令和2年(2020年)に出された徴収関係の裁判例30件を整理した年度版インデックスです。更正処分など「課税の当否」を争う課税関係判決とは別に、滞納処分・差押え・取立訴訟・第二次納税義務・詐害行為取消し・納税義務の承継など「徴収」をめぐる争いだけを集めています。各事案名から検索ツールで要旨を開けます。
収録30件のうち国側勝訴方向が28件、納税者側が一部認容を得たのは2件(いずれも取立訴訟での相殺の対外的効力)にとどまりました。争点は「差押債権の取立訴訟(債権譲渡担保・供託)」「第二次納税義務・連帯納付義務」「詐害行為取消し・債権者代位」「徴収権の消滅時効・差押禁止債権」に集約されます。
1. 数字で見る令和2年の徴収関係判決
課税関係(令和2年は納税者の一部以上勝率が約8%)と同様、徴収関係も納税者勝訴は限られます。多くが滞納処分の適法性や取立訴訟を争うもので、勝ち負け以上に「どの論点でどう判断されたか」を確認する実務的価値が中心になります。
2. 徴収関係でよく争われた論点(令和2年)
差押債権の取立訴訟・取立権の確認(債権譲渡担保・供託)
令和2年の徴収関係で最も多いのが差押債権の取立訴訟・取立権の確認です。債権譲渡担保や譲渡禁止特約と供託金還付請求権(順号2020-13・20・23・29)、立替金支払債権の取立てと相殺の対外的効力(2020-14・24/いずれも一部認容)など、対象債権ごとに論点が分かれました。
第二次納税義務・連帯納付義務(徴収法39条・相続税法34条)
第二次納税義務では、債務の免除に基因する責任と現存利益(徴収法39条/順号2020-25)、相続税法34条の連帯納付義務と受けた利益・代償債権(2020-4)、租税債権存在確認と第二次納税義務(2020-26)が争われました。
詐害行為取消し・債権者代位による徴収保全
滞納者の責任財産を確保するため、詐害行為取消し(租税債権を被保全債権とする無資力要件/順号2020-11)や債権者代位(建物所有権の帰属・所有権留保/2020-5・30)が用いられた事案です。
徴収権の消滅時効と差押禁止債権
徴収権の消滅時効・更新(順号2020-2・26)に加え、年金が振り込まれた預金口座の差押禁止債権該当性(2020-15・28)が争点になりました。差押禁止の趣旨と、預金債権に変わった後の扱いが問題となります。
公売・配当・訴えの利益・審査請求前置(訴訟要件)
公売公告・売却決定・配当処分の適否(順号2020-9・27)や、訴えの利益・審査請求前置・確認の利益といった訴訟要件(2020-16・17・19・21)も数多く争われました。
3. 代表的な事例
令和2年の徴収関係判決から、論点ごとの代表例をピックアップしました(先頭は一部認容の事例)。
差し押さえた療養費立替金支払債権の取立てと相殺の対抗
大阪地方裁判所・令和2年5月12日(控訴)
国が、滞納する整骨院経営会社の協同組合に対する療養費立替金支払債権を差し押さえ取り立てた事案。組合が主張する会費・返戻金・貸金等との相殺の効力等が争われ、取立請求の一部が認容された事例。
債務免除と第二次納税義務(徴収法39条)・受けた利益の現存
東京地方裁判所・令和2年11月6日(控訴)
代表取締役らから求償債権の債務免除を受けた会社に対し、国が徴収法39条の第二次納税義務の告知をした事案。債務免除は同条の「債務の免除」に当たり受けた利益は現存するとして、告知処分を適法とし請求を棄却した事例。
滞納会社による唯一の資産の売買・相殺と詐害行為取消
東京地方裁判所・令和2年3月19日(確定)
国が、消費税等を滞納する会社が唯一の資産である区分所有建物を筆頭株主に売却し売買代金債権を貸金債権と相殺して責任財産を喪失させた行為につき、詐害行為取消を求めた事案。売買・相殺は詐害行為に当たるとして取消しを認容した事例。
相続税法34条の連帯納付義務と代償債権による「受けた利益」
大阪高等裁判所・令和2年2月7日(上告)
遺産分割で代償債権を取得した控訴人らが、他の相続人の相続税につき連帯納付義務を負うとして充当・徴収を受けた事案。代償債権の取得により相続税法34条の「受けた利益」があり、現実の代償金支払は不要で、時効も中断しているとして、控訴を棄却した事例。
公売公告の適法性と遺留分減殺・理由提示・交付要求解除
大阪地方裁判所・令和2年3月12日(控訴)
相続税滞納者が、自己が共有持分権者にすぎないのに単独所有者として公売公告がされた等として取消しを求めた事案。遺留分減殺の登記は差押登記に劣後し対抗できず、相続税額は申告で確定し、理由提示にも不備はなく交付要求解除も国税消滅を意味しないとして、請求を棄却した事例。
4. 令和2年 徴収関係判決 全30件
全30件の一覧(順号順)を開く/閉じる
5. 関連まとめ
まとめ
令和2年の徴収関係判決30件は、納税者側が主張を通したのは一部認容2件という結果でした。徴収局面では国側勝訴方向が中心ですが、差押債権の取立訴訟(債権譲渡担保・供託)、第二次納税義務・連帯納付義務、詐害行為取消し、徴収権の消滅時効・差押禁止債権といった論点が、滞納者側の防御の分かれ目になります。

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