リース会計ラボ【設例・識別編】|先生と一緒に図で学ぶ設例1〜7 特定された資産・指図権・対価の配分
無料の学習ツール「リース会計ラボ」の読み方ガイドです。ラボの設例タブから、リースの識別と対価の配分の設例(設例1〜7)を1つずつ、先生と生徒の会話形式で見ていきます。左の図はラボの図そのものです。重要な節の最後には、ラボで30秒だけ手を動かす小さな実習を置いています。
📘 設例1 ラボの図
はじめに
設例1 識別のフローチャート ── 2段階で判断する
📍 ラボの場所:設例・基礎タブ 設例1
ハルカ
先生、設例は1から20まであります。どこから読めばいいですか。
先生
識別の設例は、左の設例1のフローチャートを順に当てはめたものなんだ。(1)資産が特定されているか、(2)その資産の使用を支配する権利が移っているか、の2段階だよ。(2)はさらに、①経済的利益のほとんどすべてを得るか、②使用を指図する権利があるか、に分かれるんだ。
ハルカ
契約書のタイトルが「業務委託契約」なら、そもそも見なくていいですよね。
先生
名前では決めないよ。判断は契約を結んだときに行い、契約条件が変わらない限り見直さないんだ。今日は設例2〜6でこのフローを5回当てはめて、最後に設例7で対価の分け方を見ようか。
設例・基礎タブの設例1を開きながら読むと分かりやすいですラボで開く ▶
📘 設例2-1 ラボの画面
○
サプライヤーは使用期間全体を通じて資産を代替できるかB社はA社の承認なしに車両を入れ替えられる → 実質上の能力あり(第6項(1))
○
代替することでサプライヤーは経済的利益を得るかどの車両を使うかを決めて業務を効率化しており、代替の利益がコストを上回る(第6項(2))
特定された資産に該当しない①②の両方を満たすので、B社は実質的な代替権を持つ。資産は特定されていない。
設例2
鉄道車両 ── 代替権が「実質的」かどうか
📍 ラボの場所:設例・基礎タブ 設例2-1/2-2
ハルカ
5年間、車両10両分の輸送を頼む契約です。車両を5年使うのと同じなので、リースですよね。
先生
設例2-1では、契約で指定されているのは車両の種類だけなんだ。B社はA社の承認なしに車両を入れ替えられて、入れ替えで業務を効率化できる。左の判定のとおり、代替できる能力があり、代替で得もするので実質的な代替権があり、資産は特定されない。だからリースを含まないよ。
迷いポイント 契約書に車両が指定されていれば、代替条項があっても「特定」される?
ハルカ
設例2-2は車両が指定されていますが、B社にも入れ替える権利があります。これも特定されないんですか。
先生
2-2でB社が入れ替えられるのは、保守・修理のときだけなんだ。これでは使用期間を通じて代替する能力とは言えないので、代替権は実質的でなく、資産は特定される。A社は5年間独占的に使って使い方も決めるので、支配も移っていて、リースを含むよ。
ハルカ
故障のときだけ別の車両が来る…。野球でいう代打のようなもので、先発メンバーは変わらないんですね。
💡 そうだったのか!
代替権が実質的と言えるのは、
①使用期間を通じて代替できる、
②代替するとサプライヤーが得をする、の両方を満たすときだけです。保守・修理のための入れ替えは含みません。
📘 設例3-2 ラボの画面
○
サプライヤーは使用期間全体を通じて資産を代替できるかいつでも変更する権利がある(第6項(1)は満たす)
×
代替することでサプライヤーは経済的利益を得るか移転コスト全額負担。利益がコストを上回る状況は起きにくい(第6項(2)を満たさない)
特定された資産に該当する①は満たすが②を満たさない → 実質的な代替権はなく、資産は特定されている。
設例3
小売区画 ── 権利はあっても「得をしない」なら特定される
📍 ラボの場所:設例・基礎タブ 設例3-1/3-2
ハルカ
空港の売店の区画です。貸主は区画をいつでも変更できる、と契約に書いてあります。これなら特定されませんよね。
先生
設例3-1はそのとおりだよ。空港内に同じ仕様の区画がたくさんあり、売店は移動しやすいので、B社は変更のコストが小さく、区画を有効に使える利益がある。①②の両方を満たすので、資産は特定されないんだ。
迷いポイント 区画を変更する権利が契約にあれば、それだけで特定されない?
ハルカ
設例3-2も、貸主がいつでも区画を変えられる契約ですね。同じ結論ですか。
先生
左の判定を見て。3-2では、変更するなら貸主が移転コストを全額負担しなければならない。コストを上回る利益が出るのは大口テナントが来たときくらいで、その可能性は高くないんだ。①は満たすけれど②を満たさないので、代替権は実質的でなく、資産は特定されるよ。
💡 そうだったのか!
権利があっても、
使うと損をする権利は実質的ではありません。設例3-1と3-2の違いは「代替したときの経済的利益」です。
⏱ 30秒だけラボで試す
- 設例・基礎タブ → 設例3-1 → ステップ「(1) 資産は特定されているか?」を開く
- プルダウンで設例3-2 に切り替え、同じステップを開く
👀 3-1は「特定された資産に該当しない」、3-2は2つ目の判定が × になり「特定された資産に該当する」に変わります。
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📘 設例4-1 ラボの画面
×
顧客が使える部分は物理的に別個か区分されていない稼働能力の一部分 → 原則、特定された資産に該当しない(第7項)
×
稼働能力のほとんどすべてか70%は「ほとんどすべて」ではない → 経済的利益のほとんどすべてを享受する権利もない
特定された資産に該当しないA社が使える稼働能力部分は特定された資産に該当しない。
設例4
ガスの貯蔵タンク ── 容量の70%と99.9%
📍 ラボの場所:設例・基礎タブ 設例4-1/4-2
ハルカ
タンクの容量の70%まで使える契約です。7割も使うなら、リースですよね。
先生
タンクの中は物理的に区分されていないんだ。区分されていない稼働能力の一部分は、原則として特定された資産にならない。70%は「ほとんどすべて」とも言えないので、左の判定のとおり特定されず、リースを含まないよ。
ハルカ
7割なら多数決では圧勝なのに…と思ってしまいました。
先生
ここは多数決ではなく、「ほとんどすべて」かどうかの話なんだよ。
迷いポイント 「ほとんどすべて」には何%という基準がある?
ハルカ
設例4-2は99.9%ですね。何%からなら「ほとんどすべて」なんですか。
先生
数値の基準はないんだ。99.9%なら稼働能力のほとんどすべてなので、区分されていなくても特定された資産になり、指図権もA社にあるのでリースを含む。70%と99.9%という2つの端で、感覚をつかんでおくといいよ。
💡 そうだったのか!
物理的に区分されていない容量の一部は、原則として特定された資産になりません。
ほとんどすべてを使う場合だけ例外です。
📘 設例5-1 ラボの画面
○
経済的利益のほとんどすべてを享受するか(自社敷地に設置されたサーバーの便益を受ける)
×
使用方法を指図する権利があるかA社が決められるのは契約時のサービス水準(アウトプット)だけ。使い方はB社が決める(第8項(1)を満たさない)
×
事前決定+稼働する権利 or 設計稼働する権利も設計への関与もない(第8項(2)を満たさない)
使用を支配する権利が移転していない使用を指図する権利はB社にある。
設例5
ネットワーク・サービスとサーバー ── 使い方を決めるのは誰か
📍 ラボの場所:設例・基礎タブ 設例5-1/5-2
ハルカ
自社の敷地にB社のサーバーが置いてあります。目の前にあるので、うちが使っている資産ですよね。
先生
設例5-1でA社が決められるのは、契約時のサービス水準だけなんだ。通信速度やサーバーの入れ替えはB社が決めて、A社は使い方の重要な決定も、設計への関与もしない。左の判定のとおり指図権がないので、リースを含まないよ。
迷いポイント 自社の敷地に機器が置いてあれば、リースになる?
ハルカ
置き場所ではなく、使い方を決められるかどうかなんですね。設例5-2はどう違うんですか。
先生
5-2では、A社がサーバーの使い方と保管するデータを決められる。特定された資産で、経済的利益も指図権もA社にあるので、リースを含むんだ。修理・メンテナンスはリースを構成しない部分なので、設例7のように対価を分けることになるよ。
ハルカ
5-1は「特定されているか」を判断しないで、先に指図権を見ていますね。
先生
よく気づいたね。結論に影響しないので、原典も判断を省いているんだ。順番はどちらからでもいいんだよ。
💡 そうだったのか!
機器がどこにあるかではなく、
使い方(何を・いつ・どれだけ)を決めるのが誰かで判断します。決めるのがサプライヤーなら、顧客はサービスを買っているだけです。
📘 設例6-3 ラボの画面
○
経済的利益のほとんどすべてを享受するか電力のすべてを得る(第5項(1))
×
使用方法を指図する権利があるか(第8項(1))使用方法は設計で事前に決まっており、稼働中に変えられる余地はない
○
事前決定の場合:顧客が設計したか(第8項(2)②)A社が設計した → 指図する権利あり
使用を支配する権利が移転している第8項(2)②により、使用を指図する権利を持つ。
設例6
発電所と太陽光ファーム ── 使い方が事前に決まっているとき
📍 ラボの場所:設例・基礎タブ 設例6-1〜6-3
ハルカ
発電所の電力を全部買う契約です。全量を買うなら、リースですよね。
先生
全量を買えば経済的利益のほとんどすべては得られるけれど、それだけでは決まらないんだ。設例6-1は、電力の量と時期が契約で決まっていて変えられず、A社は設計にも関与していない。稼働するのもB社なので、指図権がなく、リースを含まないよ。
迷いポイント 使い方が契約で決まっていて誰も変えられないなら、リースにはならない?
ハルカ
設例6-3の太陽光ファームも、使い方は設計で決まっていて変えられません。6-1と同じ結論ですか。
先生
左の判定を見て(設例6-3)。使い方が事前に決まっているときは、①顧客だけが稼働する権利を持つか、②顧客が資産を設計したかで判断する。6-3ではA社が設計しているので指図権はA社にあり、リースを含むんだ。量と時期をA社が決める6-2も、リースを含むよ。
ハルカ
運転しているのはB社なのに、使っているのはA社…。運転手と行き先を決める人が別、ということですね。
先生
そう考えると分かりやすいよ。見るのは、運転しているのは誰かではなく、指図権がどちらにあるかなんだ。
💡 そうだったのか!
全量を買うだけではリースになりません。使い方が事前に決まっている場合は、
顧客だけが稼働する権利を持つか、顧客が設計したかが決め手です。
⏱ 30秒だけラボで試す
- 設例・基礎タブ → 設例6-1 → ステップ「(2) 使用を支配する権利が移転しているか?」を開く
- プルダウンで設例6-3 に切り替え、同じステップを開く
👀 6-1は最後の判定が「× 事前決定+稼働する権利 or 設計」、6-3は「○ 事前決定の場合:顧客が設計したか」になり、結論が「使用を支配する権利が移転している」に変わります。
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📘 設例7 ラボの図
🧾 リース部分と役務部分を分ける
開始日:リース部分だけを使用権資産・リース負債に(割引を無視)| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|
| 使用権資産 | 72,000 | リース負債 | 72,000 |
第1回支払日(半期末):支払額をリース部分の返済と役務の費用に分ける| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|
| リース負債 | 7,200 | 現金預金 | 9,000 |
| 支払手数料(役務提供の費用) | 1,800 | | |
中間決算:使用権資産の償却(72,000÷5年÷2)| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|
| 減価償却費 | 7,200 | 減価償却累計額 | 7,200 |
🧾 分けずに全部リースとして処理
開始日:契約対価の全額をリースとして計上| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|
| 使用権資産 | 90,000 | リース負債 | 90,000 |
第1回支払日| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|
| リース負債 | 9,000 | 現金預金 | 9,000 |
中間決算:償却(90,000÷5年÷2)| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|
| 減価償却費 | 9,000 | 減価償却累計額 | 9,000 |
設例7
対価の配分 ── リースとサービスを分けるか、合算するか
📍 ラボの場所:設例・基礎タブ 設例7
ハルカ
設備の使用と5年間の役務がセットで、対価は90,000です。全部を使用権資産にするんですか。
先生
原則は、独立価格の比率で分けるんだ。リース部分80,000、役務部分20,000の比率なので、リース部分は 90,000×80%=72,000、役務部分は18,000になる。左の上の仕訳のとおり、使用権資産とリース負債は72,000で計上し、半期ごとの支払9,000は、負債の返済7,200と役務の費用1,800に分けるよ。
迷いポイント 対価に含まれる固定資産税・保険料(2,500)は、差し引いてから配分する?
ハルカ
固定資産税や保険料は、設備を使う対価ではないので、先に差し引くんですよね。
先生
借手は差し引かないんだ。対価の一部として、リース部分と役務部分の両方に配分する。差し引いてから配分する方法を選べるのは、貸手の方なんだよ。
先生
借手は、科目やグループごとに、分けずに全部をリースとして処理することも選べるよ。左の下の仕訳のとおり、使用権資産とリース負債は90,000になり、半期の償却費も7,200から9,000に増える。手間は減るけれど、B/Sの負債とP/Lの償却費は大きくなるんだ。
ハルカ
全部まとめてリースにすれば楽…。私の部屋の「とりあえず全部クローゼットに押し込む」作戦と同じです。
先生
扉を開けたときに中身が大きく見えるところまで、同じだね。
💡 そうだったのか!
借手は独立価格の比率で分けるのが原則で、固定資産税・保険料も控除しません。
合算して全部をリースにする選択もでき、その場合は負債・償却費が大きくなります。
⏱ 30秒だけラボで試す
- 設例・基礎タブ → 設例7 → ステップ「貸手:配分と維持管理費用相当額の2つの方法」を開く
👀 貸手が維持管理費用相当額 2,500 を控除する方法2では、リース部分が 72,000 → 70,000、リースを構成しない部分が 18,000 → 17,500 になります。
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今日の内容を、ラボで確かめてみませんか?
この記事の図は、すべてリース会計ラボの画面そのものです。設例タブを開けば、同じ図を見ながら、ステップを1つずつ読み返せます。
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この記事を書いた人
TaxJudge編集部|公認会計士・税理士(実務25年)による企画・監修。会計基準・税法・裁決・有価証券報告書などの一次情報をもとに、検索できるデータベースと計算・判定・文書作成ツールを制作しています。