無料の学習ツール「資本連結ラボ」の読み方ガイドです。ラボの基礎タブを上から順に、先生と生徒の会話形式で見ていきます。左の図はラボの図そのものです。重要な節の最後には、ラボで30秒だけ手を動かす小さな実習を置いています。
今日の事例
事例A P社がS社株式の70%を1,380で取得(支配獲得日のS社)
| 資本金 | 800 |
| 利益剰余金 | 400 |
| 土地(簿価 → 支配獲得日の時価) | 600 → 900 |
| その他の資産 | 1,300 |
| 負債 | 700 |
| P社の取得価額(70%) | 1,380 |
はじめに
今日の題材 ── 事例A
📍 ラボの場所:基礎タブ全体
ハルカ
先生、はじめて連結の仕訳を担当します。「投資と資本の相殺消去」と「のれん」が、どうしてもピンとこなくて…。
先生
今日は資本連結ラボの「基礎」タブを上から一緒に読もう。数字は全部、左の事例Aだよ。P社がS社の株式の70%を1,380で買って、子会社にした場面だよ。
ハルカ
S社の純資産は800+400で1,200。その70%は840だから、のれんは1,380-840で540ですか?
先生
いい線だけど、それは今日いちばん多い間違いなんだ。答えは基礎⑥で出すね。
📗 基礎 ① ラボの図
基礎 ①
連結財務諸表とは?
📍 ラボの場所:基礎タブ ①
先生
連結財務諸表は、親会社と子会社を1つの会社とみなして作る決算書。左の図の①が単純な合算、②が連結修正だよ。
迷いポイント 連結は、親会社と子会社の数字を足すだけ?
ハルカ
足し算するだけなら、Excelで合計すれば終わりですよね?
先生
足しただけだと、グループの中で重複している部分が残ってしまう。それを消すのが②の連結修正。資本連結は、そのうち親会社の投資(S社株式)と子会社の資本を消す手続なんだ。
💡 そうだったのか!
連結は「合算」+「グループ内の重複を消す」。資本連結は、親会社のS社株式と、子会社の資本を消す手続。📗 基礎 ② ラボの図
基礎 ②
なぜ「S社株式」と「S社の資本」を消すのか
📍 ラボの場所:基礎タブ ②
ハルカ
でも、S社株式はP社が実際にお金を払って買った資産ですよね。消してしまっていいんですか?
迷いポイント S社株式を消すと、グループの資産が減ってしまう?
先生
左の図を見て。S社株式は、S社という会社の中身(資産から負債を引いた純資産)の持ち分だよね。合算すると、同じ中身を「S社株式」とS社の資産の両方で数えてしまうんだ。
ハルカ
だから二重に数えた片方を消す…。S社株式と、それに対応するS社の資本を消すんですね。
先生
そうだよ。消しても財産が減るわけではなく、二度数えていた分を1回に戻すだけなんだ。
ハルカ
「消す」と聞くと、つい財産がなくなる気がしてしまいます。
先生
数え方を直しているだけだよ。
💡 そうだったのか!
合算すると、S社の中身を「株式」と「資産」で二度数えることになる。その重複を消すのが投資と資本の相殺消去。📗 基礎 ③ ラボの図
基礎 ③
いつから連結するのか(支配獲得日)
📍 ラボの場所:基礎タブ ③
ハルカ
期の途中で子会社になったら、その年の利益はどう扱うんですか?
迷いポイント 子会社になった年は、S社の1年分の利益を連結する?
先生
左の図は9月末に支配を獲得した例。連結P/Lに入るのは支配獲得日以後の6か月分、利益120だけだよ。そのうち70%の84が親会社株主、30%の36が非支配株主に帰属するんだ。
ハルカ
取得前の6か月分の利益120は、どこに行くんですか?
先生
S社の利益剰余金に含まれたまま、支配獲得日に投資と相殺されて消える。親会社は、その利益も含んだ値段で株式を買っているからね。
💡 そうだったのか!
連結P/Lに取り込むのは支配獲得日以後の利益だけ。取得前の利益は利益剰余金の中で投資と相殺される。📗 基礎 ④ ラボの図
基礎 ④
みなし取得日 ── 決算日に取得したことにできる
📍 ラボの場所:基礎タブ ④
ハルカ
11月15日に取得したら、11月15日で仮決算をしないといけないんですか?
迷いポイント 期中に取得したら、取得日で必ず仮決算が必要?
先生
前後どちらかの決算日に取得したとみなすことができる。四半期末も使えるから、左の例なら9/30か12/31だね。
先生
前の決算日を選ぶとP/Lを取り込む期間が長く(6か月)、後なら短く(3か月)なる。ただし、みなした日は原則として主要条件の合意・公表日以後でなければならないよ。
💡 そうだったのか!
期中に取得しても、前後の決算日(四半期末を含む)に取得したとみなせる。ただし、原則として公表日以後の日に限られる。⏱ 30秒だけラボで試す
- ラボの「基礎」タブ④の図で「11/15取得(公表 10/20)」を押す
👀 前の決算日9/30は公表日より前になるため「⚠ 公表日より前」と表示され、原則として選べないことがわかる。
ラボを開く ▶📗 基礎 ⑤ ラボの図
基礎 ⑤
子会社の資産・負債を時価で評価する(全面時価評価法)
📍 ラボの場所:基礎タブ ⑤
先生
支配獲得日に、S社の資産・負債を時価で評価し直す。事例Aでは土地が簿価600、時価900だから、差額300が評価差額としてS社の資本に加わるよ。
迷いポイント 時価評価するのは、親会社が持っている70%分だけ?
ハルカ
P社が買ったのは70%だから、時価評価も70%の210だけですよね?
先生
日本基準は全面時価評価法。非支配株主の分も含めて「すべて」時価で評価するんだ。だから評価差額300は、親会社210と非支配株主90に分かれるんだ。
先生
時価評価後のS社の資本は、資本金800+利益剰余金400+評価差額300で1,500。これが相殺消去の相手になるよ。
💡 そうだったのか!
子会社の資産・負債は非支配株主の分も含めてすべて時価で評価する。評価差額は親会社と非支配株主に按分される。⏱ 30秒だけラボで試す
- 「シミュレーション」タブを開き、右の「事例から始める」で「事例A」を選ぶ
- 「土地の時価」を900から600(簿価と同じ)に変える
👀 評価差額がなくなり、非支配株主持分は450 → 360、のれんは330 → 540に変わる。
ラボを開く ▶📗 基礎 ⑥ ラボの図
基礎 ⑥
投資と資本の相殺消去と「のれん」
📍 ラボの場所:基礎タブ ⑥
先生
さあ、最初の答え合わせ。左の図の①でS社の純資産の部(1,500)を取り出し、②で70%と30%に分ける。親会社の分が受け取った持分1,050だよ。
迷いポイント のれんは「支払った額-S社の帳簿上の純資産×持分」で計算する?
ハルカ
わたしは簿価の1,200で計算して、のれん540と答えてしまいました…。
先生
持分は評価差額を含んだ時価ベースの資本で計算する。1,380-1,050=330がのれんだ。簿価で計算すると、土地の含み益210までのれんに入ってしまうんだ。
先生
逆に、支払った額が受け取った持分より小さければ負ののれん。見直しをしたうえで、発生した年度の利益にするよ。
💡 そうだったのか!
のれん=支払った額-時価評価後の資本×持分比率。事例Aは1,380-1,050=330。簿価で計算すると含み益までのれんになってしまう。⏱ 30秒だけラボで試す
- 「シミュレーション」タブを開き、右の「事例から始める」で「事例A」を選ぶ
- 「取得価額」を1,380から1,000に変える
👀 のれんが330 → ▲50(負ののれん)になる。受け取った持分1,050より安く買ったため。
ラボを開く ▶📗 基礎 ⑦ ラボの図
基礎 ⑦
非支配株主持分
📍 ラボの場所:基礎タブ ⑦
先生
S社の資本1,500のうち、親会社以外の株主の分(30%)が非支配株主持分450。左の②のように、連結B/Sに表示するよ。
迷いポイント 非支配株主持分は、外部への「負債」?
ハルカ
親会社のものではないから、負債に入れるんですか?
先生
純資産の部に表示するよ。ただし、親会社の株主に帰属する「株主資本」とは区別するんだ。
先生
翌年度にS社が250の利益を上げたら、30%の75を「非支配株主に帰属する当期純利益」に振り替えて、非支配株主持分は450+75=525になるよ。
ハルカ
純資産にいるのに、株主資本とは別扱い。少し居心地が悪そうですね。
先生
親会社の株主のものではない、という線を引いているだけだよ。
💡 そうだったのか!
非支配株主持分は純資産の部に、株主資本と区別して表示する。子会社の利益のうち非支配株主の分だけ、毎年増えていく。📗 基礎 ⑧ ラボの図
基礎 ⑧
のれんの償却
📍 ラボの場所:基礎タブ ⑧
先生
のれんは、効果の及ぶ期間(原則20年以内)で償却する。事例Aは10年定額だから、毎年33ずつだね。
迷いポイント のれんの償却は、非支配株主も持分に応じて負担する?
ハルカ
S社の話だから、償却額も70:30で分けるんですよね?
先生
償却額はすべて親会社株主が負担する。のれんは親会社の投資から生まれたものだからね。それと、支配が続く間に追加取得や一部売却をしても、のれんは増えも減りもしないよ。
💡 そうだったのか!
のれんは原則20年以内で償却し、償却額は全額親会社株主が負担する。支配が続く間の持分の変動では、のれんは増減しない。⏱ 30秒だけラボで試す
- 「シミュレーション」タブを開き、右の「事例から始める」で「事例A」を選ぶ
- 「のれん償却年数」を10から5に変える
👀 翌年度の償却額が33 → 66、期末ののれんが297 → 264に変わる。
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今日のまとめ ── 迷いポイント早見表
| 迷いポイント | 答え | ラボ |
|---|---|---|
| 連結は足すだけ? | 合算+グループ内の重複を消す | 基礎① |
| S社株式を消すと資産が減る? | 二重に数えていた分を1回に戻すだけ | 基礎② |
| 取得した年は1年分の利益を連結? | 支配獲得日以後の利益だけ | 基礎③ |
| 取得日で仮決算が必要? | 前後の決算日に取得したとみなせる(原則、公表日以後) | 基礎④ |
| 時価評価は親会社の持分だけ? | 全面時価評価法。非支配株主の分も含めてすべて | 基礎⑤ |
| のれんは簿価の純資産で計算? | 評価差額を含む時価ベースの資本×持分で計算 | 基礎⑥ |
| 非支配株主持分は負債? | 純資産の部。株主資本とは区別して表示 | 基礎⑦ |
| のれん償却は非支配株主も負担? | 全額親会社株主が負担。原則20年以内 | 基礎⑧ |
参考資料
移管指針第4号「連結財務諸表における資本連結手続に関する実務指針」(旧 会計制度委員会報告第7号)/企業会計基準第22号「連結財務諸表に関する会計基準」/企業会計基準第21号「企業結合に関する会計基準」(2026年9月19日確認。ラボの根拠表示に準拠)
