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ニデック会計不正ラボ【総合編】|先生と一緒に図で学ぶ会計不正の動機・手口・経理の役割

ニデック会計不正ラボ【総合編】|先生と一緒に図で学ぶ会計不正の動機・手口・経理の役割

無料の学習ツール「ニデック会計不正ラボ」の読み方ガイドです。ラボの「全体像」から「教訓」までのタブ(M&A・子会社管理を除く)から要の節を選び、先生と生徒の会話形式で見ていきます。M&A・子会社管理の視点は「M&A・子会社管理編」で扱っています。各行の図はラボの図そのものです。重要な節の最後には、ラボで30秒だけ手を動かす小さな実習を置いています。

今日の事例
ニデックの会計不正(第三者委員会の最終報告ほか)
第三者委員会の設置2025年9月3日
最終報告(追補)2026年4月17日
訂正の累積影響(純額)▲1,607億円
同 グロス(参考値)▲4,498億円
子会社・関連会社354社
2026年3月期 減損損失(非金融資産)6,321億円
2026年3月期 監査意見連結・個別とも意見不表明

※ ▲1,607億円は、第三者委員会による2025年度第1四半期末時点の集計値です。2026年9月30日の決算短信が示す虚偽表示の修正による累積影響(2025年度第2四半期末の純資産に対し △4,824億57百万円)とは、対象時点・集計範囲が異なります。

はじめに

今日の題材 ── ニデックの会計不正

📍 ラボの場所:ラボ全体(全体像〜教訓のタブ)
ハルカ
先生、ニデックの第三者委員会の報告書を読もうとしたんですが、とても分厚くて途中で止まってしまいました。
先生
無理もないよ。だから今日はラボのタブに沿って、何が歪んだか → なぜ起きたか → 誰がどう動いたか → 手口と会計基準 → 経理の役割 → 教訓の順に読んでいこうか。M&Aと子会社管理の話は、別の「M&A・子会社管理編」で扱うんだ。
ハルカ
数字は事例の表のものを使うんですね。▲1,607億円と▲4,498億円、2つあるのが気になります。
先生
いいところに気づいたね。その2つの違いは、全体像の3つ目の節でじっくり見るよ。人物は報告書の実名ではなく、役職で呼ぶことにするね。
ラボを開きながら読むと分かりやすいですラボで開く ▶
📗 全体像 ① ラボの図
報告されたB/S(見かけ)本来あるべきB/S現金・その他棚卸資産(評価損を回避)固定資産(減損回避・費用の資産化)売上債権(架空・早期)負債(引当金が少なすぎる)純資産(膨らんでいる)現金・その他棚卸資産固定資産売上債権負債(引当金を計上)純資産訂正純資産への累積影響 ▲1,607億円(2025年度Q1末)

論点別の累積影響(純額・当期利益ベース、億円)

固定資産:減損回避▲563棚卸資産:評価損の回避▲277引当金・負債の過少計上▲214固定資産:費用の資産計上▲211売上債権:架空・早期計上▲108棚卸資産:過大計上▲68その他(6区分の合計)▲166
全体像 ①

事件の全体地図 ── B/Sのどこが歪んだか

📍 ラボの場所:「全体像」タブ ①
ハルカ
会計不正というと、架空売上のイメージが強いです。今回もそうですか。
先生
図の左右のB/Sを比べてみて。膨らんでいたのは棚卸資産と固定資産、小さすぎたのは引当金だよ。論点別の棒も、減損回避 ▲563億円、評価損の回避 ▲277億円、引当金の過少計上 ▲214億円が上位で、架空・早期の売上は ▲108億円なんだ。
迷いポイント 会計不正の中心は、架空の売上?
ハルカ
売上を作るのがいちばん手っ取り早いと思っていました。
先生
今回はそうではないのだよ。中心は資産を大きく、負債を小さく見せることで、損失を計上しないで済ませる処理だったんだ。資産が過大で負債が過少なら、その分だけ純資産も膨らむ。第三者委員会は、こうした訂正を累積すると2025年度第1四半期末の連結純資産を1,607億円減少させる影響があると算定しているんだ。追加の減損などの派生的な影響は、この集計に含まれていないよ。
💡 そうだったのか!
中心は架空売上ではなく、評価損・減損・引当金を計上しない処理。利益と純資産が膨らんでいました。
📗 全体像 ② ラボの図
損失を「いつ」計上するかをずらす本来実際1年目損失 ▲50-2年目--3年目-損失 ▲50先送り3年間の合計はどちらも ▲50。でも1年目・2年目の利益は実態より50多く見える訂正するときは「1年目に戻す(▲50)」+「3年目から外す(+50)」の2本になる
全体像 ②

期間をずらす不正 ── 合計は同じでも、毎期の利益が違う

📍 ラボの場所:「全体像」タブ ④
ハルカ
損失を計上しなかったなら、その損失はどこへ消えたんですか。
先生
消えてはいないんだ。図の例では、本来は1年目に ▲50 の損失を出すべきところを、3年目まで先送りしている。3年間の合計はどちらも ▲50 だよ。
迷いポイント 3年間の合計が同じなら、訂正しなくてもいい?
ハルカ
最後にきちんと処理したなら、帳尻は合っています。それなら大きな問題ではない気がします。
先生
そこが落とし穴なんだ。投資家が見ていたのは各年度の利益と純資産だよね。1年目と2年目は、利益が実態より 50 多く見えていた。だから訂正は「1年目に戻す ▲50」と「3年目から外す +50」の2本になるんだよ。
💡 そうだったのか!
期間をずらす不正は、通算の影響が消えても各年度の利益と純資産が誤っている。だから年度ごとに訂正が必要です。
📗 全体像 ③ ラボの図

年度別の訂正影響(純額、当期利益、億円)

▲3872019以前▲1312020▲1352021▲1642022▲3082023▲95520244732025Q1

年度別のグロス影響(参考値、億円)

▲5952019以前▲3012020▲3752021▲7452022▲8102023▲1,3392024▲3332025Q1
全体像 ③

純額とグロス ── ▲1,607億円と▲4,498億円

📍 ラボの場所:「全体像」タブ ⑤
ハルカ
では、はじめにの2つの数字です。どちらが本当の影響額ですか。
先生
役割が違うんだ。上の棒が純額で、訂正仕訳をすべて足した額。2024年度 ▲955億円のすぐ後に、2025年度Q1は +473億円になっているよね。先送りした損を後の期で処理していると、その期はプラスの訂正になって相殺されるんだ。
迷いポイント 影響額は、純額の ▲1,607億円だけ見ればいい?
ハルカ
財務諸表を直す数字は純額ですよね。グロスは見なくていいと思っていました。
先生
純額は訂正の正味の額としては正しいよ。ただ年度間の振替が足し引きで相殺されるから、会計不正等の金額的な規模は見えにくいんだ。下の棒のグロスは、委員会がその規模を示すため、一定の集計条件に基づいて算定した参考値だよ。本来計上すべき年度の損失などを中心に集めていて、誤謬や会社の自己点検の結果も含まれる。合計 ▲4,498億円、純額の約2.8倍なんだ。
ハルカ
純額の ▲1,607億円だけ見て、全部分かった気になって帰ろうとしていました。
先生
グロスも見てから帰ろうか。相殺されて見えなくなった影響が、そちらで見えるんだよ。
💡 そうだったのか!
純額(▲1,607億円)は正味の訂正額。グロス(▲4,498億円)は金額的な規模を示す参考値です。
⏱ 30秒だけラボで試す
  1. 「全体像」タブ ⑤の「実データで確かめる」で「グロス」を押す
  2. 固定資産/減損回避の行と、合計の行を見る

👀 減損回避は純額 ▲563億円に対し、グロスでは総額 ▲1,287億円。合計の行は 2024年度 ▲1,339億円です。もう一度「純額」に戻すと、2025年度Q1の減損回避が +231億円(反転)になっているのが分かります。

ラボを開く ▶
🔥 動機 ① ラボの図

営業利益:社内の業績目標・対外公表の見込み・実績(連結、億円)

01,0002,0003,000201620172018201920202021202220232024社内の業績目標対外公表の見込み実績(公表見込み未達)実績(達成)
動機 ①

「営業利益率10%未満は赤字」── 社内目標は公表値より高かった

📍 ラボの場所:「動機・背景」タブ ①
ハルカ
利益目標が高い会社は、ほかにもたくさんありますよね。何が違ったんでしょう。
先生
グラフの3本を比べてみて。各部門が求められたのは、投資家に公表した見込みではなく、もっと高い社内目標だったんだ。しかも長年、営業利益率10%未満は「赤字」と評価されていたんだよ。
迷いポイント 目標が高くても、実績との差が小さければ問題ない?
ハルカ
目標と実績の差は、年々少しずつ広がったのでしょうか。
先生
差は一直線に広がったわけではないんだ。2022年度は社内目標 2,370億円に対し実績 899億円、2023年度は 3,075億円に対し 1,619億円で、2年続けて差が1,400億円を超えていた。2024年度は約222億円だったよ。
ハルカ
その差を、事業の努力だけで埋めるのは難しそうです。
先生
そうなんだ。埋められない差が、会計上の方策に向かったと委員会は見ているんだよ。
💡 そうだったのか!
達成を求められたのは公表値より高い社内目標。2022・2023年度は実績との差が1,400億円を超え、その差が会計に向かいました。
🔥 動機 ② ラボの図
月次営業利益目標を「100」とすると、施策(アイテム)を 124 まで積み上げるランクA金額×100%ランクB金額×80%ランクC金額×60%ランクD金額×40%ランクE金額×20%毎月5日までに:A〜Eの合計(掛け目後)で124%、A・Bだけで80%届かなければ徹夜で追加。実現性のない施策がA・Bに入り、経費の先送り・評価損の見直し・費用の資産化で埋められた
動機 ②

日次管理と「124%アイテム出し」

📍 ラボの場所:「動機・背景」タブ ④
ハルカ
124%アイテム出し、という言葉が出てきます。何のことですか。
先生
月次の営業利益目標を100とすると、利益を上げる施策(アイテム)を124まで積み上げることが求められたんだ。図のとおり、施策はランクAの100%からランクEの20%まで掛け目をかけて数える。A・Bだけで80%に届かなければ、施策を追加するんだよ。
迷いポイント 施策を多めに積むのは、堅実な管理では?
ハルカ
余裕を持って施策を用意するのは、慎重なやり方に見えます。
先生
施策が本物ならね。でも現実には、実現性のない施策がA・Bに入り、経費の先送り、評価損の見直し、費用の資産化で埋められていったんだ。四半期末に足りなければ、社内で「One Timer」と呼ばれる会計上の方策に追い込まれたんだよ。
ハルカ
毎月1.24倍の自分を用意しろということですね。分身の術が要ります。
先生
分身はいらないけれど、掛け目つきの施策が実態から離れていったのが問題だったんだよ。
💡 そうだったのか!
「124%アイテム出し」は施策の積み上げ目標。実現性のない施策の穴は、経費の先送り・評価損の見直し・費用の資産化で埋められました。
🔥 動機 ③ ラボの図
動機・プレッシャー非現実的な目標と必達の圧力機会権限集中・354社・牽制の不全正当化会社のため・一時的な調整・慣行会計監査専門の内部監査部署で「機会」は抑えていたのに…動機が抑止を「凌駕」

圧力はどう伝わったか

創業者・代表取締役会長(当時)トップダウンの目標・却下・人事権本社の業績管理部門・担当執行役員上積み・バッファ・日次の進捗管理事業本部・国内グループ会社の社長/CFO業績会議・業績フォロー会議経理担当者「会計処理を正当化する理由」を作る財務諸表負の遺産・期間のずれ・虚偽表示
動機 ③

不正のトライアングルで整理する

📍 ラボの場所:「動機・背景」タブ ⑦
ハルカ
不正のトライアングルは、動機・機会・正当化の3つですよね。
先生
そう。上の三角形に当てはめると、動機は非現実的な目標と必達の圧力、機会は権限の集中と354社のグループ、正当化は「会社のため」「一時的な調整」だよ。下の図は、その圧力がトップから財務諸表まで、どう伝わったかを示しているんだ。
迷いポイント 不正が起きたのは、牽制の仕組み(機会への対策)がなかったから?
ハルカ
仕組みが弱かったから不正が起きた、ということですか。
先生
委員会の見方は少し違うんだ。会計監査に特化した部署を内部監査部門に置くなど、機会はむしろ抑えられていたと評価している。それを上回る強い動機があった、というのが分析の中心なんだよ。
💡 そうだったのか!
機会は抑えられていたのに、動機(目標と圧力)がそれを上回った。仕組みだけでは不正は止まりません。
🔥 動機 ④ ラボの図
💬 発言・証言報告書の原文から引用創業者・代表取締役会長(当時)が役職員に繰り返し言ってきたとする説明PDF p.121

「不正をやるくらいなら、未達でも構わない。」

💬 発言・証言報告書の原文から引用経営管理監査部を所管した執行役員経験者の進言(創業者の反応は「自分ならできる」)PDF p.122

「強い業績プレッシャーをかけつつ『王道経理』を徹底するのは無理があるのではないか。」

⚖ 委員会の評価本ラボの要約・「」内は原文PDF p.121-122

高い業績目標を掲げて厳しく管理することと、王道経理を行うことは両立する──創業者はこの前提に立っていた。内部監査部門に会計監査をさせる体制などからも、創業者が会計不正のリスクを認識していたことが強く窺われる。

動機 ④

「王道経理」と強い業績プレッシャーは両立したか

📍 ラボの場所:「動機・背景」タブ ⑨
ハルカ
トップが「不正をやるくらいなら、未達でも構わない」と言っていたなら、現場は不正をしないはずですよね。
先生
言葉としてはそうだね。正々堂々とした経理処理を意味する「王道経理」も、繰り返し説かれていたんだ。でも同じ会社で、未達を許さない会議と人事が続いていたんだよ。
迷いポイント トップが「不正はするな」と言えば、不正は防げる?
ハルカ
トップメッセージがはっきりしていれば、十分ではないでしょうか。
先生
委員会の評価を読んでみて。執行役員経験者は「両立は無理があるのではないか」と進言したけれど、受け入れられなかった。現場は、言葉よりも目標の決め方・会議・評価と人事が発するメッセージに従って動いたんだ。
💡 そうだったのか!
トップの言葉より、目標・会議・人事という仕組みが発するメッセージのほうが強く行動を決めます。
👥 立場 ① ラボの図
📌 この表は、第三者委員会の評価をもとに本ラボが整理した要約です。個別の評価は、下の各カードの引用と調査報告書(追補)の原文 ↗で確認してください。
立場根本原因の認識不正への関与委員会のキーワード
創業者・代表取締役会長(当時)あり容認「一部の会計不正を容認」「最も責めを負うべき」
歴代の代表取締役社長(当時)一部指示・主導なし/概括的な黙認の例も「相応の努力」/「進言する必要があった」/「認識・黙認」
本社CFO(当時)あり主導した例も「責任の一端」/「一定の評価」
本社経理部門一部関与あり「第2線として機能する環境に置かれていなかった」
本社の執行役員(グループ会社担当など)あり圧力の起点苛烈な叱責が会計不正の背景
事業本部・子会社の幹部あり実行圧力に耐えかね不正に手を染める構図
事業本部・子会社のCFO・経理あり実行正当化の理由を作り監査人に説明
経営管理監査部(内部監査)あり発見したが是正せず「根本原因に切り込むことをあえて回避」
法務コンプライアンス部あり指摘せず「遠慮・忖度」
常勤監査等委員(監査役)一部あり問題提起せず「牽制として機能していなかった」
社外取締役・社外の監査等委員根本原因の認識なし(過去事案の概要報告は受領)―「存在感が皆無に近い」「疑ってしかるべき」
会計監査人一部の情報欺かれた側会社が「与しやすい相手」と捉えていた
発見者(中国子会社の新任総経理)気づいた報告した発覚の端緒(2025年1月に本社幹部へ報告、NTMCの内部監査部門にも報告)
立場 ①

一覧:誰が何を知り、どう動いたか

📍 ラボの場所:「立場別の対応」タブ(一覧)
ハルカ
関わった人がたくさんいて、誰が悪かったのか整理できません。
先生
一覧表は、委員会の評価をもとにラボが整理した要約だよ。列は「根本原因の認識」と「不正への関与」。同じ情報に触れていても、立場によって動けた人と動かなかった人が分かれているんだ。
迷いポイント 歴代の社長は、みんな同じ評価?
ハルカ
社長はみんな、不正を指示していなかったから問題なし、ですよね。
先生
指示・主導した事実は、どの社長にも認められなかったんだ。ただ評価は一様ではないよ。創業メンバーの社長は、概括的には計画的処理を「認識・黙認」していたとされ、2024年度からの社長は努力を評価されつつも「進言する必要があった」と指摘されている。表の行と、下のカードを合わせて読むのが大事なんだ。
💡 そうだったのか!
「指示していない」と「問題がない」は別。黙認や進言しなかったことも、委員会は立場ごとに評価しています。
👥 立場 ② ラボの図
知っていた
  • 負の遺産の問題も、構造改革の意味も伝えられていなかった(p.242-243)
  • 過去に発覚した主要な会計不正事案の概要は監査等委員会(監査役会)で報告されていたが、報告は概括的で、資料も配られなかった(p.242・p.251)
した/しなかった
  • 会計不正が毎年繰り返されても「違和感を感じていなかった」と述べている(p.252)
  • 取締役会への月次決算報告がなくなったことにも違和感を持たなかった(p.112)
委員会の評価
要約・「」は原文
社外の監査等委員の存在感は「皆無に近い」。ただし情報が共有されない状況でも、根本原因が本社の経営幹部にあるのではないかと「疑ってしかるべき」だった(p.250-252)。
学び
本ラボの整理
社外役員に必要なのは情報量よりなぜ毎年起きるのかと問う姿勢。報告がなくなる・概括的になること自体を、兆候として扱いたい。
立場 ②

社外取締役・社外の監査等委員

📍 ラボの場所:「立場別の対応」タブ ⑫
ハルカ
社外役員は、知らされていなければ気づきようがないですよね。
先生
今回の調査で発見された会計不正を、社外役員が認識していたことを窺わせる事実は見つかっていないよ。ただ、過去に発覚した会計不正事案の概要は、監査等委員会(監査役会)で報告されていたんだ。
迷いポイント 情報をもらえなかった社外役員に、責任はない?
ハルカ
報告が概括的なら、深く考えようがないと思います。
先生
委員会は、それでも「疑ってしかるべき」だったと言っているんだ。毎年のように別々の拠点で不正が見つかるなら、原因は拠点ではなく本社側にあるのではないか、と問うことはできたからね。
ハルカ
CGコードラボで、取締役会の実効性評価を毎年回す、とやりましたよね。あれが効くのは、こういう場面ですか。
先生
ちゃんと覚えていたね。報告がなくなった、概括的になったということ自体を、実効性評価で取り上げる兆候として扱えるんだよ。
💡 そうだったのか!
社外役員に求められたのは情報量より「なぜ毎年起きるのか」と問う姿勢。報告が減ること自体が兆候です。
🧩 手口 ① ラボの図
B/SP/L売上債権 過大 ↑早期・架空計上/二重計上/貸倒引当金の過少棚卸資産 過大 ↑評価損の回避/数量・原価の水増し固定資産・のれん 過大 ↑減損回避/費用の資産計上現金・その他負債・引当金過少 ↓引当金を計上しない純資産過大 ↑売上収益 過大 ↑早期・架空計上、連結での二重計上売上原価・費用 過少 ↓評価損・減損・引当金を計上しない、資産化その他の収益 過少 ↓負ののれんを出さない=利益の「貯金」当期の利益 過大 ↑(負ののれん回避は当期の利益を小さくする例)
手口 ①

処理早見表 ── 手口×会計基準

📍 ラボの場所:「手口と会計」タブ(早見表)
ハルカ
手口がたくさんあって、覚えきれる気がしません。
先生
図の左右を見て。B/Sでは売上債権・棚卸資産・固定資産が過大、負債・引当金が過少。P/Lでは売上が過大、費用が過少。ほとんどの手口はこの2つの方向に集まるんだ。ニデックはIFRS適用会社だから、基準もIFRSで見るよ。
迷いポイント 手口は全部、利益を大きく見せる方向?
ハルカ
不正なら、全部利益を増やす方向に動いているはずですよね。
先生
逆向きの代表的な例があるんだ。買収時に負ののれんを出さない処理は、当期の利益を小さくする。後で土地を売ったときに利益が出るようにする「貯金」なんだよ。これはM&A・子会社管理編でくわしく見ようか。
💡 そうだったのか!
手口は資産の過大・負債の過少に集まります。負ののれんの回避は、当期利益を小さくする代表例です。
🧩 手口 ② ラボの図
600帳簿価額460回収可能価額実現可能な計画650回収可能価額確度の低い案件を含む計画帳簿価額の線
🧾 仕訳で確認

例:上の図の数字。帳簿価額600、実現可能な計画での回収可能価額460。

✅ 本来の処理
回収可能価額まで減額
借方金額貸方金額
減損損失140有形固定資産140
⚠️ 実際の処理(数字作り)
仕訳なし:水増し計画では回収可能価額650>帳簿価額600で減損なし
手口 ②

固定資産:減損回避

📍 ラボの場所:「手口と会計」タブ ④
ハルカ
減損回避が最大の論点でした。計画の数字をどう使うと減損を避けられるんですか。
先生
図の例で見ようか。帳簿価額は600。実現可能な計画で見積もると回収可能価額は460で、140の減損が必要だよ。ところが確度の低い案件を計画に入れると、回収可能価額は650になって減損が消えるんだ。
迷いポイント 計画に入れた案件が「見込み」なら、減損テストに使ってもいい?
ハルカ
計画は将来のことなので、多少強気でも間違いとは言えない気がします。
先生
IAS第36号では、将来キャッシュ・フローは合理的で裏付け可能な仮定に基づいて見積もり、外部の客観的証拠を重視するんだ。報告書の事案では、実現確度が低い案件や失注済みの案件まで計画に含めて、約86億円の減損を回避していたんだよ。仕訳枠の「本来の処理」が、例の数字での減損損失140の計上なんだ。
💡 そうだったのか!
使用価値は将来キャッシュ・フローの見積りで決まるため、計画を盛れば減損は消せてしまう。計画の実現可能性の検証が肝心です。
🧩 手口 ③ ラボの図
🧾 仕訳で確認

例:子会社がすでに計上した外部売上240を、連結修正仕訳でもう一度計上した。

✅ 本来の処理
仕訳なし:子会社の売上は個別決算で計上済み。連結で重ねて計上しない
⚠️ 実際の処理(数字作り)
連結修正で売上を重ねて計上
借方金額貸方金額
売掛金240売上収益240

連結B/S・P/Lへの影響(例の数値)

本来のB/S現金・その他1,500売上債権600棚卸資産1,000固定資産1,200負債2,000純資産2,300資産 4,300 = 負債・純資産 4,300報告されたB/S現金・その他1,500売上債権840棚卸資産1,000固定資産1,200負債2,000純資産2,540資産 4,540 = 負債・純資産 4,540P/L(本来 → 報告)項目本来報告差売上収益3,0003,240+240△ 費用2,2002,200利益8001,040+240本来報告連結で売上240を重ねると、連結の売上・債権・利益が240多く見える
手口 ③

連結調整で売上を二重計上

📍 ラボの場所:「手口と会計」タブ ⑨
ハルカ
子会社の決算が正しければ、連結も正しくなるのではないですか。
先生
連結財務諸表は、各社の個別財務諸表を合算して、グループ内の取引や残高を消去するなどの連結修正を加えて作るよね。今回の事案は、その連結修正で、子会社がすでに計上した外部売上をもう一度計上していたんだ。
ハルカ
内部取引消去ラボで、債権債務や取引高の相殺は同じ額を両側から消すから利益は変わらない、と習いました。
先生
よく覚えていたね。利益が動くのは、未実現利益の消去や貸倒引当金の修正のほうだったよね。どちらにしても連結修正は、数字を正しくするための仕訳なんだ。ここでは逆に、売掛金と売上収益を240ずつ足して、連結の売上・債権・利益を240多く見せているんだよ。
迷いポイント 連結修正の誤りは、子会社の監査で見つかる?
ハルカ
子会社にも監査が入っていれば、どこかで見つかりそうです。
先生
子会社の個別決算は正しいから、そこでは見つからないんだ。連結修正は本社経理の手作業が多く、連結の段階でしか見えない領域だよ。この件は一度「連結調整の誤り」として訂正され、最終報告で不正と再認定されているんだ。
💡 そうだったのか!
子会社の数字が正しくても、連結修正で数字は作れる。連結修正仕訳は、本来は数字を正しくするためのものです。
🧾 経理 ① ラボの図
報告ライン子会社・事業部の経理は事業側の経営陣に「主に従属」(2019年の指摘)評価・責任CFO・経理が業績達成の責任を負う「理不尽とも言える状況」本社の横串本社経理は負の遺産の全容を把握できず354社の複雑な構成
⚖ 委員会の評価本ラボの要約・「」内は原文PDF p.221・p.246

2019年に検討された体制は、今回の再発防止策と「極めて似通っている」。経理部門は「第2線として機能する環境に置かれていなかった」。

経理 ①

なぜ経理は「第2線」になれなかったか

📍 ラボの場所:「経理の役割」タブ ②
ハルカ
経理は、数字をチェックする側ですよね。どうして止められなかったんでしょう。
先生
図の3つの箱を見て。子会社・事業部の経理は事業側の経営陣に「主に従属」し、CFO・経理が業績達成の責任を負っていた。本社経理は354社の全容を把握できなかったんだ。
ハルカ
J-SOXラボで、内部統制の責任は経営者が最終的に負って、取締役会・監査役等・内部監査人がそれぞれの立場で関わる、とやりました。経理はその中でどこにいるんですか。
先生
ちゃんと覚えていたね。経理は日々の担当者として内部統制を担いながら、業務部門を牽制する第2線の役割も期待される立場だよ。ところがニデックでは、その経理が数字を作る側に置かれていたんだ。
迷いポイント 2019年の提言どおりに体制を変えていれば防げた?
ハルカ
2019年に提言があったなら、そのときに直っていたはずですよね。
先生
そこが残念なところなんだ。子会社の経理から本社経理へ直接報告する体制などが提言されたけれど、「子会社の人材不足」を理由に実現しなかった。委員会は、今回の再発防止策がその提言と「極めて似通っている」と述べているんだよ。
ハルカ
「第2線」と聞いて、サッカーのディフェンスラインのように、守ってくれる人だと思っていました。
先生
守る役のはずが、点を取る役(業績責任)まで背負わされていたんだよ。
💡 そうだったのか!
経理が第2線として働けなかったのは、業績責任を負い、報告ラインも事業側にあったから。2019年の提言は実現しませんでした。
🧾 経理 ② ラボの図
会計上の見積りの「幅」と、越えてはいけない線保守的中立アグレッシブ不正目的が「目標達成」で、合理的な根拠がない根拠(外部の客観的証拠)と目的で判断が分かれる委員会:見積りには一定の幅が生じうるが「判断には合理性が要求され」、恣意的な判断は会計不正と評価される
経理 ②

見積りと不正の境界線

📍 ラボの場所:「経理の役割」タブ ③
ハルカ
減損も引当金も見積りですよね。見積りがずれただけで不正になるんですか。
先生
図の帯を見て。見積りには保守的から中立、アグレッシブまで幅があることを委員会も認めているんだ。そのうえで、判断には合理性が要り、恣意的な判断は会計不正と評価される、と線を引いているんだよ。
迷いポイント 会社のルールに書いていなければ、選んだ処理は許される?
ハルカ
マニュアルに定めがない処理なら、会社が自由に決めてよいと思っていました。
先生
報告書の事案に、子会社が原価差額の償却期間を延ばしたものがあるんだ。マニュアルに均等償却の定めはなかったけれど、委員会は業績目標の達成が目的で、会計上合理的な理由に基づいていなかったことから不正と認定したんだよ。分かれ目は根拠と目的なんだ。
💡 そうだったのか!
見積りには幅があっても、根拠(外部の客観的証拠)と目的で判断が分かれます。ルールに書いていないことは、許されることを意味しません。
⏱ 30秒だけラボで試す
  1. 「経理の役割」タブ ③のクイズで、B「業績目標の達成が目的で、会計上合理的な理由に基づいていなかったこと」を押す

👀 「⭕ 正解です。」と表示され、委員会が「会計上合理的な理由に基づくものではなく」行われた変更を不正と認定したこと(PDF p.145-146)と、マニュアルに定めがなかったこと(p.144 脚注)が出ます。

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🧾 経理 ③ ラボの図
事案伝えなかったこと会計監査人側の受け止め
海外子会社の補助金追加通達を外部に出さないとする現地政府への「承諾状」(PDF p.152-153)認識していれば会社の説明に「合理性はない」と判断したと思われる
PDF p.153
子会社の開発協力金債権債務がないことを確認する補足契約書を提出しなかった(PDF p.132-133)―
トラクションモータ事業実現確度の低い案件・失注済み案件を計画に含めていること(PDF p.167)―
インバータ事業「その他ネガティブな話はしないように」との方針で開発中止を伝えず(PDF p.169)―
TAKISAWAの取得原価配分土地の評価益と、土地を評価対象から除外した事実(PDF p.171)―
子会社の減損判断本社経理部長が作らせた「強気」の生産数量シミュレーションを提出(PDF p.130)―
⚖ 委員会の評価本ラボの要約・「」内は原文PDF p.16・p.253

会計監査人の了承を得られれば不正な会計処理が正当なものとなるわけではない。会社は自らの責任で、投資家・市場に正々堂々と示せる財務諸表を作成し、それを会計監査人に提示して監査を受ける義務がある。

経理 ③

監査人に「伝えなかった」事実

📍 ラボの場所:「経理の役割」タブ ④
ハルカ
会計監査人が了承していた処理なら、問題はなかったということになりませんか。
先生
表を見て。多くの事案で、不正の中核は会計処理そのものより、不利な事実を会計監査人に伝えなかったことだったんだ。補助金の件では、追加通達を外部に出さないとする承諾状の存在を伝えていなかった。監査人側は、知っていれば会社の説明に「合理性はない」と判断したと思われる、としているよ。
迷いポイント 会計監査人の了承を得ていれば、その処理は正当?
ハルカ
監査人がOKなら、経理としては安心していいと思っていました。
先生
委員会の評価を読んでみて。了承を得られれば不正な処理が正当になるわけではない、とはっきり書いているんだ。財務諸表を作る責任は会社にあって、判断に関わる事実をすべて示したうえで監査を受けるのが前提なんだよ。
💡 そうだったのか!
監査人の了承は免罪符ではない。判断に関わる事実をすべて監査人に示すことが、作成者である会社の義務です。
🔎 教訓 ① ラボの図
2018年度下期
外部法律事務所の調査の過程で「負の遺産」一覧(直ちに処理要約63億円、意図的な不正を否定できない案件多数)が会計監査人にも提供されたが、ニデックはその後、意図的な不正の有無を確認しなかった
PDF p.9-10
毎年度
複数の拠点で会計不正が見つかり、内部監査部門が特別調査を繰り返したが、決算スケジュールは一度も延期されず、公表もされなかった
PDF p.9
特別調査の過程
ヒアリング議事録から本社執行役員の業績プレッシャーを訴える記述が削除された。会計監査人の担当パートナーは根本原因を示唆するコメントを付していた
PDF p.11
2022年度Q4/2023年度Q4
「構造改革費用」566億円・598億円。2022年度Q4は通期営業利益1,000億円の確保を前提に、処理する負の遺産が選ばれていた。2023年度Q4はトラクションモータ事業の構造改革で、グループ全体の改革ではなかった
PDF p.8・p.201
2023-10-03
監査等委員会への構造改革の説明は「生産設備の減損が金額的に大きく」程度で、負の遺産や計画的処理の報告・議論はなかった。三様監査の連絡会もなかった
PDF p.251
教訓 ①

見逃された5つの兆候

📍 ラボの場所:「教訓」タブ ①
ハルカ
外から見て、不正に気づけるきっかけはあったんでしょうか。
先生
年表に5つ並べているよ。2018年度下期の「負の遺産」一覧、毎年度の拠点での不正、ヒアリング議事録からの記述の削除、2回の「構造改革費用」、そして監査等委員会への表面的な説明。どれも単独では「よくある話」に見えるんだ。
迷いポイント 一つひとつが小さな問題なら、見逃しても仕方ない?
ハルカ
毎年の不正は、それぞれ別の拠点の問題として片づけられていたんですよね。
先生
ポイントは繰り返されていることなんだ。委員会は、毎年様々な拠点で会計不正が相次ぐのは「異常事態というほかない」と述べている。拠点が違っても同じことが起きるなら、原因は共通する本社側にあると考えるのが自然なんだよ。
ハルカ
毎年ちがう場所で転ぶなら、地面ではなく自分の靴を疑え、ということですね。
先生
まさにそうだね。靴にあたるのが、本社の目標の決め方と評価の仕組みなんだよ。
💡 そうだったのか!
兆候は単独では小さく見えても、繰り返されていることが根本原因(本社の業績プレッシャー)を示していました。
⏱ 30秒だけラボで試す
  1. 「教訓」タブ ②のクイズ「あなたが社外の監査等委員なら」で、B「毎年のように別々の拠点で会計不正が見つかり…」を押す

👀 「⭕ 正解です。」と表示され、委員会の「異常事態というほかない」(PDF p.16)が引用されます。Cの「6,000億円を超える減損損失」は、発覚した後の出来事だという解説も出ます。

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🔎 教訓 ② ラボの図
創業者・代表取締役会長(当時)特命監査の報告で把握内部監査部門不正を発見・特別調査事業本部・子会社数字作り・計画的処理会計監査人説明を受けて了承常勤監査等委員根本原因を理解社外の監査等委員表面的な説明のみ報告虚偽説明も✕根本原因が共有されない
牽制の矢印が、どこで切れていたか第1線:事業本部・子会社数字作りを実行第2線:CFO・経理業績責任を負わされた第3線:内部監査特命監査で発見→計画的処理監査等委員会・社外役員根本原因が報告されず会計監査人虚偽説明・証憑の隠蔽で了承を取り付けられた✕✕✕
教訓 ②

情報はどこで止まったか

📍 ラボの場所:「教訓」タブ ③
ハルカ
不正は、ずっと誰にも見つかっていなかったんですか。
先生
上の図を見て。それが、そうではないのだよ。内部監査部門は不正を発見し、創業者・代表取締役会長(当時)は特命監査の報告で把握していた。見つかった情報が、牽制すべき人まで届いていなかったんだ。
迷いポイント 不正を発見できていれば、牽制は働いている?
ハルカ
内部監査が見つけていたなら、内部統制はちゃんと機能していた気がします。
先生
下の図の ✕ を見て。内部監査は根本原因に切り込むことを避け、調査も決算スケジュールに合わせて進めた。社外の監査等委員には表面的な説明しかなく、会計監査人には虚偽の説明もあった。発見しても、正規のルートで報告・是正されなければ牽制にはならないんだよ。
💡 そうだったのか!
問題は「見つからなかった」ことではなく、見つかった情報が監査等委員会や会計監査人まで届かなかったことでした。
⏱ 30秒だけラボで試す
  1. 「教訓」タブ ⑨の「自社チェック」で、自社に当てはまる兆候を3つ選ぶ(例:毎年別の拠点で見つかる/CFO・経理が業績責任を負う/内部監査の結果が少数にしか届かない)

👀 「当てはまる数:3 / 8 いくつかの兆候があります。根本原因(業績目標の決め方)まで確認しましょう。」と表示されます。学習用の簡易チェックで、内部統制の評価に代わるものではありません。

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今日の内容を、ラボで確かめてみませんか?

この記事の図は、すべてニデック会計不正ラボの画面そのものです。各タブを開けば、同じ図を見ながら読み返せます。

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今日のまとめ ── 迷いポイント早見表

迷いポイント答えラボ
会計不正の中心は、架空の売上?中心は評価損・減損・引当金を計上しない処理。資産過大・負債過少で利益と純資産が膨らんだ全体像①
3年間の合計が同じなら、訂正しなくてもいい?各年度の利益と純資産が誤っているので、年度ごとに訂正する全体像④
影響額は、純額の▲1,607億円だけ見ればいい?純額は正味の訂正額。会計不正等の金額的な規模はグロス(▲4,498億円、参考値)で見る全体像⑤
目標が高くても、実績との差が小さければ問題ない?2022・2023年度は社内目標と実績の差が1,400億円超。その差が会計に向かった動機①
施策を多めに積むのは、堅実な管理では?実現性のない施策の穴を、経費の先送り・評価損の見直し・費用の資産化で埋めた動機④
不正は牽制の仕組みがなかったから?機会は抑えられていたが、動機がそれを上回った動機⑦
トップが「不正はするな」と言えば防げる?目標・会議・人事という仕組みのメッセージのほうが強い動機⑨
歴代の社長は、みんな同じ評価?指示・主導はなし。ただし概括的な「認識・黙認」や「進言する必要」の指摘も立場
情報をもらえなかった社外役員に責任はない?「疑ってしかるべき」だった。報告が減ること自体が兆候立場⑫
手口は全部、利益を大きく見せる方向?2方向(資産過大・負債過少)に集まる。負ののれん回避は当期利益を小さくする代表例手口・早見表
「見込み」なら減損テストに使ってもいい?合理的で裏付け可能な仮定に限る。計画を盛れば減損は消せてしまう手口④
連結修正の誤りは、子会社の監査で見つかる?子会社の個別決算は正しいので見つからない。連結の段階で見る手口⑨
2019年の提言どおりなら防げた?直接報告ラインは「人材不足」で実現せず。経理は業績責任を負ったまま経理②
ルールに書いていなければ許される?根拠と目的で判断。業績目的で合理的な理由がなければ不正経理③
監査人の了承を得ていれば正当?了承は免罪符ではない。判断に関わる事実をすべて示す義務がある経理④
一つひとつが小さな問題なら、見逃しても仕方ない?繰り返されていることが、本社側の根本原因を示す教訓①
不正を発見できていれば、牽制は働いている?正規のルートで報告・是正されなければ牽制にならない教訓③
おわりに

今日のふりかえり

先生
今日のまとめだよ。中心は架空売上ではなく損失を計上しない処理で、背景には社内目標と実績の大きな差があった。機会は抑えられていたのに動機がそれを上回り、見つかった情報は牽制すべき人まで届かなかった。経理は第2線の位置に立てていなかったんだ。
ハルカ
前は「不正=誰かが悪いことをした話」だと思っていました。今日は、目標の決め方や報告のラインといった仕組みの話なんだと分かりました。経理の私にも関係があります。
先生
そこに気づけたのは大きいよ。実務では、見積りの根拠を残すことと、判断に関わる事実を監査人にすべて示すことが、経理が自分で守れる線なんだ。
ハルカ
さっそく、私の決算メモにも「根拠」の欄を作ります。いまは「たぶん」としか書いていない欄がいくつかあるので。
先生
「たぶん」を根拠に書き換えられたら、それがいちばんの再発防止策だね。次のM&A・子会社管理編では、買収した会社をどう管理していたか、のれんと減損を見ていこうか。

参考資料

ニデック株式会社 第三者委員会「調査報告書」(2026年2月27日)・「調査報告書(追補)」(2026年4月17日、最終報告)、ニデック株式会社「第三者委員会の調査報告書(最終報告)の受領及び当社の対応に関するお知らせ」(2026年4月17日)、「2026年3月期 決算短信〔IFRS〕(連結)」(2026年9月30日)、意見不表明に関するお知らせ(2026年9月30日)、2026年3月期 有価証券報告書。頁は調査報告書(追補)公表版PDFの頁番号です。人物は役職で表記しています。
原資料(PDF・別窓):調査報告書(追補)公表版(2026年4月17日のお知らせ添付)/2026年3月期 決算短信/意見不表明に関するお知らせ/ニデック「事案の概要」
会計基準:IAS第2号・第8号・第16号・第36号・第37号・第38号、IFRS第3号・第9号・第10号・第15号。
サイト内の関連:会計不正 調査報告書ナビβ(ニデックの事例カード)/会計不正の調査報告書171件を分解する/J-SOXラボ/CGコードラボ/内部取引消去ラボ
シリーズ:ニデック会計不正ラボ【M&A・子会社管理編】

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この記事を書いた人

TaxJudge編集部|公認会計士・税理士(実務25年)による企画・監修。会計基準・税法・裁決・有価証券報告書などの一次情報をもとに、検索できるデータベースと計算・判定・文書作成ツールを制作しています。