資産除去債務ラボ【設例・見積りの変更と使用の都度編】|先生と一緒に図で学ぶ設例4・5 増加と減少の割引率・使用の都度発生
無料の学習ツール「資産除去債務ラボ」の読み方ガイドです。ラボの設例タブから、見積りの変更と使用の都度発生の設例(設例4・5型と応用7)を1つずつ、先生と生徒の会話形式で見ていきます。登場する会社と設例の数値はすべて架空の例です(原典の設例の数値は使っていません)。解説は公認会計士・税理士が監修しています。各行の図はラボの図そのものです。重要な節の最後には、ラボで30秒だけ手を動かす小さな実習を置いています。
📘 設例・基礎3 ラボの画面
はじめに
設例4・5型と応用7 ── 見積りが変わるとき、増えるとき
📍 ラボの場所:設例・基礎タブ 基礎3 ステップ1
ハルカ
先生、今日は見積りが変わる設例ですね。基礎3は 2,000 が 2,400 に増えて、そのあと 1,800 に減ります。
先生
そう。増えたときと減ったときで、使う割引率が違うのが今日の山場なんだ。後半は、使うたびに債務が生まれる応用2も見ていくよ。
ハルカ
割引率が2つも3つも出てきそうで、もう少し身構えています。
先生
増加はその時点の率、減少は計上したときの率。軸はこの2本だけだから、順に追っていこうか。
設例・基礎タブの基礎3を開きながら読むと分かりやすいですラボで開く ▶
📘 設例・基礎3 ラボの画面
🧾 見積りの増加
2年目末:見積りの増加(その時点の割引率 1%)| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|
| 有形固定資産(設備) | 388 | 資産除去債務 | 388 |
設例・基礎3
2年目末の増加 ── 増えた 400 は、その時点の 1% で 388
📍 ラボの場所:設例・基礎タブ 基礎3 ステップ3
ハルカ
2年目末に、残り3年の見積りが 2,000 から 2,400 に増えました。増加分 400 を 1% で割り引いて 388 です。
先生
その 388 を、資産除去債務と設備の両方に加えるんだ。増えた部分は、新しい負債が生まれたのと同じだと考えるんだよ(第53項)。
迷いポイント 増えた 400 も、当初の 1.5% で割り引く?
ハルカ
同じ設備の同じ債務なので、当初と同じ 1.5% で割り引くのが筋だと思っていました。
先生
増加分にはその時点の割引率を使うんだ(第11項)。当初分は 1.5% のまま、増加分は 1% という2つの層になるよ。
ハルカ
同じ債務なのに、後から入った 400 だけ別の名札を付けているんですね。
💡 そうだったのか!
見積りが
増加したら、増加分は
その時点の割引率で新しい層として計上します。当初分の率は変えません(第11項)。
📘 設例・基礎3 ラボの画面
🧾 見積りの減少
3年目末:見積りの減少| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|
| 資産除去債務 | 583 | 有形固定資産(設備) | 583 |
設例・基礎3
3年目末の減少 ── 1,800 を加重平均の 1.42% で割り引き直して ▲583
📍 ラボの場所:設例・基礎タブ 基礎3 ステップ4
ハルカ
3年目末に、残り2年の見積りが 1,800 に減りました。その時点の割引率は 2% ですね。
先生
減少のときは、その時点の 2% は使わないんだ。1,800 を加重平均の 1.42% で割り引くと 1,750。変更前の 2,333 との差 ▲583 が調整額だよ。
迷いポイント 減ったときも、その時点の 2% で割り引く?
ハルカ
増加がその時点の率なら、減少もその時点の率でそろえる方が分かりやすいと思いました。
先生
減少分は負債を計上したときの率を使うんだ(第11項)。この設例のように、どの層が減ったか特定できないときは、加重平均した率を使うんだよ。
💡 そうだったのか!
見積りが
減少したら、
計上したときの割引率を使います。特定できなければ
加重平均の率(1.42%)で割り引き直します(第11項なお書き)。
⏱ 30秒だけラボで試す
- リンクからシミュレーション「取得から除去まで」を開く(設例5型の数字)
- 「減少分の割引率」を「特定できない(加重平均の率)」から「特定できる(直近の増加分の層から)」に変える
👀 3年目の調整額が ▲583 → ▲586 に変わります。最終の債務 1,800 と費用の合計 1,800 は変わりません。
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📘 設例・基礎3 ラボの画面
① 認識② 算定③ 両建て④ 費用配分⑤ 見直し・履行
| 期首の債務 | 時の経過(利息費用) | 見積りの変更 | 期末の債務 | 除去費用の償却 |
|---|
| 計上時 | | | | 1,857 | |
| 1年目 | 1,857 | 27 | | 1,884 | 371 |
| 2年目 | 1,884 | 29 | 388 | 2,301 | 372 |
| 3年目 | 2,301 | 32 | ▲583 | 1,750 | 501 |
| 4年目 | 1,750 | 25 | | 1,775 | 209 |
| 5年目 | 1,775 | 25 | | 1,800 | 209 |
| 合計 | | 138 | ▲195 | | 1,662 |
当初分 1,857 は 5年、増加分 388 は残り 3年、減少分 ▲583 は残り 2年で配分(プロスペクティブ)。
合計:利息費用 138+償却 1,662=1,800(最終の見積額)。
第10項第50・51項
設例・基礎3
償却の配分 ── 変更分は残りの年数で
📍 ラボの場所:設例・基礎タブ 基礎3 ステップ5
ハルカ
除去費用の償却は 371、372 のあと、3年目が 501、4年目と5年目が 209 です。
先生
増加分 388 は残り3年、減少分 ▲583 は残り2年で配分しているからなんだ。変更の影響は、変更した期から先に反映するよ(第10項)。
迷いポイント 見積りが変わったら、過去の償却もさかのぼって直す?
ハルカ
最初から 2,400 だったら、と計算し直して、1年目と2年目の償却も修正するのかと思っていました。
先生
過去の期は直さないんだ。変更分は残りの年数で配分するよ。合計は利息費用 138 と償却 1,662 で 1,800、最終の見積額にきちんと一致するんだ。
ハルカ
減った 583 が、残りの2年に毎年少しずつ届くんですね。未来の自分へのお小遣いみたいです。
先生
お小遣いではなく、多く載せた除去費用を残りの年数で戻しているだけだよ。
💡 そうだったのか!
見積りの変更は
プロスペクティブ。過去の償却は直さず、増加分・減少分を
残りの年数で配分します。合計は最終の見積額と一致します。
📕 設例・応用7 ラボの画面
① 認識② 算定③ 両建て④ 費用配分⑤ 見直し・履行
変更後の債務 = 1,100 ÷ (1+2.13%)3 ≒ 1,033 → 調整額 ▲282
以後の時の経過も 2.13% で計算
| 特定できる(直近の層から) | 特定できない(加重平均) |
|---|
| 減少による調整額 | ▲291 | ▲282 |
| 以後の利息費用の合計 | 76 | 67 |
| 費用の総額(利息+償却) | 1,100 | 1,100 |
過去に増加があり、減少部分に使う率を特定できないときは加重平均した割引率(第11項なお書き)。適用指針の設例5と同じく、変更後の見積総額をその率で割り引き直し、以後の時の経過もその率で計算する。
どちらでも費用の総額は最終の見積額 1,100 で同じ。違うのは調整額と、その後の利息費用・償却の配分。
第11項
設例・応用7
減少部分の率を特定できる・できない ── ▲291 と ▲282
📍 ラボの場所:設例・応用タブ 応用7 ステップ2・3
ハルカ
応用7は、3年目に増えた工事の一部が5年目に不要になった設例ですね。減ったのが、どの層か分かっています。
先生
そう。特定できるなら、その層の率 1% で減らすから調整額は ▲291。特定できなければ加重平均の 2.13% で割り引き直して ▲282 になるんだ。
迷いポイント 特定できるときでも、加重平均の率を使っていい?
ハルカ
加重平均の方が計算は1本で済むので、特定できても加重平均で統一したくなります。
先生
原則は、減少部分に対応する計上時の率なんだ。加重平均は、特定できないときの方法だよ。どちらでも費用の総額 1,100 は同じで、違うのは調整額と、その後の配分なんだ。
💡 そうだったのか!
減少部分の率を
特定できるならその層の率、特定できないときに
加重平均の率を使います。費用の総額は同じで、配分が変わります。
⏱ 30秒だけラボで試す
- リンクからシミュレーションを開く(プリセット「減少部分の割引率を特定できる(直近の層から)」)
- 「減少分の割引率」を「特定できない(加重平均の率)」に変える
👀 5年目の調整額が ▲291 → ▲282 に変わります。費用の合計 1,100 は変わりません。
ラボを開く ▶
📕 設例・応用2 ラボの画面
🧾 1年目末
1年目末:減価償却| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|
| 減価償却費 | 1,070 | 減価償却累計額 | 1,070 |
1年目末:使用によって発生した資産除去債務(いったん資産に計上)| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|
| 有形固定資産(設備) | 60 | 資産除去債務 | 60 |
1年目末:同じ期間に同額を費用処理(第8項なお書き)| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|
| 減価償却費 | 60 | 減価償却累計額 | 60 |
設例・応用2
使用の都度発生 ── 毎期 60 を計上し、同じ期に費用処理
📍 ラボの場所:設例・応用タブ 応用2 ステップ3
ハルカ
応用2は、設備を動かすたびに土地が汚れて、除去の支出が毎期 60 ずつ増える設例ですね。
先生
そう。取得時に計上するのは、その時点で発生している 1,500 だけなんだ。毎期の 60 は、発生した期に負債と資産に計上するよ(第8項)。
迷いポイント 使ううちに増える 600 も、取得時にまとめて計上する?
ハルカ
10年で合計 600 と分かっているなら、最初にまとめて計上した方がすっきりすると思いました。
先生
まだ使っていない分は、まだ義務が生じていないんだ。だから発生した期ごとに計上するよ。この設例は、計上した期にそのまま同額を費用にするなお書きの方法を採っているんだ。
ハルカ
私の部屋と同じで、使った分だけ片づけの宿題が増えていくんですね。
先生
その宿題をその年のうちに片づけるのが、なお書きの方法だよ。
💡 そうだったのか!
使用の都度発生する債務は、
発生した期ごとに負債と資産に計上します。なお書きの方法なら、
同じ期間に同額を費用処理します(第8項)。
📕 設例・応用2 ラボの画面
① 認識② 算定③ 両建て④ 費用配分⑤ 見直し・履行
| 年 | 原則:費用 | なお書き:費用 |
|---|
| 1年目 | 1,070 | 1,130 |
| 2年目 | 1,077 | 1,130 |
| 3年目 | 1,084 | 1,130 |
| 4年目 | 1,093 | 1,130 |
| 5年目 | 1,102 | 1,130 |
| 6年目 | 1,115 | 1,130 |
| 7年目 | 1,130 | 1,130 |
| 8年目 | 1,150 | 1,130 |
| 9年目 | 1,179 | 1,130 |
| 10年目 | 1,300 | 1,130 |
| 合計 | 11,300 | 11,300 |
原則は、各期の発生分を残存耐用年数で配分するので、費用が後半に偏る(第47項)。合計は同じ。
シミュレーション「使用の都度発生」で割引率を入れて試せる。
第8項第47項
設例・応用2
原則となお書きを比べる ── 1年目 1,070 と 1,130、合計はどちらも 11,300
📍 ラボの場所:設例・応用タブ 応用2 ステップ4
ハルカ
原則だと1年目の費用は 1,070 で、最後の10年目が 1,300。なお書きは毎年 1,130 で平らです。
先生
原則は、各期の発生分を資産に計上して、残りの耐用年数で償却するんだ。だから発生分の償却が後半に積み上がるよ(第47項)。
迷いポイント どちらを選ぶかで、費用の合計も変わる?
ハルカ
後半に費用が寄る原則の方が、合計も大きくなりそうに見えます。
先生
合計はどちらも 11,300 なんだ。変わるのは各期への配分だけだよ。選んだ方法は、毎期同じように使い続けることになるんだ。
💡 そうだったのか!
原則(残りの耐用年数で配分)となお書き(同じ期間に費用処理)は、
合計は同じで配分だけが違います。
⏱ 30秒だけラボで試す
- リンクからシミュレーション「使用の都度発生」を開く(設例4型の数字)
- 「使用の都度発生する分」を「同じ期間に費用処理」から「残存年数で配分(原則)」に変える
👀 1年目の費用が 1,130 → 1,070 に下がります。費用の合計 11,300 は変わりません。
ラボを開く ▶
今日の内容を、ラボで確かめてみませんか?
この記事の図は、すべて資産除去債務ラボの画面そのものです。設例タブを開けば、同じ図を見ながら、ステップを1つずつ読み返せます。
資産除去債務ラボを開く ▶今日のまとめ ── 設例ごとの結論
おわりに
今日のふりかえり
先生
今日のまとめだよ。見積りの増加はその時点の率、減少は計上したときの率。特定できなければ加重平均の率を使う。どれも過去は直さず、残りの年数で配分する。この3つを持ち帰ってほしいんだ。
ハルカ
最初は割引率がたくさん出てきて混乱しましたが、新しく生まれた債務か、前からある債務の取り消しか、で考えると、どの率を使うか自分で説明できました。
先生
その言い換えができれば、設例の数字が変わっても迷わないよ。
ハルカ
加重平均の率を電卓で出すとき、1.42% と 1.417% のどちらで割るかで、10分くらい悩みました。
先生
端数の扱いを決めて続けるのも、実務の大事な判断なんだ。次の賃借建物とリース編では、敷金の簡便法と使用権資産への加算を見ていこうか。
参考資料
企業会計基準第18号 第8・10・11項(見積りの変更・使用の都度発生)、第46・47・50〜53項(結論の背景)、適用指針第21号 設例4・5。企業会計基準第18号「資産除去債務に関する会計基準」(2008年3月31日公表、2024年9月13日改正)、企業会計基準適用指針第21号「資産除去債務に関する会計基準の適用指針」(2011年3月25日改正。設例1〜8)、企業会計基準第34号「リースに関する会計基準」・企業会計基準適用指針第33号「リースに関する会計基準の適用指針」(使用権資産との関係)。基準確認日:2026年10月12日。ラボの設例は、原典の設例1〜8と同じパターンを独自の数値で組み立てたものです(原典の数値は画面に出していません)。
このシリーズの記事:基礎編/応用編/設例・取得から除去と算定編(設例1〜3)/設例・賃借建物とリース編(設例6・使用権資産)/設例・注記と経過措置編(設例7-1・7-2・8)
この記事を書いた人
TaxJudge編集部|公認会計士・税理士(実務25年)による企画・監修。会計基準・税法・裁決・有価証券報告書などの一次情報をもとに、検索できるデータベースと計算・判定・文書作成ツールを制作しています。