無料の学習ツール「CGコードラボ」の読み方ガイドです。ラボのケースタブから、市場区分と支配株主のケース(ケース3・4、応用2・5)を1つずつ、先生と生徒の会話形式で見ていきます。各行の図はラボの図そのものです。重要な節の最後には、ラボで30秒だけ手を動かす小さな実習を置いています。
📘 ケース3 ラボの画面
はじめに
ケース3 グロース・監査等委員会設置会社・独立1名/5名・支配株主あり
📍 ラボの場所:ケース・基礎タブ ケース3 ステップ1
ハルカ
ケース3はグロース市場で、取締役5名のうち独立社外は1名、しかも支配株主がいます。前回なら✖だらけになりそうです。
先生
ところがグロースは基本原則4個のみが対象なんだ。市場区分の表のとおり、原則4-10も4-7も形式的には対象外。収録グロース企業の 99.8% が「適用対象原則をすべて実施」になるのはこのためだよ。
ハルカ
今日はグロースと、親会社がいる会社の話ですね。
先生
ケース3・4と、応用2(グロース→スタンダードの区分変更)、応用5(特別委員会)の4本。「対象外」と「一段上」の両方を見ていこうか。
ケース・基礎タブのケース3を開きながら読むと分かりやすいですラボで開く ▶
📘 ケース3 ステップ2 ラボの図
ケース3
対象外=何もしなくてよい、ではない
📍 ラボの場所:ケース・基礎タブ ケース3 ステップ2
ハルカ
原則が対象外なら、グロースの会社はCG報告書に何を書くんですか。
先生
基本原則だよ。基本原則4「取締役会等の責務」は対象だから、独立した客観的な立場からの監督をどう確保しているかは説明する。図を見て。支配株主(創業者)がいる場合、少数株主との利益相反の監督は基本原則1と4の核心なんだ。
迷いポイント 支配株主の「支配」は、連結範囲の「支配」と同じ?
ハルカ
支配株主って、連結範囲ラボでやった「子会社になる3つのルート」の過半数の話と同じですか。
先生
よく覚えていたね。考え方は近くて、上場規程では親会社か、議決権の過半数を直接・間接に持つ株主等を支配株主と呼ぶんだ。連結範囲の支配力基準は40%以上+要件でも子会社になるけれど、こちらは過半数が軸だよ。収録グロース企業の 29.7% に支配株主・親会社がいるんだ。
ハルカ
データでは、グロースでも原則レベルに自主的に触れる会社があるんですね。
先生
原則4-8に5社、補充原則1-2④に4社といった具合だよ。対象外でも自主的に参照して取組みを書く会社が、投資家の信頼を得やすいんだ。
💡 そうだったのか!
グロースでも基本原則1・4で少数株主保護と監督の説明は必要。原則は対象外でも、自主的に参照して書く会社があります。📘 ケース3 ステップ3 ラボの図
ケース3
監査等委員会設置会社での独立社外の数え方
📍 ラボの場所:ケース・基礎タブ ケース3 ステップ3
ハルカ
この会社は監査等委員3名のうち社外が2名です。独立社外は2名になりませんか。
先生
社外取締役と独立社外取締役は別の概念なんだ。取引所の独立性基準を満たして独立役員として届け出た社外取締役だけが独立社外取締役。この設定では届け出ているのが1名だから、1名/5名なんだよ。
迷いポイント 社外取締役なら、全員が独立社外取締役?
ハルカ
社外から来た取締役なら、みんな独立しているものだと思っていました。
先生
主要株主や取引先の出身者は社外でも独立ではないことがあるんだ。残り1名を独立役員にすれば 2名/5名=40%。将来スタンダードに区分変更すると「2名以上」が原則として適用されるから、独立性の整理は早いほうがいいよ。
ハルカ
「社外」と「独立」は、履歴書の住所と本籍くらい違うんですね。
先生
住所が外でも、つながりが内側にあるかを見るんだよ。
💡 そうだったのか!
社外取締役≠独立社外取締役。独立役員として届け出た人数で数えます。区分変更を見据えるなら早めに整理します。⏱ 30秒だけラボで試す
- このケースの「このケースの条件で自社診断 ▶」を押す
- 「市場区分」をスタンダードに変える
👀 4項目が「- 対象外」から一斉に判定され、✖ 要対応が 0件 → 3件(独立社外の数・支配株主の場合・任意委員会)になります。
ラボを開く ▶📘 ケース4 ステップ3 ラボの図
ケース4
プライム・独立4名/9名・支配株主あり ── 第2段で✖
📍 ラボの場所:ケース・基礎タブ ケース4 ステップ3
ハルカ
ケース4はプライムの上場子会社で、独立社外4名/9名=44.4%。1/3は超えていますね。
先生
第1段は✔だよ。問題は図の真ん中の箱、支配株主を有するプライム市場上場会社に求められる第2段。支配株主から独立した独立社外取締役を少なくとも過半数、その他市場は1/3以上。44.4%は過半数未満だから、このままでは✖なんだ。
迷いポイント 過半数に届かなければ、✖のままエクスプレインするしかない?
ハルカ
取締役を増やすのは簡単ではないので、エクスプレインで乗り切るしかないですよね。
先生
選択肢は3つあるんだ。(a) 独立社外を5名以上に増やす、(b) 特別委員会を設置する、(c) エクスプレインする。(b) は図の下の紫の箱で、解釈指針が明示する代替措置だよ。上場子会社への投資家の目は厳しいから、(c) は説得力を持たせにくいんだ。
💡 そうだったのか!
支配株主ありのプライムは過半数が要件。届かなければ増員か特別委員会で、エクスプレインは最後の手です。⏱ 30秒だけラボで試す
- このケースの「このケースの条件で自社診断 ▶」を押す
- 「うち独立社外取締役」を 4 → 5 に変える
👀 5名/9名=55.6%で過半数になり、「支配株主を有する場合」の行が✔に変わります(✖ 1件 → 0件)。
ラボを開く ▶📘 ケース4 ステップ4 ラボの図
ケース4
独立社外取締役の「支配株主からの独立性」
📍 ラボの場所:ケース・基礎タブ ケース4 ステップ4
ハルカ
人数を5名にすれば、それで解決ですか。
先生
人数だけではないんだ。第2段が求めるのは「支配株主からの独立性を有する」独立社外取締役。親会社の出身者や親会社の取引先の出身者は、取引所の独立性基準を満たしても、支配株主からの独立性では疑問が生じ得るんだよ。
迷いポイント 独立役員として届け出ていれば、支配株主からも独立している?
ハルカ
独立役員の届出が通っているなら、親会社出身でも独立社外として数えていいですよね。
先生
取引所の基準と、支配株主からの独立性は別に考えるんだ。原則4-11の自社の独立性判断基準に支配株主との関係を明記する会社が増えている。原則4-8も、独立社外の役割に「会社と経営陣・支配株主等との間の利益相反を監督すること」を明記しているよ。
ハルカ
数えるのは人数、見るのは関係…。頭数をそろえて安心していたら、全員が親会社の元同僚、なんてこともあり得るんですね。
先生
その「安心」が、少数株主にとって一番不安なところだよ。
💡 そうだったのか!
第2段は人数+支配株主からの独立性。独立性判断基準に支配株主との関係を書いて、数と質の両方を示します。📕 応用2 ステップ2 ラボの画面
応用2
グロース→スタンダードへの区分変更 ── 対象外が一斉に判定される
📍 ラボの場所:ケース・応用タブ 応用2 ステップ2
ハルカ
応用2は、取締役6名・独立社外2名・支配株主ありの会社が、グロースからスタンダードに区分変更する話ですね。
先生
変更前はグロースだから全部「- 対象外」。変更後は表のとおり、独立社外の数(2名以上 ✔)、支配株主を有するその他市場の1/3以上(2/6=33.3% で辛うじて ✔)、過半数未満で任意委員会 ✖、英語での情報開示も未実施なら ✖と、一斉に判定が立つんだ。
迷いポイント 33.3%で1/3以上なら、余裕を持って満たしている?
ハルカ
ぴったり1/3なら、要件は満たしているので問題ないですよね。
先生
満たしてはいるよ。ただ1名でも独立社外が欠けると第1段も第2段も✖になる、余裕のない構成なんだ。図の判定を見て。取締役6名のうち緑が2つ、どちらか1人が辞任したら、その日から2項目が✖になるんだよ。
💡 そうだったのか!
区分変更で判定が一斉に立つ。ぴったり1/3は要件を満たすが余裕がない構成で、1名の異動で✖になります。⏱ 30秒だけラボで試す
- このケースの「このケースの条件で自社診断 ▶」を押す
- 「うち独立社外取締役」を 2 → 1 に変える
👀 独立社外の数・支配株主の場合の2行が✖に変わり、✖ 要対応が 2件 → 4件になります。
ラボを開く ▶📕 応用2 ステップ3 ラボの画面
応用2
変更前に整えておくこと
📍 ラボの場所:ケース・応用タブ 応用2 ステップ3
ハルカ
区分変更の前に、何から手をつければいいですか。
先生
表の4行だよ。独立社外を3名以上にして過半数に近づけるか、2名のまま任意委員会を置く。支配株主との関係では特別委員会と独立性判断基準。開示事項は政策保有・開示5事項・多様性目標・スキル・実効性評価・研鑽方針。株主総会のPF・英訳は解釈指針だけれど、機関投資家比率が上がるなら検討するんだ。
迷いポイント 区分変更の申請が通ってから準備を始めればいい?
ハルカ
変更が決まる前に準備しても無駄になるかもしれないので、決まってからでいいですよね。
先生
変更後最初のCG報告書から原則が適用されるんだ。申請前に最初の報告書のドラフトを作っておけば、エクスプレインの件数と内容が事前に分かる。同業のスタンダード・サービス業 204社では任意委員会の設置率が 54.4% だから、未設置なら半分以上の会社と逆の説明をすることになるよ。
ハルカ
引っ越し先が決まる前に、荷造りだけは始めておくんですね。
先生
荷物の中身、つまりエクスプレインの件数を知ってから引っ越すのが安全だよ。
💡 そうだったのか!
区分変更は申請前にドラフト。独立社外の増員か任意委員会、特別委員会、開示事項の準備を、変更前の年度に進めます。📕 応用5 ステップ2 ラボの画面
応用5
上場子会社の選択肢 ── 増員・特別委員会・エクスプレイン
📍 ラボの場所:ケース・応用タブ 応用5 ステップ2
ハルカ
応用5は親会社が議決権55%を持つプライム上場子会社。独立社外3名/8名=37.5%で、第2段の過半数には届きません。
先生
表の3つの選択肢を見て。(a) 増員は5名以上にして過半数、(b) 特別委員会は独立社外取締役を含む独立性を有する者で構成して親会社との重要な取引・行為を審議、(c) エクスプレイン。多くの上場子会社は (b) を選んで、委員会の名称・構成・付議基準を開示欄に書いているんだ。
迷いポイント 特別委員会を置けば、独立社外取締役の人数はそのままでいい?
ハルカ
委員会を作れば、第2段の人数要件はもう気にしなくていいんですね。
先生
解釈指針は「選任することに代えて…設置することも考えられる」としているから、代替措置として認められるよ。ラボの判定表でも、特別委員会を「あり」にすると「支配株主を有する場合」の行が✖から✔に変わる。ただし委員の親会社からの独立性と、何を審議するかの範囲を開示することがセットなんだ。親会社との取引は原則4-3の関連当事者取引の監督ともつながるよ。
💡 そうだったのか!
特別委員会は過半数の独立社外に代わる措置。委員の独立性と審議対象の開示がセットで求められます。📕 応用5 ステップ3・4 ラボの画面
応用5
特別委員会の設計 ── 構成・審議対象・開示、判定の変化
📍 ラボの場所:ケース・応用タブ 応用5 ステップ3・4
ハルカ
特別委員会は、誰を入れて何を議論するんですか。
先生
構成は独立社外取締役を含む独立性を有する者で、独立社外監査役や外部有識者を加える例もある。親会社出身者・親会社取引先出身者は外す。審議対象は親会社との取引条件、親会社による完全子会社化(TOB等)、事業の移管、グループ内の資金取引。開示は目的・構成・権限・活動状況だよ。
迷いポイント 特別委員会は、親会社との取引があるときだけ開けばいい?
ハルカ
取引が起きたときに臨時で集まる委員会でいいですよね。
先生
付議基準を決めておいて、該当する取引があれば審議する形が多いんだ。ただ活動状況を開示するから、年に何回開いて何を審議したかが読まれる。設置しただけで一度も開かれない委員会は、開示で分かってしまうよ。
ハルカ
下の2つの判定表で、特別委員会を「あり」にすると「支配株主を有する場合」の行が✖から✔に変わっています。3名/8名の37.5%のまま、半分だけ親会社の顔をした取締役会に、少数株主の席ができるんですね。
先生
だからその席の独立性と、何を審議したかを開示欄で見せるんだよ。
💡 そうだったのか!
特別委員会は構成・審議対象・開示の3点で設計。付議基準を決め、活動状況まで開示します。📓 ハルカの学習ノートで、この章を見るノートを開く ▶
今日のまとめ ── 設例ごとの結論
| 設例 | 迷いポイント | 答え |
|---|---|---|
| ケース3 ステップ2 | 原則が対象外なら何も書かなくていい? | 基本原則1・4で少数株主保護と監督を説明。自主的に原則を参照する会社も |
| ケース3 ステップ3 | 社外取締役なら全員が独立社外? | 独立役員として届け出た人数で数える |
| ケース4 ステップ3 | 過半数に届かなければエクスプレインしかない? | 増員か特別委員会。上場子会社のエクスプレインは説得力を持たせにくい |
| ケース4 ステップ4 | 独立役員なら支配株主からも独立? | 別に考える。独立性判断基準に支配株主との関係を明記 |
| 応用2 ステップ2 | ぴったり1/3なら余裕がある? | 満たすが余裕なし。1名欠けると2項目が✖ |
| 応用2 ステップ3 | 申請が通ってから準備すればいい? | 申請前にドラフト。変更後最初の報告書から原則が適用 |
| 応用5 | 特別委員会を置けば人数はそのままでいい? | 代替措置として可。委員の独立性と審議対象・活動状況の開示がセット |
おわりに
今日のふりかえり
先生
今日のまとめだよ。グロースは基本原則のみが対象でも、少数株主保護と監督の説明は基本原則1・4で求められる。支配株主を有する会社はプライム過半数・その他1/3以上で、届かなければ増員か特別委員会。人数だけでなく支配株主からの独立性も見るんだ。
ハルカ
前回は「あと1名」で判定が動く話でしたが、今日は「その1名が誰か」で意味が変わる話でした。連結範囲の支配の考え方が、ここで少数株主を守る側に回って出てくるのが面白かったです。
先生
連結は親会社の目線、CGコードは少数株主の目線。同じ「支配」を反対側から見ているんだよ。
ハルカ
反対側から見るのは得意です。会議で自分の意見に自分で反対して、議事録に「ハルカ:賛成」「ハルカ:反対」と両方残ったことがあります。
先生
議事録の中に、一人で特別委員会ができていたね。次のケース・更新と機関設計の変更編では、2021年版から2026年版への更新と、監査等委員会・指名委員会等への移行を見ていこうか。
参考資料
東京証券取引所「コーポレートガバナンス・コード」(2026年7月21日改訂版・解釈指針を含む/2021年6月11日改訂版)、「コーポレートガバナンス報告書の更新について」(2026年7月21日更新)、「コーポレート・ガバナンスに関する報告書 記載要領」(2026年7月版)。ラボのケースはすべて匿名化した類型例で、実施率・エクスプレイン率は CG報告書ベンチマーク(収録 3,686社・2026-10-01時点)の集計です。
このシリーズの記事:基礎編/応用編/ケース・独立社外取締役と任意委員会編(ケース1・2・5・6)/ケース・更新と機関設計の変更編(応用1・3・4・6)
