評価性引当額とは?計上ロジックと上場2,274社の水準比較【税効果会計】

有価証券報告書の税効果会計注記を読むと、繰延税金資産の内訳表の下に「評価性引当額 △○○百万円」という控除行が必ずと言っていいほど出てきます。この評価性引当額こそ、「税負担率が法定実効税率より低いのはなぜ?」の記事や「税率差異分析(タックスプルーフ)のやり方」の記事でも、上場企業の税負担率を最も大きく動かしていた項目でした。

結論から言うと、評価性引当額とは

将来減算一時差異や税務上の繰越欠損金に対応する税効果相当額のうち、将来の課税所得等では回収できないと判断して繰延税金資産から控除した金額

です。

そして、その大きさは会社の節税姿勢ではなく繰延税金資産の回収可能性——将来の課税所得の見込み、一時差異の解消スケジュール、タックス・プランニングなどの総合判断で決まります。

本記事では、有価証券報告書から日本基準・連結の税効果注記を独自集計したデータ(2026年7月取得。評価性引当額と繰延税金資産小計の両方を取得でき比率を算定できた2,274社)をもとに、評価性引当額の意味、計上ロジック、そして日本基準・連結の上場企業における水準を数字で解説します。

※本記事は、
税負担率が法定実効税率より低いのはなぜ?
・税率差異分析(タックスプルーフ)のやり方
の続編です。両記事で「最大の要因」として登場した評価性引当額そのものを掘り下げます。

目次

結論

評価性引当額は「回収できないDTA」。上場企業の対DTA比率は中央値41%

先に要点をまとめます。

  • 評価性引当額とは、将来減算一時差異等に対応する税効果相当額(繰延税金資産)のうち回収可能性がないと判断して控除した金額です。DTA内訳表で「評価性引当額 △○○」と表示され、その分だけ貸借対照表に計上する繰延税金資産が減ります。
  • 回収可能性の判断枠組みが、会計基準(繰延税金資産の回収可能性に関する適用指針)の企業分類1〜5です。業績が安定した分類1は評価性引当がほぼ不要、過去に欠損金を出した分類4・5になるほど、回収可能とみなせる範囲が狭まり評価性引当額が膨らみます。
  • 独自集計では、繰延税金資産小計に対する評価性引当額の比率(VA比率)の中央値は41%半分の会社が、将来減算一時差異等に対応する税効果相当額の4割超を「回収できない」として控除していました。日本基準・連結2,999社のうち、少なくとも2,910社(97.0%)で正の評価性引当額が確認されました。
  • 比率は業種で大きく異なり、繊維製品71.5%・輸送用機器68.5%などで高く、その他金融業14.0%・電気ガス業25.0%・銀行業29.5%で低い傾向です。収益の安定性や一時差異の構成などが背景と考えられます。前期と比べられた2,817社では、評価性引当額が増加した会社が58%と、減少(41%)をやや上回りました。

つまり評価性引当額は特殊な項目ではなく、ほとんどの上場企業にあり、その大小がその会社の「過去の損失と将来見通し」を映す指標です。

以下、定義→計上ロジック→水準の順に見ていきます。

評価性引当額とは——繰延税金資産から控除される「回収できない部分」

繰延税金資産(DTA)は、会計と税務のズレ(将来減算一時差異)や税務上の繰越欠損金について、将来それが解消して税金が減る効果を、資産として前倒しで計上したものです。

ただし、その税金減額効果を実際に受けられるのは、将来に十分な課税所得(黒字)が出る場合に限られます。将来が赤字続きなら、繰越欠損金があっても控除する相手の所得がなく、資産の価値は実現しません。

そこで、

一時差異等に対応する税効果相当額のうち「将来の課税所得では回収できない」と判断した部分を控除するのが評価性引当額です。

注記の繰延税金資産の内訳表では、各項目を積み上げた「繰延税金資産小計」から「評価性引当額 △○○」を差し引き、「繰延税金資産合計」に至る形で表示されます。評価性引当額が大きいほど、将来減算一時差異等に対応する税効果相当額のうち貸借対照表に残る額が小さくなります

【注記での見え方(イメージ)】
繰延税金資産小計    1,000
評価性引当額      △410 ←これが評価性引当額(この会社のVA比率は41%)
繰延税金資産合計     590

税率差異分析(タックスプルーフ)のやり方で見たとおり、評価性引当額の変動のうち回収可能性の見直しによる影響が当期損益に認識される場合、その影響は法人税等調整額を通じて損益計算書の税負担率を動かします。過年度に控除していた額を見直して繰延税金資産を追加計上すれば(戻入れ)税負担率は下がり、積み増せば上がります。

ただし、評価性引当額の期末残高の前期比増減には、その他の包括利益で認識される項目、企業結合、連結範囲の変更、為替換算、税率変更、繰越欠損金の使用・期限切れ、一時差異そのものの増減なども含まれ得るため、期末残高の増減額と税率差異表の「評価性引当額の増減」は必ずしも一致しません。

「評価性引当額とは何か」を押さえることが、税負担率のブレを読む出発点になるのはこのためです。

計上ロジック——回収可能性は「企業分類1〜5」で判断する

では、どこまでを「回収できる」とみなし、どこからを評価性引当額として取り消すのか。

これを定めているのが、企業会計基準委員会(ASBJ)の企業会計基準適用指針第26号「繰延税金資産の回収可能性に関する適用指針」です。会社を過去(おおむね3年)当期課税所得・欠損金の状況5つに分類し、分類ごとに繰延税金資産を計上できる範囲を定めています。

企業分類ざっくりした状況繰延税金資産の計上範囲(=評価性引当額の出方)
分類1過去3年および当期に、期末の将来減算一時差異を十分に上回る課税所得が安定的に生じ、近い将来に経営環境の著しい変化が見込まれない原則、繰延税金資産の全額が回収可能
評価性引当額はほぼ生じない
分類2課税所得は安定的に生じているが一時差異を十分に上回るほどではなく、重要な税務上の欠損金がないスケジューリング可能な一時差異は回収可能
スケジューリング不能な将来減算一時差異は原則として回収可能性なし(合理的な根拠を説明できる場合の例外あり)
分類3課税所得が期によって大きく増減している将来の合理的な見積可能期間(おおむね5年)の課税所得の見積りと一時差異等の解消スケジュールに基づき回収可能額を算定
合理的な根拠がある場合や、解消が長期にわたる特定の一時差異(退職給付引当金等)は5年超も回収可能と判断されることがある
分類4過去または当期重要な税務上の欠損金が生じている等で、かつ翌期に一時差異等加減算前課税所得が生じる見込み原則、翌期の課税所得見積額と翌期のスケジューリングに基づき回収可能額を算定。欠損金の発生原因や中長期計画等に合理的な根拠がある場合は、分類2または分類3に準じて取り扱う例外がある
分類5過去・当期のいずれも重要な欠損金が続き、翌期も見込まれる原則、繰延税金資産に回収可能性なし(ほぼ全額が評価性引当額)。含み益のある資産の確実な売却など限定的なタックス・プランニングが認められる例外はある

ポイントは、分類1から5へ進むほど回収可能とみなせる範囲が狭まり、評価性引当額が膨らむという一方向の関係です。一般に、将来の課税所得を安定的に見込める企業ほど評価性引当額は小さくなりやすく、重要な欠損金がある企業ほど大きくなりやすい傾向があります。

ただし、VA比率だけから企業分類1〜5を判定することはできません

連結注記のVA比率には、親会社・国内外子会社など複数の納税主体の金額が合算されているうえ、一時差異の種類、解消時期、繰越期限、タックス・プランニングなども影響するためです。

VA比率は企業分類そのものではなく、グループ全体の回収可能性判断を概観する参考指標として利用するのが適切です。節税の巧拙ではなく、過去の損失と将来の課税所得見通しなどで決まる、というのが計上ロジックの核心です。

本記事では、評価性引当額を評価性引当額控除前の繰延税金資産合計で除した割合「VA比率」と呼びます。VAはValuation Allowance(評価性引当額)の略です。

なお、業績が回復するなどして回収可能性の判断が改善すれば、それまで控除していた評価性引当額を見直し繰延税金資産を追加計上します。以下の記事で見た「評価性引当額の戻入れによる税負担率の急低下」は、多くがこうした回収可能性判断の見直しに対応しています。

税負担率が法定実効税率より低いのはなぜ?
・税率差異分析(タックスプルーフ)のやり方

【独自集計】上場企業の評価性引当額はどのくらいか——VA比率の分布

ここからが本記事の独自データです。集計の前提を先に示します。

■集計方法
データ源:EDINETで公表された有価証券報告書の税効果会計注記(2026年7月取得・全決算月対象)
母集団:日本基準の連結財務諸表を開示する2,999社(IFRS採用会社等は除外)
VA比率:評価性引当額(当期)÷繰延税金資産小計(当期)。両数値を取得でき、かつ0%以上100%以下のVA比率を算定できた2,274社を分布集計の対象とした(評価性引当額が繰延税金資産小計を上回るなど抽出上の異常が疑われる42社は除外)
前期比:評価性引当額の前期・当期を両方取得できた2,817社で、当期額と前期額の大小により増加・減少を判定(同額を横ばいとした)
品質確認:内訳合計と小計の突合、代表社の原文照合など複数ラウンドの検証を実施。個社の値には誤差が残る可能性があります

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VA比率(評価性引当額÷繰延税金資産小計)社数構成比
0%以上10%未満256社11.3%
10%以上25%未満412社18.1%
25%以上50%未満691社30.4%
50%以上75%未満433社19.0%
75%以上90%未満236社10.4%
90%以上100%以下246社10.8%

中央値は41%、四分位範囲は21〜68%です。半数の会社が、将来減算一時差異等に対応する税効果相当額の4割超を「回収できない」として評価性引当額で控除している計算になります。

とくに注目したいのは両端で、VA比率が10%未満(回収可能性を高く見ている)の会社が256社(11.3%)いる一方、90%以上(大半を回収不能とみている)の会社も246社(10.8%)あります。繰延税金資産の大半を積めていない会社が、VA比率を算定できた2,274社の約1割を占めるということです。

評価性引当額は少なくとも97%の会社で確認

日本基準・連結2,999社のうち、少なくとも2,910社(97.0%)で正の評価性引当額が確認されました(ゼロと確認できたのは2社、注記の構造上、機械抽出できなかった会社が87社)。

評価性引当額は例外的な会社の項目ではなく、上場企業のほぼ全社にあるのが実態です。

連結の税効果注記には、収益状況や回収可能性判断が異なる複数の子会社・納税主体の金額が合算されるうえ、解消時期を合理的に見積もれない将来減算一時差異には回収可能性がないと判断される場合があるため、グループ全体の業績が安定していても評価性引当額が完全にゼロになるとは限りません。

だからこそ、「あるかどうか」ではなく「どのくらいの比率か・前期からどう動いたか」で読むことが重要になります。

業種別のVA比率——収益の安定性と一時差異の構成を映す

VA比率の中央値を業種別(集計20社以上)に見ると、業種ごとに水準がはっきり分かれます。

VA比率が高い業種(中央値)VA比率が低い業種(中央値)
繊維製品 71.5%その他金融業 14.0%
輸送用機器 68.5%電気・ガス業 25.0%
医薬品 57.0%精密機器 26.0%
電気機器 47.0%銀行業 29.5%
情報・通信業 46.5%不動産業 32.5%
鉄鋼 46.0%建設業 33.0%

業種間の差には、過去の損失や収益の変動性に加え、繰延税金資産を構成する項目、国内外子会社の構成、欠損金の繰越状況などが影響していると考えられます。

例えば、構造改革や市況変動を経験した企業を多く含む業種(繊維製品・輸送用機器・鉄鋼など)ではVA比率が高くなる可能性があります。逆に銀行業(29.5%)は、繰延税金資産の絶対額こそ大きいものの、VA比率は低めです。ただし因果関係を判断するには、各社の評価性引当額を「繰越欠損金」と「将来減算一時差異等」に分けて確認する必要があります。

同業と比べて自社(対象会社)のVA比率が突出して高ければ、過去の欠損金、将来利益の見通し、一時差異の構成などを確認すべきシグナルと読めます。

前期比の増減と「上がったとき」の読み方

評価性引当額は、業績や将来見通しの変化を受けて毎期動きます。前期と比べられた2,817社では、評価性引当額が増加した会社が1,630社(58%)、減少した会社が1,156社(41%)、増減なし(同額)が31社でした。増加がやや優勢です。

評価性引当額が増える主な理由には、将来課税所得の見積りの下方修正、新たな税務上の欠損金の発生、回収期間の短縮、回収可能性判断の変更などがあります。

逆に減る理由には、将来課税所得見積りの改善、欠損金の使用、回収可能性判断の見直しなどがあります。企業結合、子会社売却、為替換算、税率変更などが影響する場合もあり、必ずしも企業分類の変更を意味しません。

ただし、回収可能性の見直しによる影響が当期損益に認識される範囲では、増加は税負担率を押し上げ、減少は押し下げる方向に働くため、税率差異分析(タックスプルーフ)のやり方の「評価性引当額の増減」と表裏一体です。

金額の大小だけでなく、方向と背景(注記の変動理由の記載)を読むことが大切です。

実例で見る評価性引当額の動き

税負担率が法定実効税率より低いのはなぜ?」で税率差異注記の原文と個別照合した3社を、今度は評価性引当額の動きから見ます(原文はEDINETまたは税効果ベンチマークの会社詳細で確認できます)。

評価性引当額が5期で大幅に減少——三井E&S(7003)

三井E&Sの評価性引当額は、2021年3月期の約1,121億円から2026年3月期には約299億円(VA比率46%)まで減少しました。直近期の注記にも「評価性引当額の減少額(11,584百万円)の主な内容は、税務上の繰越欠損金に係る評価性引当額の減少」と明記されています。

業績回復や将来課税所得の見積りの改善等に伴って、税務上の繰越欠損金に係る評価性引当額が段階的に減少してきた例と考えられます(企業分類そのものは注記で開示されないため、分類変更の有無までは断定できません)。

過年度における評価性引当額の減少も、「税負担率が法定実効税率より低いのはなぜ?」で見た2024年3月期の税負担率▲30.5%が大きく低下した要因となっています。

市況・単年度で振れる——川崎汽船(9107)・スギHD(7649)

川崎汽船は海運市況の急回復に伴い評価性引当額が5期で886億円から225億円へ減少し、この評価性引当額の減少が複数年度における税負担率の押下げ要因となった可能性があります。

スギホールディングスは評価性引当額が前期の130億円から46億円へ急減した2026年2月期に、税負担率が0.4%へ落ち込みました。

いずれも評価性引当額の「減少」が税負担率低下の主因で、恒久的な節税ではないため、単年度の低い税負担率をそのまま将来へ延長することはできません。評価性引当額を見るときは、金額と同時にその増減が一過性か複数年度の傾向かを、5期推移で確認するのが基本です。

自社・投資先の評価性引当額を確かめる3ステップ

ステップ1:繰延税金資産の内訳表で「小計→評価性引当額→合計」を見る

有価証券報告書の「注記事項(税効果会計関係)」を開き、繰延税金資産の内訳表で「繰延税金資産小計」「評価性引当額 △○○」「繰延税金資産合計」の3行を確認します。

評価性引当額÷繰延税金資産小計がVA比率です。まずは本記事の中央値41%と比べて、高いか低いかを把握します。

ステップ2:変動理由の記載と前期比を確認する

評価性引当額に重要な変動がある場合、その主な内容が注記に記載されます(例:「繰越欠損金に係る評価性引当額の減少」)。

前期と当期を比べ、増えたのか減ったのか、その理由が業績要因か、分類の見直しか、企業結合・子会社売却などの特殊要因かを読み取ります。

ステップ3:同業・5期推移と比べ、税負担率とあわせて見る

単年度の水準だけでは判断できないため、同業他社の水準と自社の5期推移を並べます。

当サイトの税効果ベンチマーク(無料)では、上場企業の評価性引当額・繰延税金資産・繰越欠損金・税率差異を横断検索でき、ランキングや5期推移、注記原文まで確認できます。

評価性引当額の大きい会社ランキングや、どの会社がVA比率90%超かも、このデータベースで具体的に確認できます(本記事の集計値も同データから算出しています)。

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よくある質問(FAQ)

Q1. 評価性引当額が大きい会社は「危ない」会社ですか?

一概には言えません

評価性引当額が大きい(VA比率が高い)ことは、繰延税金資産のうち回収可能と判断された割合が低いことを示します。その背景には、過去の欠損金、将来課税所得の見通し、一時差異の解消時期、子会社ごとの収益状況などがあり、それ自体だけで会社が「危ない」と判断することはできません。

むしろ注意すべきは変化の方向で、評価性引当額の急増は業績悪化のシグナルになり得ます。一方、評価性引当額の減少(戻入れ)は業績回復の表れであることが多い反面、その期の税負担率を一時的に押し下げるため、翌期の「税率の正常化」を織り込む必要があります。

Q2. 評価性引当額と貸倒引当金などの「引当金」は同じものですか?

別物です。

貸倒引当金などの引当金は、将来の費用・損失に備えて負債(または資産の控除)を計上するものです。評価性引当額は、いったん計上した繰延税金資産のうち回収できない部分を取り消す「資産の評価の調整」で、負債を積むわけではありません。名前は似ていますが、性格が異なります。

Q3. 評価性引当額は損益計算書のどこに出ますか?

評価性引当額そのものが独立の科目として損益計算書に表示されるわけではありません

回収可能性の見直しによる増減が当期損益に認識される場合、その影響は法人税等調整額(法人税等の一部)に含まれます。この場合、評価性引当額の増加は税金費用を増やして税負担率を上げ、減少は税金費用を減らして下げる方向に働きます。

ただし、その他の包括利益や純資産に直接計上される項目、企業結合等に関連する増減は、当期損益に反映されない場合があります。金額は税効果会計注記で確認します。

Q4. VA比率は何%くらいが「普通」ですか?

本記事の集計では中央値41%、四分位範囲21〜68%でした。ただし適正水準は業種と分類によって大きく変わるため、絶対水準だけで良し悪しは判断できません。

同業他社の水準(本記事の業種別表)と自社の5期推移を比べ、「普通からのずれ」を測るのが実務的です。なお、VA比率が高くても繰延税金資産小計そのものが小さければ財務諸表への影響は限定的です。

逆にVA比率が中程度でも、繰延税金資産小計が大きければ評価性引当額の絶対額は大きくなります。比率に加えて、評価性引当額の絶対額、総資産・利益に対する重要性もあわせて確認してください。

Q5. なぜ優良企業でも評価性引当額がゼロにならないのですか?

連結財務諸表の税効果注記には、親会社だけでなく、収益状況や回収可能性判断が異なる複数の子会社・納税主体の金額が合算されています。

また、分類2に該当する納税主体では、解消時期を合理的に見積もれない将来減算一時差異について、原則として回収可能性がないと判断される場合があります(合理的な根拠を説明できる場合の例外あり)。

このため、グループ全体の業績が安定していても、評価性引当額が完全にゼロになるとは限りません。本記事の集計でも、日本基準・連結2,999社のうち少なくとも2,910社(97.0%)で正の評価性引当額が確認されました。

まとめ:

評価性引当額は「回収できないDTA」、比率でその会社の履歴が見える

本記事の要点をまとめます。

  • 評価性引当額とは、将来減算一時差異等に対応する税効果相当額のうち回収可能性がないとして控除した金額。回収可能性の見直しによる影響は、原則として法人税等調整額を通じて損益に反映されます。
  • 回収可能性の判断枠組み企業分類1〜5(回収可能性の適用指針)で、一般に分類番号が大きくなるほど回収可能と判断できる範囲が狭くなり、評価性引当額は膨らみます。ただしVA比率だけから企業分類は判定できず、グループ全体の回収可能性を概観する参考指標として使うのが適切です。
  • VA比率は中央値41%、四分位21〜68%。VA比率90%以上の会社も算定対象の約1割(246社)あり、日本基準・連結2,999社のうち少なくとも2,910社(97.0%)で正の評価性引当額が確認されました。
  • 読むときは、絶対水準より「同業比較」「5期推移」「前期比の増減とその理由」。評価性引当額の増減は税負担率のブレと表裏一体です。

まずは気になる会社の直近の有価証券報告書で繰延税金資産の内訳表を開き、評価性引当額とVA比率、前期比の増減を確認してみてください。同業や過年度と比べたくなったら、下の税効果ベンチマークが最短です。

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参考一次情報

※本記事の集計値は、EDINETで公表された有価証券報告書の税効果会計注記を当サイトが独自に機械抽出・集計したものです(2026年7月取得)。抽出過程で個社の値に誤差が含まれる可能性があるため、個別の数値は必ず原文をご確認ください。

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