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J-SOXラボ【応用編】|先生と一緒に図で学ぶ評価範囲・不備の判断・内部統制報告書・監査意見

無料の学習ツール「J-SOXラボ」の読み方ガイドです。ラボの「Ⅱ 評価・報告」タブと「Ⅲ 監査」タブから、実務で迷いやすい論点を選んで、先生と生徒の会話形式で見ていきます。全体像・Ⅰ 枠組みタブの内容は基礎編で扱っています。各行の図はラボの図そのものです。重要な節の最後には、ラボで30秒だけ手を動かす小さな実習を置いています。

※ 記事とラボの数値(売上高・税引前利益・発生確率など)は学習用の独自の設例です。3分の2・3勘定・5%・95%などは実施基準等に示された「例示」で、実際の評価範囲や判定は経営者が会社の状況に応じて決め、必要に応じて監査人と協議します。不備の判定で使う「影響額 × 発生確率」の計算は、基準所定の算式ではなく、ラボの学習用モデルです。

今日の事例
ラボの設例の会社:P社グループ(単位:百万円)
P社(本社・親会社)売上高 40,000
S1社(国内製造)16,000
S2社(国内販売)10,000
S3社(海外販売・当期に買収)8,000
S4社(物流)4,000
S5社(小規模)2,000
連結税引前利益4,000(例示の5%で基準値200)
はじめに

今日の題材 ── P社グループの評価と監査

📍 ラボの場所:Ⅱ 評価・報告タブ・Ⅲ 監査タブ
ハルカ
基礎編で地図は手に入りました。次は、会社が実際に何をするのかを知りたいです。
先生
今日はラボのⅡ 評価・報告タブとⅢ 監査タブから、迷いやすいところを選んで見ていくよ。数字は全部、この表のP社グループなんだ。
ハルカ
6社もあると、全部を評価するだけで1年が終わりそうです。
先生
だからこそ「どこまで評価するか」を決めるところから始めるんだ。順番に見ていこうか。
ラボのⅡ 評価・報告タブを開きながら読むと分かりやすいですラボで開く ▶
Ⅱ 評価・報告 ③ ラボの図
全社的な内部統制の評価原則、全ての事業拠点を全社的な観点で(僅少は除外可)決算・財務報告プロセスの評価全社的な観点で評価するものは全社統制に準じて全拠点1 重要な事業拠点の選定売上高等の大きい順に合算し一定割合(例:おおむね3分の2)2 評価対象の業務プロセスの識別事業目的に大きく関わる勘定(例:3勘定)+個別に追加3 業務プロセスの評価把握・整理 → リスクと統制の識別 → 整備状況 → 運用状況4 報告不備は期末までに是正/期末日に残る開示すべき重要な不備は開示評価範囲を必要に応じて監査人と協議
Ⅱ 評価・報告 ③

評価・報告の全体の流れ(参考図2)

📍 ラボの場所:Ⅱ 評価・報告タブ ③
ハルカ
評価って、業務プロセスから1つずつ見ていくんですか。
先生
図を見て。最初は全社的な内部統制の評価なんだ。その結果を踏まえて、重要な事業拠点を選び、評価する業務プロセスを決めて、評価して、報告するよ。トップダウン型のリスク・アプローチと呼ばれる流れだね。
迷いポイント 全社的な内部統制の結果は、その後の評価に関係ある?
ハルカ
全社は全社、業務は業務で、別々のテストですよね。
先生
つながっているんだ。全社的な内部統制が有効でなければ、業務プロセスの評価範囲を広げたり手続を足したりするし、有効ならサンプリングの範囲を縮小することが考えられるよ。評価時点は期末日なんだ。
💡 そうだったのか!
評価は全社的な内部統制が先です。その結果が、業務プロセスの評価範囲とサンプルの量に効いてきます。
Ⅱ 評価・報告 ⑦ ラボの図
結論重要な事業拠点は「3分の2」を機械的に選ぶものではない。3分の2は例示。
実務では売上高などの指標で大きい拠点から合算し、全社統制の結果や質的な要因も踏まえて決め、理由を記録する。
監査対応なぜその指標・割合にしたのかを説明できるようにし、報告書には「決定した事由」を書く。
重要な事業拠点の選定(売上高の大きい順に合算)P50.0%S120.0%S212.5%S310.0%一定割合 66.7%量的に選定全社統制の結果で追加前年度有効で外すやむを得ず除外重要な事業拠点以外カバー率:量的選定 70.0% → 最終 70.0%
重要な事業拠点の選定(売上高の大きい順に合算)P50.0%S120.0%S212.5%S310.0%一定割合 66.7%量的に選定全社統制の結果で追加前年度有効で外すやむを得ず除外重要な事業拠点以外カバー率:量的選定 70.0% → 最終 50.0%

S1社を3条件で外すと、カバー率は 50.0% に下がる(基準上ありうる)

✓前年度の評価結果が有効✓整備状況に重要な変更がない✓中核会社など特に重要な拠点ではない3つとも当年度は評価対象から外せる結果として3分の2を相当程度下回ることもある下回るときは、決定方法と根拠を内部統制報告書に書く(Q&A問104-1)
Ⅱ 評価・報告 ⑦

評価範囲③:重要な事業拠点の選定

📍 ラボの場所:Ⅱ 評価・報告タブ ⑦
ハルカ
重要な事業拠点は「売上高の3分の2」で決まり、と聞きました。
先生
図のとおり、売上高の大きい順に合算すると、P社50%+S1社20%で70%になって、一定割合66.7%に届くね。ただ、3分の2は例示で、機械的に使うものではないんだ。
迷いポイント 3分の2に届いたら、評価範囲はそこで終わり?
ハルカ
70%まで来たら、あとの4社は安心して休めますね。
先生
その「安心」が、いちばん危ないところだよ。全社的な内部統制に良好でない項目がある拠点は含めるし、リスクの大きいプロセスは個別に追加するんだ。逆に、前年度有効などの3条件を満たす拠点は外せて、結果として3分の2を相当程度下回ることもあるよ。
ハルカ
3分の2は「ゴール」ではなく、「最初の目安」なんですね。
💡 そうだったのか!
3分の2は例示です。全社統制の結果・質的な要因・前年度の結果を踏まえて決め、報告書には決定した事由を書きます。
⏱ 30秒だけラボで試す
  1. シミュレーションの「評価範囲」で「設例1(基本)」を読み込む
  2. 「一定割合(%)」を 66.7 → 80 にする

👀 S2社も重要な事業拠点になり、カバー率が 70.0% → 82.5% に上がります。割合を何%にしたかは、報告書で「決定した事由」を説明するところです。

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Ⅱ 評価・報告 ⑧ ラボの図
結論重要な事業拠点では、事業目的に大きく関わる勘定科目に至る業務プロセスを原則すべて評価する。3勘定は例示。
実務では業種・事業特性で勘定科目を選び(例:人件費)、リスクの大きいプロセスを個別に追加する。追加しなかった判断も記録する。
監査対応評価範囲の決定前後に、必要に応じて監査人と協議する(範囲を決めるのは経営者)。3勘定だけの範囲は検査結果事例集でも指摘されている。
重要な事業拠点売上売掛金棚卸資産事業目的に大きく関わる勘定(一般的な事業会社の例示)販売在庫管理期末の棚卸購入原価計算(期末在庫評価に必要な範囲)個別に追加a リスクが大きい取引(デリバティブ、価格変動の激しい棚卸資産、海外・結合直後の拠点)b 見積り・予測を伴う重要な勘定(引当金・減損・繰延税金資産)c 非定型・不規則な取引d 一部の取引だけ追加でも可関連性が低く僅少なプロセスは外せる(例:合算で連結売上高のおおむね5%程度以下。機械的に適用しない)
こんな変化があったら「個別に追加」を検討する(リスクが発生・変化する状況の例)規制・経営環境の変化新規雇用者情報システムの重要な変更事業の急速な拡大新技術の導入新しいビジネスモデル・新規事業・新製品リストラクチャリング海外事業の拡大・買収新しい会計基準の適用・改訂
Ⅱ 評価・報告 ⑧

評価範囲④:業務プロセスの識別と個別の追加、監査人との協議

📍 ラボの場所:Ⅱ 評価・報告タブ ⑧
ハルカ
重要な事業拠点が決まったら、何を評価するんですか。
先生
図を見て。事業目的に大きく関わる勘定科目に至る業務プロセスを、原則すべて評価するんだ。一般的な事業会社の例示が、売上・売掛金・棚卸資産の3勘定だよ。
迷いポイント 3勘定さえ押さえれば、どの会社でも大丈夫?
ハルカ
売上・売掛金・棚卸資産。3つだけなら覚えやすくて助かります。
先生
3勘定は例示で、業種や事業の特性で判断するんだ。検査結果事例集には、労働集約型のコンサル業で、棚卸資産より金額的重要性の高い人件費を含めるか検討していなかった例が載っているよ。
ハルカ
コンサル会社の倉庫に、在庫はほとんど無さそうですもんね。3勘定の3つ目が、空き部屋でした。
先生
その空き部屋に何を入れるかを、会社ごとに考えるんだ。さらに、リスクの大きい取引・見積りを伴う勘定・非定型の取引は、個別に追加するよ。
💡 そうだったのか!
3勘定は例示です。業種に合わせて勘定を選び、リスクの大きいプロセスを個別に追加します。範囲は、評価範囲の決定前後に必要に応じて監査人と協議します(決めるのは経営者です)。
Ⅱ 評価・報告 ⑯ ラボの図
結論業務プロセスの不備は、影響が及ぶ範囲と発生可能性を勘案して影響額を推定し、同じ勘定科目の不備は合わせて判断する。
実務では同一の統制目標を達成する補完統制が整備・運用され、関連する虚偽記載リスクを低減していると判断できれば、開示すべき重要な不備に当たらないと判断できる(Q&A問41)。
監査対応IT全般統制の不備は、直ちに開示すべき重要な不備とはならない(Q&A問14)。
販売プロセスの不備(信用販売)入金プロセスの不備(代金回収)売掛金影響を合算重要性と比較勘定ごとに小さくても複数勘定の合計で重要なら開示すべき重要な不備補完統制(不備を補う統制)があれば、発生可能性と金額的影響をどの程度低減しているかを検討する

例:売掛金に影響する2つの不備(設例6の数字)

発生可能性を勘案した影響額と重要性の基準値不備1(売掛金)120不備2(売掛金)90合算210基準値 200(税引前利益 4,000 × 5%)
Ⅱ 評価・報告 ⑯

有効性の判断②:業務プロセスとITの不備

📍 ラボの場所:Ⅱ 評価・報告タブ ⑯
ハルカ
不備が2つ見つかりました。どちらも小さいので、報告書には書かなくていいですよね。
先生
図の例を見て。売掛金に影響する不備が2つあって、1件ずつだと120と90で、基準値200を下回るよね。でも売掛金は信用販売と代金回収の両方の影響を受けるから、合わせて210で判断するんだ。
迷いポイント 影響額は「影響が及ぶ金額 × 発生確率」で計算すると決まっている?
ハルカ
ラボの計算式どおりに掛け算すれば、答えが出るんですね。
先生
基準は、影響が及ぶ範囲と発生可能性を勘案する、としているんだ。掛け算はラボの学習用モデルで、基準所定の算式ではないよ。発生可能性はサンプルから統計的に導くか、高・中・低で把握して予め定めた比率を使うんだ。
💡 そうだったのか!
同じ勘定科目に関係する不備は合わせて判断します。計算式はラボの学習用モデルで、基準は範囲と発生可能性を勘案するとしています。
⏱ 30秒だけラボで試す
  1. シミュレーションの「不備の参考計算」で「合算で重要(設例6)」を読み込む
  2. 「重複額(控除)」を 0 → 30 にする

👀 合算が 210 → 180 になり、参考計算の結果が「③ 有効でない」から「① 有効である」に変わります。2つの不備が同じ取引に重ねて影響している部分は、控除して合算します。

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Ⅱ 評価・報告 ⑰ ラボの図
結論見つけた不備はすみやかに報告して是正を求める。期末日までに是正されていれば「有効」と判断できる。
実務では是正後の運用の確認が期末日後になっても、期末日時点で有効と判断できる場合がある(Q&A問45)。
監査対応期末日に残った開示すべき重要な不備は、内容と是正されない理由を報告書に書き、是正の方針も記載できる(GL4-5)。
期首不備を識別期末日=評価時点報告書提出日期末日までに是正し有効性を確かめる → 有効期末日後の是正は評価に影響せず→ 付記事項に記載できる計画には、不備を是正して再評価するための期間を期末日まで確保しておく。提出日までに運用の有効性まで確かめたら「是正措置を完了した旨」も記載できる
Ⅱ 評価・報告 ⑰

不備の報告と是正

📍 ラボの場所:Ⅱ 評価・報告タブ ⑰
ハルカ
期中に開示すべき重要な不備が見つかったら、もうその年は「有効でない」確定ですか。
先生
図の時間軸を見て。評価時点は期末日なんだ。期末日までに是正して、是正後の統制の有効性を確かめられれば、「有効」と判断できるよ。
迷いポイント 期末日のあとに直したら、評価も「有効」に変わる?
ハルカ
報告書を出す前に直したなら、「有効」にしてもらえますよね。
先生
期末日後の是正は、期末日の評価には影響しないんだ。そのかわり、付記事項に是正措置を記載できるよ。期末日に残った開示すべき重要な不備は、内容と是正されない理由を報告書に書いて、是正の方針も記載できるんだ。
ハルカ
締切の翌日に宿題を出しても、「提出済み」にはならないんですね。私の学生時代が、今さら反省しています。
先生
今からでも遅くないよ。評価の計画には、是正して再評価する期間を期末日までに確保しておくんだ。
💡 そうだったのか!
評価時点は期末日です。期末日までに是正して確かめれば「有効」、期末日後の是正は付記事項に書けます。
Ⅱ 評価・報告 ⑱ ラボの図
結論やむを得ない事情で一部を十分に評価できないときは、その範囲を除外して評価できる。
実務では除外部分以外の評価が全体として適切で、評価できなかったことの影響が重要でなければ②(一部を実施できないが有効)、重要なら④(表明できない)。
監査対応除外した範囲と理由を報告書に書く。企業側の責任による事情(担当者の退職・書類の紛失など)は当たらない(内基報1 A213)。
やむを得ない事情があるか下期の買収・合併、災害などいいえはい範囲の制約とは扱えない評価範囲に含めて評価する(評価できなければ④などを検討)評価できないことの影響は重要かいいえはい② 範囲を除外して評価「評価手続の一部が実施できなかったが有効」+範囲と理由④ 評価結果を表明できない
Ⅱ 評価・報告 ⑱

評価範囲の制約(やむを得ない事情)

📍 ラボの場所:Ⅱ 評価・報告タブ ⑱
ハルカ
下期に買収した子会社の評価が、期限までに間に合いそうにありません。
先生
図の判定フローを見て。下期の買収・合併や災害など、やむを得ない事情で十分に評価できない場合は、その範囲を除外して評価できるんだ。除外した範囲と理由は報告書に書くよ。
迷いポイント 除外したら、評価結果はいつも「一部を実施できないが有効」?
ハルカ
除外できるなら、あとは「有効」と書けばいいんですよね。
先生
除外部分以外の評価が全体として適切に行われていることを前提に、評価できないことの影響が重要かで分かれるんだ。重要でなければ②「評価手続の一部が実施できなかったが有効」、重要なら④「評価結果を表明できない」だよ。担当者の退職や書類の紛失のような、企業側の責任による事情は「やむを得ない事情」に当たらないんだ。
💡 そうだったのか!
やむを得ない事情で除外しても、影響が重要なら④です。除外した範囲と理由は報告書に書きます。
⏱ 30秒だけラボで試す
  1. シミュレーションの「評価範囲」で「下期買収のS2社を除外(80%)」を読み込む
  2. 「評価できない範囲が財務報告の信頼性に及ぼす影響は重要か」を「重要」にする

👀 評価範囲から見た評価結果の形が ② → ④ に変わり、分岐の図でも「④ 評価結果を表明できない」の枠が強調されます。

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Ⅱ 評価・報告 ⑳ ラボの図
結論報告書には、整備・運用に関する事項、評価の範囲・時点・手続、評価結果、付記事項を書く。
実務では評価範囲は、指標と一定割合・勘定科目・個別の追加の3項目それぞれに「決定した事由」を書く(GL4-4)。
監査対応「決定した事由」の記載がない・不明瞭な事例は、令和7年度の有報レビューで課題とされた。
内部統制報告書(有価証券報告書と併せて提出)1 財務報告に係る内部統制の基本的枠組みに関する事項責任者の氏名/経営者の責任/準拠した枠組み(具体的名称)/固有の限界2 評価の範囲、基準日及び評価手続に関する事項評価範囲(決定方法・根拠、指標と一定割合・勘定科目・個別追加の決定事由)/評価時点/評価手続の概要3 評価結果に関する事項①〜④のいずれか(③なら不備の内容・是正されない理由、是正方針も可)4 付記事項後発事象/期末日後の是正措置等/前年度の開示すべき重要な不備の是正状況5 特記事項特記すべき事項がなければ「該当事項なし」(記載すれば監査の対象)
評価範囲の書き方:3項目それぞれに「決定した事由」をセットで(1) 指標とその一定割合例:売上高/おおむね3分の2+ 決定した事由(2) 事業目的に大きく関わる勘定科目例:売上・売掛金・棚卸資産+ 決定した事由(3) 個別に追加した拠点・プロセス例:S3社の販売プロセス+ 決定した事由
Ⅱ 評価・報告 ⑳

内部統制報告書の記載事項

📍 ラボの場所:Ⅱ 評価・報告タブ ⑳
ハルカ
内部統制報告書の評価範囲は、「売上高の3分の2」と書けば伝わりますよね。
先生
図の下の段を見て。評価範囲は、(1)指標とその一定割合、(2)事業目的に大きく関わる勘定科目、(3)個別に追加した拠点・プロセス、の3項目それぞれに「決定した事由」をセットで書くんだ。府令ガイドライン4-4に書いてあるよ。
迷いポイント 指標と割合を書いてあれば、「決定した事由」は要らない?
ハルカ
「売上高の2/3を超える拠点を重要な事業拠点としている」で、もう十分に見えます。
先生
まさにその書き方が、令和7年度の有報レビューで「決定した事由」の記載がない例として挙げられたんだ。なぜ売上高なのか、なぜその割合なのかまで書くよ。
💡 そうだったのか!
評価範囲は3項目それぞれに「決定した事由」を書きます。方針を書いていれば実績値は不要で、相当程度下回るときは決定方法と根拠も書きます(Q&A問104-1)。
Ⅲ 監査 ⑬ ラボの図
結論意見は、無限定適正・限定付適正・不適正・意見不表明。原因と影響の大きさで決まる。
実務では開示すべき重要な不備があっても、経営者が「有効でない」と適切に記載していれば、無限定適正意見となり得る。
監査対応監査人が特定した開示すべき重要な不備を経営者が記載していなければ、不適正意見が想定される(内基報1 付録5 文例4)。
重要だが全体ではない全体に及ぶ記載が不適切手続を実施できない限定付適正意見(意見に関する除外)不適正意見限定付適正意見(監査範囲の制約)意見不表明どちらもない → 無限定適正意見(「有効でない」の記載が適正な場合も)
Ⅲ 監査 ⑬

監査人の意見の種類

📍 ラボの場所:Ⅲ 監査タブ ⑬
ハルカ
会社に開示すべき重要な不備があったら、監査意見も「不適正」になるんですよね。
先生
そうではないのだよ。内部統制監査の意見の直接の対象は、経営者が作った内部統制報告書なんだ。その意見のために、監査人は評価範囲・評価手続や、内部統制の整備・運用状況も検討するよ。開示すべき重要な不備があっても、報告書に「有効でない」と適切に書いていれば、意見は無限定適正となり得るんだ。
迷いポイント では、不適正意見になるのはどんなとき?
ハルカ
不備があっても適正…。頭の中で、赤信号と青信号が同時に点きました。
先生
信号が見ているのは、報告書に表示された評価結果の方だよ。図の2×2のとおり、記載が不適切で影響が全体に及ぶと不適正意見で、例えば監査人が特定した開示すべき重要な不備を経営者が記載していない場合なんだ。手続を実施できない場合は、限定付適正か意見不表明になるよ。
💡 そうだったのか!
意見は、内部統制報告書に表示された評価結果が適正かどうかへの意見です。開示すべき重要な不備を適切に記載すれば無限定適正となり得て、監査人が特定した開示すべき重要な不備を記載しなければ不適正意見が想定されます(内基報1 付録5 文例4)。
⏱ 30秒だけラボで試す
  1. シミュレーションの「報告書と監査意見」で「重要な不備を適切に記載」を読み込む
  2. 「報告書の記載の適否」を「全体として虚偽(例:開示すべき重要な不備を記載しない)」にする

👀 監査意見が「無限定適正意見」から「不適正意見」に変わります。同じ開示すべき重要な不備でも、記載するかどうかで意見が変わります。

ラボを開く ▶

今日の内容を、ラボで確かめてみませんか?

この記事の図は、すべてJ-SOXラボの画面そのものです。Ⅱ 評価・報告タブ・Ⅲ 監査タブを開けば、同じ図を見ながら読み返せます。

J-SOXラボを開く ▶

今日のまとめ ── 迷いポイント早見表

迷いポイント答えラボ
全社統制と業務プロセスは別のテスト?全社統制が先。その結果で範囲・サンプルの量が変わるⅡ③
3分の2に届いたら終わり?例示。全社統制・質的要因・前年度の結果も踏まえ、決定した事由を書くⅡ⑦
3勘定でどの会社も大丈夫?例示。業種で勘定を選び、リスクの大きいプロセスを個別に追加Ⅱ⑧
影響額は掛け算と決まっている?基準は範囲と発生可能性を勘案。掛け算はラボの学習用モデルⅡ⑯
期末日後に直したら「有効」?評価時点は期末日。期末日後の是正は付記事項に書けるⅡ⑰
除外したらいつも②?影響が重要なら④。企業側の責任による事情は当たらないⅡ⑱
指標と割合だけ書けばよい?3項目それぞれに決定した事由を書く(GL4-4)Ⅱ⑳
開示すべき重要な不備があれば意見も不適正?「有効でない」と適切に書けば無限定適正となり得る。記載しなければ不適正が想定Ⅲ⑬
おわりに

今日のふりかえり

先生
今日のまとめだよ。評価範囲は3分の2・3勘定を例示として使って、決めた理由を書く。評価時点は期末日で、監査意見は、報告書に表示された評価結果が適正かへの意見なんだ。
ハルカ
週末のパン屋巡り、いつも3軒のうち2軒は必ず回っているんです。これって「おおむね3分の2」ですよね。
先生
割合としてはそうだね。ただ、報告書なら「なぜその2軒なのか」まで書くところだよ。
ハルカ
「クロワッサンが焼き上がる時間に間に合うから」です。決定した事由まで、ちゃんと言えました。
先生
立派な事由だね。次の設例・評価範囲編では、設例1〜4で、P社グループの評価範囲を1ステップずつ決めていこうか。

参考資料

企業会計審議会「財務報告に係る内部統制の評価及び監査の基準」「同 実施基準」(令和5年4月7日改訂)/金融庁「内部統制府令ガイドライン」(令和5年6月)「内部統制報告制度に関するQ&A」(令和5年8月31日改訂)「令和7年度 有価証券報告書レビューの審査結果」(2026年3月27日)/日本公認会計士協会 財務報告内部統制監査基準報告書第1号(2025年2月13日改正)/公認会計士・監査審査会「監査事務所検査結果事例集(令和8事務年度版)」。ラボの設例の数値は独自のものです。
このシリーズの記事:基礎編/設例・評価範囲編(設例1〜4)/設例・不備の判定と報告編(設例5〜9)
関連:内部統制報告書|開示すべき重要な不備/内部統制報告書|評価範囲ベンチマーク/会計不正 調査報告書ナビβ/会計不正はなぜ5年も見つからないのか/会計不正・内部統制(入口)

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この記事を書いた人

TaxJudge編集部|公認会計士・税理士(実務25年)による企画・監修。会計基準・税法・裁決・有価証券報告書などの一次情報をもとに、検索できるデータベースと計算・判定・文書作成ツールを制作しています。