EBITDAマージンとは?計算式とM&A評価の経理実務ガイド【2026年版】

EBITDAマージン「EBITDA÷売上高」と説明されますが、自社のEBITDAマージンを実務で算出しようとすると、すぐにいくつもの論点に直面します。

日本基準とIFRSでは営業利益の定義そのものが異なるため、上場企業の連結数値を比較する場面では算出ベースを揃える作業が欠かせません。さらに2027年4月以後に本則適用が始まる新リース会計基準(ASBJ第34号)の下では、これまでオペレーティングリースとして賃借料に計上していた費用が減価償却費と支払利息に振り替わり、EBITDAは構造的に増加する方向に動きます。

そしてEBITDAマージンは、M&A評価で使われるEV/EBITDA倍率、銀行融資審査で重視される有利子負債EBITDA倍率、業績連動報酬の業績指標としての採用など、複数の実務論点とつながった「ハブ指標」でもあります。

投資家・M&A視点で書かれた解説は数多くありますが、本記事では経理財務人材として日常業務で扱う会計実務・規制実務まで踏み込んで、EBITDAマージンを使いこなすための実務ガイドをお届けします。

目次

結論:EBITDAマージンは「EBITDA÷売上高」だが、計算方法と新リース会計の影響で結果が変わる

EBITDAマージンの計算式そのものは1行で書けますが、経理担当者として押さえておくべき要点は次の3つに集約されます。

  1. 分子「EBITDA」の計算方法は4種類ある
    簡便法(営業利益+減価償却費)経常利益ベース、税引前当期純利益ベース、当期純利益ベースのいずれを採用するかで、特別損益が大きい年度では結果が変わります。自社のIR資料・中期経営計画でどの方式を採用しているかをまず確認することが、すべての出発点です。
  2. 新リース会計基準でEBITDAは構造的に増加する方向に動く
    ASBJ第34号(新リース基準)は2027年4月1日以後開始事業年度から本則適用、2025年4月1日以後早期適用可です。オペレーティングリースの賃借料が減価償却費と支払利息に振り替わるため、過去比較・同業他社比較の連続性に注意が必要です。
  3. EBITDAマージンと営業利益率の使い分けに経理視点の判断軸がある
    設備集約型業種ではEBITDAマージンが営業利益率より高めに出るため、業界比較・国際比較・M&A評価に向きます。一方、運転資本変動や将来の設備投資負担は反映しないため、本業の収益力を「シビアに」見るには営業利益率と併用するのが正しい使い方です。

EBITDAマージンを「投資家視点・M&A視点の指標」として扱う記事は多いですが、本記事ではこの3点を軸に、経理財務人材として知っておくべき会計実務・規制実務の論点まで踏み込んで解説します。

EBITDAマージンとは何か(基本概念と注目される背景)

EBITDA(イービットディーエー、またはイービッタ)Earnings Before Interest, Taxes, Depreciation and Amortization の略で、日本語では「金利・税金・減価償却前利益」や「償却前営業利益」と訳されます。

EBITDAマージンはこのEBITDAを売上高で割って百分率にしたもので、「EBITDA ÷ 売上高 × 100」で計算され、減価償却費の影響を除いた本業のキャッシュ創出力を簡易的に示す指標です。

EBITDAマージンが日本企業で重視されるようになった背景は3つあります。

第一に、国際的な企業比較の必要性です。

国ごとに税率・金利水準・減価償却の会計ルールが異なるため、純利益や営業利益を単純比較しても本業の収益力は見えにくいという課題が長年指摘されてきました。
EBITDAは税金・金利・減価償却費の影響を除外する設計のため、グローバル企業の収益性比較に適した指標として、IFRS適用企業を中心にIR資料での開示が広がっています。

第二に、M&A評価でのEV/EBITDA倍率の標準化です。

買収対象企業の価値を測る際に「実質的な買収コスト(EV)÷ 年間EBITDA」が何年分のキャッシュ創出力で投下資金を回収できるかを示すEV/EBITDA倍率は、業種別ベンチマークの形で広く公表されており、M&A実務担当者の必須知識になっています。
後述するEBITDAマルチプル法による簡易企業価値評価も、中小企業のM&Aや事業承継の現場で標準化が進んでいます。

第三に、新リース会計基準(企業会計基準第34号「リースに関する会計基準」)の影響です。

2027年4月1日以後開始する連結会計年度および事業年度の期首から本則適用、2025年4月1日以後早期適用可で、これまでオペレーティングリースとして賃借料(販管費)に計上していた費用が、使用権資産・リース負債としてB/Sに計上され、減価償却費(販管費)と支払利息(営業外費用)に振り替わります。
EBITDAは減価償却費を足し戻す指標であるため、新リース基準適用後はEBITDAが増加する方向に動きます。経理担当者として、適用前後の連続性を意識した開示準備と業績連動指標の閾値見直しが必要になります。

EBITDAマージンの計算式

EBITDAマージンの基本式は次の通りです。

EBITDAマージン(%)= EBITDA ÷ 売上高 × 100

シンプルに見えますが、分子の「EBITDA」の計算方法はどこを起点にするかで表現される計算式が変わってきますが、計算しようとしている結論は大きくは変わりません。

参考までに、起点とする数値ごとにどのように調整をしてEBITDAを計算するか、4種類ほど紹介します。経理担当者として、自社が採用している方式と同業他社の方式の整合を取ることが、業界比較の信頼性を担保する第一歩です。

1. 営業利益から算出する簡便法(最も多用される)

EBITDA = 営業利益 + 減価償却費

実務で最も多く使われる計算式で、損益計算書の営業利益(本業の利益、支払利息や税金控除前の利益)に、非現金支出費用である減価償却費および無形固定資産償却費を足し戻す方法です。

2. 経常利益から算出する方法

EBITDA = 経常利益 + 支払利息 + 減価償却費

経常利益から、すでに差し引かれている支払利息と減価償却費を足し戻して算出します。

3. 税引前当期純利益から算出する方法

EBITDA = 税引前当期純利益 + 支払利息 + 減価償却費 ± 特別損益(調整)

リストラ費用や資産売却益など、その年だけ発生した特別損益を排除する形で 税引前当期純利益を起点に計算する場合の計算式です。

4. 当期純利益から算出する詳細な方法

EBITDA = 当期純利益 + 法人税等 + 支払利息 + 減価償却費 ± 特別損益(調整)

EBITDAの定義に最も忠実な計算方法で、海外企業との比較やM&Aで厳密な企業価値評価を行う際に使われます。

日本基準とIFRSの違い

日本基準IFRSでは「営業利益」の定義そのものが異なります。現行のIAS第1号ではIFRSの営業利益の表示は必須項目ではないため、IFRS適用企業のEBITDAを算出する際は、各社が任意に開示している事業利益・コア営業利益などをベースにする必要があります。

さらに、2027年1月1日以後開始事業年度から適用されるIFRS第18号「財務諸表における表示及び開示」では、営業損益区分の表示が新たに要求されるようになります。IFRS適用企業のEBITDA算出の標準化は今後数年で大きく進む見通しで、経理担当者は自社のIFRS適用状況に応じて、移行スケジュールを早めに把握しておくことが望ましいといえます。

調整後EBITDA(Adjusted EBITDA)の活用

近年、IR資料で「調整後EBITDA(Adjusted EBITDA)」を併記する企業が増えています。買収関連費用、構造改革費用、株式報酬費用、減損損失など特別性のある費用を除外した値で、Non-GAAP指標として開示される性格のものです。

投資家との対話やM&A評価の場では、会計基準上のEBITDAではなく調整後EBITDAが重視される場面が多くなっており、経理担当者は会計上の数値と調整後数値の両系統を準備し、その差額の説明根拠も整理しておくことが求められます。

計算実務:数値の作り方と新リース会計基準の影響

EBITDAマージンを実際に計算する際の論点を、経理担当者の作業手順に沿って整理します。

連結ベースか単体ベースか

EBITDAマージンは連結ベースで計算するのが原則です。IFRS適用企業は連結のみ作成するため、そもそも単体EBITDAは存在しません。日本基準の連単比較を行う企業でも、業界比較・M&A評価では連結データを使うのが標準的な実務です。

具体例で計算する

具体例として、連結売上高1,000億円、営業利益80億円、減価償却費50億円の企業を考えてみます。簡便法でEBITDAを算出すると、

EBITDA = 80億円 + 50億円 = 130億円

EBITDAマージン = 130億円 ÷ 1,000億円 × 100 = 13.0%

となります。

同じ企業の営業利益率8.0%(=80÷1,000×100)ですので、EBITDAマージン営業利益率より5ポイント高く出る計算になります。減価償却費が大きい設備集約型業種ほど、両者の差が広がる構造を持つことが、この数値例から見て取れます。

新リース会計基準(ASBJ第34号)の影響

新リース会計基準の適用により、これまでオペレーティングリースとして賃借料(販管費)に計上していたものが、使用権資産・リース負債としてB/Sに計上され、減価償却費(販管費)支払利息(営業外費用)に振り替わります。

例えば、年間賃借料20億円のオペレーティングリースを利用している企業が、新基準の適用後に減価償却費15億円と支払利息5億円に振り替わるケースを考えます(配分は契約条件・残存リース期間・割引率により異なります)。

適用前のEBITDA「営業利益(賃借料20億円控除後)+ 減価償却費」で計算されますが、適用後「営業利益(減価償却費15億円控除後・賃借料計上なし)+ 減価償却費(既存+新規15億円)」で計算されます。結果として、適用前後で営業利益も利息相当だけ影響がありますが、EBITDAは新規計上された減価償却費15億円分だけ増加します。

EBITDAマージンも比例して上昇するため、過去比較や同業他社比較を行う際は、適用時期と早期適用の有無を必ず確認するのが実務上の鉄則です。経理担当者として、社内の中期経営計画やKPI目標値が新基準適用後のEBITDA水準に基づいて設定されているかを点検しておくことも、見落とされやすい論点です。

運転資本変動を反映しない点に注意

EBITDA「簡易的なキャッシュ創出力」を示す指標とされますが、実際の営業キャッシュフロー(営業CF)とは異なります。EBITDAは運転資本変動・税金支払・利息支払を考慮しないため、売掛金回収の遅れや在庫の急増などがあると、EBITDAが黒字でも営業CFがマイナスになることがあります。

経理担当者として、EBITDAマージンを単独で見るのではなく、営業キャッシュフロー対売上高比率と併用して読むのが望ましいといえます。両者の乖離が大きい年度は、運転資本管理に課題があるか、または特殊要因が混入している可能性が高く、経営層への説明資料でも併記する価値があります。

類似指標との違い(経理視点で読み解く)

EBITDAマージンと混同されやすい指標を、使い分けの判断軸とともに整理します。

営業利益率との違い

営業利益率「営業利益÷売上高」で計算され、減価償却費の影響を含みます。EBITDAマージンは減価償却費を除外するため、設備集約型業種では営業利益率より数ポイント高く出るのが普通です。

実務上の使い分けとしては、M&A評価・国際比較・業種比較ではEBITDAマージン、本業の収益力を将来の設備投資負担まで踏まえてシビアに見る場合は営業利益率、と整理するのが分かりやすい構造です。

両者を併用することで、設備投資の影響を排除した「素の収益力」と、減価償却を含めた「持続可能な収益力」の両面から事業を評価できます。

EBITマージンとの違い

EBIT(Earnings Before Interest, Taxes)「利払い前・税引き前利益」を意味し、計算上は営業利益とほぼ同義として扱われることが多い指標です(厳密には「当期純利益+法人税等+支払利息」で算出)。

EBITとEBITDAの違いは、その名前が示す通り「DA(減価償却費+償却費)の有無」だけです。

EBITマージンは設備投資の影響を考慮した利益指標、EBITDAマージンは設備投資の影響を排除したキャッシュ創出力指標、と使い分けるのが実務の整理です。

営業キャッシュフロー対売上高比率との違い

営業CF対売上高比率は実際の現金の動きを反映する指標で、運転資本変動・税金支払・利息支払をすべて織り込んだ数値です。EBITDAはこれらを考慮しない指標であるため、同一企業でも両者は乖離します。

両者を併用することで、本業の収益力(EBITDAマージン)と実際のキャッシュ創出力(営業CF対売上高比率)の両面を読み解くことができ、運転資本管理の巧拙まで含めた評価が可能になります。

FCFマージン(フリーキャッシュフロー対売上高比率)との違い

フリーキャッシュフロー(FCF)は営業CFから設備投資を控除した値で、株主・債権者に分配可能なキャッシュを示します。

EBITDAマージン設備投資前の指標FCFマージン設備投資後の指標で、設備投資集約度の高い業種ほど両者の差が大きくなります。

中期経営計画で「キャッシュ創出力の改善」を語る際、EBITDAマージンだけで議論すると将来の設備投資負担が見えなくなるため、FCFマージンを併記して両面から評価するのが、経理担当者として推奨できる説明の仕方です。

派生指標:EV/EBITDA倍率・有利子負債EBITDA倍率・EBITDAマルチプル

EBITDA複数の派生指標の分母として使われます。
経理担当者として押さえておくべき主要な派生指標を整理します。

EV/EBITDA倍率

EV/EBITDA倍率 = EV(企業価値)÷ EBITDA

ここでEV(Enterprise Value)「時価総額 + 有利子負債 − 現金及び預金」で算出される企業価値の概念で、株主と債権者の両方に帰属する企業全体の価値を表します。

EV/EBITDA倍率は、M&A評価で最も標準的に使われる指標で、買収に必要な実質コストが何年分のEBITDAで回収できるかを示します。

一般的に8〜10倍が目安とされますが、業種により大きな幅があり、IT・成長企業では高め、成熟産業では低めに出る傾向があります。経理担当者は、自社が買収検討対象になる可能性、または他社買収を検討する場面で、業界別のEV/EBITDA水準を把握しておくことが望ましいといえます。

有利子負債EBITDA倍率(デットEBITDAレシオ)

有利子負債EBITDA倍率 = 有利子負債 ÷ EBITDA

財務健全性・債務償還能力を測る指標で、何年分のEBITDAで有利子負債を返済できるかを示します。一般的に3〜5倍が健全性の目安とされますが、業種・成長フェーズによって適正水準は異なります。

近年は銀行融資審査でもこの指標が重視される場面が増えており、経理担当者として、自社の有利子負債EBITDA倍率を定期的にモニタリングし、融資交渉や格付け対応の場面で説明できる体制を整えることが重要です。

EBITDAマルチプル法

中小企業のM&A評価で標準的に使われる簡易評価法で、「EBITDA × 業種別マルチプル + 純有利子負債調整」で買収価格の目安を出す手法です。中小企業庁や業界団体が公表する取引データから業種別マルチプルが集計されており、事業承継・小規模M&Aの現場で実務的なベンチマークとして広く使われています。

詳細は中小企業庁「事業承継ガイドライン」を参照するのが望ましいといえます。非上場企業の経理担当者にとっても、自社が事業承継・M&A検討対象となる可能性を見据えて、業種別マルチプル水準を把握しておくことには価値があります。

規制連動の論点

EBITDAマージンは、いくつかの規制論点と密接に接続しています。経理担当者として、これらの論点を整理しておくと、経営層への説明や中期経営計画の議論で大きな武器になります。

東証PBR要請とEBITDAマージン

東証2023年3月31日「資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応」要請(規則上の義務付けではない要請です)以降、上場企業は中期経営計画にEBITDAマージン目標を盛り込む例が増えています。

設備集約型業種では、ROEや営業利益率よりEBITDAマージンの方が事業構造を説明しやすいケースが多く、対外開示の補助指標として活用されるようになっています。経理担当者として、自社が東証要請への対応開示でどの指標を中心に据えるか、IR部門と連携して整理する役割を担う場面が増えています。

業績連動報酬の業績指標としての採用

法人税法34条1項3号は、業務執行役員に対する業績連動給与の損金算入要件として、業績指標の客観性、有報での事前開示、会社形態に応じた手続要件(指名委員会等設置会社では報酬委員会の決定、監査役会設置会社では独立社外取締役の関与する手続等)など、法令所定の適正手続を経ることを定めています。

EBITDAマージンを業績連動報酬の業績指標に採用する企業も増えており、経理担当者は内部統制の観点で、適正手続が踏まれているか、指標の算定方法が客観的かを確認する役割を担います。

参考記事:業績連動報酬とは?損金算入要件と指標選定の経理実務ガイド【2026年版】

新リース会計基準と過去比較の連続性

すでに説明した通り、ASBJ第34号の適用前後でEBITDAが構造的に増加するため、業績連動報酬の指標にEBITDAを採用している企業では、基準改正前後の数値補正をどう設計するかが重要な論点になります。

早期適用企業は2025年4月以後、本則適用は2027年4月以後で、業績指標の閾値設定でこの影響を考慮する必要があります。経理担当者として、報酬委員会・取締役会・人事部門に対して、新基準適用の影響と閾値見直しの必要性を早めに提示することが、円滑な制度運用につながります。

業種別目安

EBITDAマージンの業種別水準は、業種特性により大きな幅があります。EDINETから取得した上場企業約3,700社(金融業除く)の財務データに基づくザイマニ集計の2025年中央値を引用すると、次のような分布が見て取れます。

業種EBITDAマージン中央値(2025)
全業種9.2%
情報・通信業10.7%
化学11.8%
電気機器10.7%
精密機器13.8%
機械12.1%
不動産業11.0%
海運業15.7%
電気・ガス業14.5%
卸売業4.1%
小売業6.0%
建設業7.1%

出典:ザイマニ集計

経理視点でこのデータを読み解くと、業種ごとの違いには明確な構造的理由があることが分かります。

電気・ガス業、海運業、不動産業、精密機器といった設備集約型の業種は、減価償却費が大きいため、営業利益率からEBITDAマージンへの押し上げ効果が大きく出ます。逆に、運転資本回転が速く設備投資の負担が小さい情報通信業やサービス業では、営業利益率とEBITDAマージンの差は相対的に小さくなります。そして、薄利多売型の卸売業・小売業は、両者ともに低めに出やすいといえます。

経理担当者として注意したいのは、「○%以上が良い」という一律の基準で評価する議論は粗いという点です。同業他社の中央値・上位四分位を業種別ベンチマークとして比較し、自社のパーセンタイル順位で評価する姿勢が、より精度の高い経営判断につながります。

経理担当者が明日から始められる5ステップ

EBITDAマージンを経営判断に活かすために、経理担当者の視点で具体的な5ステップを提案します。1サイクル回すのに、専任で動けば1〜2週間程度が目安です。

ステップ1:自社の有価証券報告書から数値を拾う
まず連結損益計算書から売上高と営業利益を、連結キャッシュフロー計算書から減価償却費(および無形固定資産償却費)を抽出します。3〜5期分の時系列データを揃えるとトレンドが見えるようになります。同時に、自社が日本基準かIFRSかを確認し、調整後EBITDAを併記しているかも整理しておきます。

ステップ2:4つの計算方法で算出する
簡便法・経常利益ベース・税引前当期純利益ベース・当期純利益ベースの4方式でEBITDAを計算して、計算式の意味を理解する。同業他社が採用している方式と揃えることで、業界比較の信頼性が高まります。

ステップ3:時系列または同業比較を作る
3〜5期の時系列推移と、同業上位5〜10社の最新期データを並べた比較表を作成します。ザイマニ等の業種別中央値をベンチマークとして添えることで、自社のパーセンタイル順位が一目で見えるようになります。

ステップ4:派生指標(EV/EBITDA・有利子負債EBITDA倍率)と併用する
EBITDAマージンを単独で見るのではなく、EV/EBITDA倍率(株式市場での評価の割安・割高)、有利子負債EBITDA倍率(債務償還能力)と組み合わせて経営層への提案資料に並べます。M&A戦略や財務戦略の議論で、経営層との対話が一段深まる素材になります。

ステップ5:経営層への提案資料を1ページで作る
ヘッダーにEBITDAマージンと営業利益率の比較推移グラフを置き、本文に新リース基準適用の影響予測、業種ベンチマーク比較、EV/EBITDA水準を配置します。「次年度のEBITDAマージン改善のために、設備投資効率化・運転資本回転改善・人件費効率化のいずれを優先するか」という具体的な行動提案で締めます。

新リース基準適用前後では、過去数値の遡及調整シミュレーションも併せて準備しておくと、IR部門や経営企画との対話の解像度が一段上がります。

人的資本投資との連動

EBITDAマージンは、人的資本投資との関係でも重要な論点があります。

EBITDAは支払利息・税金・減価償却費を除外する指標ですが、人件費は販管費に含まれるため、EBITDAから控除されています。つまり、短期的に人件費を削減すれば、EBITDAマージンは改善方向に動きます。しかし、人材投資による中長期の生産性向上は、結果としてEBITDAを押し上げる経路となり得ることも、忘れてはならない論点です(出典:内閣官房・金融庁・経済産業省「人的資本可視化指針(改訂版)」2026年3月公表)。

労働分配率EBITDAマージンは、表裏一体で動く指標です。短期的な人件費削減でEBITDAマージンを改善する施策は、本業の競争力を毀損する可能性があります。経理担当者として、コスト削減型の改善人材投資型の改善経路を区別して経営層に説明することが、説得力のある提言につながります。

伊藤レポート(2014年8月公表)以来、ROIC・ROE・PBR・EBITDAなどの財務指標と、人的資本などの非財務指標を「目に見えない価値の見える化」という共通テーマでつなげる議論が日本企業の経営の中心に位置づけられてきました。EBITDAマージンは、その中で本業のキャッシュ創出力を測る中核指標として、引き続き重要な位置を占めていきます。

よくある質問

Q1. EBITDAマージンは何%が目安ですか?

業種により水準が大きく異なります。

EDINETデータに基づくザイマニ集計の2025年全業種中央値は9.2%で、業種別に見ると情報・通信業10.7%、化学11.8%、海運業15.7%、卸売業4.1%、小売業6.0%などです。一律の目安で判断するのではなく、同業他社の中央値・上位四分位を業種別ベンチマークとして比較するのが、実務的な目安付けの方法です。

Q2. EBITDAマージンがマイナスの場合、どう解釈すれば良いですか?

EBITDA(営業利益+減価償却費)がマイナスになる場合、本業の収益で減価償却費を回収できていない状態を示します。

設立初期のスタートアップや事業構造改革中の企業では一時的に発生し得ますが、長期的にマイナスが続く場合は事業構造の根本的な見直しが必要となります。経理担当者として、マイナスの要因が一時的か構造的かを切り分けて経営層に説明する役割を担います。

Q3. EBITDAマージンと営業利益率、どちらを使うべきですか?

両者を併用するのが実務的です。

業界比較・国際比較・M&A評価ではEBITDAマージン(減価償却費の影響を排除)、本業の収益力を将来の設備投資負担まで踏まえてシビアに見たい場合は営業利益率(減価償却費の負担を含む)を使います。設備集約型業種ほど両者の差が大きく出るため、両指標を並べて議論することで事業構造の理解が深まります。

Q4. 新リース会計基準でEBITDAマージンは本当に改善するのですか?

会計基準の改正による「見かけ上の」改善です。

経済実態は変わらず、オペレーティングリースの賃借料が減価償却費と支払利息に振り替わる結果、EBITDAは増加する方向に動きます。同業他社・過去比較を行う際は、適用時期と早期適用の有無を確認することが重要で、経済実態を比較するための補正計算(リース料を含めた擬似EBITDA)を併記することが望ましいといえます。

Q5. 中小企業でもEBITDAマージンを計算する意味はありますか?

中小企業こそEBITDAマージンの活用余地があります。

事業承継・M&A評価でEBITDAマルチプル法による企業価値評価が標準化されており、自社の業界ポジションを定量的に把握する基礎指標として有用です。中小企業庁「事業承継ガイドライン」が業種別の取引マルチプル目安を公表しており、参考にできます。経理担当者として、上場・非上場を問わず、自社のEBITDAマージン推移を3〜5期分整理しておくことには大きな価値があります。

まとめ

EBITDAマージンを経理担当者の視点で読み解くポイントを5つに整理します。

  • 計算式は「EBITDA÷売上高×100」だが、EBITDAの算出方法は4種類あります。
  • 日本基準IFRSで営業利益の定義が異なり、Non-GAAP指標としての調整後EBITDAも併用される実務が広がっています
  • 新リース会計基準(ASBJ第34号、2027年4月以後本則適用)でEBITDAは構造的に増加する方向に動くため、過去比較・業績指標の閾値設定で連続性に注意が必要です
  • 派生指標(EV/EBITDA倍率・有利子負債EBITDA倍率・EBITDAマルチプル)と併用して、財務戦略やM&A戦略の議論に活用できます
  • 業種別目安(ザイマニ・JPX等)は最新データを引用し、業種中央値からのパーセンタイル順位で評価する姿勢が経理担当者として推奨できます

EBITDAマージンはM&A評価・国際比較で標準的に使われる指標ですが、経理担当者として深掘りできるポイントは多く、新リース基準対応や中期経営計画の議論で経営層への説明力を一段引き上げる素材になります。明日から自社の有価証券報告書を開いて、3〜5期のEBITDAマージン推移と派生指標の試算を始めてみてください。

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