MENU

連結キャッシュ・フロー計算書ラボ【設例・外貨編】|先生と一緒に図で学ぶ設例・応用⑥⑨ 換算差額・外貨建て貸付金の為替差損

連結キャッシュ・フロー計算書ラボ【設例・外貨編】|先生と一緒に図で学ぶ設例・応用⑥⑨ 換算差額・外貨建て貸付金の為替差損

無料の学習ツール「連結キャッシュ・フロー計算書ラボ」の読み方ガイドです。ラボの設例・応用タブから、外貨の設例(設例・応用⑥⑨)を1つずつ、先生と生徒の会話形式で見ていきます。各行の図はラボの図そのものです。重要な節の最後には、ラボで30秒だけ手を動かす小さな実習を置いています。

今日の事例
設例・応用⑥⑨(外貨は百万外貨、円は百万円)
設例⑥ 在外子会社の現金期首100・営業60・投資▲30・財務10・配当20
 レート前期末140・平均145・当期末150・配当時147
 → 換算差額1,140
設例⑨ P社→S社の外貨建て貸付金外貨50(前期に貸付け)
 レート前期末150 → 当期末140(円高)
 → P社の為替差損500(連結P/Lに残る)
はじめに

今日の題材 ── 設例・応用⑥⑨

📍 ラボの場所:設例・応用タブ
ハルカ
先生、外貨が出てくると、それだけで身構えてしまいます。
先生
今日の2つは、どちらも「為替の変動はキャッシュ・フローではない」という1つの考え方で解けるよ。設例⑥は在外子会社の現金の換算差額、設例⑨は連結で消した外貨建て貸付金の為替差損なんだ。
ハルカ
お金が動いていないのに、円の金額だけが動く話ですね。
先生
そうだよ。その動いた分を、どこに書くかを見ていこうか。
ラボの設例・応用タブを開きながら読むと分かりやすいですラボで開く ▶
📕 設例⑥ ステップ2
在外子会社の現金:本設例ではCFを期中平均、残高を決算時レートで換算ずれが「現金及び現金同等物に係る換算差額」14,000期首残高外貨 100× 前期末 140円+8,700営業活動外貨 60× 平均 145円▲4,350投資活動外貨 ▲30× 平均 145円▲1,490財務活動外貨 ▲10配当は 147円+1,140換算差額レートの差(下の内訳)18,000期末残高外貨 120× 当期末 150円換算差額 1,140 = 期首残高の分 +1,000 + 期中のCFの分 +200 + 配当の分 ▲60

この設例では、CFを収益・費用の換算に使う期中平均レートで換算します(基準上は、収益・費用の換算に用いたレート=期中平均または決算時のレートに準じます)。親会社への配当は発生時のレート、期首残高は前期末、期末残高は当期末のレートで換算します。

在外子会社のキャッシュ・フローの換算(外貨 → 円・百万円)
項目外貨レート円
期首の現金及び現金同等物10014014,000
営業活動によるキャッシュ・フロー601458,700
投資活動によるキャッシュ・フロー▲30145▲4,350
財務活動(配当以外)101451,450
財務活動:親会社への配当の支払▲20147▲2,940
現金及び現金同等物に係る換算差額――1,140
期末の現金及び現金同等物12015018,000
設例⑥

CFと残高を換算する ── 4つのレート

📍 ラボの場所:設例・応用タブ 設例⑥ ステップ2
ハルカ
在外子会社のCFを円に直すとき、レートが4つも出てくるんですね。
先生
表のレートの列を見て。この設例では、CFを収益・費用の換算に使う期中平均145円で換算するよ(基準上は、収益・費用の換算に使ったレート=期中平均か決算時のレートに準じるんだ)。親会社への配当は支払ったときの147円、期首残高は前期末の140円、期末残高は当期末の150円なんだ。
迷いポイント 配当だけ、なぜ支払時のレート?
ハルカ
配当も期中平均で換算したほうが、計算が楽そうです。
先生
親会社の受取配当は、受け取った日の円の金額で記録されているよね。子会社の支払を同じ日のレートで換算すれば、金額がそろって連結で消去できるんだ。親会社との資本取引は、発生時のレートで換算するよ。
ハルカ
レートが4つもあると、私の休日の予定表みたいににぎやかです。
先生
にぎやかでも、どれを何に使うかは決まっているよ。
💡 そうだったのか!
この設例では、CFは期中平均、資本取引は発生時、期首残高は前期末、期末残高は当期末のレートで換算します。基準上、CFは収益・費用の換算に使ったレート(期中平均または決算時)に準じます。
📕 設例⑥ ステップ3

換算差額は、3つの部分の合計です。

① 期首残高の分:100 ×(150 − 140)= 1,000

② 期中のCF(配当以外)の分:(60 + ▲30 + 10)×(150 − 145)= 200

③ 親会社への配当の分:20 ×(147 − 150)= ▲60

合計:1,000 + 200 + ▲60(▲はマイナス)= 1,140

3区分には入れず、「現金及び現金同等物に係る換算差額」として別に表示します。

設例⑥

換算差額の中身 ── 1,000+200+▲60

📍 ラボの場所:設例・応用タブ 設例⑥ ステップ3
ハルカ
換算差額1,140は、何でできているんですか。
先生
3つに分けられるよ。①期首残高100が140円から150円になった分1,000、②期中のCF40を平均145円で換算したけれど期末は150円の分200、③配当20を147円で払ったけれど期末は150円の分▲60なんだ。
迷いポイント 換算差額は、営業活動に入れる?
ハルカ
毎年出てくるなら、営業活動のどこかに入れたくなります。
先生
為替の変動で円の金額が増えただけで、資金が出入りしたわけではないよね。だから3区分には入れず、「現金及び現金同等物に係る換算差額」として別に表示するんだ。
💡 そうだったのか!
換算差額は3区分とは別に表示します。期首残高の分・期中のCFの分・資本取引の分に分けて説明できます。
⏱ 30秒だけラボで試す
  1. シミュレーションの「🌏 在外子会社の換算差額」で「円高になった場合」を読み込む
  2. 「換算差額」と「うち期首残高の分」を見る

👀 当期末レートが 138円に下がるので、換算差額は ▲1,380、うち期首残高の分は ▲1,200 になります。

ラボを開く ▶
📕 設例⑨ ステップ3・4
外貨建ての親子間貸付金:消去しても、P社の為替差損は連結P/Lに残るP社(円で記録)貸付金 外貨 507,500 → 7,000S社(外貨で記録)借入金 外貨 50自国通貨の債務:差損益なし外貨で貸付け(前期)連結:貸付金と借入金を消去(どちらも当期末 140円で換算)消去されずに残る:P社の為替差損 500為替差損益 ▲500 = 外貨 50 ×(140 − 150)。資金は動いていない▶ 原則:間接法で調整する為替差損 500 を加算営業活動CF 800換算差額 ▲500重要性が乏しい場合調整せず、換算差額に含める営業活動CF 300換算差額 0どちらでも現金の増減は 300(営業活動CFと換算差額の分け方だけが変わる)
連結B/S・連結P/Lでの姿(百万円)
項目P社S社(円換算)消去連結
貸付金(P社)/借入金(S社)7,0007,000相殺0
為替差損(P/L)▲50000▲500
S社が持つ外貨の現金(円換算の増減)0▲5000▲500

※S社にとっては自国通貨の借入金なので、為替差損益は生じません。消去してもP社の為替差損には打ち消す相手がないため、連結P/Lに残ります(実務指針 第45項)。

この為替差損は資金を伴わないので、税金等調整前当期純利益 300 に 500 を調整します → 営業活動CF 800。

S社が持つ外貨の現金の円換算額の変動 ▲500 は、「現金及び現金同等物に係る換算差額」に出ます(実務指針 第45項)。

設例⑨

外貨建て貸付金 ── 消去しても為替差損は残る

📍 ラボの場所:設例・応用タブ 設例⑨ ステップ3・4
ハルカ
P社がS社に外貨で50貸していて、円高で7,500が7,000になりました。500の為替差損ですね。
先生
図の赤い帯を見て。連結では貸付金7,000と借入金7,000を消すけれど、S社にとっては自国通貨の借金だから、S社に為替差益は出ないんだ。P社の為替差損500には打ち消す相手がなく、連結P/Lに残るよ。
迷いポイント 為替差損で利益が減ったら、営業CFも減る?
ハルカ
利益が500減ったのなら、営業CFも同じだけ減りそうです。
先生
為替差損は資金が動かない損失だよね。だから間接法では、税金等調整前当期純利益300に500を足し戻すんだ。営業CFは800のまま。この設例では、S社が持つ外貨の現金の円換算額が減った▲500が、換算差額に出るよ。
ハルカ
パートナーのいなくなったダンスホールで、1人で踊っている為替差損さんが少しかわいそうです。
先生
この設例では、踊りの相手はS社が持つ外貨の現金だよ。その円換算額も500減っているんだ。
💡 そうだったのか!
消去した外貨建て貸付金の為替差損益は連結P/Lに残るので、間接法で利益から加減します(実務指針 第45項)。
⏱ 30秒だけラボで試す
  1. シミュレーションの「💱 外貨建て親子間貸付金」で「円安になった場合」を読み込む
  2. 「為替差損益」と「営業活動CF」を見る

👀 今度は為替差益 500 が出て、間接法で ▲500 を調整します。営業活動CFは 800 のまま、換算差額は +500 です。

ラボを開く ▶
📕 設例⑨ ステップ5

金額が重要でなければ、この為替差損益を一括して換算差額に含めることもできます。営業活動CF 300、換算差額 0。

現金の増減はどちらも 300 で同じ。変わるのは、営業活動CFと換算差額の分け方です。シミュレーションで「円安」や「S社が前期中に使っていた場合」も確かめられます。

設例⑨

重要性が乏しい場合 ── 換算差額に一括して含める

📍 ラボの場所:設例・応用タブ 設例⑨ ステップ5
ハルカ
毎回500を足し戻すのは、手間がかかりそうです。
先生
金額が連結CF計算書に重要な影響を与えないなら、簡便的に、この為替差損益を一括して換算差額に含めることができるんだ。そのときは営業CF300、換算差額0になるよ。
迷いポイント どちらの書き方でも、現金の増減は同じ?
ハルカ
営業CFが800と300では、ずいぶん違って見えます。
先生
現金の増減はどちらも300だよ。変わるのは、営業CFと換算差額の分け方なんだ。営業CFに為替の影響が残るから、使えるのは重要性が乏しいときだけだよ。S社が借りた外貨を前期中に使っていた場合も、シミュレーションで確かめられるんだ。
ハルカ
同じ300円のお小遣いを、財布と貯金箱のどちらに入れたかで、見た目の印象が変わるのと似ていますね。
先生
入れ物が違っても、合計は300のまま。だから、どちらに入れたかを毎期そろえておくことが大事なんだよ。
💡 そうだったのか!
重要性が乏しければ、為替差損益を換算差額に一括して含めることもできます。現金の増減は同じで、営業CFと換算差額の分け方だけが変わります。
⏱ 30秒だけラボで試す
  1. シミュレーションの「💱 外貨建て親子間貸付金」で「S社が前期中に使っていた場合」を読み込む
  2. 「換算差額」と「営業活動CF」を見る

👀 S社は当期首から外貨の現金を持っていないので、換算差額は 0。それでも為替差損500は連結P/Lに残るので、営業活動CFは 800(足し戻しあり)です。

ラボを開く ▶

今日の内容を、ラボで確かめてみませんか?

この記事の図は、すべて連結キャッシュ・フロー計算書ラボの画面そのものです。設例タブを開けば、同じ図を見ながら、ステップを1つずつ読み返せます。

連結キャッシュ・フロー計算書ラボを開く ▶

今日のまとめ ── 設例ごとの結論

設例迷いポイント答え
設例⑥ ステップ2配当も期中平均で換算?支払時のレート。親会社の受取と金額がそろい、消去できる
設例⑥ ステップ3換算差額は営業活動?3区分とは別に表示(1,000+200+▲60=1,140)
設例⑨ ステップ3・4消去した貸付金の為替差損で営業CFが減る?資金は動かないので間接法で500を加算(営業CF800)
設例⑨ ステップ5重要性が乏しいときは?換算差額に一括して含めてよい(営業CF300・換算差額0)
おわりに

今日のふりかえり

先生
今日のまとめだよ。為替の変動はキャッシュ・フローではない。外貨の現金の円換算額の変動は換算差額に、消去した外貨建て貸付金の為替差損益は間接法で調整するんだ。
ハルカ
旅行用に残しておいた外貨の小銭、円高のニュースを見るたびに少しずつ価値が減っている気がします。
先生
円に直した金額は動くけれど、小銭の枚数は1枚も減っていないよね。それが「換算差額はCFではない」ということなんだ。
ハルカ
じゃあ、小銭入れの中身は無事なんですね。安心して、次の旅行の予定を換算差額に含めておきます。
先生
予定は資金の範囲に入らないけれど、楽しみにしておくといいよ。次の非資金取引と組織再編編では、株式で払う取引と合併・事業譲受を追っていこうか。

参考資料

企業会計審議会「連結キャッシュ・フロー計算書等の作成基準」第二の四・第三の三/移管指針第6号「連結財務諸表等におけるキャッシュ・フロー計算書の作成に関する実務指針」第15項〜第17項・第42項・第43項・第45項(企業会計基準委員会)。ラボの設例の数値は、実務指針の設例と同じ種類の論点を独自の数値で組み立てたものです。
このシリーズの記事:基礎編/応用編/設例・相殺消去編(設例・基礎①〜④)/設例・営業CFの作り方編(設例・基礎⑤⑥・応用⑧)/設例・連結範囲の変動と調整編(設例・応用①〜⑤)/設例・非資金取引と組織再編編(設例・応用⑦⑩⑪)

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

TaxJudge編集部|公認会計士・税理士(実務25年)による企画・監修。会計基準・税法・裁決・有価証券報告書などの一次情報をもとに、検索できるデータベースと計算・判定・文書作成ツールを制作しています。