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収益認識ラボ②【設例・変動対価と制限編】|先生と一緒に図で学ぶ設例10〜13 最頻値・期待値・返品・価格の引下げ・数量値引き

収益認識ラボ②【設例・変動対価と制限編】|先生と一緒に図で学ぶ設例10〜13 最頻値・期待値・返品・価格の引下げ・数量値引き

無料の学習ツール「収益認識ラボ②」の読み方ガイドです。ラボの設例タブから、変動対価の見積りと制限の設例(設例10〜13)を1つずつ、先生と生徒の会話形式で見ていきます。各行の図はラボの図そのものです。重要な節の最後には、ラボで30秒だけ手を動かす小さな実習を置いています。

📘 設例・基礎1 ラボの画面

前提条件(独自の数値・設定)

  • A社(12月決算)は、顧客仕様の建物を建設する契約を締結。一定の期間にわたり充足する履行義務と判断。
  • 固定対価 3,000,000。完成がX2年3月31日より1日遅れるごとに 12,000 減額、1日早まるごとに 12,000 増額。
  • 完成時の第三者検査で所定の評点が付けば、報奨金 180,000 を受け取る権利を得る。
  • A社の見込み:5日早い(30%)、予定どおり(40%)、3日遅い(30%)。所定の評点が付く確率 70%。
① 契約の識別①編② 履行義務の識別①編③ 取引価格の算定第47〜64項④ 取引価格の配分第65〜76項⑤ 充足時に収益認識①編このラボ②の範囲:いくらで売ったか③で「契約全体の取引価格」を決め、④で「履行義務ごと」に割り振る。⑤の認識額はこの2つで決まる
はじめに

設例10〜13 ── 変動対価を見積って、制限をかける

📍 ラボの場所:設例・基礎タブ 基礎1 ステップ1
ハルカ
先生、今日の設例編は変動対価ですね。基礎編の建設契約から始めるんですか。
先生
そうだよ。設例10で最頻値と期待値の使い分け、設例11で返品、設例12-1・12-2で価格の引下げと制限、設例13で数量値引きの見積りの変更を見るんだ。どれも「いくらを取引価格に入れるか」の話なんだ。
ハルカ
5つとも、数字の大きさより、どこまで入れるかの判断が大事そうです。
先生
そのとおりだよ。判断の理由を、ラボのステップで1つずつ確かめながら読んでいこうか。
設例・基礎タブの基礎1を開きながら読むと分かりやすいですラボで開く ▶
📘 設例・基礎1 ラボの画面
+60,000 × 30% + 0 × 40% − 36,000 × 30% = 18,000 − 10,800 = 7,200

考え得る結果が多数(日数ごと)あるので、確率で加重平均する期待値が適切と判断。

期待値 7,200 は、どのシナリオとも一致しない金額になり得ます。それでも、権利を得る対価の額の予測としては適切です。

結果は「180,000(70%)」か「0(30%)」の2つ → 最頻値 = 180,000

考え得る結果が2つしかないため、最頻値による方法の方が適切に予測できると判断(設例10と同じ)。

期待値で計算すると 126,000 ですが、実際にその金額を受け取ることはあり得ません。

固定対価3,000,000納期の増減(期待値)7,200報奨金(含める)180,000取引価格3,187,200含めるかどうかは第54項で判断・納期分:期待値で見積り、著しい減額が 発生しない可能性が高い部分だけ含める (制限しても減額の見込みは消えない)・報奨金:第三者の検査(影響力の及ばない要因) → 制限され得る(適用指針第25項(1))決算日ごとに見直す(第55項)
設例10

納期は期待値、報奨金は最頻値 ── 取引価格は 3,187,200

📍 ラボの場所:設例・基礎タブ 基礎1 ステップ3・4・5
ハルカ
納期の増減額は期待値で 7,200。どのシナリオにもない金額ですね。
先生
日数ごとに結果がたくさんある要素だから、確率で重みを付けた期待値が適切と判断しているんだ。報奨金は「180,000 か 0 か」の2つしかないから最頻値で、180,000 になるよ。
迷いポイント 報奨金も期待値で見積れば、126,000 で安全?
ハルカ
報奨金を期待値で 126,000 にしておけば、少なめで安全な気がします。
先生
実際に 126,000 を受け取ることはあり得ないんだ。2つの結果しかない要素では、期待値より最頻値の方が適切に予測できると判断するのが設例10なんだ。そのうえで、第54項の制限で含めるかを判断して、両方含めた取引価格が 3,187,200 になるよ。
ハルカ
126,000 は、いつまで待っても届かない荷物の追跡番号みたいですね。
先生
届かない金額で予測しても、判断の役には立たないからね。
💡 そうだったのか!
要素ごとにより適切に予測できる方法を選びます。結果が2つの報奨金は最頻値、細かく変わる納期は期待値です。
⏱ 30秒だけラボで試す
  1. リンクから「変動対価の見積り」のシミュレーションを開く(基礎1の数字)
  2. 右の「シナリオ1の確率」を 30→10、「シナリオ2」を 40→30、「シナリオ3」を 30→60 に変える(遅延が濃厚)

👀 納期分の期待値が +7,200 → ▲15,600 になり、取引価格が 3,187,200 → 3,164,400 に下がります。報奨金 180,000 はそのままです。

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📘 設例・基礎2 ラボの画面
○
変動対価か返品されると全額返金 → 受け取る対価は変動対価(第50項)
○
見積方法類似の契約が多数 → 期待値(第51項):196個分の対価 23,520
○
第54項の制限経験が十分で、30日で解消 → 著しい減額が発生しない可能性が高い
収益 23,520(返品見込み 4個分 480 は返金負債)
販売時(原価の計上)
借方金額貸方金額
売上原価13,720棚卸資産14,000
返品資産280
棚卸資産の減少 = 70 × 200個 = 14,000
返品資産 = 70 × 4個 = 280(回収費用はゼロの前提)
売上原価 = 14,000 − 280 = 13,720

返金負債の決済時に製品を回収する権利を、帳簿価額から回収費用を控除した額で資産に計上(適用指針第85項(3)・第88項)。

返品資産 280 と返金負債 480 は相殺表示しません(同第105項)。

設例11

返品権付き販売 ── 売上 23,520、返品資産 280

📍 ラボの場所:設例・基礎タブ 基礎2 ステップ2・4
ハルカ
返品を受け付けるなら、返品期間が終わるまで売上にできないと思っていました。
先生
ステップ2の判定を見てごらん。返品の見積りに十分な経験があって、不確実性は30日で解消するから、制限されないと判断しているんだ。返品されない 196個分の 23,520 を売上にして、4個分の 480 は返金負債だよ。
迷いポイント 返品される4個の原価は、どこへ?
ハルカ
200個分の原価 14,000 は、全部売上原価になりますよね。
先生
返品で戻ってくる4個分の 280 は返品資産にするんだ。売上原価は 13,720、売上総利益は 9,800 だよ。返品期間が過ぎて返品されなければ、返金負債 480 を売上高に、返品資産 280 を売上原価に振り替えるんだ。
ハルカ
返品を受け付けるのに「制限されない」と聞くと、ずいぶん太っ腹な会社に見えます。
先生
太っ腹なのではなく、返品の見積りに十分な根拠がある、ということなんだよ。
💡 そうだったのか!
経験が十分で短期に解消するなら、返品見込みは制限されない。返品分は返金負債と返品資産に分けて計上します。
⏱ 30秒だけラボで試す
  1. リンクから「返品権付き販売」のシミュレーションを開く(基礎2の数字)
  2. 右の「1個あたりの回収費用」を 0 から 10 に変える

👀 返品資産が 280 → 240、売上原価が 13,720 → 13,760 に。回収にかかる費用の分だけ、取り戻す商品の価値を低く見ます。売上高 23,520 は変わりません。

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📕 設例・応用1・2 ラボの画面
○
(3) 経験製品Xと現在の市場環境についての経験が十分
○
(1) 影響力の及ばない要因若干の不確実性はあるが限定的
○
(2) 解消までの期間価格の不確実性は短期間(90日程度)で解消
○
(4)(5) 慣行・金額の幅引下げは 25% 前後で安定しており、幅は狭い
著しい減額が発生しない可能性が高い → 見積額 120,000 の全額を取引価格に含める
×
(1) 影響力の及ばない要因陳腐化のリスクの影響を非常に受けやすい
×
(4)(5) 慣行・金額の幅20〜55% の幅広い引下げ実績があり、必要な引下げ幅も 15〜45% と広い
—
(2)(3) 期間・経験短期で解消し、経験もあるが、上の2つで打ち消せない
著しい減額が発生しない可能性が高いと結論できない → 期待値 120,000(25% 引下げ)は取引価格に含められない
X1年12月1日(支配の移転)
借方金額貸方金額
売掛金104,000売上高104,000
応用1(制限なし)応用2(制限あり)
契約の価格160,000160,000
期待値による見積り120,000120,000
取引価格(収益)120,000104,000

同じ期待値でも、不確実性の性質しだいで取引価格が変わります。決算日ごとに見直し(第55項)、引下げの実績が固まった時点で差額を調整します。

設例12-1・12-2

価格の引下げ ── 同じ 120,000 でも、入れられるかは別

📍 ラボの場所:設例・応用タブ 応用1 ステップ3・応用2 ステップ2・4
ハルカ
販売業者に 160,000 で売ったのに、最初から 120,000 しか売上にしないんですか。
先生
過去の慣行から価格の引下げを見込んでいるから、対価は変動対価なんだ。応用1は、25% 前後の引下げで安定していて幅も狭いから、期待値の 120,000 をそのまま含めるよ。
ハルカ
これ、①編の設例2で、契約書は 2,000 でも価格の譲歩を見込んで 700 にした話と似ていますね。
先生
よく覚えていたね。最初から値引きを見込むなら、その分は取引価格に入れない、という考え方は同じなんだ。今日はそこに「制限」が加わるよ。
迷いポイント 期待値が同じ 120,000 なら、結論も同じ?
ハルカ
応用2も期待値は 120,000 なんだから、同じく 120,000 で売上にしますよね。
先生
応用2は、製品が陳腐化しやすく、引下げの幅も 20〜55% と広いんだ。判定の×が2つ並んでいるね。だから 120,000 は含められず、35% の引下げを見込んだ 104,000 までにするんだ。同じ期待値でも、不確実性の性質で結論が変わるよ。
💡 そうだったのか!
期待値が同じでも、減額の確率と程度しだいで含められる額は変わる。制限は、含められる部分だけを入れる仕組みです。
⏱ 30秒だけラボで試す
  1. リンクから設例・応用タブの応用1を開き、ステップ3「第54項の制限の判定」を選ぶ
  2. プルダウンで応用2に切り替え、ステップ2を選ぶ

👀 判定が ○ 4つから、× 2つを含む判定に変わり、結論が「全額を含める」→「期待値 120,000 は含められない」に。応用2のステップ4で、収益が 104,000 になることも確かめられます。

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📕 設例・応用3 ラボの画面

新たな事実(買収)を考慮して、年間 800個 を超えると見積り、単価を遡及的に 72 に減額する必要があると判断。

取引価格の事後的な変動は、取引開始日と同じ基礎で配分し、充足済みの履行義務(第1四半期の 60個)に配分される分は、変動した期(第2四半期)の収益を修正します(第74項)。

第2四半期の売上高 = 72 × 450個 − 第1四半期分の減額 (80−72) × 60個
= 32,400 − 480 = 31,920
第2四半期末(当四半期の販売 450 個 × 72)
借方金額貸方金額
売掛金36,000売上高32,400
返金負債3,600
第2四半期末(第1四半期分の遡及減額:見積りの変更)
借方金額貸方金額
売上高480返金負債480
返金負債 = 第2四半期分 (80−72) × 450個 = 3,600 + 第1四半期分 480 = 4,080

請求は 80 で行うので売掛金は 36,000。差額は顧客に返す(又は将来の請求額から減らす)見込みの返金負債です(第53項)。

請求 4,800売上 4,800第1四半期(単価 80)請求 36,000返金負債 4,080売上 31,920第2四半期(単価 72)第1四半期分の遡及調整 ▲480 は第2四半期の売上高で調整(第74項)
設例13

数量値引き ── 見積りの変更は第2四半期でまとめて

📍 ラボの場所:設例・応用タブ 応用3 ステップ3・4・5
ハルカ
第1四半期は 80 で売上にしたのに、第2四半期で単価が遡って 72 になるんですね。
先生
顧客が他社を買収して、年間 800個 を超えると見積りが変わったからなんだ。第2四半期の 450個 は 72 で、第1四半期の 60個 の差 480 は、第2四半期の売上高から差し引くよ(第74項)。第2四半期の売上高は 31,920 になるんだ。
迷いポイント 第1四半期の売上 4,800 を、さかのぼって直す?
ハルカ
第1四半期の数字が違っていたんだから、第1四半期を直すのが筋ですよね。
先生
第1四半期末の判断は、その時点の情報で正しかったんだ。だから見積りの変更として、変わった期で調整するよ。請求は 80 のままだから、差額は顧客に返す見込みの返金負債で、6月末の残高は 4,080 だよ。
ハルカ
第1四半期の私の判断は、間違っていたわけではなかったんですね。少しほっとしました。
先生
そのとき分かっていたことで判断していれば、ちゃんと正しいんだよ。
💡 そうだったのか!
見積りの変更は変わった期の収益で調整し、前の期は直しません。遡って下がる単価の差額は返金負債です。
⏱ 30秒だけラボで試す
  1. リンクから「数量値引き」のシミュレーションを開く(応用3の数字)
  2. 右の「第2四半期の数量」を 450 から 100 に変える

👀 第2四半期の売上高が 31,920 → 6,720 に。当四半期の販売が少なくても、第1四半期分の減額 480 は同じだけ差し引くので、四半期の売上高が大きく目減りします。

ラボを開く ▶

今日の内容を、ラボで確かめてみませんか?

この記事の図は、すべて収益認識ラボ②の画面そのものです。設例タブを開けば、同じ図を見ながら、ステップを1つずつ読み返せます。

収益認識ラボ②を開く ▶
📓 ハルカの学習ノートで、この章を見る学習ノートへ ▶

今日のまとめ ── 設例ごとの結論

設例迷いポイント答え
設例10報奨金も期待値なら安全?結果が2つの報奨金は最頻値、細かく変わる納期は期待値。要素ごとに選ぶ(第51・52項)
設例11返品を受け付けるなら、期間が終わるまで売上にできない?経験があり短期に解消するなら制限されない。返金負債と返品資産を計上(適用指針第85項)
設例12-1・12-2期待値が同じなら結論も同じ?減額の確率と程度で変わる。12-2は 120,000 を含められず 104,000 まで(第54項)
設例13前の四半期の売上を直す?直さない。見積りの変更として当四半期で調整(第74項)
おわりに

今日のふりかえり

先生
今日のまとめだよ。変動対価は、要素ごとに最頻値か期待値を選んで見積る。見積ったら第54項の制限で、含められる部分を決める。見込みが変わったら、変わった期で調整する。この流れを持ち帰ってほしいんだ。
ハルカ
最初は計算の問題だと思っていたんです。でも設例12-1と12-2は、計算は同じで判断だけが違いました。リース会計ラボのときも、最後は判断の話になったのを思い出しました。
先生
会計基準をまたいで、同じことに気づけるようになってきたね。判断の理由を言葉にできれば、数字はあとからついてくるんだ。
ハルカ
では、判断の理由を書く欄は、計算の欄より大きく作ることにします。
先生
いい心がけだよ。次の設例編では、設例14の棚代と、2年後払いの金融要素を見ていこうか。

参考資料

企業会計基準第29号「収益認識に関する会計基準」(第50〜55・74項)/企業会計基準適用指針第30号「収益認識に関する会計基準の適用指針」(第23〜25・85〜88・105項、設例10〜13)(いずれも企業会計基準委員会)。ラボの設例は、適用指針の設例と同じパターンを独自の数値で組み立てたものです。基準確認日:2026年10月1日。
サイト内の関連:【早見表】収益認識基準・適用指針/売上の期間帰属のKAM事例分析
このシリーズの記事:基礎編/応用編/設例・顧客への支払と金融要素編(設例14・金融要素)/設例・値引きの配分編(設例15)

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この記事を書いた人

TaxJudge編集部|公認会計士・税理士(実務25年)による企画・監修。会計基準・税法・裁決・有価証券報告書などの一次情報をもとに、検索できるデータベースと計算・判定・文書作成ツールを制作しています。