減損会計ラボ【設例・配分と土地再評価編】|先生と一緒に図で学ぶ設例9・10 土地の正味売却価額・旧リース・土地再評価差額金
無料の学習ツール「減損会計ラボ」の読み方ガイドです。ラボの設例タブから、配分と土地再評価の設例(設例9型①②・設例10型)を1つずつ、先生と生徒の会話形式で見ていきます。登場する会社と設例の数値はすべて架空の例です(原典の設例の数値は使っていません)。解説は公認会計士・税理士が監修しています。各行の図はラボの図そのものです。重要な節の最後には、ラボで30秒だけ手を動かす小さな実習を置いています。
📘 設例・基礎9① ラボの画面
① グルーピング② 兆候③ 認識の判定④ 測定⑤ 配分と減損後
割引前CF 1,700 < 帳簿価額合計 2,060 → 認識
減損損失 = 2,060 − 回収可能価額 1,250 = 810
基準 二 2.・3.
はじめに
設例9・10 ── 配分の実務と、特別な帳簿価額を持つ資産
📍 ラボの場所:設例・基礎タブ 基礎9① ステップ2
ハルカ
先生、今日は設例9と10ですね。店舗の配分と、旧リース、土地再評価と並んでいます。
先生
減損損失をどの資産にいくら配分するかと、帳簿価額の性質が特別な資産の扱いだよ。X店舗は土地 700・建物 1,100・什器備品 260、合計 2,060 なんだ。
ハルカ
割引前CF 1,700 < 2,060 で認識、回収可能価額 1,250 まで減額して 810 ですね。ここまでは導入設例と同じ流れです。
先生
そう。今日の論点は、この 810 を3つの資産にどう割るかから始まるよ。
設例・基礎タブの基礎9①を開きながら読むと分かりやすいですラボで開く ▶
📘 設例・基礎9① ラボの画面
🧾 減損損失の計上
直接控除形式| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|
| 減損損失 | 810 | 建物 | 655 |
| | 什器備品 | 155 |
設例・基礎9①
土地の正味売却価額 700 を下回らない配分 ── 建物 655・什器備品 155
📍 ラボの場所:設例・基礎タブ 基礎9① ステップ3
ハルカ
減損損失 810 を、土地には配分せず、建物と什器備品に 1,100:260 で 655 と 155 に分けています。
先生
土地の正味売却価額 700 が把握されていて、帳簿価額と同じだからね。土地を 700 より下げる結果にならないように、第105項の、他の資産に配分する方法を採っているんだ。
迷いポイント 帳簿価額比が原則なら、土地にも配分するのが正しい?
ハルカ
原則どおり 700:1,100:260 で配分して、土地も 275 ほど減らすのが正しい処理ではないですか。
先生
それも合理的な方法の一つだよ。ただ、売ればすぐ 700 で回収できる土地を 425 にするのは、資産の実態から離れてしまう。第105項は、時価が分かる資産を下回らない配分を「できる」として認めているんだ。
ハルカ
原則で配分すると、土地は「売れば 700 なのに帳簿は 425」。値札を貼り間違えた商品みたいですね。
先生
値札を貼り間違えないための「できる」なんだ。採用したら、同じ場面では同じ方法を続けるんだよ。
💡 そうだったのか!
帳簿価額比が原則だが、
土地の正味売却価額が分かれば下回らないように他の資産へ配分できる(第105項)。採用したら継続。
⏱ 30秒だけラボで試す
- リンクからシミュレーションを開く(プリセット「設例9①型」)
- 「うち土地の正味売却価額(配分の下限)」を 700 から 500 に変える
👀 土地にも 200 が配分され、建物 493・什器備品 117 になります(配分後 500・607・143)。合計 810 は変わりません。
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📘 設例・応用9② ラボの画面
① グルーピング② 兆候③ 認識の判定④ 測定⑤ 配分と減損後
比べる帳簿価額 = 700 + 1,100 + みなし 290 = 2,090
割引前CF 1,700 < 2,090 → 認識 → 回収可能価額 1,250 まで → 減損損失 840
未経過リース料の現在価値を使用権資産の帳簿価額とみなして減損会計基準を適用する(注12、第60項)。将来キャッシュ・アウト・フローに当該リースの支払リース料は含めない(第61項)。
未経過リース料の期末残高に重要性が乏しければ割引前の未経過リース料をみなし帳簿価額にできるが、回収可能価額の算定では割り引く(第62項)。
注12第60〜62項
設例・応用9②
旧リースの什器備品 ── 未経過リース料の現在価値 290 を帳簿価額とみなす
📍 ラボの場所:設例・応用タブ 応用9② ステップ2
ハルカ
什器備品が、基準第13号の適用初年度開始前に開始した所有権移転外ファイナンス・リースで、賃貸借処理のままなんですね。B/Sには載っていないのに、減損の判定に入れるんですか。
先生
入れるんだ。未経過リース料の現在価値 290 を使用権資産の帳簿価額とみなして減損会計を適用する(注12、第60項)。比べる帳簿価額は 700 + 1,100 + 290 = 2,090 だよ。
迷いポイント 賃貸借処理のリースなら、将来の支払リース料は将来CFの支出に入れる?
ハルカ
費用処理しているリース料なので、将来CFのアウト・フローに毎年の支払リース料を入れますよね。
先生
入れないんだ(第61項)。みなし帳簿価額として資産側に入れた以上、その支払を支出にも入れると二重になる。減損の対象にならないリースの支払リース料は、入れるよ。
ハルカ
リース会計ラボの応用編で、適用初年度の経過措置を習いました。あのときの「旧リース」の話が、ここにつながるんですね。
先生
よく覚えていたね。2024年改正前の負債計上を続ける経過措置もあるし、簡便法の使用権資産は利息相当額を控除して判定できる(第59-2項)。短期・少額の簡便処理は対象外だよ。
💡 そうだったのか!
旧リースの什器備品は
未経過リース料の現在価値をみなし帳簿価額にして判定に入れる。そのリースの
支払リース料は将来CFに含めない(二重を避ける)。
📘 設例・応用9② ラボの画面
🧾 減損損失の計上
リース分は負債| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|
| 減損損失 | 840 | 建物 | 665 |
| | 使用権資産減損勘定(負債) | 175 |
設例・応用9②
配分と負債計上 ── リース分 175 は「使用権資産減損勘定」
📍 ラボの場所:設例・応用タブ 応用9② ステップ3
ハルカ
減損損失 840 を建物 665・リースの什器備品 175 に配分して、175 は資産ではなく負債に計上するんですね。
先生
帳簿に資産がないから、貸方を減らせないんだ。使用権資産に配分された減損損失は、第60項により、重要なら負債(使用権資産減損勘定等)に計上するんだ。
迷いポイント 負債に計上した 175 は、いつ消える?
ハルカ
負債に計上したら、リースが終わるまでそのまま残るんですか。
先生
リース契約の残存期間にわたって定額法で取り崩し、各期の支払リース料と相殺するんだ。残存期間が4年なら毎期 44 を取り崩す。費用の前倒しをしたことと整合する処理だよ。
ハルカ
B/Sに載っていない資産の減損が負債として載る、というのは少し不思議です。影の資産に、本物の負債がつく感じですね。
先生
影でも、減損の対象としては本物と同じに扱う。それが「みなす」という言葉の意味なんだよ。
💡 そうだったのか!
使用権資産に配分した減損損失は
負債に計上し、残存期間にわたり定額法で取り崩して
支払リース料と相殺(第60項)。
📘 設例・応用10 ラボの画面
🧾 土地Aの仕訳
減損損失の計上| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|
| 減損損失(特別損失) | 180 | 土地 | 180 |
税効果| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|
| 再評価に係る繰延税金負債 | 54 | 法人税等調整額 | 54 |
土地再評価差額金の取崩し(剰余金修正)| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|
| 土地再評価差額金 | 126 | 土地再評価差額金取崩額 | 126 |
設例・応用10
土地A ── 減損後も再評価直前の帳簿価額以上:差額金の対応部分 126 を取り崩す
📍 ラボの場所:設例・応用タブ 応用10 ステップ2
ハルカ
取得原価 500 の土地を 800 に再評価していて、回収可能価額 620 まで 180 の減損ですね。差額金の取崩しが 126 とあります。
先生
再評価差額 300 のうち税効果 30% を引いた差額金は 210。減損 180 は再評価差額 300 の 60% だから、第64項により対応部分 126 を取り崩し、繰延税金負債 54 も戻すんだ。
迷いポイント 差額金の取崩しは、P/Lの利益になる?
ハルカ
取り崩した 126 は、減損損失 180 と相殺して利益に戻せますよね。
先生
P/Lは通らないんだ。土地再評価差額金の取崩しは剰余金修正で、株主資本等変動計算書を通じて繰越利益剰余金に繰り入れる(土地再評価法8条2項)。減損損失 180 は特別損失のまま残るよ。
ハルカ
減損損失は特別損失、差額金は純資産の中の振替。同じ土地の話なのに、通る道が違うんですね。
先生
道が違う分、純資産の合計で見ると、再評価前の水準に近づいていくんだよ。
💡 そうだったのか!
再評価した土地は
再評価後の帳簿価額で減損。減損後が再評価直前の簿価以上なら、差額金の
対応部分(税効果後)を剰余金修正で取り崩す。P/Lは通らない。
⏱ 30秒だけラボで試す
- リンクからシミュレーションを開く(プリセット「土地A」)
- 「回収可能価額」を 620 から 480 に変える
👀 減損後が再評価直前の簿価 500 を下回るので、差額金は 全額 210 を取り崩し、下回る 20 × 30% = 繰延税金資産 6 を計上。法人税等調整額は 54 → 96 になります。
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📘 設例・応用10 ラボの画面
🧾 土地Bの仕訳
減損損失の計上| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|
| 減損損失(特別損失) | 350 | 土地 | 350 |
税効果| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|
| 再評価に係る繰延税金負債 | 90 | 法人税等調整額 | 105 |
| 繰延税金資産 | 15 | | |
土地再評価差額金の取崩し(剰余金修正)| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|
| 土地再評価差額金 | 210 | 土地再評価差額金取崩額 | 210 |
設例・応用10
土地B ── 再評価直前の帳簿価額に満たない:全額 210 を取り崩し、繰延税金資産 15
📍 ラボの場所:設例・応用タブ 応用10 ステップ3
ハルカ
土地Bは回収可能価額 450 で、再評価直前の 500 を下回ります。差額金は 210 全額を取り崩して、繰延税金資産 15 を計上。
先生
再評価分 300 は全部なくなるので、差額金 210 と繰延税金負債 90 を全額戻す。さらに取得原価 500 を下回る 50 は、通常の減損と同じで将来減算一時差異だから 50 × 30% = 15 の繰延税金資産だよ。
迷いポイント 繰延税金資産 15 は、回収可能性を見ずに計上していい?
ハルカ
再評価のときの繰延税金負債を戻すのと同じで、15 は自動的に計上できますよね。
先生
自動ではないんだ。設例では回収可能性があるものとして計上しているけれど、実際には他の将来減算一時差異と同じく回収可能性を判断する。税効果会計ラボで見た土地の減損の論点と、ここでつながるよ。
ハルカ
あの「売却の意思決定でスケジューリング可能になる」話ですね。土地の減損はいつも税効果とセットだと覚えます。
先生
セットで覚えておくと、仕訳の3本目まで迷わず書けるようになるんだ。
💡 そうだったのか!
減損後が再評価直前の簿価に満たなければ、差額金
全額と繰延税金負債を戻し、下回る部分は
繰延税金資産(回収可能性を判断)。法人税等調整額 105 = 90 + 15。
📝 税効果会計ラボ【設例・回収可能性編】(土地の減損と売却の決定)記事を読む ▶
📘 設例・応用10 ラボの画面
🧾 土地Cの仕訳
減損損失の計上| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|
| 減損損失(特別損失) | 150 | 土地 | 150 |
税効果| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|
| 繰延税金資産 | 75 | 法人税等調整額 | 45 |
| | 再評価に係る繰延税金資産 | 30 |
土地再評価差額金(マイナス)の取崩し| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|
| 土地再評価差額金取崩額 | 70 | 土地再評価差額金 | 70 |
設例・応用10
土地C ── 再評価で下がっていた土地:マイナスの差額金 ▲70 を全額取り崩す
📍 ラボの場所:設例・応用タブ 応用10 ステップ4
ハルカ
土地Cは再評価で 500 → 400 に下がっていた土地で、差額金はマイナス 70 です。減損 150 で、マイナスの差額金を全額取り崩すんですね。
先生
再評価で下がっていた分 100 と減損 150 を合わせて、取得原価 500 から 250 まで下がる。マイナスの差額金 ▲70(税効果後)は全額取り崩し、繰延税金資産は 250 × 30% = 75 になるんだ。
迷いポイント 繰延税金資産 75 は、全部が今期の法人税等調整額?
ハルカ
繰延税金資産が 75 立つなら、法人税等調整額も 75 の貸方ですよね。
先生
45 なんだ。再評価のときに計上していた再評価に係る繰延税金資産 30 を振り替えるので、新しく計上する分は 75 − 30 = 45。仕訳の貸方が法人税等調整額 45 と再評価に係る繰延税金資産 30 に分かれているよ。
ハルカ
土地A・B・Cと並べると、差額金がプラスのとき、ゼロを割るとき、最初からマイナスのとき、の3パターンなんですね。
先生
そのとおり。どの場合も、再評価後の帳簿価額で減損し、差額金は剰余金修正で、税効果は損益を通す。この型は変わらないんだ。
💡 そうだったのか!
マイナスの差額金は
全額取り崩し。繰延税金資産 75 のうち再評価に係る分 30 は
振替で、法人税等調整額は 45。3つの土地の型は「再評価後で減損・差額金は剰余金修正・税効果は損益」。
⏱ 30秒だけラボで試す
- リンクからシミュレーションを開き、プリセット「土地A」「土地B」「土地C」を順に切り替える
👀 差額金の取崩しが 126 → 210 → ▲70、法人税等調整額が 54 → 105 → 45 と変わります。3パターンの仕訳を並べて比べられます。
ラボを開く ▶
今日の内容を、ラボで確かめてみませんか?
この記事の図は、すべて減損会計ラボの画面そのものです。設例タブを開けば、同じ図を見ながら、ステップを1つずつ読み返せます。
減損会計ラボを開く ▶今日のまとめ ── 設例ごとの結論
おわりに
今日のふりかえり
先生
今日のまとめだよ。配分は土地の正味売却価額を下回らない方法も選べる。旧リースはみなし帳簿価額で判定し、損失は負債へ。再評価した土地は差額金を剰余金修正で取り崩す。これで設例1〜10を見終えたんだ。
ハルカ
基礎編を読んだときは「兆候・判定・測定・配分」の4語で済む話だと思っていました。設例を10個たどった今は、その4語のどこにも「ただし」があると分かります。
先生
「ただし」を知っている人は、原則の意味も説明できる。設例を全部追った甲斐があったね。
ハルカ
次に固定資産の減損の相談を受けたら、「まず管理会計の区分表と、土地の時価と、リース契約と、再評価の有無を持ってきてください」と言います。相談の前に4つ要求する経理担当になりました。
先生
その4つを先に見れば、判定の9割は入口で決まるんだよ。シリーズはここまで。基礎編から読み返すと、5段の図の見え方がきっと変わるはずだよ。
参考資料
減損会計基準 二 6.(2)、適用指針第6号 第26項・第105項(配分)、第59-2〜62-2項・注12(リース)、第64項・第146項(再評価した土地)、設例9・10。土地の再評価に関する法律第8条2項、企業会計基準第13号「リース取引に関する会計基準」(2007年改正)・企業会計基準第34号「リースに関する会計基準」(2024年)。「固定資産の減損に係る会計基準」・「固定資産の減損に係る会計基準の設定に関する意見書」(企業会計審議会 2002年8月9日)、企業会計基準適用指針第6号「固定資産の減損に係る会計基準の適用指針」(最終改正 2025年10月16日。設例1〜10)、企業会計基準第18号「資産除去債務に関する会計基準」第44項(減損との関係)、土地の再評価に関する法律第8条。IFRSは IAS 36「資産の減損」。基準確認日:2026年10月12日。ラボの設例は、原典の設例1〜10と同じパターンを独自の数値で組み立てたものです(原典の数値は画面に出していません)。
このシリーズの記事:基礎編/応用編/設例・グルーピング編(設例1-1〜1-6)/設例・判定と測定編(設例0・2〜6)/設例・共用資産とのれん編(設例7-1・7-2・8)
この記事を書いた人
TaxJudge編集部|公認会計士・税理士(実務25年)による企画・監修。会計基準・税法・裁決・有価証券報告書などの一次情報をもとに、検索できるデータベースと計算・判定・文書作成ツールを制作しています。