移転価格税制ラボ【算定方法編】|先生と一緒に学ぶ参考事例集と算定方法の選び方
無料の学習ツール「移転価格税制ラボ」の読み方ガイドです。移転価格税制ラボの「算定方法を選ぶ」モードを、先生と生徒の会話形式で見ていきます。各行の図はラボの画面です。重要な節の最後には、ラボで30秒だけ手を動かす小さな実習を置いています。
🧭 6つの算定方法

はじめに
今日の題材 ── 6つの算定方法
📍 ラボの場所:「算定方法を選ぶ」モード > 0 まず読む
ハルカ
基礎編で、T社の利益率をレンジとくらべました。でも、そもそも「利益率でくらべる」こと自体、誰が決めたんですか。
先生
いい質問だね。独立企業間価格を出す方法は6つあって、利益率でくらべるのはそのうちの取引単位営業利益法(TNMM)なんだ。図のとおり、値段をくらべるCUP法、粗利率のRP法、原価に対する利益率のCP法、営業利益率のTNMM、利益を合算して分ける利益分割法、将来の利益を割り引くDCF法だよ。
ハルカ
オレンジの箱が「くらべる場所」なんですね。方法ごとに、くらべる場所が違うんだ。
先生
そういうことだね。今日はこのページの「算定方法を選ぶ」モード(参考事例集ナビ)を使って、どうやって1つに選ぶのかを見ていこうか。
移転価格税制ラボの「算定方法を選ぶ」モードを開きながら読むと分かりやすいです開く ▶
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3つの質問 ── どこに・どこまで・どちらを
📍 ラボの場所:「算定方法を選ぶ」> 0 まず読む
ハルカ
6つもあると、どれを使えばいいか迷います。ランチのメニューなら、6つあってもすぐ決められるんですけど。
先生
選び方の道筋は、図の3つの質問なんだ。①くらべられる第三者の取引はどこにあるか(内部・外部・どこにもない)、②どこまで数字が分かるか(値段・粗利・営業利益)、③どちらの会社の利益率を見るか(機能が単純なほう)だよ。
迷いポイント CUP法がいちばん正確だから、まずCUP法を使わなければならない?
ハルカ
値段を直接くらべるCUP法がいちばん正確そうなので、いつもCUP法から使うんですよね。
先生
方法に優劣の順番はないんだ。その事案でいちばん当てはまる方法を選ぶ最適法ルール(事務運営指針4-1)だよ。ただ、候補が複数あって、CUP法の比較可能性が十分ならCUP法を選ぶ。これが4-2の整理なんだ。
💡 そうだったのか!
方法に優劣の順番はなく、その事案で最も適切な方法を選びます。比較可能性が十分なら値段を直接くらべるCUP法が優先されます。
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事例1・2・3 ── 同じ形の取引で、結論が3通りに割れる
📍 ラボの場所:「算定方法を選ぶ」> 0 まず読む(事例1・2・3)
ハルカ
図の3つの事例は、どれも「関連者から買って、第三者に売る」同じ形の取引ですね。
先生
そう。それなのに結論はCUP法・RP法・CP法に分かれるんだ。分かれ道は比較対象がどこにあるかとどこまで数字が取れるかだけなんだよ。商品が同じなら値段でくらべてCUP法、似ているだけで相手の粗利が分かればRP法、相手の損益は分からないけれど自社の原価と粗利が分かればCP法だね。
迷いポイント 同じ形の取引なら、同じ方法になる?
ハルカ
取引の形が同じなら、方法も同じになると思っていました。
先生
形より、手に入る情報で決まるんだ。だから参考事例集は、ほとんどが「この情報があるから、この方法」という分岐の練習問題になっているよ。
ハルカ
「独立価格比準法」「再販売価格基準法」…。漢字が7文字以上続くと、それだけで身構えてしまいます。
先生
CUP法・RP法・CP法と略して呼べば少し楽になるよ。中身は「値段」「買い手の粗利」「売り手の原価+利益」なんだ。
💡 そうだったのか!
同じ形の取引でも、比較対象の所在と入手できる情報の粒度で、CUP法・RP法・CP法に結論が割れます。
⏱ 30秒だけラボで試す
- 「算定方法を選ぶ」→ 0 まず読む の「事例1・2・3」まで進む
- ①「商品は同じ?」を 似ているだけ に変える
- 続けて②「相手の粗利まで分かる?」を 分かる(有報などにある) に変える
👀 結論が CUP法(事例1)→ CP法(事例3) → RP法(事例2) と入れ替わり、分岐図の光る道も変わります。
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1 選ぶ
セレクター ── スイッチ1つで候補が入れ替わる
📍 ラボの場所:「算定方法を選ぶ」> 1 選ぶ
ハルカ
「1 選ぶ」のタブでは、何ができるんですか。
先生
取引の種類を選んで、その取引で効く質問に答えると、参考事例に照らして最も近い方法が有力候補として出るんだ。上の画面は、参考事例の条件の読み込みで事例2をセットしたところで、候補は再販売価格基準法(RP法)だよ。
迷いポイント 候補が出たら、それで方法は決まり?
ハルカ
候補が出たら、それをそのまま申告に使えばいいですよね。
先生
これは道案内なんだ。参考事例集自身も「類似の事例でも前提条件が異なれば取扱いが異なり得る」としているよ。下の画面のように、データの粒度を「営業利益まで」に変えるだけで候補はTNMMに入れ替わる。前提を1つずつ確かめるのが大事なんだ。
ハルカ
スイッチ1つで答えが入れ替わるなんて、少し怖いです。
先生
その怖さが分かれば十分だよ。どのスイッチで入れ替わるかが、ローカルファイルに書く「方法を選んだ理由」そのものなんだ。
💡 そうだったのか!
候補は前提条件で入れ替わります。どの条件で入れ替わるかを確かめることが、方法を選んだ理由の説明になります。
迷いポイント 日本の会社は、いつも売る側?
ハルカ
④「機能が単純なのはどちらか」で日本の会社を選んだら、それは売る側のことですよね。
先生
そうとは限らないんだ。海外の関連会社から仕入れて国内で売る、輸入の取引もあるよね。だから「④-2 日本の会社は売る側?買う側?」にも答えるようにしてあるんだ。単純な側が買い手なら買い手の粗利率を見るRP法、売り手なら売り手の原価に対する利益率を見るCP法が候補になるよ。ただし買い手が仕入れた物を製造・加工して売るなら、RP法はそのままでは使えない(事例4-1)。⑤で「工場を持つ製造販売会社」を選ぶと、RP法は「可能性は低い」に下がるんだ。
💡 そうだったのか!
単純な側が買い手(再販売)ならRP法、売り手ならCP法が候補になります。買い手が製造・加工するならRP法はそのままでは使えません。日本の会社が売る側か買う側かも、前提条件の一つです。
⏱ 30秒だけラボで試す
- 「算定方法を選ぶ」→ 1 選ぶ を開く
- 「参考事例の条件を読み込む」で 事例2(RP法) を選ぶ
- ⑦「どこまで数字が分かるか」を 営業利益まで分かる に変える
👀 有力候補が 再販売価格基準法(RP法)→ 取引単位営業利益法(TNMM) に変わり、「データの粒度を変えたら入れ替わりました」と表示されます。
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🧭 2 引く ナビの画面

2 引く
31事例を引く ── 決め手と前提条件
📍 ラボの場所:「算定方法を選ぶ」> 2 引く
ハルカ
「2 引く」には、参考事例集の事例が並んでいるんですね。
先生
国税庁の参考事例集(移転価格事務運営要領の別冊)の31事例を、前提条件の枝で分けて38件にしてあるんだ。カードには「何が問われ、どの方法になったか」と決め手が1行で書いてあるよ。事例1なら「同じ売手が第三者にも同種の商品を売っている → 値段を直接くらべる」だね。
迷いポイント 参考事例集の結論は、条文と同じように必ず当てはまる?
ハルカ
参考事例集に載っている結論なら、うちの会社にもそのまま当てはまりますよね。
先生
事例は「こういう前提ならこう考える」という例なんだ。前提条件が1つ違えば結論も変わり得るから、カードの「詳しく」で前提条件を開いて、自社とどこが同じでどこが違うかを見比べてね。
💡 そうだったのか!
参考事例集は31事例(枝を分けて38件)。結論より「決め手」と「前提条件」を自社とくらべて読みます。
🧭 3 実例 ナビの画面

3 実例
裁決・判決 ── 型が現実でどう判断されたか
📍 ラボの場所:「算定方法を選ぶ」> 3 実例
ハルカ
「3 実例」には、裁決や判決が並んでいますね。
先生
参考事例集の「型」が、実際の争いでどう使われたかを見るタブなんだ。図の裁決は、子会社の社債に付けた保証の保証料が争われたもので、課税庁は格付の差から保証料を計算する独自の算式を使ったんだよ。
迷いポイント 理論的に正しい計算式なら、それで「準ずる方法」になる?
ハルカ
正直に言うと、理屈がしっかりした計算式なら、それで押し切れると思っていました。
先生
審判所は、その算式で値段が決まった実際の取引が市場に無く、比較可能性を検討できないとして否定したんだ。同じ時期に銀行が行った社債保証16件の料率がすべて0.1%だったことから、それを比較対象にして処分の一部を取り消したよ。理屈より、実際の第三者間の取引が示せるかが大事なんだ。
💡 そうだったのか!
理論的な算式でも、それで価格が決まった実際の第三者間取引が示せなければ比較対象になりません。保証のような役務も対象です。
🧭 + 絞る ナビの画面

+ 絞る
ワークベンチ ── 比較対象を絞り込む
📍 ラボの場所:「算定方法を選ぶ」> + 絞る
ハルカ
基礎編のT社のレンジ2.1%〜5.0%は、どうやって作るんですか。
先生
データベースから業種コードで候補を集めて、規模や研究開発費の割合、輸出の割合などの基準で順に除いていくんだ。図では母集団400社が、定量的な基準と定性的な基準で25社まで絞られているよ。
迷いポイント 比較対象が4社以上あれば、四分位レンジは必ず使える?
ハルカ
25社も残ったなら、四分位レンジを使っていいですよね。
先生
数だけでは決まらないんだ。差異の調整をしてもなお定量的に把握しにくい差異が残っていて、その影響が軽微である、などの要件を満たすときに使えるよ(事務運営指針4-5・4-6)。比較対象の選び方と調整の妥当性は、ローカルファイルの2号の項目で説明するところなんだ。
💡 そうだったのか!
比較対象は母集団から基準で絞り込みます。四分位レンジは数だけでなく、差異の調整などの要件を満たすときに使えます。
今日の内容を、ラボで確かめてみませんか?
この記事の図は、移転価格税制ラボの「算定方法を選ぶ」モードの画面です。同じページで「算定方法を選ぶ」を開けば、実際に操作しながら読み返せます。
「算定方法を選ぶ」を開く ▶今日のまとめ ── 迷いポイント早見表
おわりに
今日のふりかえり
先生
今日のまとめだよ。算定方法は6つで、優劣の順番はなく、その事案で最も適切なものを選ぶ。決め手は比較対象がどこにあって、どこまで数字が取れるか。候補は前提1つで入れ替わるから、その条件が説明の中身なんだ。
ハルカ
基礎編では「レンジに入っているか」だけを見ていました。今日、そのレンジがどの方法から出てきた数字なのかを、初めて自分で説明できる気がします。
先生
それが大事なつながりだね。一つ足すと、方法を選んだ理由は、選ばなかった方法の理由とセットで書くと強くなるんだ。
ハルカ
では、「選ばなかった方法リスト」も作ります。リストだけは得意なので。
先生
そのリストは、そのままローカルファイルの材料になるよ。次のローカルファイル作成編では、16項目を順に埋めて草案にするところを見ていこうか。
参考資料
租税特別措置法66条の4(第6項・第7項・第12項・第14項・第17項・第18項)・66条の4の2・66条の4の4・66条の4の5/同施行規則22条の10・22条の10の4・22条の10の5/移転価格事務運営要領(事務運営指針)/国税庁「移転価格税制に係る文書化制度(FAQ)」(令和6年6月)・「ローカルファイル作成に当たっての例示集」(令和2年6月)・「同時文書化対応ガイド」・「移転価格税制の適用に当たっての参考事例集」/OECD移転価格ガイドライン第5章。ラボと記事の数値はすべて独自の学習用で、実際の申告・文書の作成には使えません。
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この記事を書いた人
TaxJudge編集部|公認会計士・税理士(実務25年)による企画・監修。会計基準・税法・裁決・有価証券報告書などの一次情報をもとに、検索できるデータベースと計算・判定・文書作成ツールを制作しています。