リース会計ラボ【基礎編】|先生と一緒に図で学ぶ使用権資産・リース負債・リース期間
無料の学習ツール「リース会計ラボ」の読み方ガイドです。ラボの基礎タブを上から順に、先生と生徒の会話形式で見ていきます。左の図はラボの図そのものです。重要な節の最後には、ラボで30秒だけ手を動かす小さな実習を置いています。
今日の事例
事例A(機械装置のリース・単位:千円)
| リース料 | 月額 1,500 |
| 支払 | 毎月末・60回 |
| 借手のリース期間 | 5年 |
| 借手の追加借入利子率 | 年 7% |
| 貸手の現金購入価額(借手は知らない) | 74,000 |
| 原資産の経済的耐用年数 | 8年 |
| 所有権移転・購入オプション | なし |
はじめに
今日の題材 ── 事例A
📍 ラボの場所:基礎タブ全体
ハルカ
先生、新しいリース会計基準を最初から教えてください。図に出てくる数字は何ですか。
先生
基礎の図は、ほぼ全部この事例Aの数字だよ。機械装置を5年間、毎月1,500で借りる、という一本の話を最後まで使う。左の表を手元に置いて、ラボの「基礎」タブを上から順に読んでいこうか。
ハルカ
リース料の合計は 1,500×60回で 90,000 ですね。
先生
そうだよ。この 90,000 が、新基準ではいくらで貸借対照表に載るかが今日の中心なんだ。
📗 基礎 ① ラボの図
基礎 ①
何が変わる? ── オペレーティング・リースもB/Sに載る
📍 ラボの場所:基礎タブ ①
先生
左の図の左半分が旧基準だよ。ファイナンス・リースだけがB/Sに載って、オペレーティング・リースは点線の外、つまり賃借料として費用にしていた。右半分の新基準では、借手は種類を問わず使用権資産とリース負債を計上するんだ。
迷いポイント オペレーティング・リースは、新基準でも賃借料のままでいい?
ハルカ
事務所の家賃は、これからも毎月「賃借料」で落とせばいいんですよね。
先生
それが、そうではないのだよ。借手にはファイナンスとオペレーティングの区別そのものが無くなる。事務所も店舗も、原則は使用権資産とリース負債を載せることになるんだ。例外は短期リースと少額リースの簡便法だけだよ。
先生
貸手はファイナンス/オペレーティングの分類を続けるよ。大きく変わるのは借手の方なんだ。
💡 そうだったのか!
新基準の借手は「単一モデル」。
オペレーティング・リースも原則としてB/Sに載ります。区別が残るのは貸手だけです。
📗 基礎 ② ラボの図
基礎 ②
判定と計算の流れ ── 8ステップで最後まで
📍 ラボの場所:基礎タブ ②
先生
左の8つの箱を順に進めばいいよ。①〜④が判断(リースに当たるか・期間・リース料・割引率)、⑤⑥が計算、⑦⑧がその後の変更と開示なんだ。
迷いポイント いちばん時間がかかるのは計算のところ?
先生
計算は表計算で機械的にできるよ。時間がかかるのは①と②の判断の方なんだ。特にリース期間は「合理的に確実」という見積りが入るから、社内の判断基準を文書にしておく必要があるんだよ。
ハルカ
計算は表計算ソフトがやってくれて、悩むのは人間の仕事…。パソコンより先に、私の頭がオーバーヒートしそうです。
先生
だから判断の根拠を紙に残して、頭を冷やしておくんだよ。
💡 そうだったのか!
新基準の実務は
判断(識別・期間)が本番。計算は、決めた条件をそのまま割り引くだけです。
📗 基礎 ③ ラボの図
基礎 ③
リースに該当する? ── 特定された資産+使用の支配
📍 ラボの場所:基礎タブ ③
ハルカ
契約書のタイトルが「リース契約」なら、リースですよね。
先生
名前では決めないんだ。左のフローのとおり、特定された資産があって、その資産の使用を支配する権利(経済的利益のほとんどすべて+使い方を決める権利)が移っていればリースを含むよ。
迷いポイント 「賃貸借契約」や「業務委託契約」なら、リースではない?
ハルカ
倉庫は「業務委託契約」なので、リースではないですよね。
先生
中身しだいだよ。専用の区画を決められて、そこを何に使うかを自分で決めているなら、業務委託という名前でもリースを含むことがある。逆に、サプライヤーがいつでも別の区画に入れ替えられて、入れ替えで得をするなら「特定された資産」が無いから、リースではないんだ。
ハルカ
リースかどうかは表紙で決まると思っていました。「賃貸借」という名前に、すっかり安心していました。
先生
その安心で、契約書を最後まで読まずに閉じないようにね。
ハルカ
中身を見て、特定と支配の2つを確かめるんですね。
💡 そうだったのか!
判定は
契約の名前ではなく中身。「特定された資産」と「使用の支配」の2つがそろえば、どんな名前の契約でもリースを含みます。
📗 基礎 ④ ラボの図
基礎 ④
借手のリース期間 ── 解約不能期間+「合理的に確実」な期間
📍 ラボの場所:基礎タブ ④
ハルカ
1年契約の店舗なら、リース期間は1年ですよね。
先生
左の図を見て。借手のリース期間は、解約不能期間に、行使することが合理的に確実な延長オプションの期間と、行使しないことが合理的に確実な解約オプションの期間を足したものなんだ。
迷いポイント 契約期間=リース期間ではない?
ハルカ
契約書に「期間1年」と書いてあるのに、それより長くなるんですか。
先生
普通借家契約は、貸手に正当な事由がないと更新を断れないから、借手は事実上の延長オプションを持っていると整理するんだ。そのうえで、内装の投資額や撤退のしやすさといった経済的インセンティブで、どこまで延長が合理的に確実かを決める。設例8-2では1年契約の店舗を5年と判断しているよ。
ハルカ
大家さんが断れないなら、家賃が永遠に続く気がしてきました。
先生
永遠までは入れないよ。「合理的に確実」と言える期間までなんだ。
ハルカ
内装にたくさんお金をかけた店ほど、期間が長くなるんですね。
💡 そうだったのか!
リース期間は
契約期間ではなく「合理的に確実に使う期間」。設備投資・解約コスト・事業上の重要性で決まります。
📗 基礎 ⑤ ラボの図
基礎 ⑤
借手のリース料 ── 何を負債に入れる?
📍 ラボの場所:基礎タブ ⑤
ハルカ
支払うものは全部、リース負債に入れるんですか。
先生
左の緑の5つが入るもの、赤の2つが入らないものだよ。固定リース料、指数・レート連動の変動リース料、残価保証の支払見込額、合理的に確実な購入オプションの行使価額、解約を織り込むときの違約金。売上連動の変動リース料と、分けて処理するサービス料は入れないんだ。
迷いポイント 残価保証は「保証額」を入れる?
ハルカ
終わったときに5,000まで保証するなら、5,000を入れますよね。
先生
借手が入れるのは支払見込額の方なんだ。処分価額が3,000と見込めるなら、差の2,000だけを払うと見込んで負債に入れる。保証額全額を貸手のリース料に入れるのは、貸手の側だよ。
ハルカ
同じ残価保証でも、借手と貸手で入れる金額が違うんですね。
💡 そうだったのか!
借手の残価保証は
「払うと見込む額」。売上連動の賃料は負債に入れず、発生したときに費用にします。
📗 基礎 ⑥ ラボの図
基礎 ⑥
割引率と現在価値 ── 負債は「割り引いた額」で計上
📍 ラボの場所:基礎タブ ⑥
ハルカ
リース料が90,000なら、負債も90,000ですか。
先生
左の帯を見て。90,000のうち紺色の75,753がリース負債、黄色の14,247は将来払う利息の分なんだ。毎月1,500を、年7%を12で割った月0.583%で1回ずつ割り引いて合計すると75,753になるよ。
迷いポイント 割引率は、貸手が使っている利率?
ハルカ
貸手が74,000で買った機械なら、貸手の利率を使えばいいですよね。
先生
借手はふつう、その74,000を知らないんだ。貸手の計算利子率を知り得なければ、借手の追加借入利子率を使う。事例Aの7%はそれだよ。使用権資産は、この負債に前払いや付随費用、原状回復の費用を足して、受け取ったインセンティブを引いた額になるんだ。
ハルカ
割引率を決めるだけで、負債の大きさが変わるんですね。
💡 そうだったのか!
リース負債は
リース料の現在価値。割引率が低いほど負債は大きく、利息は小さくなります。
⏱ 30秒だけラボで試す
- 「シミュレーション」タブの「開始日の計上」で「設例9-1型:機械装置(月末払い)」を読み込む
- 「割引率」を 7 から 3 に変える
👀 リース負債(開始日)が 75,753 → 83,479 に増え、利息相当額の総額は 14,247 → 6,521 に減ります。リース料の総額90,000は変わりません。
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📗 基礎 ⑦ ラボの図
基礎 ⑦
毎期の仕訳 ── 利息法で利息、定額法で償却
📍 ラボの場所:基礎タブ ⑦
ハルカ
毎月1,500払うとき、どんな仕訳になるんですか。
先生
支払額を利息と元本に分けるんだ。第1回の利息は 75,753×0.583%=442、残りの1,058が負債の返済になる。仕訳にするとこうだよ。
🧾 利息法(原則)
リース開始日:使用権資産とリース負債の計上| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|
| 使用権資産 | 75,753 | リース負債 | 75,753 |
第1回支払日:利息法で利息と元本に分ける(利息=前回支払後の元本×0.583%)| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|
| リース負債 | 1,058 | 現金預金 | 1,500 |
| 支払利息 | 442 | | |
迷いポイント 費用は毎年同じ金額になる?
ハルカ
賃借料のときは毎年18,000でした。新基準でも毎年同じくらいですよね。
先生
左のグラフを見て。紺の減価償却費は毎年15,151で一定(端数の調整で最終年だけ15,149)だけど、黄色の支払利息は残高が減るにつれて小さくなる。だから合計は1年目が20,038で、5年目は15,814。赤い破線の18,000と比べると、初めの年ほど費用が大きいんだ。
ハルカ
合計は同じなのに、最初の年ほど利益が減る…。少しがっかりします。
先生
5年間で見れば、減った分はあとの年で戻ってくるよ。
💡 そうだったのか!
新基準の費用は
「減価償却費(定額)+支払利息(逓減)」。合計は旧基準の賃借料と同じでも、
初めの年ほど大きくなります。
⏱ 30秒だけラボで試す
- 「開始日の計上」で「設例9-1型」を読み込む
- 「借手のリース期間(年)」を 5 から 10 に変える
👀 リース負債(開始日)が 75,753 → 129,190 に増え、1年目の費用は 20,038 → 21,669 になります。旧基準の賃借料は毎年18,000のままなので、期間が長いほど前倒しの差が広がります。
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📗 基礎 ⑧ ラボの図
基礎 ⑧
簡便的な取扱い ── 短期・少額・重要性10%
📍 ラボの場所:基礎タブ ⑧
ハルカ
全部の契約を割り引いて計上するのは大変です。
先生
だから左の3つの簡便法があるんだ。12か月以内で購入オプションのない短期リース、購入時に費用処理する基準額以下などの少額リースは、計上せずに費用処理を選べる。使用権資産総額の重要性が10%未満なら、利息を控除しない方法や、利息を定額で配分する方法を選べるよ。
迷いポイント 簡便法は「使ってもよい」?「使わなければならない」?
先生
どれも選択なんだ。ただ、選ぶ単位は項目ごとに違う。短期リースは原資産の表示科目ごと、少額リースは(2)の①と②のどちらかを選んで首尾一貫して使い、②ならリース1件ごとに使うかを選べる。何を選んだかは注記の対象になるよ。
ハルカ
選べる単位まで決めて、注記まで済ませておくんですね。
💡 そうだったのか!
簡便法は
「選べる」取扱い。基準額や10%の判定を会計方針として決め、選んだ内容を注記します。
⏱ 30秒だけラボで試す
- 「シミュレーション」タブで「簡便法の比較」に切り替え、「設例9-1型:機械装置」を読み込む
- 年度別比較の表で ① と ② の1年目を比べる
👀 ① 利息法の開始日の負債は 75,753、② 利息を控除しない方法は 90,000 です。1年目の費用は ① 20,038、② 18,000 で、②は旧基準の賃借料と同じ額になります。
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📗 基礎 ⑨ ラボの図
基礎 ⑨
契約条件の変更・見直し ── 再測定して、差額は資産か損益へ
📍 ラボの場所:基礎タブ ⑨
ハルカ
途中で事務所の面積を減らしたら、どうなるんですか。
先生
左のフローの下の赤い箱だよ。面積の縮小は範囲の縮小。負債を変更後の条件で測り直して、使用権資産も面積の割合で減らす。そのとき負債の減少額と資産の減少額の差は損益になるんだ。
迷いポイント 変更があったら、いつも損益が出る?
ハルカ
契約を変えたら、そのたびに利益や損失が出るんですよね。
先生
損益が出るのは、原則として範囲の縮小のときなんだ。期間の延長や賃料の改定は、負債の修正額をそのまま使用権資産に足し引きするから、ふつうは損益は出ない。例外は、賃料の減額などで使用権資産をゼロまで減らしても、まだ負債の減少額が余るときで、その余りだけは損益になる。原資産の追加で、増額が独立価格に見合うなら、別の新しいリースとして計上するよ。
ハルカ
基本は「縮小なら損益」、ただし資産がゼロを割りそうなときだけ例外、と覚えておきます。
💡 そうだったのか!
変更は
「独立したリース」「範囲の縮小(損益あり)」「それ以外(資産で調整)」の3つに分けて処理します。資産をゼロまで減らしても余る負債の減額だけは、損益になります。
⏱ 30秒だけラボで試す
- 「シミュレーション」タブで「条件変更・見直し」に切り替え、「設例15-2型:面積縮小+単価改定」を読み込む
- 「縮小の割合」を 40 から 60 に変える
👀 損益に計上する額が 5,764 → 8,644 に増えます。変更後の年額27,000で測り直す負債(95,741)は変わらず、使用権資産の減らし方だけが変わるためです。
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📗 基礎 ⑩ ラボの図
基礎 ⑩
表示・注記と、つながる基準
📍 ラボの場所:基礎タブ ⑩
ハルカ
リースの仕訳ができれば、ほかは何も変わらないですよね。
先生
左の図のとおり、まわりに5つの基準がつながっているんだ。使用権資産は減損の対象になるし、キャッシュ・フロー計算書では元本の返済が財務活動に入る。原状回復の義務があれば資産除去債務の費用を使用権資産に足すよ。
迷いポイント 税務も、同じように使用権資産と負債になる?
ハルカ
会計が変わるなら、税金の計算も同じように変わりますよね。
先生
税務では賃借料のまま扱う取引が多いんだ。そうすると使用権資産とリース負債の両方に一時差異が出るから、税効果会計の手当てがいるよ。それから、賃借料が減価償却費と利息に置き換わるので、営業活動のキャッシュ・フローは増えて見えるんだ。
ハルカ
仕訳ひとつで、B/SもP/LもCFも税効果も動く…。ドミノ倒しの最初の1枚を、うっかり押してしまった気分です。
先生
倒れる順番が分かっていれば、決算は怖くないよ。
💡 そうだったのか!
新基準の影響は
B/S・P/L・CF・税効果・減損まで広がります。注記は会計方針・リース特有の取引・金額の3本柱です。
今日の内容を、ラボで確かめてみませんか?
この記事の図は、すべてリース会計ラボの画面そのものです。基礎タブを開けば、同じ図を見ながら読み返せます。
リース会計ラボを開く ▶今日のまとめ ── 迷いポイント早見表
おわりに
今日のふりかえり
先生
今日のまとめだよ。借手はオペレーティング・リースも原則B/Sに載せる。負債はリース料を割り引いた現在価値で、費用は初めの年ほど大きい。そして一番時間がかかるのは、計算ではなくリース期間などの判断なんだ。
ハルカ
私のアパートも「2年契約・自動更新」の普通借家です。帰ったら、自分の部屋の使用権資産を計算してみます。
先生
個人の家計簿に会計基準は要らないけれど、考え方の練習にはちょうどいいね。解約不能期間は何か月になりそうかな。
ハルカ
1か月前に言えば解約できるので、1か月です。…でも先月、モンステラ用に大きな棚を買ったので、経済的インセンティブ的には、当分引っ越せません。
先生
「大幅な賃借設備の改良」にしては、ずいぶん緑の多い改良だね。次の応用編では、その「当分」を何年と見るかを、もう少し詰めていこうか。
参考資料
企業会計基準第34号「リースに関する会計基準」/企業会計基準適用指針第33号「リースに関する会計基準の適用指針」(同・設例)(いずれも企業会計基準委員会)。ラボの事例の数値は、適用指針の設例と同じパターンを独自の数値で組み立てたものです。
サイト内の関連:新リース基準(第34号)まとめ/「リースの識別」実務ガイド/リース管理台帳・仕訳ジェネレーターβ/会計方針書ジェネレーターβ
設例の会話解説:識別編/リース期間編/基本の計算編/特殊なリース料編/契約変更・見直し編/サブリース・経過措置編
この記事を書いた人
TaxJudge編集部|公認会計士・税理士(実務25年)による企画・監修。会計基準・税法・裁決・有価証券報告書などの一次情報をもとに、検索できるデータベースと計算・判定・文書作成ツールを制作しています。