資産除去債務ラボ【設例・取得から除去と算定編】|先生と一緒に図で学ぶ設例1〜3 両建て・期待値とインフレ・主たる資産
無料の学習ツール「資産除去債務ラボ」の読み方ガイドです。ラボの設例タブから、取得から除去までと見積額の算定の設例(設例1〜3型)を1つずつ、先生と生徒の会話形式で見ていきます。登場する会社と設例の数値はすべて架空の例です(原典の設例の数値は使っていません)。解説は公認会計士・税理士が監修しています。各行の図はラボの図そのものです。重要な節の最後には、ラボで30秒だけ手を動かす小さな実習を置いています。
📘 設例・基礎1 ラボの画面
🧾 取得時の仕訳
取得時:設備の取得と資産除去債務の計上| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|
| 有形固定資産(設備) | 7,359 | 現金預金 | 6,000 |
| | 資産除去債務 | 1,359 |
はじめに
設例1〜3型 ── 取得から除去まで、そして見積額の作り方
📍 ラボの場所:設例・基礎タブ 基礎1 ステップ4
ハルカ
先生、今日は設例編の1本目ですね。基礎1が設備の取得から除去まで、基礎2が見積額の算定、応用1が主たる資産の設例です。
先生
基礎編の5段の流れを、仕訳で最後まで追う回なんだ。まず基礎1の取得時の仕訳を見てみようか。
ハルカ
設備 7,359 に対して、現金預金 6,000 と資産除去債務 1,359。1,500 を 2%・5年で割り引いた 1,359 を、設備の帳簿価額に足しています。
先生
そう。負債と同じ額を資産にも計上するのが両建処理だよ(第7項)。この 1,359 が、5年かけて費用になっていくんだ。
設例・基礎タブの基礎1を開きながら読むと分かりやすいですラボで開く ▶
📘 設例・基礎1 ラボの画面
🧾 1年目末の仕訳
1年目末:時の経過による資産除去債務の増加| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|
| 利息費用(時の経過による調整額) | 27 | 資産除去債務 | 27 |
1年目末:設備と除去費用の減価償却| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|
| 減価償却費 | 1,472 | 減価償却累計額 | 1,472 |
① 認識② 算定③ 両建て④ 費用配分⑤ 見直し・履行
| 期首の債務 | 時の経過(利息費用) | 見積りの変更 | 期末の債務 | 除去費用の償却 | 設備本体の償却 | 減価償却費 計 |
|---|
| 計上時 | | | | 1,359 | | | |
| 1年目 | 1,359 | 27 | | 1,386 | 272 | 1,200 | 1,472 |
| 2年目 | 1,386 | 27 | | 1,413 | 272 | 1,200 | 1,472 |
| 3年目 | 1,413 | 29 | | 1,442 | 271 | 1,200 | 1,471 |
| 4年目 | 1,442 | 29 | | 1,471 | 272 | 1,200 | 1,472 |
| 5年目 | 1,471 | 29 | | 1,500 | 272 | 1,200 | 1,472 |
| 合計 | | 141 | | | 1,359 | 6,000 | 7,359 |
債務は時の経過で毎期増え、5年目末に見積額 1,500 に一致する。
除去費用の償却 1,359+利息費用 141 = 1,500。
第7・9項
設例・基礎1
1年目末 ── 利息費用 27 と減価償却費 1,472
📍 ラボの場所:設例・基礎タブ 基礎1 ステップ5・6
ハルカ
1年目末の仕訳は2本ですね。時の経過で債務が 27 増えて、減価償却費は本体 1,200 と除去費用 272 の合計 1,472。
先生
27 は期首の 1,359 に 2% をかけた額で、債務を5年後の 1,500 に近づけていく調整なんだ。年次表を下まで見ると、5年目末にちょうど 1,500 になっているよ。
迷いポイント 利息費用は、支払利息と同じ営業外費用?
ハルカ
「利息」と付くので、営業外費用の支払利息と並べて表示するのだと思っていました。
先生
そこは名前に引っ張られやすいんだ。時の経過による調整額は、除去費用の減価償却費と同じ区分に計上するんだよ(第14項)。
ハルカ
誰にもお金を借りていないのに、毎年きちんと利息の請求書だけが届くんですね。
先生
差出人は時の経過だよ。だから借入金の利息とは別の扱いなんだ。
💡 そうだったのか!
時の経過による調整額は、期首の債務 × 当初の割引率。表示は支払利息ではなく、
減価償却費と同じ区分です(第13・14項)。
📘 設例・基礎1 ラボの画面
🧾 5年目末:除去と履行
5年目末:設備の除去| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|
| 減価償却累計額 | 7,359 | 有形固定資産(設備) | 7,359 |
5年目末:資産除去債務の履行| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|
| 資産除去債務 | 1,500 | 現金預金 | 1,560 |
| 履行差額(費用) | 60 | | |
設例・基礎1
5年目末 ── 撤去の支出 1,560 と履行差額 60
📍 ラボの場所:設例・基礎タブ 基礎1 ステップ7
ハルカ
5年目末に債務は 1,500 になりましたが、実際の支出は 1,560 でした。差額の 60 は履行差額ですね。
先生
そう。見積りと実際の差を、除去した時点で精算するんだ。仕訳は、資産除去債務 1,500 と履行差額 60 で、現金預金 1,560 になるよ。
迷いポイント 履行差額 60 は、臨時の損失として特別損失?
ハルカ
最後の年に一度だけ出る差額なので、特別損失にするのが自然だと思いました。
先生
原則は、除去費用の費用配分額と同じ区分に含めるんだ(第15項)。それから、支出 1,560 はCF計算書では投資活動の区分に表示するよ(指針第12項)。
💡 そうだったのか!
履行差額は
除去費用の費用配分と同じ区分(第15項)。撤去の支出は、CF計算書の
投資活動に表示します。
⏱ 30秒だけラボで試す
- リンクからシミュレーション「取得から除去まで」を開く(設例1型の数字)
- 「除去費用の見積額(割引前)」を 1,500 から 1,800 に変える
👀 当初の資産除去債務は 1,359 → 1,630。実際の支出 1,560 は変えていないので、履行差額は「費用の減少 240」になります。
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📘 設例・基礎2 ラボの画面
① 認識② 算定③ 両建て④ 費用配分⑤ 見直し・履行
800×25% + 1,000×55% + 1,300×20% = 1,010
生起しうる複数のCFを発生確率で加重平均(第6項(1))。各ケースには乖離リスクを反映済みという前提。
第6項(1)第39項
設例・基礎2
解体は期待値 1,010、埋戻しは最頻値 580 ── 積み上げて 2,555
📍 ラボの場所:設例・基礎タブ 基礎2 ステップ2・3
ハルカ
解体の労務費は 800・1,000・1,300 を確率で加重平均して 1,010。埋戻しは最頻値の 580 です。
先生
見積りの方法は、期待値でも最頻値でもいいんだ。この設例では、ぶれのある労務費に期待値を使っているよ。ちなみに、最頻値なら 1,000 だね。
ハルカ
収益認識の変動対価でも、要素ごとに最頻値と期待値を選びました。同じ考え方ですか。
先生
よく覚えていたね。見積る対象ごとに、どちらがふさわしいかを考える点は似ているよ。この設例も、解体と埋戻しで方法を分けているんだ。
迷いポイント 業者に頼む解体の見積りに、業者の利益まで入れる?
ハルカ
業者の利益は業者のものなので、自社の見積りからは外すのだと思っていました。
先生
業者に頼むなら、払うのは利益を含んだ額なんだ。だから間接費 707 と利益 258 も足すよ。自社で行う埋戻しは、自社の人件費と間接費で見積るんだ。
ハルカ
業者さんの利益まで心配してあげるなんて、会計はずいぶん面倒見がいいんですね。
先生
面倒見ではなく、実際に出ていくお金を数えているだけだよ。
💡 そうだったのか!
業者に任せる部分は
業者に払う額(間接費・利益を含む)、自社で行う部分は
自社の人件費・間接費で見積ります。
⏱ 30秒だけラボで試す
- リンクからシミュレーション「見積額の算定」を開く(設例2型の数字)
- 「埋戻し等(最頻値)」を 580 から 700 に変える
👀 インフレ補正前の合計が 2,555 → 2,675、資産除去債務は 2,616 → 2,739 になります。
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📘 設例・基礎2 ラボの画面
🧾 取得時の仕訳
取得時:資産除去債務の計上(除去費用を設備の帳簿価額に加える)| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|
| 有形固定資産(施設) | 2,616 | 資産除去債務 | 2,616 |
設例・基礎2
インフレで 2,878 に引き上げ、1.2% で割り引いて 2,616
📍 ラボの場所:設例・基礎タブ 基礎2 ステップ4・5
ハルカ
2,555 を年 1.5% のインフレで8年分引き上げて 2,878。それを 1.2% で割り引いて 2,616 です。
先生
除去する時点の価格に直してから、今の価値に割り引くんだ(指針第19項)。割引率は、8年の利付国債の流通利回りを参考にしているよ(指針第23項)。
迷いポイント インフレで上げて割引で下げるなら、両方省いても同じ?
ハルカ
上げて下げるなら、ほとんど 2,555 に戻りますよね。両方とも省いてしまってもいいのでは。
先生
率が違うから一致しないんだ。インフレは将来の価格、割引率は時間価値で、見ているものが別なんだよ。この設例でも 2,555 と 2,616 で 61 違うんだ。
💡 そうだったのか!
インフレ補正は
除去時点の価格への引き直し、割引は
今の価値への引き直し。別のものなので、それぞれ見積ります。
⏱ 30秒だけラボで試す
- リンクからシミュレーション「見積額の算定」を開く(設例2型の数字)
- 「インフレ率(%/年)」を 1.5 から 0 に変える
👀 割引前の金額は 2,555 のままになり、資産除去債務は 2,616 → 2,322 に下がります。
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📕 設例・応用1 ラボの画面
🧾 取得時
設備A・Bの取得と資産除去債務| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|
| 有形固定資産(設備A) | 21,300 | 現金預金 | 26,000 |
| 有形固定資産(設備B) | 6,000 | 資産除去債務 | 1,300 |
🧾 Bの更新
旧Bの除去と新Bの取得| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|
| 減価償却累計額 | 6,000 | 有形固定資産(旧設備B) | 6,000 |
| 固定資産除却損 | 400 | 現金預金 | 6,400 |
| 有形固定資産(新設備B) | 6,000 | | |
設例・応用1
設備Aと構成資産B ── まとめて 1,300 を見積り、Aに加える
📍 ラボの場所:設例・応用タブ 応用1 ステップ2・3
ハルカ
除去の義務があるのは設備Aだけなのに、Bの 400 もまとめて 1,300 を計上して、Aの帳簿価額に加えています。
先生
BはAを除去するときに一緒に除去されるからなんだ。A・Bの債務を一括して見積り、除去費用はAに加えて、Aの耐用年数 12年で償却するよ(指針第6・7項)。
ハルカ
減損の設例で、主要な資産と構成資産を習いました。あれと似た組み立てですか。
先生
主役と脇役に分ける見方は似ているね。ただ、減損は将来CFの見積期間の話で、こちらは除去費用をどの資産に載せるかの話なんだ。
迷いポイント Bを4年ごとに更新するときの除去も、資産除去債務?
ハルカ
Bも除去するのだから、更新のたびの除去費用も資産除去債務に入れるのだと思いました。
先生
Aを除去するまでの短い周期の除去は対象外なんだ(指針第24項)。4年目末の除去の支出 400 は、固定資産除却損になるよ。
ハルカ
Bは何度も入れ替わるのに、最後にAと一緒に去るBだけが名簿に載るんですね。
先生
そう、最後の日にAと一緒にいるBの分だけが債務になるんだ。
💡 そうだったのか!
構成資産は主たる資産と
一括して見積り、主たる資産に加えます。主たる資産の除去前の
短い周期の除去は対象外で、除却損です(指針第6・24項)。
応用1は割引なしの簡単な数字です。シミュレーションのプリセット「割引なし」で 1,300 の推移を確認できますラボで開く ▶
今日の内容を、ラボで確かめてみませんか?
この記事の図は、すべて資産除去債務ラボの画面そのものです。設例タブを開けば、同じ図を見ながら、ステップを1つずつ読み返せます。
資産除去債務ラボを開く ▶今日のまとめ ── 設例ごとの結論
おわりに
今日のふりかえり
先生
今日のまとめだよ。両建てした除去費用は減価償却と時の経過で費用になり、最後に履行差額で精算する。見積額は、業者に頼む部分と自社で行う部分を分けて積み上げ、インフレで引き上げてから割り引く。この流れを持ち帰ってほしいんだ。
ハルカ
基礎編では 1,359 が 1,500 に育つ図を眺めていただけでしたが、今日は仕訳で、どの行がどの区分に入るかまで追えました。
先生
図と仕訳の両方で説明できると、決算書の読み手にも話が通じるようになるよ。
ハルカ
利息費用の請求書の差出人が時の経過だと分かったので、もう営業外の欄で探し回らずに済みます。
先生
探す場所が分かったなら上出来だよ。次の見積りの変更と使用の都度編では、見積りが増えたり減ったりしたときの割引率を見ていこうか。
参考資料
企業会計基準第18号 第3〜15項、適用指針第21号 第3・5〜7・12・19・23〜25項、設例1〜3。企業会計基準第18号「資産除去債務に関する会計基準」(2008年3月31日公表、2024年9月13日改正)、企業会計基準適用指針第21号「資産除去債務に関する会計基準の適用指針」(2011年3月25日改正。設例1〜8)、企業会計基準第34号「リースに関する会計基準」・企業会計基準適用指針第33号「リースに関する会計基準の適用指針」(使用権資産との関係)。基準確認日:2026年10月12日。ラボの設例は、原典の設例1〜8と同じパターンを独自の数値で組み立てたものです(原典の数値は画面に出していません)。
このシリーズの記事:基礎編/応用編/設例・見積りの変更と使用の都度編(設例4・5)/設例・賃借建物とリース編(設例6・使用権資産)/設例・注記と経過措置編(設例7-1・7-2・8)
この記事を書いた人
TaxJudge編集部|公認会計士・税理士(実務25年)による企画・監修。会計基準・税法・裁決・有価証券報告書などの一次情報をもとに、検索できるデータベースと計算・判定・文書作成ツールを制作しています。