資本連結ラボ【設例・追加取得・売却編】|先生と一緒に図で学ぶ事例D〜F 追加取得・一部売却・支配喪失
無料の学習ツール「資本連結ラボ」の読み方ガイドです。ラボの設例・応用タブから、支配を獲得した後に持分が動く事例(事例D〜F)を1つずつ、先生と生徒の会話形式で見ていきます。各行の図はラボの図そのものです。重要な節の最後には、ラボで30秒だけ手を動かす小さな実習を置いています。
📕 事例D〜F ラボの画面
事例D〜Fの前提(事例Aの続き)
| 1年目末:S社株式70%を1,380で取得(のれん330) | 70% |
| 2年目:S社の当期純利益(事例D・E/事例F) | 250/300 |
| 2年目末 事例D:10%を200で追加取得 | 70% → 80% |
| 2年目末 事例E:14%を300で売却(支配は続く) | 70% → 56% |
| 2年目末 事例F:35%を800で売却(関連会社になる) | 70% → 35% |
| 事例Fだけの特殊な前提:のれんを償却しない(原典の設例に合わせたもの) | 償却なし |
2年目は、1年目の相殺消去を開始仕訳として引き継ぎ、当期の処理を行います。イベントの直前の数字をここでそろえます。
2年目末の子会社の資本 = 1,500 + 当期純利益 250 = 1,750
のれん = 330 - 償却 33 = 297
非支配株主持分 = 450 + 75 = 525(=1,750×30%)
開始仕訳(支配獲得日の相殺消去を引き継ぐ)| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|
| 資本金 | 800 | S社株式 | 1,380 |
| 利益剰余金(期首) | 400 | 非支配株主持分 | 450 |
| 評価差額 | 300 | | |
| のれん | 330 | | |
のれんの償却(10年)| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|
| のれん償却額 | 33 | のれん | 33 |
当期純利益の非支配株主持分への振替| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|
| 非支配株主に帰属する当期純利益 | 75 | 非支配株主持分 | 75 |
はじめに
今日の題材 ── 事例D〜F
📍 ラボの場所:設例・応用タブ 事例D〜F
ハルカ
先生、設例・応用タブの事例は、どれも1年目末に70%を1,380で買うところから始まっていますね。
先生
そう、事例D〜Hは、設例・基礎の事例Aの続きなんだ。ステップ2・3の「支配獲得の相殺消去」と「2年目の開始仕訳・のれん償却・非支配株主持分」は共通で、違うのは2年目末のできごとだけだよ。
ハルカ
できごとの直前の数字は、どこを見ればいいですか。
先生
ステップ3の計算式だよ。事例Dなら、2年目末のS社の資本は1,500+250=1,750になるよ。
先生
そう。のれんは330-33=297、非支配株主持分は1,750×30%=525。今日は、この数字を出発点に、買い増し・一部売却・支配喪失の3つを見比べていこうか。
設例・応用タブの事例Dを開くと、2年目までの流れが時系列で並んでいますラボで開く ▶
📕 事例D ラボの画面
増えた持分は、非支配株主持分から親会社持分へ振り替えます。時価評価はやり直しません。支払額との差額は資本剰余金です(のれんではありません)。
増えた持分 = 1,750 × 10% = 175
資本剰余金 = 175 - 支払額 200 = ▲25(減少)
追加取得:非支配株主持分を親会社持分へ振り替え、差額は資本剰余金| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|
| 非支配株主持分 | 175 | S社株式 | 200 |
| 資本剰余金 | 25 | | |
この取引で資本剰余金が25減ります。設例では他に資本剰余金がない前提なので、資本剰余金全体がマイナスになります。この場合は連結会計年度末に資本剰余金をゼロとし、マイナス分の25を利益剰余金から減額します(連結会計基準 第30-2項、指針 第39-2項)。下の表は、取引による変動と期末の残高(振替後)を分けて示しています。
| 項目 | 2年目末の連結B/S等 |
|---|
| のれん | 297 |
| 非支配株主持分 | 350 |
| 資本剰余金の増減(取引による変動) | ▲25 |
| 資本剰余金(期末・振替後) | 0 |
| 利益剰余金(期末・振替後) | 2,297 |
利益剰余金(振替前)= P社の個別 2,180 + 取得後の利益 250×70% - のれん償却 33 = 2,322
期末の振替:資本剰余金のマイナス 25 を利益剰余金から減額 → 2,322 - 25 = 2,297
事例D
追加取得 ── 差額は、のれんではなく資本剰余金
📍 ラボの場所:設例・応用タブ 事例D ステップ4・5
ハルカ
事例Dは、10%を200で買い増しています。増えた持分は1,750×10%=175ですね。
先生
そう。仕訳は、非支配株主持分175を親会社の持分に振り替えて、S社株式200と相殺する形になるよ。
迷いポイント 払った200と増えた持分175の差25は、のれんになる?
ハルカ
200払って175しか増えないなら、差の25は、支配獲得日と同じように、のれんですよね。
先生
それが、そうではないのだよ。すでに支配している会社の株を買い増すのは、親会社と非支配株主という株主どうしの取引なんだ。
先生
そう。だから差額25は資本剰余金を減らす。のれんは297のまま、時価評価もやり直さないよ。
ハルカ
25も多く払ったのに、損にもならないし、のれんにもならない…。払いすぎたお金が、どこにも名札を付けてもらえないみたいです。
先生
名札はちゃんとあるんだ。資本剰余金のマイナス25だよ。
ハルカ
資本剰余金がマイナスのまま、期末のB/Sに載るんですか。
先生
この設例は、ほかに資本剰余金がない前提だよね。その場合は期末に資本剰余金をゼロにして、マイナスの25を利益剰余金から減額するんだ。結果のステップでは、利益剰余金が2,322から2,297になっているよ。
💡 そうだったのか!
支配獲得後の追加取得は
資本取引です。増えた持分と支払額の差は
資本剰余金にし、のれんは増えず、時価評価もやり直しません。期末に資本剰余金全体がマイナスなら、ゼロにして利益剰余金から減額します。
支配獲得と追加取得が一つの企業結合にあたる場合は、追加取得分ものれんになる例外があります(応用タブ「複数の取引が一つの企業結合にあたる場合」)ラボで開く ▶ ⏱ 30秒だけラボで試す
- シミュレーションタブ →「🔁 支配獲得後」で「事例D 追加取得(70%→80%)」を選ぶ
- 「追加取得の価額」を 200 → 150 に変える
👀 資本剰余金の増減が ▲25 → 25 に変わり、非支配株主持分は 350 のままです。安く買えば資本剰余金が増えるだけで、のれんも損益も動きません。
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📕 事例E ラボの画面
個別では「売却価額 - 個別の簿価」で売却益 24 が出ます。連結では、売った持分を非支配株主持分へ振り替え、売却価額との差額を資本剰余金にします。連結P/Lに売却益は残りません。のれんは減らしません。
個別の簿価 = 1,380 × 14/70 = 276 → 個別の売却益 24
売却持分 = 1,750 × 14% = 245
資本剰余金 = 300 - 245 = 55
① 売却した簿価と売却持分の相殺(売却益の修正)| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|
| S社株式 | 276 | 非支配株主持分 | 245 |
| | 子会社株式売却益 | 31 |
② 修正後の売却益を資本剰余金へ振替| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|
| 子会社株式売却益 | 55 | 資本剰余金 | 55 |
事例E
一部売却(支配は続く)── 個別の売却益24は、連結では資本剰余金へ
📍 ラボの場所:設例・応用タブ 事例E ステップ4
ハルカ
事例Eは、14%を300で売って56%になります。P社の個別では、簿価1,380×14/70=276を減らして、売却益24が出ていますね。
先生
個別はそれで正しいよ。連結では、売った持分を非支配株主持分に振り替えるんだ。
先生
そう。売った持分は1,750×14%=245。売却価額300との差55が、連結で考えたときの「もうけ」だよ。
迷いポイント 支配が続く一部売却でも、連結P/Lに売却益が残る?
ハルカ
持分法の設例では、一部売却のときに売却益を直しましたよね。あれと同じで、連結でも売却益を55に直して、P/Lに残すんですか。
先生
持分法の一部売却を覚えていたんだね。関連会社なら、直した後の売却益は損益に残るよ。
先生
うん、でも子会社で支配が続くときは、追加取得と同じく株主どうしの取引なんだ。仕訳①で売却益を31増やして55にそろえ、仕訳②でその55を全部資本剰余金へ振り替える。連結P/Lの売却益はゼロになるんだよ。
ハルカ
個別では24もうかったのに、連結に来たら売却益はゼロ…。せっかくの手柄を、連結に横取りされた気分です。
先生
横取りではなく、置き場所が変わっただけなんだ。連結の資本剰余金が55増えているよ。
💡 そうだったのか!
支配が続く一部売却は
資本取引です。個別の売却益は連結で消え、売却価額と売った持分の差が
資本剰余金になります。のれんは減らしません。
⏱ 30秒だけラボで試す
- シミュレーションタブ →「🔁 支配獲得後」で「事例E 一部売却・支配継続(70%→56%)」を選ぶ
- 「売却価額」を 300 → 245 に変える
👀 個別の売却損益が 24 → ▲31 の売却損になりますが、連結の資本剰余金の増減は 55 → 0 です。売却価額が売った持分245とちょうど同じなら、連結では何も残りません。
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📕 事例F ラボの画面
子会社でなくなるので、相殺消去を振り戻し、S社のB/Sを連結から外します(当期のP/Lは連結)。残る株式は持分法による投資評価額に修正し、投資の修正額のうち売った分で個別の売却益を修正します。
投資の修正額 = 取得後の利益 300 × 70% = 210
売却損益の修正 = 210 × 35/70 = 105
連結上の売却益 = 個別 110 - 105 = 5
持分法の評価額 = 残る簿価 690 + 105 = 795
① 開始仕訳の振戻し(子会社でなくなるため)| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|
| S社株式 | 1,380 | 資本金 | 800 |
| 非支配株主持分 | 450 | 利益剰余金(期首) | 400 |
| | 評価差額 | 300 |
| | のれん | 330 |
② S社のB/Sを連結から除外(P/Lは当期分を連結)| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|
| 負債 | 700 | 資産 | 2,500 |
| 資本金 | 800 | | |
| 利益剰余金(期首) | 400 | | |
| 利益剰余金(連結除外) | 300 | | |
| 評価差額 | 300 | | |
③ 持分法による評価:取得後の利益の親会社持分を投資の修正額としてS社株式に加算| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|
| S社株式 | 210 | 利益剰余金(連結除外) | 300 |
| 非支配株主持分 | 90 | | |
④ 売却損益の修正:投資の修正額のうち売却した分| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|
| 子会社株式売却益 | 105 | S社株式 | 105 |
事例F
支配喪失 ── 投資の修正額のうち、売った分で売却益を直す
📍 ラボの場所:設例・応用タブ 事例F ステップ4
ハルカ
事例Fは、35%を800で売って35%になります。個別の簿価は1,380×35/70=690で、売却益は110ですね。
先生
そう。ここで判定が変わるんだ。50%を下回って支配がなくなるから、もう資本取引ではないよ。
先生
S社のB/Sを連結から外して、残る35%は関連会社として持分法で評価するよ。
迷いポイント 支配を失ったら、個別の売却益110がそのまま連結の売却益になる?
ハルカ
支配がなくなるなら、もう資本剰余金の出番はないですよね。個別の110を、そのまま連結の売却益にすればいいんですか。
先生
損益になるのは合っているけれど、金額は直すんだ。この設例はのれん償却なしの前提なので、取得後の利益300の70%、210がS社株式に上乗せされているよね。これが投資の修正額だよ。
先生
そう。売ったのは70%のうち35%、つまり半分だから、修正額のうち105は売った株式の分。連結上の売却益は110-105=5になるんだ。
ハルカ
あ、応用編の「投資の修正額は、売却や支配を失ったときに効いてくる」というのは、このことだったんですね。
先生
そのとおりだよ。残る35%も、個別の簿価690に修正額の残り105を足した795で、持分法の評価額として持ち続けるんだ。
💡 そうだったのか!
支配を失ったら、個別の売却損益を
投資の修正額のうち売った分だけ直します。残る株式は、関連会社なら
持分法による投資評価額(690+105=795)で評価します。
事例Fのステップ4では、開始仕訳の振戻しから売却損益の修正まで、4つの仕訳が順に並んでいますラボで開く ▶
📕 事例F ラボの画面
イベント後の主な残高です。残る株式は持分法で評価し、非支配株主持分は連結から消えます。
| 項目 | 2年目末の連結B/S等 |
|---|
| S社株式(持分法の評価額) | 795 |
| 連結上の子会社株式売却益 | 5 |
| 非支配株主持分 | ―(連結除外) |
| 利益剰余金(連結) | 2,395 |
利益剰余金(連結)= P社の個別 2,290 + 取得後の利益 300×70% - 売却損益の修正 105 = 2,395
事例F
結果と判定 ── 同じ「売却」でも、支配が続くかで行き先が分かれる
📍 ラボの場所:設例・応用タブ 事例F ステップ5
ハルカ
結果を見ると、連結上の売却益5、S社株式795、非支配株主持分は連結から消えていますね。
先生
そう。事例Fは、原典の設例に合わせてのれんを償却しない特殊な前提で計算しているよ。通常は、支配を失うまでのれんを償却するから、修正額はその分だけ小さくなるんだ。
迷いポイント 一部売却か支配喪失かは、売る比率の大きさで決まる?
ハルカ
14%なら資本剰余金、35%なら売却益。じゃあ、たくさん売るほど損益に出やすい、ということですね。
先生
見るのは売った量ではなく、売った後も支配が続くかなんだ。ラボは簡単のために50%超かどうかで判定しているけれど、実務では実質的な支配で判断するよ。続けば資本取引、失えば損益取引に変わるんだ。
ハルカ
売る量の問題だと思って、ずっと電卓ばかり見ていました。
先生
電卓の前に、まず「支配は続く?」を確かめるくせをつければ大丈夫だよ。
💡 そうだったのか!
分かれ目は売った比率ではなく
売却後も支配が続くかです。続けば資本剰余金、失えば売却損益の修正と、残る投資の評価のし直しになります。
⏱ 30秒だけラボで試す
- シミュレーションタブ →「🔁 支配獲得後」で「事例E 一部売却・支配継続(70%→56%)」を選ぶ
- 「売却する比率(%)」を 14 → 30 に変える
👀 判定が「支配継続:子会社のまま」から 「支配喪失 → 関連会社(持分法)」に変わり、持分比率は 70% → 40% になります。表示も、資本剰余金から「連結上の売却損益」と「残る投資の評価額」に切り替わります。
ラボを開く ▶
今日の内容を、ラボで確かめてみませんか?
この記事の図は、すべて資本連結ラボの画面そのものです。設例タブを開けば、同じ図を見ながら、ステップを1つずつ読み返せます。
資本連結ラボを開く ▶今日のまとめ ── 設例ごとの結論
おわりに
今日のふりかえり
先生
今日のまとめだよ。支配が続く間の買い増しや一部売却は、株主どうしの取引だから差額は資本剰余金。支配を失ったら、個別の売却損益を投資の修正額のうち売った分で直して、残る株式は持分法の評価額にするんだ。
ハルカ
支配が続くかどうかで、行き先が全部変わるんですね。私、パン屋さんでクロワッサンかメロンパンかで毎回15分迷うんですけど、今日の判定は迷わずにできそうです。
先生
パン選びは、ゆっくり迷っていいよ。でも、最初に「支配は続く?」と確かめる順番が身についたのは大きいんだ。
ハルカ
はい。15分迷うのは、たぶんこれからも変わらないと思います。
先生
それも大事な時間だよ。次の時価発行増資編では、株を売り買いしなくても持分が動く事例G・Hを見ていこうか。
参考資料
企業会計基準第22号「連結財務諸表に関する会計基準」/移管指針第4号「連結財務諸表における資本連結手続に関する実務指針」(同・設例)(いずれも企業会計基準委員会)。ラボの事例の数値は、指針の設例と同じパターンを独自の数値で組み立てたものです。設例は税効果なしで計算しています。P社・S社は架空の会社の例です。公認会計士が監修しています。
このシリーズの記事:基礎編 ── 投資と資本の相殺消去・のれん・非支配株主持分/応用編 ── 段階取得・追加取得・売却・投資の修正額/設例・支配獲得編(事例A〜C)/設例・時価発行増資編(事例G・H)
📓 ハルカの学習ノートで、この章を見る ▶
この記事を書いた人
TaxJudge編集部|公認会計士・税理士(実務25年)による企画・監修。会計基準・税法・裁決・有価証券報告書などの一次情報をもとに、検索できるデータベースと計算・判定・文書作成ツールを制作しています。