令和3年(2021年)の徴収関係判決まとめ|消滅時効・取立て・訴えの利益33件

令和3年(2021年)に出された徴収関係の裁判例33件を整理した年度版インデックスです。更正処分など「課税の当否」を争う課税関係判決とは別に、滞納処分・差押え・取立訴訟・第二次納税義務・詐害行為取消し・納税義務の承継など「徴収」をめぐる争いだけを集めています。各事案名から検索ツールで要旨を開けます。

結論:令和3年の徴収関係で、納税者側が主張を通したのは2件のみ。
収録33件のうち国側勝訴方向が31件、納税者側は全部勝訴1件(東京高裁・国税徴収法39条「受けた利益の額」)と一部認容1件(大阪地裁堺支部・取立訴訟)にとどまりました。争点は「徴収権の消滅時効」「訴えの利益・不服申立前置」「差押債権の取立訴訟」「詐害行為取消し」に集約されます。

1. 数字で見る令和3年の徴収関係判決

33
収録件数
2
納税者側が勝った件数
31
国側勝訴方向
0
却下・訴えの利益なし
20
地方裁判所
9
高等裁判所
4
最高裁判所
15
確定(残り18件は上訴等)

課税関係(令和3年は納税者の一部以上勝率が約5%)と同様、徴収関係も納税者勝訴は限られます。多くが滞納処分の適法性や徴収権の時効を争うもので、勝ち負け以上に「どの論点でどう判断されたか」を確認する実務的価値が中心になります。

2. 徴収関係でよく争われた論点(令和3年)

徴収権の消滅時効と督促・承認・更新

令和3年の徴収関係で繰り返し争点になったのが徴収権の消滅時効です。差押え・督促・納付誓約書による「承認」・催告による中断(順号2021-8・24・25・26)や、確定判決で確認した租税債権の時効更新のための再度の存在確認(2021-23)が問題となりました。

訴えの利益・不服申立前置と公売・配当(訴訟要件)

滞納処分の取消しをめぐり、訴えの利益・審査請求前置といった訴訟要件が数多く争われました(順号2021-9・18・21・22・29)。公売公告・最高価申込者決定・売却決定・配当処分の適否(2021-20・27・18)も併せて問題となっています。

差押債権の取立訴訟・取立権の確認

差し押さえた債権の取立訴訟・取立権の確認も複数登場しました。請負代金債権の取立てと権利濫用(順号2021-3/一部認容)、預託金返還請求権の帰属(2021-6)、譲渡担保財産と徴収法24条(2021-10)など、対象債権ごとに論点が分かれました。

詐害行為取消し・債権者代位による徴収保全

滞納者の責任財産を確保するため、詐害行為取消し(順号2021-13・19)や債権者代位・第三者異議(2021-30)が用いられた事案です。滞納会社の弁済や根抵当権設定の害意・無資力が争われました。

第二次納税義務(徴収法39条)と還付金・過誤納金

第二次納税義務では、債務の免除に基因する責任と「受けた利益の額」(求償債権の清算価値)が争われ、唯一の納税者勝訴となりました(順号2021-31)。このほか、外国税額控除に係る還付金の充当(2021-2)、過誤納金の還付請求権の帰属(2021-16)なども登場しています。

3. 代表的な事例

令和3年の徴収関係判決から、論点ごとの代表例をピックアップしました(先頭は全部勝訴・一部認容の各事例)。

納税者勝訴順号2021-31

求償債権の債務免除と徴収法39条の「受けた利益」(清算価値による評価)

東京高等裁判所・令和3年12月9日(確定)

再生計画の一環で代表者ら(Bら)が代位弁済により取得した求償債権を免除したことが徴収法39条の債務免除に当たるとして第二次納税義務告知を受けた控訴人につき、免除時の求償債権の価額(清算価値)は0円で受けた利益は現存しないとして、原判決を取り消し告知処分を取り消した事例。

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一部認容順号2021-3

請負代金債権の差押え・取立てと権利濫用・弁済・相殺の抗弁

大阪地方裁判所堺支部・令和3年2月8日(確定)

国が滞納会社の請負代金債権を差し押さえ第三債務者に取立てを求めた事案。債権の実在性を否定する権利濫用の主張を排斥しつつ、第三債務者が滞納会社のため立替払した一部を弁済と認め、請求の一部を認容した事例。

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国側勝訴方向順号2021-24

督促による徴収権の時効中断と民法153条の催告規定の適用

東京地方裁判所・令和3年10月8日(控訴)

相続税等を承継した原告が、差押処分につき徴収権の時効消滅を主張して取消しを求めた事案。督促は通則法73条1項4号の別段の定めで民法153条の催告規定は準用されず、督促・承認・交付要求・差押えで時効は中断しており徴収権は消滅していないとして、請求を棄却した事例。

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国側勝訴方向順号2021-13

滞納会社から代表取締役への弁済の詐害行為性

津地方裁判所四日市支部・令和3年7月1日(控訴)

国が、滞納会社が代表取締役である被告に対し借入金を弁済したことは詐害行為であると主張して、その取消しと弁済金相当額の支払を求めた事案。返済の確定期限がなく差押えを回避して被告にのみ弁済したとして通謀・害意を認め、各弁済を取り消し請求を認容した事例。

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国側勝訴方向順号2021-9

取立て・配当後の差押処分取消しの訴えの利益と過誤納金還付

東京地方裁判所・令和3年4月23日(控訴)

預金債権の差押え・取立て・配当を受けた原告が、差押処分の取消し、滞納税額の計算のやり直し、過大差押金額の返金を求めた事案。配当後は取消しの訴えの利益がなく、計算のやり直しは処分でなく、過誤納金もないとして、訴えを一部却下・一部棄却した事例。

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4. 令和3年 徴収関係判決 全33件

全33件の一覧(順号順)を開く/閉じる
結論順号裁判所事案原典
国側勝訴方向順号2021-1東京高等裁判所担保土地上に築造された建物への差押えと一括公売・超過差押え原典
国側勝訴方向順号2021-2東京高等裁判所外国税額控除の控除限度額と還付金の充当処分原典
一部認容順号2021-3大阪地方裁判所堺支部請負代金債権の差押え・取立てと権利濫用・弁済・相殺の抗弁原典
国側勝訴方向順号2021-4名古屋地方裁判所所有権移転請求権仮登記の権利者の地位と公売の国家賠償法上の違法性原典
国側勝訴方向順号2021-5福岡高等裁判所差押解除の義務付けの訴えと裁決固有の瑕疵・還付金請求原典
国側勝訴方向順号2021-6東京地方裁判所保釈保証金の預託金返還請求権の帰属と供託金還付請求権の取立て原典
国側勝訴方向順号2021-7東京高等裁判所差押書の特定記録郵便による送達と不服申立期間の徒過原典
国側勝訴方向順号2021-8東京地方裁判所徴収権の消滅時効と差押え・債務承認による時効の中断原典
国側勝訴方向順号2021-9東京地方裁判所取立て・配当後の差押処分取消しの訴えの利益と過誤納金還付原典
国側勝訴方向順号2021-10大分地方裁判所譲渡担保財産からの徴収(徴収法24条)と供託金還付請求権の取立て原典
国側勝訴方向順号2021-11前橋地方裁判所滞納処分・交付要求をめぐる国家賠償請求と謝罪広告原典
国側勝訴方向順号2021-12東京高等裁判所無申告加算税の決定・差押えの無効と過誤納金返還・雑損控除原典
国側勝訴方向順号2021-13津地方裁判所四日市支部滞納会社から代表取締役への弁済の詐害行為性原典
国側勝訴方向順号2021-14最高裁判所第三小法廷滞納処分取消請求事件の上告棄却・上告不受理原典
国側勝訴方向順号2021-15最高裁判所第三小法廷不動産差押処分取消訴訟の上告棄却・上告不受理原典
国側勝訴方向順号2021-16東京地方裁判所偽造委任状による相続税還付金の受領と民法478条による弁済原典
国側勝訴方向順号2021-17最高裁判所第二小法廷裁決取消請求事件の上告不受理原典
国側勝訴方向順号2021-18大阪地方裁判所配当処分取消しの不服申立前置と徴収猶予決議による時効停止原典
国側勝訴方向順号2021-19東京地方裁判所課税処分通知後・同日にされた銀行への根抵当権設定と詐害行為取消原典
国側勝訴方向順号2021-20大阪地方裁判所最高価申込者決定取消後の公売公告取消しの訴えの利益原典
国側勝訴方向順号2021-21大阪地方裁判所賃料債権差押処分の訴えの利益・配当処分の不服申立前置と徴収猶予決議原典
国側勝訴方向順号2021-22大阪地方裁判所預金債権差押処分の訴えの利益と徴収猶予決議による時効・交付要求解除原典
国側勝訴方向順号2021-23さいたま地方裁判所消滅時効の更新を目的とする租税債権存在確認請求原典
国側勝訴方向順号2021-24東京地方裁判所督促による徴収権の時効中断と民法153条の催告規定の適用原典
国側勝訴方向順号2021-25東京高等裁判所徴収権の消滅時効と保証金返還請求権の差押え・債務承認による中断原典
国側勝訴方向順号2021-26東京地方裁判所取立て後の差押処分無効確認の訴えと納付誓約書による時効中断原典
国側勝訴方向順号2021-27大阪地方裁判所公売公告・最高価申込者決定の訴えの利益と売却決定の審査請求前置原典
国側勝訴方向順号2021-28最高裁判所第二小法廷不動産差押処分取消し・裁決取消請求事件の上告棄却・上告不受理原典
国側勝訴方向順号2021-29東京高等裁判所取立て・配当後の差押処分取消しの訴えの利益と延滞税の充当原典
国側勝訴方向順号2021-30名古屋地方裁判所国による債権者代位に基づく第三者異議と担保不動産競売の差押え排除原典
納税者勝訴順号2021-31東京高等裁判所求償債権の債務免除と徴収法39条の「受けた利益」(清算価値による評価)原典
国側勝訴方向順号2021-32東京地方裁判所差押処分取消しの出訴期間徒過と前訴判決の既判力による国家賠償原典
国側勝訴方向順号2021-33東京高等裁判所滞納処分・交付要求をめぐる国家賠償請求の控訴審(請求拡張も棄却)原典

5. 関連まとめ

徴収関係の判決・裁決を横断検索
徴収関係の事例を検索する →

まとめ

令和3年の徴収関係判決33件は、納税者側が主張を通したのは2件(全部勝訴1・一部認容1)という結果でした。徴収局面では国側勝訴方向が中心ですが、徴収権の消滅時効、訴えの利益・不服申立前置、差押債権の取立訴訟、詐害行為取消しといった論点が、滞納者側の防御の分かれ目になります。

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