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資産除去債務ラボ【基礎編】|先生と一緒に図で学ぶ両建処理・割引率・時の経過・見積りの変更

資産除去債務ラボ【基礎編】|先生と一緒に図で学ぶ両建処理・割引率・時の経過・見積りの変更

無料の学習ツール「資産除去債務ラボ」の読み方ガイドです。ラボの基礎タブを上から順に、先生と生徒の会話形式で見ていきます。登場する会社と設例の数値はすべて架空の例です(原典の設例の数値は使っていません)。解説は公認会計士・税理士が監修しています。各行の図はラボの図そのものです。重要な節の最後には、ラボで30秒だけ手を動かす小さな実習を置いています。

今日の事例
導入設例の数字(P社の排水処理設備)
設備の取得原価/耐用年数6,000/5年(定額法・残存価額ゼロ)
使い終わったら撤去する法的義務あり(操業許可の条件)
撤去の支出の見積り(5年後)1,500
割引率(無リスク・税引前)2%
資産除去債務(当初計上額)1,359
設備の帳簿価額(取得時)7,359(6,000+1,359)
1年目の費用減価償却 1,472(うち除去費用分 272)+利息費用 27
5年後の実際の支出1,560(履行差額 60)
はじめに

今日の題材 ── 排水処理設備の撤去費用を、取得した日から考える

📍 ラボの場所:基礎タブ全体・設例・基礎1
ハルカ
先生、資産除去債務は「将来の撤去費用を引当てるもの」くらいの理解です。今日はどこから始めますか。
先生
1台の設備で、取得から撤去までを通して見ていこうか。P社は 6,000 の排水処理設備を買って、使い終わったら撤去する義務を負ったんだ。
ハルカ
撤去は5年後で 1,500 の見込みなのに、表では資産除去債務が 1,359 になっています。
先生
そこが最初の入口だよ。5年後の 1,500 を、今の価値に割り引いた額が 1,359 なんだ。それを取得した日に負債にして、同じ額を設備に加える。この流れを順に追っていこうか。
ラボの基礎タブを開きながら読むと分かりやすいですラボで開く ▶
📗 基礎 範囲 ラボの図

この支出は「資産除去債務」? カードを押して確かめよう
定期借地の店舗建物(更地で返還)○賃借オフィスの内装(原状回復条項)○アスベストを含む建物(特別な除去)○使用権資産の原状回復○設備の定期的な大規模修繕×不適切な操業で生じた土壌汚染×自主的な撤去計画(法的義務なし)×工場の転用・遊休化×
対象:法令又は契約で要求される法律上の義務と、それに準ずるもの(第3項(1))

有形固定資産の取得・建設・開発・通常の使用によって生じ、その除去に関して求められる義務。

有形固定資産には、建設仮勘定、使用権資産、投資不動産などの「準じる有形の資産」も含む(第23項)。

カードをクリックすると、1件ずつ理由を表示します。

基礎 範囲

このラボの位置づけと対象 ── 有形固定資産の除去に関する義務

📍 ラボの場所:基礎タブ 範囲
ハルカ
カードが8枚あって、上の4枚が○、下の4枚が×ですね。定期借地の建物、オフィスの内装、アスベスト、使用権資産が対象です。
先生
共通点は、法令か契約で、除去が求められていることなんだ。有害物質を特別な方法で取り除く義務も入るし、借りている物件の原状回復も入るよ。
迷いポイント 使い終わったら撤去する予定の設備は、全部対象?
ハルカ
会社が「この設備は10年後に撤去する」と決めていれば、それも資産除去債務になりますよね。
先生
自分で決めた計画だけなら対象外なんだ。対象は法律上の義務と、それに準ずる「履行を免れることがほぼ不可能な義務」だけだよ(第28項)。
ハルカ
大規模修繕も×なんですね。毎年お金がかかるので、てっきり仲間だと思っていました。
先生
修繕は使い続けるための支出で、除去ではないからね。異常な原因で生じた汚染や、転用・遊休も対象外なんだ。
💡 そうだったのか!
対象は法令・契約で求められる除去の義務とそれに準ずるもの。自分で決めた撤去計画、修繕、異常な原因による汚染は対象外です。
📗 基礎 1 ラボの図

同じ設備・同じ除去費用。2つの方法でB/Sはどう違う? 時間を進めてみよう
引当金処理(採用しない)使った分だけ毎期 300 を積み立てる6,000資産(設備)0負債(なし)資産負債の両建処理(基準)取得時に負債の全額と同額の資産を計上7,359資産(設備)1,359負債
取得した日:両建処理では、除去の負担 1,359(1,500 を 2% で 5年割り引いた額)が最初から負債に載る

引当金処理では取得時の負債はゼロ。将来の除去の負担がB/Sに出てこない(第34項)。

両建処理では同額を設備の取得原価に加える。除去の支出を付随費用と同様に取得原価に含め、回収すべき投資額を引き上げる(第41項)。

基礎 1

なぜ資産除去債務か ── 除去の負担を、取得した日からB/Sに載せる

📍 ラボの場所:基礎タブ 1
ハルカ
同じ設備なのに、左右でB/Sが違います。右の両建処理だけ、取得した日に負債 1,359 があります。
先生
引当金処理だと、使った分だけ毎期 300 ずつ積み立てるので、取得した日の負債はゼロなんだ。将来の撤去の負担がB/Sに出てこない。それが不十分だと考えられたんだよ(第34項)。
迷いポイント 両建処理は、費用の合計が引当金処理より大きくなる?
ハルカ
取得した日に 1,359 も負債を立てるなら、そのぶん費用も多く出そうです。
先生
合計は同じなんだ。5年後にはどちらも負債が 1,500 になって、費用の合計も 1,500 だよ。違うのは途中のB/Sに撤去の負担が載るかどうかなんだ。
ハルカ
引当金処理は、撤去の請求書を引き出しにしまっておいて、少しずつ思い出す方式なんですね。
先生
両建処理は、その請求書を最初から机の上に出しておく方式だよ。
💡 そうだったのか!
両建処理は、撤去の負担を取得した日から負債に載せ、同じ額を設備に加える方法。費用の合計は引当金処理と同じで、違うのはB/Sの見え方です。
📗 基礎 2 ラボの図

5つの箱をクリック。導入設例(基礎1)の数字で、各段で何をするかを表示します
① 認識発生時に負債② 算定割引前CF → 割引③ 両建て同額を資産に④ 費用配分償却+時の経過⑤ 見直し・履行変更・履行差額導入設例では:設備を取得した日に、除去する法的義務が生じた。
① 認識:義務が発生した時に負債として計上(第4項)

通常は有形固定資産の取得・建設・開発の時点。使用の都度発生するものは各期(第8項)。

発生時に金額を合理的に見積れなければ計上せず、見積れるようになった時点で計上する(第5項)。

基礎 2

5段の流れ ── 認識 → 算定 → 両建て → 費用配分 → 見直し・履行

📍 ラボの場所:基礎タブ 2
ハルカ
①認識、②算定、③両建て、④費用配分、⑤見直し・履行。5つの箱が並んでいますね。
先生
この5段を順に進むんだ。①で負債を立てる時点を決め、②で金額を出し、③で同じ額を資産に加える。④で毎期の費用にして、⑤で見積りを直したり撤去したりするよ。
迷いポイント 割引率が変わったら、毎期計算し直す?
ハルカ
金利は毎年動くので、②の算定も毎期やり直すんですよね。
先生
やり直さないんだ。時の経過は、負債を計上したときの割引率で計算し続けるよ(第9・49項)。見直すのは、割引前の撤去費用の見積りが大きく変わったときだけなんだ。
💡 そうだったのか!
流れは認識→算定→両建て→費用配分→見直し・履行の5段。割引率は計上時のものを使い続け、見直すのは割引前の見積りが変わったときです。
📗 基礎 3 ラボの図
資産除去債務法令・契約で要求される法律上の義務それに準ずるものほぼ不可避の義務除去する義務有害物質を特別に除去判例・行政の通達などで法律上の義務とほぼ同等「除去」=用役提供から除外○ 売却○ 廃棄○ リサイクル× 転用・用途変更× 遊休状態× 一時的な除外
法令又は契約で要求される法律上の義務(第3項(1))

法令で除去が求められるもの、契約(定期借地契約・賃貸借契約の原状回復条項など)で除去が求められるもの。

義務が「有形固定資産の取得・建設・開発・通常の使用」によって生じていることが前提(第26項)。

基礎 3

定義 ── 「法律上の義務とそれに準ずるもの」と「除去」の意味

📍 ラボの場所:基礎タブ 3
ハルカ
資産除去債務の下に、「法律上の義務」と「それに準ずるもの」の2つがあります。
先生
法律上の義務は、法令や契約で除去を求められるものだね。準ずるものは、判例や行政の通達などで、法律上の義務とほぼ同じくらい避けられない支出を指すんだ(第28項)。
迷いポイント 工場を遊休にしたら、そこから資産除去債務が始まる?
ハルカ
工場を止めて使わなくなったら、「除去」したのと同じですよね。そこで計上するのかと思いました。
先生
遊休は「除去」に当たらないんだ。除去は用役提供から外すことで、売却・廃棄・リサイクルは入るけれど、転用・用途変更・遊休は入らないよ(第3項(2))。
ハルカ
止まっているだけで、まだ引退していないんですね。工場にも「休職中」があるとは思いませんでした。
先生
工場が引退するのは、売却や廃棄のときなんだよ。
💡 そうだったのか!
「除去」は売却・廃棄・リサイクルなどで用役提供から外すこと。転用・用途変更・遊休は除去に当たりません。
📗 基礎 4 ラボの図
0年1年2年3年4年5年6年7年8年9年10年取得除去負債と資産を計上取得と同時取得の時から除去まで、償却と時の経過で費用配分
取得・建設・開発・通常の使用によって発生した時に計上(第4項)

多くの場合、取得の時点で発生する。使用の都度発生する場合は各期に計上(第8項、応用B1)。

基礎 4

認識の時点 ── 発生した時。見積れなければ注記して、見積れるようになった時に

📍 ラボの場所:基礎タブ 4
ハルカ
時間軸の0年目に「負債と資産を計上」とあります。取得と同時なんですね。
先生
義務が発生した時に計上するんだ(第4項)。多くの設備は、取得や建設の時点で発生するよ。ラボの切替では、見積れない場合と、法令の改正で後から発生する場合も見られるんだ。
迷いポイント 見積りが難しいときは、計上しなくてよい?
ハルカ
撤去がいつになるか分からないなら、計上しなくていいんですよね。少し気が楽です。
先生
「難しい」だけでは計上をやめられないんだ。入手できる証拠をすべて使って最善の見積りをしても、なお金額を出せない場合に限るよ(指針第2項)。そのときも、概要と理由を注記するんだ。
💡 そうだったのか!
計上は義務が発生した時。合理的に見積れないときは計上せず注記し、見積れるようになった時点で、見積りの変更と同じように計上します。
📗 基礎 5 ラボの図

解体と埋戻しにいくらかかる? 3つの手順で見積る(設例2型の独自数値)
800確率 25%→ 2001,000確率 55%→ 5501,300確率 20%→ 2601,010期待値(加重平均)解体の労務費:生起しうる3つのケースと発生確率(見積値から乖離するリスクは反映済み)
期待値:生起しうる複数のCFを発生確率で加重平均した金額(第6項(1))

3つのケースを確率で重みづけすると 1,010。最も起こりやすい1つの金額(最頻値:この例では 1,000)を使う方法もある。

どちらを使う場合も、見積値から乖離するリスクを勘案する(第39項)。リスクは見積額を増やす方向の要素になる。

基礎 5

割引前の将来CF ── 自己の支出見積りを、最頻値か期待値で

📍 ラボの場所:基礎タブ 5
ハルカ
解体の労務費に3つのケースがあって、確率をかけて足すと 1,010。これが期待値ですね。
先生
そう。最も起こりやすい1つの金額、つまり最頻値の 1,000 を使う方法もあるんだ(第6項(1))。ラボの切替では、間接費・業者の利益・自社の埋戻しを積み上げていくよ。
ハルカ
あれ、減損でも「期待値で見積っても、ぶれのリスクは残る」という話がありましたよね。
先生
ちゃんと覚えていたね。ただし、資産除去債務ではリスクの入れ先が決まっているんだ。見積値からぶれるリスクはCFの側に入れて、割引率は無リスクのままにするよ(指針第5項)。
迷いポイント 撤去費用は、業者の見積書の金額をそのまま使う?
ハルカ
業者に見積りを取って、その金額を入れるのがいちばん正確ですよね。
先生
基準は自己の支出見積りなんだ。業者に任せる部分は業者の利益まで含めるし、自社でやる部分は自社のコストで見積るよ。業者の見積りは使える情報の1つで、取ることまでは求められていないんだ(指針第22項)。
💡 そうだったのか!
割引前の将来CFは自己の支出見積り。最頻値か期待値を使い、ぶれのリスクとインフレはCFの側に入れます。法人税等の影響は入れません。
⏱ 30秒だけラボで試す
  1. シミュレーション「見積額の算定」で、プリセット「採掘施設の解体と埋戻し」を選ぶ
  2. インフレ率を 1.5 から 0 にする

👀 資産除去債務(当初計上額)が 2,616 から 2,322 に下がります。インフレ補正は、除去の時点の価格に引き直す手順なんです。

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📗 基礎 6 ラボの図

信用力が違う2社が、同じ除去義務を負ったら?
X社(格付が高い)2,616割引率 1.2%Y社(格付が低い)2,616割引率 1.2%除去の中身が同じなら負債も同じ(自己の信用リスクは反映しない)同じ設備・同じ除去費用 2,878(8年後)の2社
割引率は、貨幣の時間価値を反映した無リスクの税引前の利率(第6項(2)、指針第5項)

原則として、CFが発生するまでの期間に対応した利付国債の流通利回りなどを参考に決める(指針第23項)。

CFが税引前なので率も税引前。見積値から乖離するリスクはCFの側に反映するので、割引率には入れない(指針第5項)。

基礎 6

割引率 ── 貨幣の時間価値を反映した、無リスクの税引前の利率

📍 ラボの場所:基礎タブ 6
ハルカ
格付が高いX社と、低いY社。撤去費用は同じ 2,878 で、資産除去債務はどちらも 2,616 ですね。
先生
割引率は無リスクの税引前の利率だからね(第6項(2))。期間に合った国債の利回りなどを参考にするので、会社の信用力で負債の額は変わらないんだ。
ハルカ
リースでは、借手の追加借入利子率で割り引きましたよね。会社ごとに率が違っていた気がします。
先生
よく覚えていたね。リース負債は借入れに近い性格だからなんだ。資産除去債務は金利を含まない債務なので、退職給付と同じく無リスクの率が整合的と考えられたんだよ(第40項)。
迷いポイント 信用力の低い会社は、高い割引率で割り引く?
ハルカ
信用リスクが高い会社は、借入れの金利が高いですよね。割引率も高くするのかと思いました。
先生
そうすると、Y社の負債は 1,806 まで小さくなってしまうんだ。同じ撤去義務なのに、信用力の低い会社ほど負債が軽く見える。それでは財政状態を適切に示さないと考えられたんだよ。
ハルカ
借金に困っている人ほど、借金が少なく見える仕組みになってしまうんですね。それは怖いです。
先生
だから信用リスクは入れないんだ。
💡 そうだったのか!
割引率は無リスクの税引前の利率で、計上時の率に固定します。信用リスクを入れると、信用力の低い会社ほど負債が小さく見えてしまいます。
⏱ 30秒だけラボで試す
  1. シミュレーション「見積額の算定」で、プリセット「採掘施設の解体と埋戻し」を選ぶ
  2. 割引率を 1.2 から 3 にする

👀 資産除去債務が 2,616 から 2,272 に下がります。割引率が高いほど当初の計上額は小さく、その後の利息費用が大きくなります。

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📗 基礎 7 ラボの図
仕訳:有形固定資産(設備) 7,359 / 現金預金 6,000・資産除去債務 1,359資産の部設備本体 6,000+除去費用 1,359負債の部(固定負債)資産除去債務 1,359同額
負債の計上額と同額を、関連する有形固定資産の帳簿価額に加える(第7項)

除去費用は付随費用と同じく取得原価の一部になる。その結果、減価償却を通じて残存耐用年数にわたり費用配分される。

B/Sの資産側には「除去費用」という独立の科目は出てこない。

基礎 7

両建て ── 負債と同額を、関連する有形固定資産の帳簿価額に加える

📍 ラボの場所:基礎タブ 7
ハルカ
設備本体 6,000 の下に「+除去費用 1,359」が点線で足されて、負債側に同じ 1,359 があります。
先生
負債を計上した時に、同じ額を設備の帳簿価額に加えるんだ(第7項)。撤去の支出を付随費用と同じように取得原価に含める考え方だよ。
迷いポイント 除去費用は「前払費用」のような別の資産にする?
ハルカ
撤去サービスを先に予約したようなものなので、長期前払費用に入れたくなります。
先生
別の資産にはしないんだ。除去費用は法律上の権利でも財産的価値でもないからね(第42項)。台帳で分けて管理するのはよいけれど、表示は有形固定資産なんだよ(第43項)。
💡 そうだったのか!
除去費用は関連する有形固定資産の帳簿価額に加えます。別の資産にはせず、使用権資産なら使用権資産に加えます。
📗 基礎 8 ラボの図

時間が経つと、費用と負債はどう動く?
各期の費用(除去費用の減価償却+時の経過による調整額)2991年2992年3003年3014年3015年除去費用の減価償却利息費用
資産除去債務の残高(各期末)1,359計上時1,3861年1,4132年1,4423年1,4714年1,5005年
1年目:除去費用の減価償却 272+利息費用 27(期首 1,359 × 2%)

減価償却:資産計上した除去費用 1,359 を残存耐用年数 5年で定額償却(第7項)。設備本体の償却 1,200 と合わせて 1,472。

時の経過による調整額:期首の負債 × 負債計上時の割引率(第9項)。本ラボは期末残高=見積額÷(1+率)残存年数を四捨五入して差額で求めるので、掛け算と±1違うことがある。

基礎 8

費用配分 ── 除去費用の減価償却と、時の経過による調整額

📍 ラボの場所:基礎タブ 8
ハルカ
毎年の費用の棒が、緑の減価償却とオレンジの利息費用に分かれています。1年目は 272+27 で 299 ですね。
先生
そう。資産に加えた 1,359 は5年で償却して、毎年 272 前後。負債は期首の残高に 2% をかけた分、時の経過で増えるんだ(第9項)。棒の下の残高が 1,359 から 1,500 へ上がっていくよ。
迷いポイント 利息費用は、営業外費用の支払利息に入れる?
ハルカ
「利息」と付くので、P/Lでは支払利息の近くに置けばいいんですよね。
先生
そこが間違いやすいところなんだ。時の経過による調整額は、関連する設備の減価償却費と同じ区分に入れるよ(第14項)。製造設備なら売上原価、管理用なら販管費なんだ。
ハルカ
名前は「利息」なのに、席は減価償却費の隣なんですね。名札と座席が合っていません。
先生
実際の借入れの利息ではないからね。退職給付の利息費用と同じ整理なんだよ(第55項)。
💡 そうだったのか!
費用は除去費用の減価償却+時の経過による調整額の2本立て。どちらも減価償却費と同じ区分で、5年間の合計は 1,500 になります。
⏱ 30秒だけラボで試す
  1. シミュレーション「取得から除去まで」で、プリセット「導入設例」を選ぶ
  2. 当初の割引率を 2 から 1 にする

👀 当初の資産除去債務が 1,359 から 1,427 に増えます。費用の合計は 1,500 のままで、償却と利息費用の割合が変わります。

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📗 基礎 9 ラボの図

除去にかかる費用の見積りが変わったら?
2年目末の見積りの変更1,913変更前の残高2,301+388変更後の残高増加分 400(割引前)をその時点の割引率 1% で割り引いて加算同額を設備に加え、残存年数で償却
残高の推移(5年・当初 1.5%)1,857計上時1,8841年2,3012年+3881,7503年▲5831,7754年1,8005年(期末の見積り変更)
2年目末:割引前の見積りが 2,000 → 2,400 に増加。増加分 400 は新たな負債の発生とみて、その時点の割引率 1% で割り引く

調整額 388 を負債と設備の帳簿価額に加え、残りの 3年で償却する(第10・11項)。

既存の負債は計上時の率のまま見直さない。以後の時の経過は、当初分 1.5%・増加分 1% の層ごとに計算する(加重平均の率 1.42% は、減少部分の率を特定できないときに使う)。

基礎 9

見積りの変更 ── 将来に向かって、増加はその時点の率、減少は計上時の率

📍 ラボの場所:基礎タブ 9
ハルカ
2年目末に見積りが 2,000 から 2,400 に増えて、負債が 388 増えています。
先生
増えた 400 は新しい負債の発生とみて、その時点の割引率で割り引くんだ(第11項)。1.0% で残り3年分を割り引いて 388 だよ。同じ額を設備に加えて、残りの3年で償却するんだ。
迷いポイント 見積りが増えたら、負債全体を新しい割引率で計算し直す?
ハルカ
割引率も変わったなら、負債を全部、今の 1.0% で計算し直すのかと思いました。
先生
既存の部分は見直さないんだ。当初の 2,000 は 1.5% のまま、増えた 400 だけを 1.0% で割り引くよ。見積りが減ったときは、計上時の率を使うんだ。
ハルカ
後から来た人だけ、今の値段で入場するんですね。最初から並んでいた人は、前売り券のままです。
先生
そういうイメージだね。減ったときの細かい扱いは、設例編で数字を追っていこうか。
💡 そうだったのか!
見積りの増加分はその時点の割引率、減少分は計上時の割引率(特定できなければ加重平均)。過去にさかのぼらず、残りの期間で配分します。
⏱ 30秒だけラボで試す
  1. シミュレーション「取得から除去まで」で、プリセット「見積りの増加 → 減少」を選ぶ
  2. 「見積りの変更」の欄を見る

👀 2年目 +388・3年目 ▲583 と表示されます。年次表では、変更した年の翌年から償却額が変わります。

ラボを開く ▶
📗 基礎 10 ラボの図

資産除去債務は、財務諸表のどこに出てくる? 書類をクリック
貸借対照表有形固定資産 設備(除去費用を含む)流動負債 資産除去債務(1年内)固定負債 資産除去債務損益計算書売上原価・販管費 減価償却費(除去費用分) 利息費用(時の経過) 履行差額特別損益(異常な場合)CF計算書投資活動によるCF 資産除去債務の履行 による支出注記:重要な非資金取引 資産除去債務の計上注記(1) 内容の簡潔な説明(2) 見込期間・割引率(3) 期中の増減(4) 見積り変更の概要(5) 見積れない場合
B/S:原則は固定負債。1年以内に履行が見込まれる分は流動負債(第12項)

科目名は「資産除去債務」など適切な名称。資産側は有形固定資産に含めて表示(第43項)。

取得した年(計上時)投資活動によるCF 有形固定資産の取得 ▲6,000 (除去費用 1,359 は資金の  移動がないので出てこない)注記:重要な非資金取引 資産除去債務の計上額 1,359除去した年(履行時)投資活動によるCF 資産除去債務の履行による 支出 ▲1,560営業活動によるCF(間接法) 減価償却費・利息費用は 非資金費用として加算
基礎 10

履行と表示 ── 履行差額、B/S・P/L・CF計算書・注記

📍 ラボの場所:基礎タブ 10
ハルカ
B/S、P/L、CF計算書、注記の4つの書類が並んでいます。資産除去債務は全部に出てくるんですね。
先生
B/Sは原則として固定負債で、1年以内に撤去する分は流動負債なんだ(第12項)。CF計算書では、撤去の支出を投資活動に入れるよ(指針第12項)。
迷いポイント 撤去したときの差額 60 は、特別損失?
ハルカ
債務は 1,500 なのに実際は 1,560 かかった。この 60 は予想外の損なので、特別損失ですよね。
先生
原則は、除去費用の償却と同じ区分なんだ(第15項)。見積りのずれも、もともと設備の使用期間に配分してきた費用の延長と考えるからね。著しく早く撤去したような異常な場合だけ、特別損益にするんだよ。
💡 そうだったのか!
履行差額は原則として減価償却費と同じ区分。B/Sは固定負債(1年内は流動)、撤去の支出は投資活動のCF、計上時は重要な非資金取引として注記します。
⏱ 30秒だけラボで試す
  1. シミュレーション「取得から除去まで」で、プリセット「導入設例」を選ぶ
  2. 実際の除去の支出を 1,560 から 1,450 にする

👀 履行差額が「費用の減少 50」に変わります。仕訳では貸方に「履行差額(費用の減少)」が出ます。

ラボを開く ▶

今日の内容を、ラボで確かめてみませんか?

この記事の図は、すべて資産除去債務ラボの画面そのものです。基礎タブを開けば、同じ図を見ながら読み返せます。

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📝 資産除去債務ラボ【応用編】(見積りの情報源・敷金の簡便法・使用権資産・減損と税効果)応用編を読む ▶
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今日のまとめ ── 迷いポイント早見表

迷いポイント答えラボ
使い終わったら撤去する予定の設備は全部対象?対象は法令・契約で求められる除去の義務とそれに準ずるもの。自分で決めた計画は対象外(第28項)基礎 範囲
両建処理は引当金処理より費用の合計が大きい?合計は同じ。違うのは、取得した日から撤去の負担がB/Sに載ること(第34項)基礎1
割引率が変わったら毎期計算し直す?計算し直さない。計上時の率を使い続け、見直すのは割引前の見積りが変わったとき(第9・49項)基礎2
工場を遊休にしたら資産除去債務が始まる?遊休・転用・用途変更は「除去」に当たらない(第3項(2))基礎3
見積りが難しいときは計上しなくてよい?最善の見積りをしても算定できない場合に限り計上せず、概要と理由を注記(指針第2項・第16項(5))基礎4
撤去費用は業者の見積書の金額をそのまま使う?自己の支出見積り。業者の情報は使える材料の1つ(第6項(1)・指針第3・22項)基礎5
信用力の低い会社は高い割引率で割り引く?使わない。無リスクの税引前の利率で、会社の信用力で負債の額は変わらない(第40項)基礎6
除去費用は前払費用のような別の資産にする?別の資産にしない。関連する有形固定資産の帳簿価額に加える(第7・42・43項)基礎7
利息費用は営業外費用の支払利息に入れる?減価償却費と同じ区分(第14・55項)基礎8
見積りが増えたら負債全体を新しい率で計算し直す?既存部分は見直さない。増加分だけその時点の率、減少分は計上時の率(第11項)基礎9
撤去したときの差額は特別損失?原則は除去費用の償却と同じ区分。異常な原因のときだけ特別損益(第15・58項)基礎10
おわりに

今日のふりかえり

先生
今日のまとめだよ。撤去の義務は、取得した日に割引後の額で負債にして、同じ額を設備に加える。費用は償却と時の経過の2本立てで、合計は割引前の見積額になる。割引率は無リスクで、計上時の率を使い続けるんだ。
ハルカ
前は「将来の費用を少しずつ引当てる」とだけ思っていました。今日は、撤去の負担を最初からB/Sに見せる仕組みだと分かりました。私の1Kのアパートも、出るときは原状回復ですよね。
先生
個人の家計に会計基準は要らないけれど、自分の部屋で考えてみるのは、いい練習になるね。
ハルカ
では今日から、部屋の壁をそっと両建てで眺めることにします。
先生
眺めるだけなら、負債は増えないから安心していいよ。次の応用編では、見積りの情報源、敷金の簡便法、使用権資産、減損や税効果との関係を見ていこうか。

参考資料

企業会計基準第18号「資産除去債務に関する会計基準」(2008年3月31日公表、2024年9月13日改正)、企業会計基準適用指針第21号「資産除去債務に関する会計基準の適用指針」(2011年3月25日改正。設例1〜8)、企業会計基準第34号「リースに関する会計基準」・企業会計基準適用指針第33号「リースに関する会計基準の適用指針」(使用権資産との関係)。基準確認日:2026年10月12日。ラボの設例は、原典の設例1〜8と同じパターンを独自の数値で組み立てたものです(原典の数値は画面に出していません)。

シリーズ:基礎編/応用編 / 設例編:取得から除去・算定編(設例1・2・3)・見積りの変更・使用の都度編(設例4・5)・賃借建物・リース編(設例6・使用権資産)・注記・経過措置・減損編(設例7-1・7-2・8) / 関連:減損会計ラボ【基礎編】(兆候・認識の判定・回収可能価額)/リース会計ラボ【基礎編】(使用権資産・リース負債・割引率)/税効果会計ラボ【基礎編】(一時差異・繰延税金資産)

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この記事を書いた人

TaxJudge編集部|公認会計士・税理士(実務25年)による企画・監修。会計基準・税法・裁決・有価証券報告書などの一次情報をもとに、検索できるデータベースと計算・判定・文書作成ツールを制作しています。