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収益認識ラボ②【基礎編】|先生と一緒に図で学ぶ取引価格・変動対価・金融要素・値引きの配分

収益認識ラボ②【基礎編】|先生と一緒に図で学ぶ取引価格・変動対価・金融要素・値引きの配分

無料の学習ツール「収益認識ラボ②」の読み方ガイドです。ラボの基礎タブを上から順に、先生と生徒の会話形式で見ていきます。各行の図はラボの図そのものです。重要な節の最後には、ラボで30秒だけ手を動かす小さな実習を置いています。

今日の事例
設例・基礎1の数字(建設契約)
契約の固定対価3,000,000
納期による増減額(期待値)+7,200
報奨金(最頻値)+180,000
取引価格3,187,200
契約の価格との差187,200
はじめに

今日の題材 ── 契約書の金額と「取引価格」は違う

📍 ラボの場所:基礎タブ全体・設例・基礎1
ハルカ
先生、①編で5つのステップは「何を・いくらで・いつ」を順に決める手順だと習いました。今日は「いくらで」の回ですよね。
先生
そう、ちゃんと覚えていたね。今日はステップ③の取引価格と、ステップ④の配分なんだ。題材は、固定対価 3,000,000 の建設契約だよ。納期で増えたり減ったりする分と、検査の評点で受け取れる報奨金が付いているんだ。
ハルカ
契約書に 3,000,000 と書いてあるなら、取引価格も 3,000,000 ですよね。
先生
今日の最後には、取引価格が 3,187,200 になる理由が分かるよ。増えた 187,200 がどこから来たのか、一緒に追いかけていこうか。
ラボの基礎タブを開きながら読むと分かりやすいですラボで開く ▶
📗 基礎 0 ラボの図
① 契約の識別①編② 履行義務の識別①編③ 取引価格の算定第47〜64項④ 取引価格の配分第65〜76項⑤ 充足時に収益認識①編このラボ②の範囲:いくらで売ったか③で「契約全体の取引価格」を決め、④で「履行義務ごと」に割り振る。⑤の認識額はこの2つで決まる
基礎 0

このラボの位置づけ ── 5ステップの③と④

📍 ラボの場所:基礎タブ 0
ハルカ
ステップ③と④は、何が違うんですか。どちらも金額の話に見えます。
先生
図の真ん中の2つの札だよ。③は契約全体でいくらか、④はその金額を履行義務ごとにいくらずつ割り振るかなんだ。⑤で認識する収益の額は、この2つで決まるよ。
迷いポイント 取引価格さえ決まれば、配分はおまけ?
ハルカ
契約全体の金額が決まれば、あとは適当に割れば済みそうです。
先生
割り方で、どの期にいくら売上が立つかが変わるんだ。先に引き渡す製品に多く配れば、その期の売上が大きくなるよ。だから④にも細かい決まりがあるんだ。
💡 そうだったのか!
③で契約全体の取引価格を決め、④で履行義務ごとに割り振る。⑤の収益の額は、この2つで決まります。
📝 収益認識ラボ①【基礎編】(5ステップ・履行義務・一定の期間か一時点か)記事を読む ▶
📗 基礎 1 ラボの図
約束した対価(契約の価格)±(1) 変動対価値引・返品・リベート割増金を見積る第50〜55項(2) 重要な金融要素支払時期のずれの金利分を調整第56〜58項(3) 現金以外の対価時価で測る第59〜62項(4) 顧客への支払原則、取引価格から減額第63・64項取引価格 = 財・サービスの移転と交換に「権利を得ると見込む」対価の額(第三者のために回収する額を除く)契約の取消・更新・変更はないものと仮定して算定する(第49項)。消費税等は取引価格に含めない(第47項、④編)
基礎 1

取引価格とは ── 4つの考慮事項

📍 ラボの場所:基礎タブ 1
ハルカ
取引価格は「権利を得ると見込む対価の額」とありますが、契約の価格と何が違うんですか。
先生
図の上から下へ読むんだ。第48項のとおり、契約の価格に(1)変動対価、(2)重要な金融要素、(3)現金以外の対価、(4)顧客への支払の4つを考慮して、取引価格にするよ。
迷いポイント 消費税を含めた請求額が取引価格?
ハルカ
請求書には消費税も載っているので、請求額の全部が取引価格ですよね。
先生
消費税等は、国や地方に納めるために第三者のために回収する額だから、取引価格から除くんだ(第47項)。それと第49項により、契約が途中で取り消されたり更新されたりすることは、ないものと仮定して計算するよ。
💡 そうだったのか!
取引価格は、契約の価格に4つの要素を考慮した「権利を得ると見込む額」。消費税等は含めません。
📗 基礎 2 ラボの図
最頻値による方法020%+10070%+20010%最も可能性の高い「1つの金額」を選ぶ結果が2つしかないときなどに向く(設例10の報奨金)期待値による方法金額 × 確率 を足し合わせる似た契約が多数あるときなどに向く(設例11・12)0×20% + 100×70% + 200×10% = 90最頻値なら 100、期待値なら 90「より適切に予測できる方法」を選ぶ(第51項)契約全体を通じて単一の方法を首尾一貫して適用し、合理的な数のシナリオを識別する(第52項)
基礎 2

変動対価の見積り ── 最頻値と期待値

📍 ラボの場所:基礎タブ 2
ハルカ
対価が変わるかもしれない部分は、どうやって見積るんですか。
先生
図の2つの方法から選ぶんだ。最頻値は、いちばん起きそうな1つの金額を選ぶ方法。期待値は、金額に確率を掛けて足し合わせる方法だよ。図の例なら、最頻値は 100、期待値は 90 なんだ。
ハルカ
①編の設例2で、価格の譲歩を見込んで 2,000 の契約を 700 と見積りましたよね。あれも変動対価ですか。
先生
そう、よく覚えていたね。適用指針第24項のとおり、契約書に書いていなくても、値引きする意図や取引慣行があれば変動対価なんだ。
迷いポイント 見積方法は、全部の変動要素で1つにそろえる?
ハルカ
ひとつの契約なら、見積方法も1つにそろえないといけませんよね。
先生
そろえるのは同じ変動要素の中だけなんだ(第52項)。設例10では、日数で細かく変わる納期の増減額は期待値、「もらえるか、もらえないか」の2つしかない報奨金は最頻値と、要素ごとに分けているよ。
ハルカ
期待値の 90 は、どのシナリオにも出てこない金額なんですね。クラスの平均点が、誰の点数とも一致しないテストみたいです。
先生
そのとおりだよ。当たらない金額でも、似た契約が多ければ予測としては適切なんだ。
💡 そうだったのか!
見積方法は最頻値か期待値のうち、より適切に予測できる方。同じ要素の中では首尾一貫させ、要素が違えば分けてよいです。
📗 基礎 3 ラボの図
見積った変動対価(最頻値/期待値)第54項の制限不確実性が解消される時点までに計上した収益の「著しい減額」が発生しない可能性が高い部分だけ取引価格に含める額(各決算日に見直し:第55項)減額される「確率」と「程度」の両方を考慮(適用指針第25項)要因:影響力の及ばない要因、長期間の不確実性、経験の乏しさ、幅広い値引きの慣行、金額の幅の広さ
基礎 3

変動対価の制限 ── 「著しい減額」が起きない部分だけ

📍 ラボの場所:基礎タブ 3
ハルカ
見積った変動対価は、そのまま全部、取引価格に入れていいんですか。
先生
図のまんなかの関門を通すんだ。不確実性がなくなったときに、計上した収益の著しい減額が起きない可能性が高い部分だけを含めるよ(第54項)。これを「変動対価の制限」と呼ぶんだ。
迷いポイント 「可能性が高い」は、減額の確率だけで決める?
ハルカ
減額される確率が低ければ、入れていいですよね。
先生
確率だけではなく、減額されたときの程度も見るんだ(適用指針第25項)。市場や第三者に左右される、長く決まらない、経験が乏しい、といった要因が多いほど、含めにくくなるよ。
ハルカ
正直に言うと、見積った額は全部入れた方が、売上が大きく見えて得だと思っていました。
先生
その「得」が、あとで大きな減額になって返ってくるんだよ。
💡 そうだったのか!
制限は、著しい減額が起きない可能性が高い部分だけを含めるルール。確率と程度の両方で判断し、各決算日に見直します。
⏱ 30秒だけラボで試す
  1. リンクから「変動対価の見積り」のシミュレーションを開く(基礎1の数字)
  2. 右の「報奨金を得る確率(%)」を 70 から 40 に変える

👀 最頻値の報奨金が 180,000 → 0 になり、取引価格が 3,187,200 → 3,007,200 に下がります。納期分の期待値 7,200 はそのままです。

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📗 基礎 4 ラボの図
売価 100 × 100個 = 10,000受け取った現金 10,000売上高 9,700(97個)返金負債 300(3個)返品見込み分は収益にしない(第53項・適用指針第85項)原価 60 × 100個 = 6,000棚卸資産の減少 6,000売上原価 5,820返品資産 180回収する権利を資産に(帳簿価額 − 回収費用:第88項)返品資産と返金負債は相殺表示しない(適用指針第105項)。図の数値は原典の設例11
🧾 仕訳で確認(基礎2 返品権付きの販売)
販売時(収益の計上)
借方金額貸方金額
現金預金24,000売上高23,520
返金負債480
🧾 仕訳で確認(基礎2 返品権付きの販売)
販売時(原価の計上)
借方金額貸方金額
売上原価13,720棚卸資産14,000
返品資産280
基礎 4

返品権付き販売 ── 売上・返金負債・返品資産

📍 ラボの場所:基礎タブ 4・設例・基礎2 ステップ3・4
ハルカ
返品を受け付ける商品を売ったら、売上はいくらにするんですか。
先生
図のとおり、返品されると見込む分は売上にしないんだ。ラボの設例・基礎2の数字なら、200個を 120 で売って 4個の返品を見込むから、売上高は 23,520、返品見込みの 480 は返金負債だよ。
迷いポイント 返品されそうな商品の原価は、どうする?
ハルカ
売った 200個分の原価 14,000 は、全部売上原価ですよね。
先生
返品で戻ってくる4個は、回収する権利として返品資産 280 にするんだ。売上原価は 13,720 だよ。B/Sには返品資産 280 と返金負債 480 が、相殺せずに両方並ぶ(適用指針第105項)。返品されたときに商品を取り戻す権利と、お金を返す義務は、別のものだからなんだ。
ハルカ
返品資産って、帰ってくる予定の商品のために、倉庫の席を取っておくみたいですね。
先生
席の値段は帳簿価額から回収費用を引いた額で、決算日ごとに見直すんだよ。
💡 そうだったのか!
返品見込み分は返金負債、回収する商品は返品資産。両方を相殺せずに計上します。
⏱ 30秒だけラボで試す
  1. リンクから「返品権付き販売」のシミュレーションを開く(基礎2の数字)
  2. 右の「返品されると見込む数量(個)」を 4 から 10 に変える

👀 売上高 23,520 → 22,800、返金負債 480 → 1,200、売上原価 13,720 → 13,300、返品資産 280 → 700 に。返品を多く見込むほど、売上も原価も小さくなります。

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📗 基礎 5 ラボの図
財・サービスの移転顧客の支払このズレが「信用供与」=金融要素(第56項)1年以内なら金融要素を分離しないことができる(第58項)重要なら対価から金利分を除いた「現金販売価格」で収益(第57項)割引率は取引開始日に決め、その後は見直さない(適用指針第29項)前払いで移転時期が顧客の裁量なら、重要な金融要素を含まないものとする(同第28項(1))
🧾 仕訳で確認(応用6 重要な金融要素(2年後払い))
移転時(現金販売価格で収益、対価は2年後)
借方金額貸方金額
長期売掛金10,000売上高10,000
1年目末(利息の認識)
借方金額貸方金額
長期売掛金500受取利息500
2年目末(利息の認識)
借方金額貸方金額
長期売掛金525受取利息525
2年後(対価の受取り)
借方金額貸方金額
現金預金11,025長期売掛金11,025
基礎 5

重要な金融要素 ── 支払時期のズレは金利

📍 ラボの場所:基礎タブ 5・設例・応用6 ステップ4
ハルカ
機械を渡して、代金は2年後にもらう契約です。2年後に 11,025 もらえるなら、売上は 11,025 ですよね。
先生
移転と支払がずれると、対価の中に信用供与の金利が含まれるんだ(第56項)。第57項のとおり、重要な金融要素があれば、移転時点の現金販売価格 10,000 で売上にして、差の 1,025 は2年間の受取利息にするよ。
ハルカ
リース会計ラボで、将来払うリース料を割り引いて負債にしました。あれと同じ考え方ですか。
先生
そう、つながっているね。将来の金額を、取引開始日の割引率で今の価値に直すところは同じなんだ。ここでは売手の側から見ているから、利息は受取利息になるよ。
迷いポイント 1年以内なら、売上を現金販売価格まで減らす?
ハルカ
1年以内の後払いは簡便法があるから、現金販売価格の 10,000 で売上にするんですよね。
先生
そうではないのだよ。第58項の簡便法は、金融要素を分離しない取扱いなんだ。1年後に 10,500 を受け取る契約なら、10,500 のまま売上高と売掛金にするよ。契約上の受取額を減らすわけではないんだ。
💡 そうだったのか!
重要な金融要素があれば、現金販売価格で売上、差額は利息。1年以内の簡便法は、約束した対価を分離しないまま使う取扱いです。
⏱ 30秒だけラボで試す
  1. リンクから「金融要素」のシミュレーションを開く(応用6の数字)
  2. 右の「移転と支払の間の年数」を 2 から 1 に変える

👀 売上高が 10,000 → 10,500 に、受取利息が 1,025 → 0 になります。1年以内なので、約束した対価 10,500 を分離せず、そのまま売上高にしています。

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📝 リース会計ラボ(割引率と現在価値)ラボを見る ▶
📗 基礎 6 ラボの図
現金以外の対価(株式・材料・設備・労働など)時価で算定(第59項)株価変動等は制限の対象外見積れない約束した財・サービスの独立販売価格を基礎に(第60項)顧客が材料・設備・労働を提供 → 企業がその支配を獲得するなら「現金以外の対価」として処理(第62項)履行につれて時価が変わる部分は第54項の制限を適用(第61項)
基礎 6

現金以外の対価

📍 ラボの場所:基礎タブ 6
ハルカ
代金の代わりに、お客さんの会社の株式を受け取ることになりました。いくらで売上にするんですか。
先生
図のとおり、現金以外の対価は時価で測るんだ(第59項)。時価を合理的に見積れなければ、第60項により、こちらが約束した財・サービスの独立販売価格を基礎にするよ。
迷いポイント 受け取った株の値上がりも、売上に足す?
ハルカ
受け取った後に株価が上がったら、その分も売上を増やしますよね。
先生
株価の変動は対価の種類による変動だから、収益は直さないんだ。株式は金融商品として評価するよ。第61項で制限の対象になるのは、履行の度合いで受け取る株数が変わるような、種類以外の理由による変動なんだ。
💡 そうだったのか!
現金以外の対価は時価で測ります。株価の変動は売上ではなく、金融商品の評価の問題です。
📗 基礎 7 ラボの図
顧客に支払われる対価(現金・クーポン・棚代など)顧客から「別個の財・サービス」を受け取る対価か?はい → 仕入先からの購入と同様に処理(時価を超える分は取引価格から減額)いいえ取引価格から減額(変動対価なら第50〜54項で見積り)減額する時期(第64項)次のいずれか遅い方 (1) 関連する財・サービスの収益を認識する時(2) 対価を支払う、又は支払を約束する時第63・64項、適用指針第30項、設例14(棚の変更の補償金は別個のサービスではない → 減額)
🧾 仕訳で確認(基礎3 顧客に支払われる対価(棚代))
契約における取引開始日(顧客への支払)
借方金額貸方金額
前払金1,800現金預金1,800
製品の販売時(取引価格を 7.5% 減額)
借方金額貸方金額
売掛金3,200前払金240
売上高2,960
基礎 7

顧客に支払われる対価

📍 ラボの場所:基礎タブ 7・設例・基礎3 ステップ3
ハルカ
小売店に棚の模様替え代として 1,800 を払いました。これは販売促進費ですよね。
先生
図の最初の問いから始めるよ。お店から別個の財・サービスを受け取った対価かどうか。棚を使う権利の支配をこちらが得ないなら、別個のサービスではないから、第63項により取引価格から減額するんだ。
ハルカ
「顧客に支払われる対価」という名前だったので、お客さんからもらう話だと思っていました。読むと向きが逆なんですね。
先生
向きが逆だから、売上から引くんだよ。
迷いポイント 払ったその日に、売上から全額引く?
ハルカ
1月に 1,800 を払ったなら、1月の売上から 1,800 を引けばいいですね。
先生
減額するのは、収益を認識する時と支払う時のいずれか遅い方なんだ(第64項)。まだ売っていないなら引く相手がないから、前払金にしておくよ。設例・基礎3では、最低購入額 24,000 に対する 7.5% を、売るたびに前払金から取り崩すんだ。
💡 そうだったのか!
顧客への支払は、別個の財・サービスと交換でなければ取引価格から減額。時期は収益の認識時と支払時の遅い方です。
⏱ 30秒だけラボで試す
  1. リンクから「顧客への支払」のシミュレーションを開く(基礎3の数字)
  2. 右の「当期の販売額(請求額)」を 3,200 から 6,400 に変える

👀 減額が 240 → 480、売上高が 2,960 → 5,920、前払金の残高が 1,560 → 1,320 になります。売るほど、前払金が売上の減額として取り崩されます。

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📗 基礎 8 ラボの図
原則:直接観察できる独立販売価格(同じ財・サービスを独立して販売する価格)で配分(第66・68項)直接観察できないとき(第69項)── 観察可能な入力数値を最大限使って見積る。例(適用指針第31項):(1) 調整した市場評価市場を評価して、顧客が支払うと見込まれる価格(2) 予想コスト+利益コストを見積り、適切な利益相当額を加算(3) 残余アプローチ取引価格 − 他の観察可能な独立販売価格の合計(要件あり)複数の財・サービスの独立販売価格が大きく変動・未確定なら、方法を組み合わせる(適用指針第32項)類似の状況では見積方法を首尾一貫して適用する(第69項)
基礎 8

ステップ④ 配分の原則 ── 独立販売価格の比率

📍 ラボの場所:基礎タブ 8
ハルカ
ここからステップ④ですね。取引価格は、どうやって履行義務に割り振るんですか。
先生
原則は、各履行義務の独立販売価格の比率なんだ(第66項)。独立販売価格は、その財・サービスを単独で売るときの価格で、第68項により取引開始日の価格を使うよ。
迷いポイント 単独で売っていない製品は、配分できない?
ハルカ
セットでしか売っていない製品は、独立販売価格がないから配分できませんよね。
先生
直接観察できなければ、見積るんだ(第69項)。図の下の段にある、調整した市場評価、予想コスト+利益、残余アプローチの3つが例だよ。できるだけ観察できる数字を使うのがポイントなんだ。
💡 そうだったのか!
配分の原則は独立販売価格の比率。観察できなければ、観察可能な情報を最大限使って見積ります。
📗 基礎 9 ラボの図
原則(第70項):すべての履行義務に比例配分X 40Y 55Z 45293932取引価格 100 を 40:55:45 で比例配分(29・39・32)値引き 40 の内訳は 11・16・13(独立販売価格 − 配分額)例外(第71項):一部の履行義務だけに配分X 40Y 55Z 45X 40Y+Z 60(33+27)値引 40YとZの束を通常 60 で売る証拠 → 値引きはY・Zへ第71項の3要件:(1)それぞれを通常単独で販売 (2)一部の束も通常値引きして販売(3)束の値引きが契約の値引きとほぼ同額で、観察可能な証拠がある図の数値は原典の設例15-1(残余アプローチは、値引きを配分した後で使う:適用指針第33項)
基礎 9

値引きの配分と残余アプローチ

📍 ラボの場所:基礎タブ 9
ハルカ
セットで安く売ったときの値引きは、どこに配ればいいんですか。
先生
図の左側が原則だよ。独立販売価格の合計が取引価格より大きければ、その差は束に対する値引きだから、すべての履行義務に比例配分するんだ(第70項)。図では、取引価格 100 を 40:55:45 で割って 29・39・32。値引き 40 の内訳は 11・16・13 だよ。
ハルカ
①編の設例1でも、セットの値引きは比率で全部に配るのが原則でした。同じ話ですね。
先生
そう、つながっているね。今日はその続きで、原則の例外を見るんだ。
迷いポイント 値引きは、一部の製品にだけ寄せてもいい?
ハルカ
YとZをセットで安く売っているなら、値引きはYとZだけに寄せたくなります。
先生
寄せられるのは、第71項の3つの要件を全部満たし、値引きがどの製品のものか観察できる証拠があるときだけなんだ。図の右側がその例だよ。適用指針第33項のとおり、残余アプローチを使うのは、この値引きの配分をした後になるんだ。
ハルカ
値引きを好きな製品に寄せられないなんて、少し窮屈な気がします。
先生
自由に寄せられると、どの期の売上も好きに動かせてしまうからね。窮屈なくらいでちょうどいいんだよ。
💡 そうだったのか!
値引きは原則全部に比例配分。3要件を満たすときだけ一部に寄せ、残余アプローチはその後で使います。
⏱ 30秒だけラボで試す
  1. リンクから「値引きの配分」のシミュレーションを開く(基礎4の数字)
  2. 右の「契約の取引価格」を 120 から 110 に変える

👀 第71項の要件が「満たす」→ 「満たさない」 に変わり、Xへの配分が 50 → 37 に。束の値引き 30 と契約の値引き 40 が一致しないので、比例配分に戻ります。

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📗 基礎 10 ラボの図
取引開始日履行義務Aを充足取引価格が変動変動額は「取引開始日と同じ基礎」で配分(その後の独立販売価格の変動は考慮しない)第74項前段充足済みの履行義務Aに配分された分は変動した期の収益を修正(遡及しない)第74項後段・設例13第72項を満たす場合は一部の履行義務だけに配分(第75項)。契約変更に伴う変動は第28〜31項・第76項(①編の設例3)
基礎 10

変動対価の配分と、取引価格の事後的な変動

📍 ラボの場所:基礎タブ 10
ハルカ
契約した後で変動対価の見込みが変わったら、配分はやり直しですか。
先生
図の流れのとおり、変動した額は取引開始日と同じ基礎で配分するんだ(第74項)。その後に独立販売価格が変わっても、比率は直さないよ。
迷いポイント 過去の期の売上を、さかのぼって直す?
ハルカ
もう引き渡した製品の分も変わるなら、前の期の売上を直すんですよね。
先生
直すのは変動した期の収益なんだ。前の期の財務諸表はそのままにして、当期で調整するよ(設例13)。契約そのものが変わったときは別で、第76項により、①編で見た契約変更の定めに従うんだ。
💡 そうだったのか!
取引価格の変動は取引開始日と同じ基礎で配分し、充足済みの分は変動した期の収益で調整します。

今日の内容を、ラボで確かめてみませんか?

この記事の図は、すべて収益認識ラボ②の画面そのものです。基礎タブを開けば、同じ図を見ながら読み返せます。

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📓 ハルカの学習ノートで、この章を見る学習ノートへ ▶

今日のまとめ ── 迷いポイント早見表

迷いポイント答えラボ
取引価格さえ決まれば、配分はおまけ?配分で各期の売上が変わる。③で全体、④で履行義務ごと基礎0
消費税を含めた請求額が取引価格?第三者のために回収する額は除く。4つの要素を考慮(第47・48項)基礎1
見積方法は全部の変動要素で1つにそろえる?そろえるのは同じ要素の中だけ。要素ごとに最頻値・期待値を選ぶ(第51・52項)基礎2
「可能性が高い」は減額の確率だけで決める?確率と程度の両方で判断(第54項・適用指針第25項)基礎3
返品されそうな商品の原価は?回収する権利を返品資産に。返金負債と相殺しない(適用指針第85・105項)基礎4
1年以内なら、売上を現金販売価格まで減らす?減らさない。簡便法は約束した対価を分離しない取扱い(第58項)基礎5
受け取った株の値上がりも売上に足す?足さない。時価で測り、株価の変動は金融商品の評価(第59・61項)基礎6
顧客への支払は、払った日に売上から全額引く?収益の認識時と支払時の遅い方。先に払えば前払金(第63・64項)基礎7
単独で売っていない製品は配分できない?独立販売価格を見積る。観察可能な情報を最大限使う(第69項)基礎8
値引きは一部の製品にだけ寄せてもいい?第71項の3要件を満たすときだけ。原則は比例配分(第70項)基礎9
過去の期の売上をさかのぼって直す?直さない。変動した期の収益で調整(第74項)基礎10
おわりに

今日のふりかえり

先生
今日のまとめだよ。取引価格は、契約書の金額に変動対価・金融要素・現金以外の対価・顧客への支払の4つを考慮して決める。変動対価は見積ったあと、著しい減額が起きない部分だけを入れる。配分は独立販売価格の比率が原則。この3つを持ち帰ってほしいんだ。
ハルカ
①編では、請求書の金額と売上の時期がずれることに驚きました。今日は、金額そのものも契約書どおりではないと分かりました。前は「いつ」ばかり気にしていたけれど、今回は「いくら」を決める判断の方が大事だと思います。
先生
①編から続けて読んでいるからこそ、その違いに気づけたんだよ。見積りと制限は、実務でもいちばん議論になるところなんだ。
ハルカ
3,000,000 の契約書を見て、3,187,200 と答える日が来るとは思いませんでした。私の電卓も驚いていると思います。
先生
電卓はきっと平気だよ。次の応用編では、制限の判定の要因や返品の決算処理、残余アプローチの順序など、実務で迷う論点を見ていこうか。

参考資料

企業会計基準第29号「収益認識に関する会計基準」(2024年9月13日最終改正)、企業会計基準適用指針第30号「収益認識に関する会計基準の適用指針」(2025年10月16日までの修正を反映)と設例。基準確認日:2026年10月1日。原文はASBJ(第29号)・ASBJ(適用指針第30号)で公開されています。

シリーズ:基礎編/応用編 / 設例編:変動対価と制限編(設例10〜13)・顧客への支払と金融要素編(設例14・金融要素)・値引きの配分編(設例15) / 関連:収益認識ラボ①【基礎編】(5ステップ・履行義務・一定の期間か一時点か)/【早見表】収益認識基準・適用指針(論点を項番号で検索)/リース会計ラボ(割引率と現在価値)

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TaxJudge編集部|公認会計士・税理士(実務25年)による企画・監修。会計基準・税法・裁決・有価証券報告書などの一次情報をもとに、検索できるデータベースと計算・判定・文書作成ツールを制作しています。