無料の学習ツール「資本連結ラボ」の読み方ガイドです。ラボの設例・応用タブから、子会社の時価発行増資で持分が動く事例(事例G・H)を1つずつ、先生と生徒の会話形式で見ていきます。各行の図はラボの図そのものです。重要な節の最後には、ラボで30秒だけ手を動かす小さな実習を置いています。
📕 事例G・H ラボの画面
事例G・Hの前提(事例Aの続き)
| 2年目末のS社の資本(増資の前) | 1,750 |
| 増資前の発行済株式数/P社の持株 | 100株/70株 |
| 増資前の1株あたり純資産(1,750÷100株) | 17.5 |
| 事例G:新株50株を1株22で発行(P社が全株引受) | 70% → 80% |
| 事例H:新株25株を1株20で発行(第三者が全株引受) | 70% → 56% |
はじめに
今日の題材 ── 事例G・H
📍 ラボの場所:設例・応用タブ 事例G・H
ハルカ
先生、事例GとHは「時価発行増資」ですね。P社は株を売っても買ってもいないのに、持分比率が動くんですか。
先生
そこが今日の面白いところだよ。S社が新しく株を発行すると、誰がどれだけ引き受けるかで持分比率が変わるんだ。事例GはP社が50株を全部引き受けて70%→80%、事例Hは第三者が25株を全部引き受けて70%→56%になるよ。
ハルカ
前提は、事例D〜Fと同じ2年目末なんですね。
先生
そう。S社の資本は1,750、株式は100株だから、増資の直前の1株あたり純資産は17.5。今日は、この17.5と発行価格の差に注目して見ていこうか。
設例・応用タブの事例Gを開くと、増資までの流れが時系列で並んでいますラボで開く ▶
📕 事例G ラボの画面
事例G
持分が増える増資 ── 払込額と、増えた持分の差が資本剰余金
📍 ラボの場所:設例・応用タブ 事例G ステップ4
ハルカ
P社は50株×22で1,100を払い込みました。増資後のS社の資本は1,750+1,100=2,850ですね。
先生
そう。考え方は、まず従来の70%で新株を引き受け、その後に追加取得をしたとみなすんだ。P社の持分は、増資前の1,750×70%=1,225から、増資後の2,850×80%=2,280へ、1,055増えるよ。
迷いポイント P社が払い込んだ1,100は、全部P社の持分になる?
ハルカ
自分で払ったお金なので、1,100はまるごとP社の持分ですよね。
先生
それが、そうではないのだよ。増えた持分は1,055で、払込額より45少ないんだ。
ハルカ
45少ないんですか。
先生
1株17.5の会社に22で払い込んだから、その上乗せの一部が非支配株主の持分に回っているんだ。だから仕訳は、増資の資本金1,100とS社株式1,100を消したうえで、資本剰余金45を減らし、非支配株主持分を45増やすんだよ。
ハルカ
自分で払ったのに、45は他の株主さんのところへ…。おごるつもりのないランチ代を、そっと払っていた感じです。
先生
おごったのではなく、高い値段で株を引き受けた結果なんだ。損益ではなく資本剰余金で受け止めるよ。
💡 そうだったのか!
親会社が従来の持分比率を超える割合で引き受けて比率が上がる増資(事例Gは全株を引受)は、追加取得をしたとみなします。増えた持分と払込額の差は資本剰余金で、損益にもならず、のれんも増えません。⏱ 30秒だけラボで試す
- シミュレーションタブ →「🔁 支配獲得後」で「事例G 時価発行増資・持分増加(70%→80%)」を選ぶ
- 「1株の発行価格」を 22 → 17.5 に変える
👀 資本剰余金の増減が ▲45 → 0、非支配株主持分が 570 → 525 に変わります。1株あたり純資産と同じ値段で発行すれば、差額は生まれません。
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事例G
結果 ── 資本剰余金がマイナスになったら
📍 ラボの場所:設例・応用タブ 事例G ステップ5
ハルカ
結果を見ると、資本剰余金が▲45になっています。資本剰余金って、マイナスになってもいいんですか。
先生
ステップの注意書きを見て。この設例は、ほかに資本剰余金がない前提だから、資本剰余金全体がマイナスになるんだ。
ハルカ
マイナスのままでは表示しないんですか。
先生
連結会計年度末に資本剰余金をゼロにして、マイナスの45を利益剰余金から減額するんだ。結果の表では、取引による変動▲45と、期末の残高(資本剰余金0、利益剰余金2,277)を分けて示しているよ。
迷いポイント 持分法と同じように、増資の差額は損益(持分変動損益)になる?
ハルカ
持分法の設例では、時価発行増資の差額は持分変動損益でしたよね。子会社でも、損益で受けた方が分かりやすい気がします。
先生
持分法の増資を覚えていたんだね。関連会社なら損益だよ。
ハルカ
子会社だと違うんですか。
先生
そうなんだ。子会社で支配が続くときは、株主どうしの取引だから資本剰余金になるんだ。追加取得の事例Dと同じ考え方だよ。
💡 そうだったのか!
子会社の時価発行増資で支配が続くなら、差額は資本剰余金です。関連会社(持分法)の増資では、差額は持分変動損益になります。年度末に資本剰余金全体がマイナスなら、ゼロにして利益剰余金から減らします(事例Gでは2,322→2,277)。📕 事例H ラボの画面
事例H
持分が減る増資 ── 比率は下がっても、持分の額は増える
📍 ラボの場所:設例・応用タブ 事例H ステップ4
ハルカ
事例Hは、第三者が25株を1株20で引き受けて、500払い込みました。P社は70株のままなので、70÷125で56%ですね。
先生
そう。こちらは、従来の70%で引き受けた後に一部売却をしたとみなすんだ。増資後のS社の資本は1,750+500=2,250だよ。
迷いポイント 持分比率が70%から56%に下がったのだから、親会社の持分の額も減る?
ハルカ
比率が下がったので、P社の取り分は減りますよね。資本剰余金もマイナスですか。
先生
計算してみようか。増資前は1,750×70%=1,225、増資後は2,250×56%=1,260になるよ。
ハルカ
計算すると…。
先生
比率は下がったのに、持分の額は35増えているんだ。第三者が1株17.5の会社に20で払い込んでくれたからだよ。P社は1円も払っていないから、35がそのまま資本剰余金の増加になるんだ。
ハルカ
比率は下がったのに、取り分は増える…。ケーキを切り分けたら、私の分が細くなったのに重くなっていた、という感じですね。
先生
ケーキ全体が大きくなったんだ。増資で資本が1,750から2,250に増えているよ。
💡 そうだったのか!
親会社の引受割合が従来の持分比率を下回り、比率が下がる増資(事例Hは引受ゼロ)は、一部売却をしたとみなします。持分比率が下がっても、発行価格が1株あたり純資産より高ければ、親会社の持分の額は増え、その差が資本剰余金の増加になります。⏱ 30秒だけラボで試す
- シミュレーションタブ →「🔁 支配獲得後」で「事例H 時価発行増資・持分減少(70%→56%)」を選ぶ
- 「1株の発行価格」を 20 → 15 に変える
👀 親会社持分の増減が 35 → ▲35、資本剰余金の増減も 35 → ▲35 に変わります。1株あたり純資産17.5より安く発行すると、比率も額も両方減ります。
ラボを開く ▶📕 事例G・H ラボの画面
事例G・H
見比べる ── 増資は、追加取得・一部売却と同じ形
📍 ラボの場所:設例・応用タブ 事例G・H ステップ5
ハルカ
事例Hの結果は、のれん297、非支配株主持分990、資本剰余金35ですね。のれんは、ここでも動いていません。
先生
そう。支配が続く間の持分の変動は、追加取得でも、一部売却でも、増資でも、のれんは増えも減りもしないんだ。非支配株主持分は、増資後の資本2,250の44%で990になるよ。
迷いポイント 増資なら、株を売っていないので、いつでも資本剰余金で処理する?
ハルカ
増資は売り買いではないので、どんな増資でも資本剰余金で処理するんですよね。
先生
資本剰余金で処理するのは、増資の後も支配が続く場合なんだ。第三者がたくさん引き受けて50%以下になるような増資は、支配の喪失になるから、事例Fと同じ考え方に変わるよ。
ハルカ
支配を失う増資もあるんですね。
先生
あるよ。ラボのシミュレーションでも、増資で支配を失う入力は計算の対象外として止まるようにしているんだ。
ハルカ
増資にも、追加取得・一部売却・支配喪失の顔が、全部隠れていたんですね。
先生
そう。増資は、事例D〜Fをもう一度別の角度から見ているようなものなんだ。
💡 そうだったのか!
時価発行増資は、親会社の引受割合が従来の持分比率を超えて比率が上がれば追加取得、下回って比率が下がれば一部売却とみなします。支配が続く限り差額は資本剰余金で、のれんは動きません。事例Hのステップ5では、増資後の主な残高(のれん・非支配株主持分・資本剰余金・利益剰余金)が表になっていますラボで開く ▶
今日のまとめ ── 設例ごとの結論
| 設例 | 迷いポイント | 答え |
|---|---|---|
| 事例G | P社が払い込んだ1,100は全部P社の持分? | 増えた持分は1,055。差45は非支配株主へ回り、資本剰余金▲45 |
| 事例G | 資本剰余金▲45は期末もマイナスのまま? | 他に資本剰余金がなければ、期末にゼロとし利益剰余金から45を減額(2,277) |
| 事例G | 増資の差額は持分変動損益? | 子会社で支配が続くなら資本剰余金。持分変動損益は関連会社(持分法)の場合 |
| 事例H | 比率が下がったら持分の額も減る? | 発行価格20>1株あたり純資産17.5なので、持分は1,225→1,260と35増え、資本剰余金+35 |
| 事例G・H | どんな増資でも資本剰余金? | 増資後も支配が続く場合だけ。支配を失えば支配喪失の処理(事例Fの考え方) |
おわりに
今日のふりかえり
先生
今日のまとめだよ。時価発行増資は、親会社の引受割合が従来の持分比率を超えて比率が上がれば追加取得、下回って比率が下がれば一部売却とみなす。持分の増減と払込額の差が、資本剰余金になるんだ。
ハルカ
基礎編のときは、のれんの330を出すだけで精いっぱいでした。今日は「支配は続く?」「誰が引き受けた?」と、先に考える順番が分かった気がします。
先生
それが設例を通して読んだいちばんの成果だよ。計算の前に、取引の形を見分けられるようになったんだ。
ハルカ
はい。ただ、ケーキの話を思い出すと、つい計算より先にお腹が空きます。
先生
それは休憩の合図かもしれないね。基礎編から読み返すと、図の見え方がきっと変わるよ。
参考資料
企業会計基準第22号「連結財務諸表に関する会計基準」/移管指針第4号「連結財務諸表における資本連結手続に関する実務指針」(同・設例)(いずれも企業会計基準委員会)。ラボの事例の数値は、指針の設例と同じパターンを独自の数値で組み立てたものです。設例は税効果なしで計算しています。P社・S社は架空の会社の例です。公認会計士が監修しています。
このシリーズの記事:基礎編 ── 投資と資本の相殺消去・のれん・非支配株主持分/応用編 ── 段階取得・追加取得・売却・投資の修正額/設例・支配獲得編(事例A〜C)/設例・追加取得・売却編(事例D〜F)
