減損会計ラボ【基礎編】|先生と一緒に図で学ぶ兆候・認識の判定・回収可能価額・配分
無料の学習ツール「減損会計ラボ」の読み方ガイドです。ラボの基礎タブを上から順に、先生と生徒の会話形式で見ていきます。登場する会社と設例の数値はすべて架空の例です(原典の設例の数値は使っていません)。解説は公認会計士・税理士が監修しています。各行の図はラボの図そのものです。重要な節の最後には、ラボで30秒だけ手を動かす小さな実習を置いています。
今日の事例
導入設例の数字(Q店:土地・建物・備品)
| 帳簿価額:土地/建物(主要な資産)/備品 | 2,000/3,000/500(合計 5,500) |
| 営業損益:前期/当期 | ▲120/▲90(2期連続マイナス) |
| 周辺の地価 | 30% 下落 |
| 将来CF:年 400 × 8年、8年後に売却 | 1,600 |
| 現在すぐ売却した場合の正味売却価額 | 3,100(うち土地 2,000) |
| 割引率(税引前) | 6% |
| 割引前CF総額/使用価値 | 4,800/3,488 |
| 減損損失 | 2,012(建物 1,725・備品 287) |
はじめに
今日の題材 ── Q店の減損を、兆候から仕訳まで
📍 ラボの場所:基礎タブ全体・設例・基礎0
ハルカ
先生、固定資産の減損は「赤字の店の資産を減らす処理」という理解で止まっています。今日はどこから始めますか。
先生
1つの店舗の数字で、入口から出口まで通して見ていこうか。Q店は土地 2,000・建物 3,000・備品 500 で帳簿価額 5,500。2期連続の営業赤字なんだ。
ハルカ
表の下に「減損損失 2,012」とあります。赤字の額とはずいぶん違いますね。
先生
赤字の額ではなく、回収できなくなった投資額を帳簿価額から落とすのが減損だよ。その 2,012 がどう決まるかを、5段の流れで追っていこうか。
📗 基礎 0 ラボの図
固定資産なら原則として全部が対象(基準 一、適用指針第5・68-2項)有形・無形・投資その他の資産が含まれる。投資不動産、建設仮勘定、のれん、長期前払費用(財務費用の経過勘定を除く)も対象。
自社利用のソフトウェアは、減損に類似した処理の定めがないので対象(第69項)。
固定資産という科目を使わない業種でも、内容が固定資産に当たるものは対象(第68-2項なお書き)。
基礎 0
このラボの位置づけと対象資産 ── 固定資産なら原則すべて、他に定めがあるものは除く
📍 ラボの場所:基礎タブ 0
ハルカ
図の左が対象、右が対象外ですね。のれんや建設仮勘定、自社利用のソフトウェアまで対象に入っています。
先生
固定資産なら原則すべて対象なんだ。有形・無形・投資その他の資産に、投資不動産や長期前払費用も入る。外れるのは、他の基準に定めがある資産だよ。
迷いポイント 繰延税金資産や投資有価証券も「固定資産」だから対象?
ハルカ
B/Sの固定資産の部に載っているものは、全部この基準で見るんですよね。繰延税金資産も投資有価証券も。
先生
そこは外れるんだ。金融資産は金融商品会計基準、繰延税金資産は税効果会計基準に、減損に似た定めがある。他に定めがあるものは、そちらに任せるんだよ。
💡 そうだったのか!
対象は
固定資産の原則すべて(のれん・建設仮勘定・自社利用ソフトウェアも)。
他の基準に定めがある資産(金融資産・繰延税金資産など)は対象外です。
📗 基礎 1 ラボの図
決算書の帳簿価額は2店舗とも同じ 5,500帳簿価額は「取得原価 − 減価償却」で決まるので、収益性が違っても同じ金額に見える。
減損会計は、投資額の回収が見込めなくなった資産の帳簿価額を、臨時的に減額する会計処理(意見書 三 3.)。時価評価ではない。
基礎 1
なぜ減損か ── 同じ帳簿価額でも、回収できる店とできない店
📍 ラボの場所:基礎タブ 1
ハルカ
店舗Xと店舗Yは、どちらも帳簿価額 5,500 ですね。好調と不調で、決算書の数字が同じなのは変な感じがします。
先生
帳簿価額は「取得原価 − 減価償却」で決まるからね。収益性が落ちても自動では下がらないんだ。ラボの切替で4年後、8年後まで見ると、回収額の差が見えてくるよ。
迷いポイント 減損は、固定資産を時価に直す処理?
ハルカ
不調の店の資産を時価まで下げる、つまり固定資産の時価評価だと思っていました。
先生
時価評価ではないんだ。投資額の回収が見込めなくなったときに、帳簿価額を臨時に減額する処理だよ。時価が上がっても帳簿価額は上げないんだ。
ハルカ
同じ 5,500 の服を着ていても、中身の体力が全然違う2つの店なんですね。健康診断をしないと分からないです。
💡 そうだったのか!
減損は時価評価ではなく、
回収できなくなった投資額を帳簿価額から落とす処理。帳簿価額が同じでも、将来の回収額で差が出ます。
📗 基礎 2 ラボの図
① グルーピング(基準 二 6.、適用指針第7〜10項)他の資産から概ね独立したキャッシュ・フローを生み出す最小の単位でまとめる。店舗・工場など継続的に収支を把握している単位が基礎。
本社ビルなど複数のグループに貢献する資産は共用資産、のれんは別扱い。
段をクリックすると説明が変わります。
基礎 2
5段の流れ ── グルーピング → 兆候 → 判定 → 測定 → 配分
📍 ラボの場所:基礎タブ 2
ハルカ
①グルーピング、②兆候、③認識の判定、④測定、⑤配分と減損後。段をクリックすると説明が変わるんですね。
先生
この5段を順に進むんだ。大事なのは途中で終わる出口が2つあること。兆候がなければ②で終わり、割引前CFが帳簿価額以上なら③で終わるよ。
迷いポイント 全部の固定資産を、毎期この5段にかける?
ハルカ
毎期、全社の固定資産台帳をこの5段にかけるんですよね。かなりの作業量になりそうです。
先生
そうではないんだ。兆候のある資産・資産グループだけを判定する。②の入口で絞り込む仕組みだから、全資産を毎期テストするわけではないよ。
ハルカ
③の判定は割引前、④の測定は割引後とあります。同じ将来CFなのに、割り引いたり引かなかったりするんですか。
先生
そこが日本基準の特徴なんだ。割引前で「減損が相当程度確実か」をふるいにかけ、認識すると決めてから割引後の回収可能価額で測る。2段構えだよ。
💡 そうだったのか!
5段のうち
②兆候と③判定が出口。兆候のある資産だけを、判定は割引前・測定は割引後の
2段構えで絞り込みます。
📗 基礎 3 ラボの図
店舗ごとに継続的な収支の把握があり、店舗同士のCFが独立していれば、店舗が最小の単位(第7項(1))管理会計上の区分や投資の意思決定の単位を考慮する(意見書 四 2.(6)①)。
商圏が重ならず、1店を切り離しても他店の収入に大きく影響しないなら、店舗単位が資産グループ(設例1-4)。
基礎 3
グルーピング ── 概ね独立したキャッシュ・フローを生み出す最小の単位
📍 ラボの場所:基礎タブ 3
ハルカ
店舗が8つ並んで、本社ビルが下にあります。ラボの切替で「事業部ごと」「全社でひとまとめ」も選べますね。
先生
単位は概ね独立したキャッシュ・フローを生み出す最小の単位だよ。店舗ごとに収支を把握し、商圏が重ならなければ、店舗が単位になるんだ。
迷いポイント 会社全体で黒字なら、1つにまとめて判定してもいい?
ハルカ
全社では黒字なので、全部まとめて1つのグループにすれば減損は出ませんよね。
先生
それは認められないんだ。全社でひとまとめにすると、不調な店の損失が好調な店に隠れてしまう。収支を把握している単位を基礎に、互いに補い合う単位だけを束ねるんだよ。
ハルカ
本社ビルはどの店にも属していませんが、どうなるんですか。
先生
複数のグループに貢献する資産は共用資産として別に扱うんだ。本社ビル、研究所、物流センターがその例で、基礎⑨で見ていこうか。
💡 そうだったのか!
グルーピングは
収支を把握している最小の単位が出発点。全社ひとまとめは不可。複数の単位に貢献する本社ビルなどは
共用資産。
📗 基礎 4 ラボの図
① 営業損益・CFが継続マイナス(適用指針第12項)おおむね過去2期マイナス(当期見込みが明らかにプラスなら除く)。立上げ期の計画どおりの赤字は除く。
「営業活動から生ずる損益」には減価償却費や本社費の配分を含み、支払利息や税金、大規模な経営改善計画による一時的な損益は含めない(第12項(1))。
カードをクリックすると図と説明が変わります。
基礎 4
減損の兆候 ── 4つの事象と実務の目安
📍 ラボの場所:基礎タブ 4
ハルカ
4枚のカードですね。Q店は①の営業損益が、前期 ▲120・当期 ▲90 で2期連続のマイナスです。
先生
①は「おおむね過去2期マイナス」が目安だよ(第12項)。ただし当期の見込みが明らかにプラスなら除くし、立上げ期の計画どおりの赤字も除くんだ。
迷いポイント 地価が 30% 下がったら、④の兆候になる?
ハルカ
Q店の周辺は地価が 30% 下がっています。これも兆候に数えますよね。
先生
50%程度以上の下落なら少なくとも兆候だけれど、30% では自動的には兆候にしないんだ。第89項により、50%未満でも処分予定があるなど減損の可能性が高ければ、個別に判断するよ。
ハルカ
「2期連続の赤字」と聞くと、私の家計簿も先月と今月…。いえ、何でもありません。
先生
家計簿に減損会計は要らないよ。考え方の練習には、ちょうどいいけれどね。
💡 そうだったのか!
兆候は
4つの例示。営業損益は
おおむね2期連続、市場価格は
50%程度以上が目安で、50%未満は状況次第で個別判断。
⏱ 30秒だけラボで試す
- リンクからシミュレーションを開く(導入設例の数字)
- 「当期の営業損益」を ▲90 から 50 に変える
👀 兆候が「なし」になり、判定は行われません。割引前CFや使用価値の数字は同じでも、減損損失は 0 で仕訳も出ません。なお、ラボの兆候①は「入力した2期がともに赤字か」の簡易判定です。当期の見込みが明らかにプラスの場合や、立上げ時の予算どおりの赤字は、実務では個別に判断します(第12項)。
ラボを開く ▶📝 減損のKAM事例267社を分析|監査人は兆候の何を見るか?記事を読む ▶
📗 基礎 5 ラボの図
割引前の将来CF総額 4,800 < 帳簿価額 5,500 → 減損損失を認識する店舗Yの8年分のCF 3,200 と使用後の売却額 1,600 の合計。割り引かないので、認識の判定は「甘め」に見え、認識されたときの損失は確定的(意見書 四 2.(2)①)。
次の段(④測定)で、回収可能価額まで減額する。
見積期間は経済的残存使用年数と20年の短い方(基準 二 2.(2))8年なら、8年分の割引前CFに、8年経過時点の主要な資産の正味売却価額を加える(第18項(1))。
経済的残存使用年数は物理的要因のほか陳腐化の危険等も考えて見積るが、税法耐用年数に基づく残存耐用年数と著しく違わなければ、それを使える(第21項)。
基礎 5
認識の判定 ── 割引前の将来CF総額と帳簿価額を比べる
📍 ラボの場所:基礎タブ 5
ハルカ
帳簿価額 5,500 と割引前CF総額 4,800 の棒グラフです。ラボの切替で 5,500 と 6,400 のケースも見られます。
先生
割引前CF総額は、8年分のCF 400 × 8 = 3,200 に、使用後の売却額 1,600 を足した 4,800 だよ。帳簿価額 5,500 を下回るので認識するんだ。
迷いポイント 割引前で比べると、判定が甘くならない?
ハルカ
割り引かない分だけ将来CFが大きく見えるので、減損が認識されにくくなりませんか。
先生
そのとおり甘めなんだ。だからこそ、認識されたときの損失は相当程度確実と言える。第19項のとおり、見積値から乖離するリスクも判定の段階では反映させないよ。
ハルカ
下の図は年数が 8年と 25年の2つがあります。25年のときに「20年」の線がありますね。
先生
見積期間は経済的残存使用年数と20年の短い方なんだ。8年なら8年分のCFと8年後の正味売却価額。20年を超える資産は応用編で見ていこうか。
💡 そうだったのか!
認識の判定は
割引前CF総額 < 帳簿価額のときだけ。甘めの入口だから、認識された減損は確実性が高い。見積期間は
年数と20年の短い方。
⏱ 30秒だけラボで試す
- リンクからシミュレーションを開く(導入設例の数字)
- 「1年目のキャッシュ・フロー」を 400 から 520 に変える
👀 割引前CF総額が 4,800 → 5,760 になり「下回らない → 認識しない」に変わります。使用価値 4,233 は帳簿価額を下回ったままでも、減損損失は 0 です。
ラボを開く ▶
📗 基礎 6 ラボの図
使い続けた方が高い → 回収可能価額は使用価値 3,488使用価値 = 8年分のCF 400 と使用後の売却額 1,600 を 6% で割り引いた現在価値。
減損損失 = 5,500 − 3,488 = 2,012。通常は使用価値の方が高いので、売却がすぐ予定されている場合などを除き、必ずしも正味売却価額を算定しなくてよい(第28項)。
基礎 6
測定 ── 回収可能価額(正味売却価額と使用価値の高い方)まで減額
📍 ラボの場所:基礎タブ 6
ハルカ
使用価値 3,488 と正味売却価額 3,100 の高い方が回収可能価額、とあります。高い方を選ぶのは、損失を小さくするためですか。
先生
企業にとって有利な方を選ぶんだ。売るか使い続けるか、回収額が大きい方が合理的な行動だからね。Q店は使い続けた方が高いので、回収可能価額は使用価値 3,488 だよ。
迷いポイント 正味売却価額は、毎回かならず算定する?
ハルカ
回収可能価額を決めるには、使用価値と正味売却価額の両方を毎回出さないといけませんよね。
先生
必ずしも要らないんだ。第28項により、明らかに正味売却価額が高い場合や処分がすぐ予定されている場合を除き、算定しなくてよいんだよ。
ハルカ
減損損失 = 5,500 − 3,488 = 2,012 ですね。ラボの切替で正味売却価額を 5,600 にすると、どうなりますか。
先生
帳簿価額より高いので、減損損失はゼロになるよ。判定は割引前で済んでいるから、④の測定で損失がゼロになる形なんだ。
💡 そうだったのか!
回収可能価額は
正味売却価額と使用価値の高い方。減損損失 = 帳簿価額 − 回収可能価額。正味売却価額は必要なときだけ算定。
⏱ 30秒だけラボで試す
- リンクからシミュレーションを開く(導入設例の数字)
- 「現在すぐ売却した場合の正味売却価額(グループ)」を 3,100 から 4,000 に変える
👀 回収可能価額が正味売却価額の 4,000 に変わり、減損損失は 2,012 → 1,500(建物 1,286・備品 214)になります。
ラボを開く ▶📝 【実務】固定資産の減損 判定・測定のイメージをつかもう!記事を読む ▶
📗 基礎 7 ラボの図
見積金額は「最も可能性の高い単一の金額(最頻値)」か「確率で加重平均した金額(期待値)」(基準 二 4.(3))2つの資産は期待値も最頻値も 100 で同じだが、見積値から乖離するリスク(分布のぶれ)は資産Bの方が大きい。
使用価値を算定するときは、このリスクを将来CFか割引率のどちらかに必ず反映させる(注6、第39項・設例5型)。認識の判定に使う割引前CFには反映させない(第19項)。
基礎 7
将来キャッシュ・フローと割引率 ── 見積りの型と、リスクをどこに入れるか
📍 ラボの場所:基礎タブ 7
ハルカ
資産Aと資産Bは、期待値も最頻値も 100 で同じですね。これ、収益認識ラボ②の変動対価で習った「最頻値と期待値」と同じ考え方ですか。
先生
よく覚えていたね。見積りの型は同じだよ。ただ減損では、ぶれの大きさ、つまり見積値から乖離するリスクをどこかに必ず反映させるのが要点なんだ。
迷いポイント 期待値で見積ったら、リスクはもう織り込み済み?
ハルカ
確率で加重平均しているのだから、資産Bのリスクも期待値に入っていますよね。
先生
平均は同じでも、ぶれは消えていないんだ。使用価値を出すときは、リスクを分子の将来CFか、分母の割引率のどちらか一方に反映させる(注6)。両方に入れると二重になるよ。
先生
将来CFが税引前だから、率もそろえるんだ。測定時点の率を使い、翌期以降も同じ方法で算定する。率の候補は応用編で4つ見ていこうか。
💡 そうだったのか!
見積りは
最頻値か期待値。乖離するリスクは
CFか割引率のどちらか一方に反映(判定の割引前CFには入れない)。割引率は税引前。
⏱ 30秒だけラボで試す
- リンクからシミュレーションを開く(導入設例の数字)
- 「割引率(税引前・%)」を 6 から 8 に変える
👀 使用価値が 3,488 → 3,163 に下がり、減損損失は 2,012 → 2,337。割引率が高いほど使用価値は小さく、損失は大きくなります。
ラボを開く ▶📝 収益認識ラボ②【基礎編】(変動対価の見積り:最頻値と期待値)記事を読む ▶
📗 基礎 8 ラボの図
土地の正味売却価額を下回らないように建物と備品に配分する方法を、本設例では採用(第26項・第105項、設例9型)帳簿価額比が原則だが、各構成資産の時価を考慮した配分など合理的な方法を採ることが「できる」(第26項・第105項)。本ラボでは、土地の正味売却価額が分かるときはそれを下限とする方法を採用している。土地の正味売却価額が帳簿価額以上なら、土地には配分しない。
配分後:建物 1,275・備品 213。この帳簿価額で翌期から減価償却する。
🧾 減損損失の計上(直接控除形式)
減損損失の計上(直接控除形式)| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|
| 減損損失(特別損失) | 2,012 | 建物 | 1,725 |
| | 備品 | 287 |
間接控除形式なら、建物・備品の分の貸方は「減損損失累計額」(第57項(2))。土地は償却しない資産なので直接控除。
基礎 8
資産グループ内の配分 ── 帳簿価額の比が原則、時価を考慮してもよい
📍 ラボの場所:基礎タブ 8・設例・基礎0 ステップ6
ハルカ
減損損失 2,012 を建物と備品に配分して、土地はゼロになっています。帳簿価額の比なら、土地にも配分されるはずでは。
先生
原則は帳簿価額の比だよ。ただ土地の正味売却価額 2,000 が帳簿価額と同じなので、第105項の、それを下回らないように建物と備品に配分する方法を採っているんだ。
迷いポイント 土地の正味売却価額を下限にする配分は、必須?
ハルカ
土地の時価が分かっているときは、必ずこの方法を使うんですね。
先生
必須ではないんだ。帳簿価額比が原則で、時価を考慮した配分など合理的な方法を採ることが「できる」。本ラボの設例とシミュレーションは、この方法を採用しているよ。
ハルカ
損失の分け方に「できる」が出てくると、つい有利な方を選びたくなります。
先生
選んだら続けるのが約束だよ。有利な年だけ乗り換える道具ではないんだ。
💡 そうだったのか!
配分は
帳簿価額比が原則。土地の正味売却価額が分かれば、それを
下限にする合理的な方法も可(必須ではない)。配分後の額が翌期の償却の基礎。
⏱ 30秒だけラボで試す
- リンクからシミュレーションを開く(導入設例の数字)
- 「うち土地の正味売却価額(配分の下限)」を 2,000 から 1,800 に変える
👀 土地にも 200 が配分され、建物 1,553・備品 259 になります。合計の 2,012 は変わりません。
ラボを開く ▶
📗 基礎 9 ラボの図
まず、兆候のある資産グループごとに判定・測定する(注7、第48項(1)(3))Bは割引前CF 470 ≧ 簿価 450 で認識せず。Cは 520 < 600 で認識し、回収可能価額 350 まで減額(▲250)。
Aには兆候がないので何もしない。
基礎 9
共用資産とのれん ── まずグループごと、次により大きな単位で(2段階)
📍 ラボの場所:基礎タブ 9
ハルカ
共用資産の本社 250 と、資産グループA・B・Cがあります。まずグループごとに判定して、Cだけ ▲250 ですね。
先生
それが①の段階だよ。次に②で、A・B・Cに共用資産を加えたより大きな単位で判定する。比べる帳簿価額は減損控除前の 1,350 + 250 = 1,600 なんだ。
迷いポイント より大きな単位の減損は、全部まとめて各グループに按分する?
ハルカ
大きな単位で出た損失は、A・B・Cと本社に帳簿価額比で按分するんですよね。
先生
そうではなく、①で出た分を引いた増加額を、原則として共用資産に配分するんだ。設例では 480 − 250 = 230 が共用資産へ。超過する場合の扱いは応用編で見るよ。
ハルカ
これ、資本連結ラボで習った「のれんは20年以内で償却する」ののれんも、同じように判定するんですか。
先生
ちゃんと覚えていたね。のれんも同じ2段階なんだ。複数の事業を取得していれば、まず時価比率などで事業ごとに分割してから、事業の資産グループにのれんを加えた単位で判定するよ。
💡 そうだったのか!
共用資産・のれんは
まずグループごと → 次により大きな単位の2段階。より大きな単位で増えた分(増加額)は
原則として共用資産・のれんに配分。
📗 基礎 10 ラボの図
直接控除形式(原則):減損損失 1,725 の表し方取得原価から減損損失を直接控除し、控除後の金額をその後の取得原価とする(基準 四 1.、第57項(1))。
減価償却累計額を間接控除で示していても、減損損失は直接控除でよい(表示形式は同じでなくてよい)。
基礎 10
減損後と開示 ── 戻入れなし、新しい帳簿価額で償却、特別損失と注記
📍 ラボの場所:基礎タブ 10
ハルカ
B/Sの表示が3つ、P/Lと注記の図があります。減損後の建物は 1,275 ですね。
先生
減損後は新しい帳簿価額で償却するんだ。建物の年間償却費は 375 から 159 に下がる。そして、回収可能価額が回復しても戻入れはしないんだよ。
迷いポイント 翌期に業績が回復したら、減損損失を戻せる?
ハルカ
翌期にQ店が黒字になったら、2,012 の一部を戻して利益にできますよね。
先生
日本基準では戻せないんだ。減損は回収できなくなった投資額の確定的な減額という考え方だからね。IFRSはのれん以外で戻入れがあるので、そこが大きな違いだよ。
ハルカ
税効果会計ラボで、土地の減損は売却の決定でスケジューリング可能になると習いました。減損損失は一時差異になるんですね。
先生
そのとおり。減損損失は、会計の計上額がそのまま損金になるわけではないんだ。損金算入されず会計と税務の簿価に差が出る部分が将来減算一時差異で、繰延税金資産は回収可能性を判断して計上するよ。
ハルカ
減損は一度切ったら戻れない片道切符で、税金の方は繰延税金資産の往復切符…いえ、往復できるかは回収可能性次第でした。
先生
その「次第」を判断するのが税効果の仕事だったね。基礎はここまでにしようか。
💡 そうだったのか!
減損後は
新しい帳簿価額で償却、戻入れなし。P/Lは特別損失、B/Sは直接控除が原則。重要なら
注記。損金算入されない部分の減損損失は将来減算一時差異。
📝 税効果会計ラボ【設例・回収可能性編】(土地の減損と売却の決定)記事を読む ▶
今日の内容を、ラボで確かめてみませんか?
この記事の図は、すべて減損会計ラボの画面そのものです。基礎タブを開けば、同じ図を見ながら読み返せます。
減損会計ラボを開く ▶📝 減損会計ラボ【応用編】(管理会計の単位・連結の見直し・20年超・割引率・超過額の配分・期中の減損・資産除去債務)応用編を読む ▶ 今日のまとめ ── 迷いポイント早見表
おわりに
今日のふりかえり
先生
今日のまとめだよ。減損は時価評価ではなく、回収できなくなった投資額を落とす処理。兆候のある資産だけを、割引前で判定し割引後で測る2段構えで絞り込む。配分したら新しい帳簿価額で償却し、戻入れはしない。この3つを持ち帰ってほしいんだ。
ハルカ
減損は「赤字の店の資産を減らす」ではなく、「将来いくら回収できるか」を見る処理なんですね。前はPLの赤字だけ見ていましたが、今日は将来CFと帳簿価額を比べる目で見られるようになった気がします。
先生
その目があれば、兆候の確認も将来CFの見積りも、自分の言葉で説明できるようになるよ。
ハルカ
では私は、固定資産台帳を見るたびに「あなたは将来いくら稼げますか」と1件ずつ面談することにします。
先生
面談するのは、兆候のある資産だけでいいんだよ。次の応用編では、管理会計の単位の決め方、20年超の資産、4つの割引率、超過額の配分といった実務で迷う論点を見ていこうか。
参考資料
「固定資産の減損に係る会計基準」・「固定資産の減損に係る会計基準の設定に関する意見書」(企業会計審議会 2002年8月9日)、企業会計基準適用指針第6号「固定資産の減損に係る会計基準の適用指針」(最終改正 2025年10月16日。設例1〜10)、企業会計基準第18号「資産除去債務に関する会計基準」第44項(減損との関係)、土地の再評価に関する法律第8条。IFRSは IAS 36「資産の減損」。基準確認日:2026年10月12日。ラボの設例は、原典の設例1〜10と同じパターンを独自の数値で組み立てたものです(原典の数値は画面に出していません)。
シリーズ:基礎編/応用編 / 設例編:グルーピング編(設例1-1〜1-6)・判定と測定編(設例0・2〜6)・共用資産とのれん編(設例7-1・7-2・8)・配分と土地再評価編(設例9・10) / 関連:【早見表】固定資産の減損に係る会計基準・適用指針/【実務】固定資産の減損 判定・測定のイメージをつかもう!/税効果会計ラボ【基礎編】(一時差異・繰延税金資産・回収可能性)/資本連結ラボ【基礎編】(のれん・のれんの償却)
この記事を書いた人
TaxJudge編集部|公認会計士・税理士(実務25年)による企画・監修。会計基準・税法・裁決・有価証券報告書などの一次情報をもとに、検索できるデータベースと計算・判定・文書作成ツールを制作しています。