例D 追加取得(70%→80%)」を選ぶ
- 「追加取得の価額」を200から150に変える
👀 資本剰余金の増減が▲25 → +25に変わる。のれんは297のまま動かない。
ラボを開く ▶
📙 応用 ラボの図
売却したら、まず「支配が続くか」で分かれる
① 支配が続く一部売却(14%を300で売却、70%→56%)
①の連結修正仕訳(個別の売却益を消して、資本剰余金に振り替える)
一部売却(支配継続)| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|
| 子会社株式売却益 | 24 | 非支配株主持分 | 245 |
| S社株式 | 276 | 資本剰余金 | 55 |
応用 ⑧
子会社株式を売却した場合
📍 ラボの場所:応用タブ
先生
売却は、左のフローのとおり売った後も支配が続くかで処理が分かれる。下の例は14%を300で売って、70%から56%になったケースだよ。
迷いポイント 子会社株式を売れば、個別の売却益がそのまま連結の利益?
先生
支配が続くなら、これも資本取引。個別の売却益24は消して、売却価額300と売却した持分245の差55を資本剰余金にする。連結P/Lには損益が出ないんだ。
先生
一方、支配を失って関連会社になるなら、残る株式は持分法の評価額にして、個別の売却損益を投資の修正額の分だけ修正する。前の論点の「修正額」がここで効いてくるよ。
ハルカ
売ったのに連結のP/Lには出ない。個別の売却益が、行き場をなくしていますね。
💡 そうだったのか!
売却はまず
支配が続くか。続くなら差額は資本剰余金でP/Lに出ない。支配を失えば、個別の売却損益を連結上の簿価で修正する。
⏱ 30秒だけラボで試す
- 「シミュレーション」タブで「🔁 支配獲得後」に切り替え、右の「事例から始める」で「事例E 一部売却・支配継続」を選び、次に「事例F 一部売却・支配喪失」を選ぶ
👀 事例Eは個別の売却益24に対し、連結は資本剰余金55。事例Fは個別の売却益110が、連結上は5になる(原典の設例に合わせ、のれん償却なしの前提)。
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この記事の図は、すべて資本連結ラボの画面そのものです。応用タブを開けば、同じ図を見ながら読み返せます。
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この記事を書いた人
TaxJudge編集部|公認会計士・税理士(実務25年)による企画・監修。会計基準・税法・裁決・有価証券報告書などの一次情報をもとに、検索できるデータベースと計算・判定・文書作成ツールを制作しています。