MENU

減損会計ラボ【設例・判定と測定編】|先生と一緒に図で学ぶ設例0・2〜6 割引前CF・20年ルール・建設仮勘定・期待値・割引率

減損会計ラボ【設例・判定と測定編】|先生と一緒に図で学ぶ設例0・2〜6 割引前CF・20年ルール・建設仮勘定・期待値・割引率

無料の学習ツール「減損会計ラボ」の読み方ガイドです。ラボの設例タブから、認識の判定と測定の設例(導入設例0、設例2〜6型)を1つずつ、先生と生徒の会話形式で見ていきます。登場する会社と設例の数値はすべて架空の例です(原典の設例の数値は使っていません)。解説は公認会計士・税理士が監修しています。各行の図はラボの図そのものです。重要な節の最後には、ラボで30秒だけ手を動かす小さな実習を置いています。

📘 設例・基礎0 ラボの画面
帳簿価額5,500割引前CF総額4,800割引前CF < 簿価 → 減損を認識する
① グルーピング② 兆候③ 認識の判定④ 測定⑤ 配分と減損後
割引前将来CF総額 = 400 × 8年 + 使用後の正味売却価額 1,600 = 4,800
帳簿価額 5,500 を下回る → 減損損失を認識する

割引前で比べる。見積値から乖離するリスクは反映させない(第19項)。

主要な資産以外の備品(残存 4年)は、現在の価値を維持する更新投資で引き続き存在すると仮定し、更新投資の支出も年次CFに含めているものとする(第38項(2))。

基準 二 2.第18・19項
はじめに

導入設例0・設例2〜6 ── 「認識するか」と「いくらに測るか」

📍 ラボの場所:設例・基礎タブ 基礎0 ステップ4
ハルカ
先生、今日は判定と測定の設例ですね。導入設例のQ店から始まって、設例2〜6まで並んでいます。
先生
5段の流れの③と④に当たる部分だよ。Q店で基本形を押さえてから、20年超(設例2)、見積りの範囲(設例3)、建設仮勘定(設例4)、期待値(設例5)、割引率(設例6)と進もうか。
ハルカ
Q店の判定は、割引前CF総額 4,800 < 帳簿価額 5,500 で認識する、でした。
先生
そう。400 × 8年 + 売却額 1,600 = 4,800。備品の残存年数は 4年だけれど、更新投資で引き続き存在すると仮定して、その支出も年次CFに含めている前提なんだ。これは第38項(2)の考え方だよ。
設例・基礎タブの基礎0を開きながら読むと分かりやすいですラボで開く ▶
📘 設例・基礎0 ラボの画面
5,500帳簿価額3,488使用価値3,100正味売却価額いずれか高い方 = 回収可能価額 3,4883,488回収可能価額減損損失2,012
① グルーピング② 兆候③ 認識の判定④ 測定⑤ 配分と減損後
使用価値 = Σ 400 ÷ (1+6%)t(t=1〜8)+ 1,600 ÷ (1+6%)8 = 3,488
正味売却価額 = 3,100 → 回収可能価額 = 高い方 = 3,488(使用価値)
減損損失 = 5,500 − 3,488 = 2,012

使い続けた方が高いので、回収可能価額は使用価値。割引率は税引前の 6%(第43・45項)。

正味売却価額の方が高ければ(すぐ売る方が有利なら)そちらが回収可能価額になる(注1)。

基準 二 3.〜5.第25・28・31項
設例・基礎0

④ 測定 ── 使用価値 3,488 と正味売却価額 3,100 の高い方

📍 ラボの場所:設例・基礎タブ 基礎0 ステップ5
ハルカ
使用価値は 400 を 6% で8年分割り引いて、1,600 の現在価値を足した 3,488 ですね。正味売却価額 3,100 より高いので、回収可能価額は 3,488。
先生
そのとおり。減損損失は 5,500 − 3,488 = 2,012 だよ。割引率は税引前の 6%。判定では割り引かず、測定で初めて割り引くんだ。
迷いポイント 測定でも、割引前の 4,800 まで減額すればいい?
ハルカ
判定で使った 4,800 が回収できる額なのだから、4,800 まで下げれば十分ではないですか。
先生
測定は割引後なんだ。4,800 は時間価値を無視した合計で、今の価値ではない。6% で割り引いた 3,488 が、今この資産から回収できる価値だよ。
💡 そうだったのか!
測定は回収可能価額(使用価値と正味売却価額の高い方)まで。判定の割引前CF 4,800 ではなく、割り引いた3,488 が基準。
⏱ 30秒だけラボで試す
  1. リンクからシミュレーションを開く(導入設例の数字)
  2. 「割引率(税引前・%)」を 6 から 4 に変える

👀 使用価値が 3,488 → 3,862 に上がり、減損損失は 2,012 → 1,638。割引前CF総額 4,800 と判定は変わりません。

ラボを開く ▶
📘 設例・基礎0 ラボの画面
減損前減損後土地 2,000建物 3,000備品 500土地 2,000土地の正味売却価額 2,000(下限)建物 1,275▲1,725備品 213▲287減損損失 2,012 を帳簿価額の比で配分(本設例では土地の正味売却価額を下限とする方法を採用)
🧾 減損損失の計上(直接控除形式)
減損損失の計上(直接控除形式)
借方金額貸方金額
減損損失(特別損失)2,012建物1,725
備品287

間接控除形式なら、建物・備品の分の貸方は「減損損失累計額」(第57項(2))。土地は償却しない資産なので直接控除。

① グルーピング② 兆候③ 認識の判定④ 測定⑤ 配分と減損後
減損前減損後
建物の帳簿価額3,0001,275
建物の年間減価償却費(定額・残存ゼロ・8年)375159
備品の帳簿価額500213
備品の年間減価償却費(4年)12553

減損後は新しい帳簿価額で規則的に償却する(基準 三 1.)。回収可能価額が回復しても戻し入れない(基準 三 2.)。

P/Lでは減損損失 2,012 を特別損失に表示し、重要なら注記(資産の概要・経緯・金額の内訳・グルーピング方法・回収可能価額の算定方法=使用価値・割引率 6%)。

この数字はシミュレーション(単一の資産グループ)に入っている。将来CFや割引率を変えて試せる。

基準 三・四第55・57・58項
設例・基礎0

⑤⑥ 配分と仕訳・翌期の償却

📍 ラボの場所:設例・基礎タブ 基礎0 ステップ6・7
ハルカ
減損損失 2,012 は建物 1,725・備品 287 で、土地はゼロ。翌期の建物の償却費は 375 から 159 に下がっています。
先生
土地の正味売却価額 2,000 が帳簿価額と同じなので、土地には配分しない方法を採っているんだ。仕訳は特別損失の減損損失 2,012 に対して、建物と備品の直接控除だよ。
迷いポイント 翌期の減価償却は、元の取得原価で続ける?
ハルカ
償却は取得原価を耐用年数で割るものなので、減損しても 375 のままですよね。
先生
減損後の帳簿価額 1,275 を残り 8年で償却するので 159 になるんだ。配分後の帳簿価額が、翌期以降の減価償却の基礎になる(第55項)。回収可能価額が回復しても戻入れはしないよ。
ハルカ
減損で一度にドンと落として、そのあとは毎年の償却が軽くなる。損失を前倒しした分、翌期からの利益は少し楽になるんですね。
先生
楽になった分は、減損を早めに認識した結果だよ。将来に損失を繰り延べない、という減損会計の目的そのものなんだ。
💡 そうだったのか!
配分後の帳簿価額が、翌期以降の減価償却の基礎。翌期からは新しい帳簿価額で償却(375 → 159)し、戻入れはしない。
📘 設例・応用2 ラボの画面
15101520251年目年20年1〜20年目:割引前CFをそのまま合計 / 21年目以降(赤):20年経過時点の回収可能価額として加算
① グルーピング② 兆候③ 認識の判定④ 測定⑤ 配分と減損後

前提条件(独自の数値・設定)

  • 今後10年間の割引前CFは 900、10年経過時点のBの正味売却価額は 6。10年後に現在の価値を維持するための更新投資 80 で構成資産B′を取得する。
  • 11〜20年目のCFは 850、21〜25年目は各年 40、25年経過時点でAを 150、B′を 6 で売却。
20年目までの割引前CF = 900 + 6 − 80 + 850 = 1,676
20年経過時点の回収可能価額 = Σ 40 ÷ 1.05t(t=1〜5)+ (150+6) ÷ 1.055 = 295
割引前将来CFの総額 = 1,676 + 295 = 1,971
1,971 < 帳簿価額 2,050 → 減損損失を認識する

構成資産の年数が主要な資産を超えない場合、構成資産の年数経過時点の正味売却価額を加算する(第18項(3))。更新投資で引き続き存在すると仮定し、その支出も含める(第38項(2))。

21年目以降は、20年経過時点の回収可能価額(その時点の現在価値)として20年目までの割引前CFに加算する(第18項(2)、注4)。

第18項(2)(3)第32項第38項(2)
設例・応用2

主要な資産が25年 ── 20年目までのCFに「20年経過時点の回収可能価額」を足す

📍 ラボの場所:設例・応用タブ 応用2 ステップ2・4
ハルカ
主要な資産Aの年数が 25年なので、割引前CFは20年で区切るんですね。ケース1は 1,676 + 295 = 1,971 < 2,050 で認識です。
先生
295 が21〜25年目の分だよ。各年 40 のCFと25年後の売却 150 と 6 を、5% で20年経過時点に割り引いた回収可能価額として足すんだ。第18項(2)と注4の定めだよ。
迷いポイント 構成資産Bの年数が主要な資産より短いとき、Bの分はどう入れる?
ハルカ
Bは10年で終わるので、11年目以降はAだけのCFを見ればいいですよね。
先生
ケース1では、10年経過時点のBの正味売却価額 6 を加え、更新投資 80 でB′を取得すると仮定する。だから 900 + 6 − 80 + 850 = 1,676 なんだ。第18項(3)と第38項(2)の組合せだよ。
ハルカ
21年目から先は「割り引いて小さくしてから入ってください」と言われる、長い列の後ろの人みたいですね。
先生
後ろの人ほど小さく見えるのは、現在価値の宿命なんだよ。
ハルカ
ケース2はBの年数が 30年でAより長いので、25年経過時点のBの回収可能価額 20 を足すんですね。
先生
そう(第18項(4))。まとめの表のとおり、21年目以降を割り引かずに単純合計すると 2,032 と 2,070 で判定が変わりうる。20年の上限は、遠い将来の見積りに頼りすぎないための仕組みだよ。
💡 そうだったのか!
20年超は20年経過時点の回収可能価額を加算。構成資産の年数が短ければ正味売却価額を加算し、更新投資の支出を控除、長ければ主要な資産の年数経過時点の回収可能価額を加える。
⏱ 30秒だけラボで試す
  1. リンクからシミュレーションを開く(プリセット「主要な資産が25年(20年ルール)」)
  2. 「建物の経済的残存使用年数(年)」を 25 から 20 に変える

👀 21年目以降の加算 507 が消えて、割引前CF総額は 2,307 → 1,950。年数が短くなる分、判定は厳しい方向に動きます。

ラボを開く ▶
📘 設例・応用3 ラボの画面
現在3年後8年後資産B(主要)と資産A CF 450合理的な計画:資産C+A 現在価値 1,150▲ 主要な資産Bの経済的残存使用年数の終わり
① グルーピング② 兆候③ 認識の判定④ 測定⑤ 配分と減損後
原則:割引前CF = 3年分 450 + 3年経過時点の資産Aの正味売却価額 900 = 1,350
計画を使う:450 + 計画のCFの3年経過時点の現在価値 1,150 = 1,600
原則(正味売却価額)合理的な計画を使う
割引前将来CFの総額1,3501,600
帳簿価額1,5001,500
減損損失の認識するしない

構成資産Aの年数が主要な資産Bを超えるので、Bの年数(3年)経過時点のAの回収可能価額を加算(第18項(4))。原則はその時点の正味売却価額(第33項)。

3年後に新たに主要な資産になる資産Cの合理的な計画があれば、正味売却価額に代えて計画に従ったCFの現在価値を使える(第33項ただし書き)。

Aが償却資産なら、3年後の正味売却価額に代えて「現在の帳簿価額 − 3年分の減価額」を使える(第33項また書き)。

第18項(4)第33項
① グルーピング② 兆候③ 認識の判定④ 測定⑤ 配分と減損後
割引前CF = 450 + 3年経過時点の資産Aの正味売却価額 900 = 1,350
1,350 < 帳簿価額 1,500 → 認識する

主要な資産Bの年数経過後のCFを含めることはできない。資産Aの回収可能価額は3年経過時点の正味売却価額(第33項)。

償却資産なら「現在の帳簿価額 − 減価額」を使うこともできる(第33項また書き)。

第33項
設例・応用3

将来CFに含められる範囲 ── 合理的な計画があるかで 1,350 と 1,600 に分かれる

📍 ラボの場所:設例・応用タブ 応用3 ステップ3・4
ハルカ
主要な資産がB(3年)のとき、原則は 450 + 3年後のAの正味売却価額 900 = 1,350 で認識。計画を使うと 450 + 1,150 = 1,600 で認識しない、ですね。
先生
3年後に資産Cを5年間使う合理的な計画があれば、Aの正味売却価額の代わりに、第33項ただし書きにより、計画に従ったCFの現在価値 1,150 を使えるんだ。
迷いポイント 計画さえ作れば、将来CFは増やせる?
ハルカ
決算のときに「3年後に新しい設備を入れる計画です」と書けば、1,600 で認識せずに済みますね。
先生
それは認められないんだ。合理的な計画とは、取締役会等で承認され、資金や技術の裏付けがあるもの。ケース2-2のように計画が未定なら、原則どおり正味売却価額 900 で判定して認識するよ。
ハルカ
ニデック会計不正ラボで、計画を盛れば減損は消せてしまう、と習いました。ここがまさにその入口なんですね。
先生
よく覚えていたね。だから計画の実現可能性を、監査人も重点的に見るんだ。主要な資産がA(年数の長い方)のケース1なら、Cの計画のCFは最初から含められるよ。
💡 そうだったのか!
主要な資産の年数経過後は正味売却価額が原則。合理的な計画があれば計画のCFの現在価値を使えるが、未定なら含められない(第33項)。
📝 ニデック会計不正ラボ【総合編】(減損回避の手口)記事を読む ▶
📘 設例・基礎4 ラボの画面
560完成後の収入(CIF)490完成まで・完成後の支出(COF)70差額(割引前CF総額)130建設仮勘定の帳簿価額差額 < 簿価→ 減損を認識
① グルーピング② 兆候③ 認識の判定④ 測定⑤ 配分と減損後
割引前将来CF総額 = イン・フロー 600 − アウト・フロー 490 = 110
帳簿価額 80 との差 = 30(≧0)
減損損失を認識しない完成までの支出を含めても建設仮勘定の帳簿価額を回収できる(第38項(4))
第38項(4)
① グルーピング② 兆候③ 認識の判定④ 測定⑤ 配分と減損後
割引前将来CF総額 = 560 − 490 = 70
帳簿価額 130 との差 = ▲60
減損損失を認識する測定では、同じ考え方で見積った将来CFの現在価値(使用価値)と正味売却価額の高い方まで減額する

資産グループが複数の建設仮勘定から成るときは、測定時に各建設仮勘定へ配分せず、完成時に総支出額の割合などで配分する(第27項)。

第27項第38項(4)
設例・基礎4

建設仮勘定 ── 完成後の収入から、完成までと完成後の支出を引く

📍 ラボの場所:設例・基礎タブ 基礎4 ステップ2・3
ハルカ
建設中の建物も減損の対象なんですね。ケース1は収入 600 − 支出 490 = 110 ≧ 帳簿価額 80 で認識しない。
先生
使用に供されていなくても対象だよ(第68-2項)。割引前CFは、完成後のキャッシュ・イン・フローから、第38項(4)のとおり完成までの支出と完成後の支出を引いて見積るんだ。
迷いポイント 残りの建設費は、帳簿価額に足して比べる?
ハルカ
残りの建設費 490 のうち建設分は、帳簿価額 80 に足して「完成後の簿価」と比べるんだと思っていました。
先生
足すのは帳簿価額ではなく、将来CFの支出側なんだ。建設仮勘定に計上済みの支出は除いて、これから出ていく分を収入から引く。比べる帳簿価額は今の 80 のままだよ。
ハルカ
建物がまだ建っていないのに減損なんですね。生まれる前から健康診断を受けるようなものです。
先生
建てる前に分かる方が、傷は浅く済むんだよ。
ハルカ
ケース2は 560 − 490 = 70 < 130 で認識ですね。測定はどうするんですか。
先生
同じ考え方で見積った将来CFの現在価値と正味売却価額の高い方まで減額する。複数の建設仮勘定のグループなら、第27項により、測定時には配分せず完成時に総支出額の割合などで配分するんだ。
💡 そうだったのか!
建設仮勘定も対象。割引前CFは完成後の収入 − 完成まで・完成後の支出で、比べる帳簿価額は現在の建設仮勘定。損失の配分は完成時。
📘 設例・基礎5 ラボの画面
資産A12015%10070%8015%期待値 100 最頻値 100資産B15010%12010%11015%10030%9015%6520%期待値 100 最頻値 100
① グルーピング② 兆候③ 認識の判定④ 測定⑤ 配分と減損後
CF確率CF × 確率
15010%15
12010%12
11015%16.5
10030%30
9015%13.5
6520%13
期待値100

資産Bも期待値・最頻値とも 100 で資産Aと同じ。しかし分布のぶれは大きく、見積値から乖離するリスクは資産Bの方が大きい。

期待値で見積っても、使用価値を算定するときはこのリスクを分子(将来CF)か分母(割引率)のどちらかに反映させる(注6、第39項)。認識の判定に使う割引前CFには反映させない(第19項)。

注6第19・39項
設例・基礎5

期待値と最頻値 ── 資産AもBも 100、でもリスクは違う

📍 ラボの場所:設例・基礎タブ 基礎5 ステップ3
ハルカ
資産Bは 150 から 65 まで6通りあって、期待値を計算すると 15 + 12 + 16.5 + 30 + 13.5 + 13 = 100。資産Aと同じです。
先生
最頻値も、どちらも 100 だね。見積方法は最頻値か期待値のどちらでもよいけれど、この2つの資産を同じ 100 で扱ってよいかが設例5の問いなんだ。
迷いポイント 期待値が同じなら、使用価値も同じになる?
ハルカ
同じ 100 を同じ割引率で割り引くのだから、使用価値も同じですよね。
先生
同じにしてはいけないんだ。資産Bの方が見積値から乖離するリスクが大きい。使用価値を出すときは、そのリスクをCFか割引率のどちらかに反映させるので(注6、第39項)、Bの使用価値は小さくなるよ。
ハルカ
平均点は同じでも、毎回 100 点前後の人と、150 点と 65 点を行ったり来たりする人は違う、ということですね。私は後者です。
先生
後者なら、割引率を少し高めにしておこうか。第19項のとおり、認識の判定に使う割引前CFには、このリスクは反映させないんだよ。
💡 そうだったのか!
期待値・最頻値が同じでも、ぶれ(乖離するリスク)は違う。使用価値ではCFか割引率のどちらかに反映し、判定の割引前CFには反映しない。
📝 収益認識ラボ②【基礎編】(変動対価の見積り:最頻値と期待値)記事を読む ▶
📘 設例・基礎6/応用6 ラボの画面
1,400帳簿価額975① 6%減損 4251,043② 4.59%減損 3571,022③ 5%減損 378931④ 7%減損 469
🧾 減損損失の計上
使用価値まで減額
借方金額貸方金額
減損損失425資産A425
① グルーピング② 兆候③ 認識の判定④ 測定⑤ 配分と減損後
割引率率使用価値減損損失
① 固有のリスクを反映した収益率(ハードルレート 8% − 上積み 2%)6%975▲425
② 資本コスト(税引前WACC)4.59%1,043▲357
③ 類似資産の市場平均の収益率(税引後 3.5% を税引前に)5%1,022▲378
④ ノンリコース借入の利率7%931▲469

①〜④のほか、これらを総合的に勘案したものも使える(第45項)。どれを使うかで減損損失が 357〜469 と変わるので、採用した割引率は翌期以降も同じ方法で算定し、使用価値で測定したときは注記で割引率を開示する(第43・58項)。

シミュレーション(割引率)で各要素を変えられる。

第45項第58項(5)
設例・基礎6/応用6

4つの割引率 ── 6%・4.59%・5%・7% で減損損失は 357〜469

📍 ラボの場所:設例・基礎タブ 基礎6 ステップ3・設例・応用タブ 応用6 ステップ5
ハルカ
基礎6はハードルレート 8% から上積み 2% を引いた 6% で、使用価値 975・減損損失 425。応用6で②③④の率を比べると 357〜469 まで幅があります。
先生
①は当該資産に固有のリスクを反映した収益率、②は税引前WACC、③は類似資産の市場平均の収益率、④はノンリコース借入の利率だよ(第45項)。どれも税引前にそろえるんだ。
迷いポイント 税引後の利回り 3.5% は、そのまま割引率にしていい?
ハルカ
市場で観察できる利回りなら、3.5% をそのまま使うのがいちばん客観的ですよね。
先生
そのままでは使えないんだ。将来CFが税引前だから、3.5% ÷ (1 − 30%) = 5% に割り戻す。WACCも自己資本コスト 5.4% を (1 − 30%) で割り戻して 4.59% にしているよ。
ハルカ
4つのうち、どれを選ぶかで損失が 100 以上変わります。選び方に決まりはないんですか。
先生
①〜④とその総合勘案のいずれでもよい。ただし採用した率は翌期以降も同じ方法で算定し、使用価値で測定したときは注記で割引率を開示する。第43項と第58項の定めだよ。
💡 そうだったのか!
割引率は4つの候補+総合勘案。税引後の率は(1−税率) で割り戻す。採用したら同じ方法で継続し、注記で開示。
⏱ 30秒だけラボで試す
  1. リンクからシミュレーションを開く(プリセット「基礎6・応用6の数字(4つの割引率)」)
  2. 「β(ベータ)」を 1.1 から 1.6、「実効税率(%)」を 30 から 35 に変える

👀 ②の税引前WACCが 4.59% → 6.05%、③が 5% → 5.38% に上がり、減損損失は ② 357 → 428、③ 378 → 396 になります。

ラボを開く ▶
📝 KAM割引率とは?開示事例95社で学ぶ算定方法記事を読む ▶

今日の内容を、ラボで確かめてみませんか?

この記事の図は、すべて減損会計ラボの画面そのものです。設例タブを開けば、同じ図を見ながら、ステップを1つずつ読み返せます。

減損会計ラボを開く ▶
📓 ハルカの学習ノートで、この章を見る学習ノートへ ▶

今日のまとめ ── 設例ごとの結論

設例迷いポイント答え
基礎0 ④測定でも割引前の 4,800 まで減額すればいい?測定は割引後。回収可能価額 3,488 まで減額し、減損損失 2,012
基礎0 ⑤⑥翌期の減価償却は元の取得原価で続ける?減損後の帳簿価額 1,275 を残り年数で償却(375 → 159)。戻入れなし
応用2構成資産Bの年数が短いとき、Bの分はどう入れる?Bの年数経過時点の正味売却価額を加算し、更新投資の支出を控除。20年超は20年経過時点の回収可能価額(第18項・注4)
応用3計画さえ作れば将来CFは増やせる?合理的な計画(承認・裏付け)があるときだけ。未定なら正味売却価額 900 で判定(第33項)
基礎4残りの建設費は帳簿価額に足して比べる?足すのは将来CFの支出側。帳簿価額は現在の建設仮勘定(第38項(4))
基礎5期待値が同じなら使用価値も同じ?ぶれが違えば使用価値も違う。CFか割引率にリスクを反映(注6・第39項)
基礎6/応用6税引後の利回り 3.5% はそのまま割引率にしていい?(1−税率) で割り戻して 5%。4つの候補は税引前にそろえ、継続・注記(第43・45・58項)
おわりに

今日のふりかえり

先生
今日のまとめだよ。判定は割引前で、見積期間は主要な資産の年数と20年の短い方。測定は割引後の回収可能価額まで。将来CFに含められるのは合理的な計画のある範囲で、割引率は税引前にそろえる。この4つを持ち帰ってほしいんだ。
ハルカ
導入設例では「4,800 < 5,500 で認識、3,488 まで減額」と2行で終わっていた計算が、設例2〜6を見ると、その1行1行に見積りの判断が詰まっているのが分かりました。
先生
2行の裏にある判断を説明できるのが、数字を作る人と数字を説明できる人の違いなんだ。
ハルカ
割引率の4つの候補で損失が 357 から 469 まで、100 以上も変わるのを見て、少し怖くなりました。これからは割引率の資料を、仕訳より先に読みます。
先生
怖さを知っている人の見積りは、丁寧になるよ。次の設例・共用資産とのれん編では、より大きな単位の2段階と、超過額の配分、配分する方法を見ていこうか。

参考資料

減損会計基準 二 2.〜5.、適用指針第6号 第18〜47項(認識の判定・測定・将来CF・割引率)、注4〜注6、設例2〜6。「固定資産の減損に係る会計基準」・「固定資産の減損に係る会計基準の設定に関する意見書」(企業会計審議会 2002年8月9日)、企業会計基準適用指針第6号「固定資産の減損に係る会計基準の適用指針」(最終改正 2025年10月16日。設例1〜10)、企業会計基準第18号「資産除去債務に関する会計基準」第44項(減損との関係)、土地の再評価に関する法律第8条。IFRSは IAS 36「資産の減損」。基準確認日:2026年10月12日。ラボの設例は、原典の設例1〜10と同じパターンを独自の数値で組み立てたものです(原典の数値は画面に出していません)。
このシリーズの記事:基礎編/応用編/設例・グルーピング編(設例1-1〜1-6)/設例・共用資産とのれん編(設例7-1・7-2・8)/設例・配分と土地再評価編(設例9・10)

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

TaxJudge編集部|公認会計士・税理士(実務25年)による企画・監修。会計基準・税法・裁決・有価証券報告書などの一次情報をもとに、検索できるデータベースと計算・判定・文書作成ツールを制作しています。