源泉所得税ガイド【基礎編】|先生と一緒に図で学ぶ3つの問い・甲欄と乙欄・翌月10日
無料の学習ツール「源泉所得税ガイド」に収録した源泉所得税のタックスアンサー解説記事(テーマA・B)を、「誰に・何を・いつ」の3つの問いで束ねて、先生と生徒の会話形式で見ていきます。各行の図は、ガイドと各記事の図そのものです。重要な節の最後には、ガイドで30秒だけ手を動かす小さな実習を置いています。
ガイドの図 判断フロー
はじめに
今日の題材 ── 「誰に・何を・いつ」の3つの問い
📍 読む場所:源泉所得税ガイド 全体像タブ ②判断フロー
ハルカ
先生、源泉所得税の記事が45本もあります。どこから読めばいいのか、入口で立ち止まってしまいました。
先生
45本を全部覚える必要はないよ。迷いの入口は「誰に・何を・いつ支払うか」の3つに集約できる。図の上から順にたどると、読む記事が決まるんだ。
ハルカ
源泉徴収は、所得税法ラボで「納める人だけでなく、給与を払う会社の法律でもある」と習いました。今日はその会社側の実務ですね。
先生
よく覚えていたね。今日は3つの問いのうち、相手が国内の居住者で、払うものが給与の場合を見ていく。テーマAとテーマBの14本の土台になる話だよ。
ハルカ
非居住者や社宅・食事の話は、今日は出てこないんですね。
先生
そこは応用編に回そうか。まず「誰が払う側になるのか」から始めようか。
📝 No.2502 図2
問い1
誰が源泉徴収する側になるのか ── 義務者と、原文が挙げる2つの例外
📍 読む場所:テーマA 1本目 No.2502
ハルカ
最初の問いは「誰に支払うか」でしたが、その前に「誰が差し引くのか」も気になります。源泉徴収義務者は会社のことですよね。
先生
図を見て。上の緑の帯には会社だけでなく、個人事業主・学校・官公庁・人格のない社団や財団まで並んでいる。決め手は「誰か」ではなく「何を払うか」なんだ。
迷いポイント 法人格のない団体なら、源泉徴収とは関係ない?
ハルカ
PTAや自治会は法人ではないので、関係ないと思っていました。
先生
それが、そうではないのだよ。給与や一定の報酬を払えば、PTAでも自治会でも義務者になる。外れるものとして原文が挙げるのは下の赤い帯の2つで、どちらも「支払う側が個人」という前提があるんだ。
ハルカ
では私が友だちに引っ越しを手伝ってもらって、お礼に1万円を渡したら、源泉徴収して国に納めるんですか。
先生
それは給与でも一定の報酬でもないから違うよ。最初に見るのは「何を払うか」。給与や税理士報酬のような対象の支払でなければ、そもそも土俵に乗らないんだ。
💡 そうだったのか!
源泉徴収義務者は
会社・個人・団体を問わず「給与や一定の報酬を払う者」。No.2502 が挙げる例外は、家事使用人2人以下だけの個人と、給与の源泉徴収義務がない個人の報酬の2つ。
📝 No.2508 図2
問い2
何を払うのか ── 手当は原則給与、非課税の例は3つの「一定の範囲」
📍 読む場所:テーマA 2本目 No.2508
ハルカ
次は「何を払うか」です。基本給が給与なのは分かりますが、手当はどうでしょう。手当は給与とは別物という感覚があります。
先生
図の左の赤い帯を見て。残業手当・職務手当・家族手当・住宅手当は、名目が何でも原則として給与だよ。右の緑の帯は、No.2508 が非課税の代表例として紹介している3つなんだ。
迷いポイント 「手当」という名前なら、全部まとめて非課税にできる?
ハルカ
住宅手当は家賃の補助なので、非課税だと思っていました。
先生
住宅手当は給与だよ。No.2508 が非課税の代表例として挙げるのは、一定金額以下の通勤手当、通常必要と認められる旅費、一定金額以下の宿直・日直の手当の3つ。しかも「一定の範囲」までで、超えた部分は給与に戻るんだ。
ハルカ
図の下の方に、物や利益で払う給与もありますね。
先生
それが現物給与だね。社宅や食事、貸付金の利息などで、原則は給与。ただし個別の取扱いがあるから、そこは応用編で1つずつ見ていこうか。
💡 そうだったのか!
手当は
名目にかかわらず原則として給与。No.2508 が非課税の代表例として挙げるのは通勤手当・旅費・宿日直手当の3つで、それも「一定の範囲」まで。範囲を超えた部分は給与に戻る。
📝 No.2509 図3
問い3
いつ払うのか ── 「いつの年分か」と「いつ差し引くか」は別の物差し
📍 読む場所:テーマA 3本目 No.2509
ハルカ
3つ目は「いつ支払うか」です。12月分の給与を1月25日に払ったら、どちらの年の収入になりますか。
先生
一般の給与は、契約や慣習で定められた支給日の年分だよ。12月分でも支給日が1月25日なら、翌年の収入になるんだ。
迷いポイント 収入の年分が決まれば、源泉徴収する時期も同じ日になる?
ハルカ
支給日の年分に入るなら、源泉徴収も支給日に合わせて、未払でも先に差し引くのだと思っていました。
先生
そこが別の物差しなんだ。図の左は「いつの年分か」、右は「いつ差し引くか」。源泉徴収は実際に支払う際に行うから、未払のうちは差し引かない。年末調整では未払の給与も総額に含めるけれど、徴収は払うときだよ。
ハルカ
役員賞与だけ「決議等の日」になっているのは、どうしてですか。
先生
利益を基礎に金額が定まる役員賞与は、株主総会の決議等があった日が収入の時期と決まっているからだよ。給与の種類ごとに基準日が違う、と覚えておくといいね。
💡 そうだったのか!
一般の給与の年分は
支給日で決まる。源泉徴収は
実際に支払うときに行い、未払のうちは差し引かない。この2つは別の物差し。
📝 No.2511 図1
計算 1
税額表の選び方 ── 表は「どう払うか」、欄は「申告書を出しているか」
📍 読む場所:テーマA 4本目 No.2511
ハルカ
3つの問いに答えたら、次は税額の計算ですね。税額表に甲欄・乙欄・丙欄があるのは知っていますが、どう選ぶのかは曖昧です。
先生
図の縦の3つが「表」、横に書いてある甲・乙・丙が「欄」だよ。月ごとなどの給与は月額表、毎日・週ごと・日割の給与と日雇賃金は日額表、賞与は算出率の表。表は何をどう払うかで決まるんだ。
迷いポイント 甲欄と乙欄は、給与の大きい人が甲欄で、小さい人が乙欄?
ハルカ
甲欄は正社員、乙欄は給与の少ない人用の欄だと思っていました。
先生
金額は関係ないよ。「給与所得者の扶養控除等申告書」を出している人が甲欄、出していない人が乙欄、日雇賃金が丙欄。欄は申告書の有無だけで決まるんだ。
ハルカ
あ、年末調整ラボで「年末調整の対象は扶養控除等申告書を出している人」と習いました。同じ紙ですね。
先生
そう、ちゃんとつながったね。あの1枚が甲欄の鍵で、年末調整の鍵でもある。だから申告書は主たる給与の支払者1か所にしか出せないんだよ。
ハルカ
甲・乙・丙って、成績表みたいです。丙欄の人は落第なんですか。
先生
落第ではなく「日雇賃金」専用の欄だよ。表に当てはめる金額は、どの欄でも社会保険料等を差し引いた後の金額。ここは忘れやすいところなんだ。
💡 そうだったのか!
表は
給与か賞与か・どう払うかで選び、欄は
扶養控除等申告書の有無で選ぶ。甲欄=提出あり、乙欄=提出なし、丙欄=日雇賃金。当てはめる金額は社会保険料等を引いた後。
⏱ 30秒だけガイドで試す
- ガイドの「❓ よくある質問」タブを開く
- 「B 給与の形態別の取扱い」で絞り込み、Q6「パートに扶養控除等申告書を出してもらっていません」を読む
👀 申告書がなければ乙欄、日給・時給で雇用期間2か月以内なら日額表の丙欄、と短い答えが出て、根拠記事 No.2514・2511・2520 へのリンクが並びます。
ガイドを開く ▶
📝 No.2514 図2
計算 2
パート・アルバイト ── 丙欄を使えるのは「日給・時給」で「2か月以内」のとき
📍 読む場所:テーマB 1本目 No.2514
ハルカ
丙欄が気になります。パートやアルバイトは短期の人が多いので、全員丙欄でよさそうです。
先生
原則は社員と同じで、申告書の有無で甲欄か乙欄だよ。丙欄に行けるのは、図の判定で2つの条件を通ったときだけなんだ。
迷いポイント 短期のアルバイトなら、月給制でも丙欄?
ハルカ
1か月だけの契約なら、月給で払っても丙欄だと思っていました。
先生
最初の問いは「給与を勤務した日や時間で計算しているか」。月給制なら、ここで「いいえ」になって甲欄か乙欄だよ。日給・時給で、しかも契約期間があらかじめ2か月以内のときに丙欄なんだ。
先生
2か月を超えた日から丙欄は使えない。延長後の給与は、申告書を出していれば甲欄、出していなければ乙欄に切り替えるんだよ。
💡 そうだったのか!
丙欄は
日給・時給で
雇用期間2か月以内のときだけ。延長や再雇用で2か月を超えた日から、甲欄か乙欄に切り替える。
📝 No.2520 図1
計算 3
2か所から給与をもらう人 ── 主か従かは「申告書をどこに出したか」
📍 読む場所:テーマB 2本目 No.2520
ハルカ
副業をしている社員がいます。2か所から給与をもらう人は、どちらの会社が甲欄になりますか。
先生
図の左が主たる給与、右が従たる給与。扶養控除等申告書を提出した勤務先の給与が主たる給与で甲欄、それ以外は従たる給与で乙欄だよ。
迷いポイント 主たる給与は、金額が大きい方の会社?
ハルカ
給与が多い会社が「主」で、少ない方が「従」だと思っていました。
先生
金額ではなく、申告書の提出先で決まるんだ。申告書は1か所にしか出せないから、その1か所が主。副業先の方が給与が多くても、申告書がなければ乙欄だよ。
ハルカ
副業先の方がたくさん払っているのに「従」と呼ばれるのは、少しかわいそうです。
先生
呼び名で決まるのは税額表の欄だけだよ。従たる給与は年末調整ができないから、最後は本人が確定申告で精算するんだ。20万円以下なら申告不要の扱いもあるけれど、乙欄で多めに引かれた税額は申告しないと戻らないよ。
💡 そうだったのか!
主たる給与=
扶養控除等申告書を出した勤務先の給与で甲欄・年末調整の対象。従たる給与=乙欄で、原則として年末調整できず本人が確定申告で精算。
📝 No.2520 2か所以上から給与をもらっている人の源泉徴収記事を読む ▶
📝 No.2523 図1
計算 4
賞与 ── 税率は「前月の給与」で決め、掛ける相手は「賞与」
📍 読む場所:テーマB 3本目 No.2523
ハルカ
賞与は算出率の表を使うと聞きました。賞与の金額を表に当てはめて税額を読むのですか。
先生
表に当てはめるのは前月の給与(社会保険料等を差し引いた後)と扶養親族等の数だよ。そこで「賞与の金額に乗ずべき率」が決まり、その率を賞与(社会保険料等控除後)に掛けるんだ。
迷いポイント 前月の給与は、賞与の税額にどう関わる?
ハルカ
前月の給与も足して、まとめて税額を計算するのだと思っていました。
先生
前月の給与は税率を決めるためだけに使う。税額を掛ける相手は賞与だよ。図の①②③の順に、行を探す・率を読む・賞与に掛ける、と進むんだ。
ハルカ
前月に給与がない人や、賞与がとても大きい人はどうしますか。
先生
前月に給与がないときは、賞与を6で割った額を月額表に当てはめ、その税額を6倍するよ。10倍を超えるときは、賞与の6分の1に前月の給与を足した額の税額から、前月の給与だけの税額を引いて6倍するんだ。6か月超の賞与は12で割るよ。
💡 そうだったのか!
賞与の税額=
算出率の表の率 × 賞与(どちらも社会保険料等控除後)。前月の給与は率を決めるだけ。前月給与なしは「÷6→税額×6」、10倍超は「(賞与÷6+前月給与)の税額−前月給与の税額」×6の月額表の計算。
⏱ 30秒だけガイドで試す
- ガイド右の「🔎 記事を番号・言葉で探す」に「賞与」と入れる
👀 No.2511(税額表)・No.2523(賞与)・No.2529(改訂差額)・No.2739(退職後の給与)の4本が出ます。賞与の計算は、この4本で前後がつながります。
ガイドを開く ▶
📝 No.2505 図1
事務 1
納付期限 ── 原則は「支払った月の翌月10日」、常時10人未満なら年2回
📍 読む場所:テーマA 5本目 No.2505
ハルカ
差し引いた税金はいつ納めますか。3月分の給与を4月25日に払ったら、4月10日は過ぎているので慌てます。
先生
基準は実際に支払った月だよ。4月に払ったなら、納めるのは5月10日まで。図の上の段が原則で、毎月「翌10日」が並んでいるね。
迷いポイント 「翌月10日」の翌月は、締め日の翌月?
ハルカ
白状します。締め月の翌月10日だと思って、カレンダーに書いていました。
先生
締め日ではなく支払日で数えるんだ。月末締め翌月払いなら、納付は支払月の翌月10日。図の下の段は納期の特例で、給与の支給人員が常時10人未満なら、申請して年2回にまとめられるよ。
ハルカ
1〜6月分は7月10日、7〜12月分は翌年1月20日ですね。年末調整ラボで、納付税額がゼロでも徴収高計算書は出す、と習いました。
先生
よく覚えていたね。期限に遅れると不納付加算税がかかることがあるから、特例を使う会社ほど7月10日と1月20日を手帳に太字で書いておくといいよ。
💡 そうだったのか!
納付期限は
実際に支払った月の翌月10日。給与の支給人員が常時10人未満なら、申請により
7月10日・翌年1月20日の年2回にまとめられる(対象は給与・退職金と一定の報酬だけ)。
⏱ 30秒だけガイドで試す
- ガイドの「📗 全体像」タブの「④ 1年の事務カレンダー」まで下がる
👀 原則の毎月10日(●)と、納期の特例の7月10日・1月20日(■)が1年の帯に並び、年末調整と法定調書(1月31日)の位置も同じ帯で見えます。
ガイドを開く ▶
📝 No.2739 図2
事務 2
退職後に払う最後の給与 ── 退職金ではなく「給与」、原則は乙欄
📍 読む場所:テーマB 6本目 No.2739
ハルカ
3月末で退職した人に、4月25日に3月分の給与を払います。退職後に払うので、退職金と同じ扱いでしょうか。
先生
在職者に払うものと同じ性質の給与だから、退職手当等ではなく給与等だよ。退職したことに基因して払うものではない、というのが理由なんだ。
迷いポイント 退職後の給与も、在職中と同じ甲欄でよい?
ハルカ
在職中は甲欄だったので、最後の給与も当然に甲欄だと思っていました。
先生
扶養控除等申告書は、退職で効力を失うのが原則。だから図のとおり原則は乙欄だよ。退職した年のうちの支払で、本人がほかの勤務先に申告書を出していないことが明らかなら、甲欄でも差し支えないんだ。
ハルカ
甲欄か乙欄かが、ここでも申告書の話に戻ってくるんですね。
先生
そう、今日の話は全部その1枚につながっているよ。退職後に乙欄で払った給与は、再就職先の年末調整にも原則として含めない。つまずきやすいところだから、記事で確かめておこうか。
💡 そうだったのか!
退職後に払う給与は
給与等(退職金ではない)。申告書は退職で効力を失うので
原則は乙欄。その年中の支払で、ほかに申告書を出していないことが明らかなら甲欄でも差し支えない。
⏱ 30秒だけガイドで試す
- ガイドの「💡 つまずきポイント」タブを開き、「④ 退職後の給与は『退職金』ではない」を読む
👀 ✖ よくある誤解(退職所得として処理・常に甲欄)と ✔ 正しい見方が並び、確認する記事 No.2739・No.2511 へ進めます。
ガイドを開く ▶
今日の内容を、ガイドで確かめてみませんか?
この記事の図は、源泉所得税ガイドと各タックスアンサー解説記事の図そのものです。ガイドの「テーマ別に読む」から、テーマA・Bの14本 を読む順に開けます。
源泉所得税ガイドを開く ▶📙 続けて読む:源泉所得税ガイド【応用編①】(経済的利益・社宅・食事・通勤手当)応用編①へ ▶ 今日のまとめ ── 迷いポイント早見表
おわりに
今日のふりかえり
先生
今日のまとめだよ。源泉徴収の迷いは「誰に・何を・いつ」の3つの問いに集約できる。義務者は何を払うかで決まり、税額表の欄は扶養控除等申告書の有無で決まる。納付は支払った月の翌月10日だね。
ハルカ
前は税額表を「どの欄に当てはめるか」の作業だと思っていました。今日は、甲欄も乙欄も納期も、扶養控除等申告書という1枚の紙と支払日という1つの日付に戻ってくると分かりました。
先生
いい整理だね。1つだけ足すと、丙欄はその紙と関係なく「日雇賃金」だけで決まる。ここだけ物差しが違うんだ。
ハルカ
甲・乙・丙の成績表で言うと、私は今日ようやく「乙」から「甲」に上がれた気がします。
先生
税額表の欄は成績ではないけれど、自分の言葉で言い直せたのは大きな進歩だよ。次の応用編①では、社宅や食事などの経済的利益を見ていこうか。
参考資料
国税庁タックスアンサー No.2502・2508・2509・2511・2505・2514・2520・2523・2739(いずれも令和8年4月1日現在法令等。2026年10月確認)、所得税法183条・185条〜187条・194条・204条・216条、所得税基本通達36-9・185-8・190-2・194・195-6、国税通則法67条。シリーズ:基礎編(この記事)/応用編①/応用編②。図はすべて taxjudge.com のタックスアンサー解説記事と源泉所得税ガイドの図そのものです。先生とハルカは架空の人物で、会話は制度を理解するための学習用です。個別の判断は国税庁の原文と最新の法令で確認してください。
この記事を書いた人
TaxJudge編集部|公認会計士・税理士(実務25年)による企画・監修。会計基準・税法・裁決・有価証券報告書などの一次情報をもとに、検索できるデータベースと計算・判定・文書作成ツールを制作しています。