連結税効果ラボ【基礎編】|先生と一緒に図で学ぶ連結財務諸表固有の一時差異・評価差額とのれん
無料の学習ツール「連結税効果ラボ」の読み方ガイドです。ラボの基礎タブを上から順に、先生と生徒の会話形式で見ていきます。左の図はラボの図そのものです。重要な節の最後には、ラボで30秒だけ手を動かす小さな実習を置いています。
※ 記事とラボの数値・税率(30%など)は、学習用に置いた仮定です。参照している企業会計基準適用指針第28号は、2026年7月の改正を反映した版です。この改正の原則適用は2028年4月1日以後に開始する年度からで、連結税効果の計算の考え方は変わりません。
今日の事例
基礎タブに出てくる事例(金額の単位は任意・税率30%)
| 事例A 取得時の評価差額 | S社の70%を1,380で取得。土地の評価増300 |
| → 繰延税金負債/のれん | 90 / 393(税効果なしなら330) |
| 事例B 未実現利益 | S社(非支配25%)→P社。期末在庫の利益360 |
| → 繰延税金資産 | 108 |
| 事例C 貸倒引当金 | S社向け債権1,800に引当金90(損金不算入) |
| → 連結の繰延税金負債 | 27(個別の資産27と相殺) |
| 事例D 子会社への投資 | 100%を1,500で取得。3年後に売却を決める |
| → 投資の一時差異/繰延税金負債 | 120 / 36 |
はじめに
今日の題材 ── 事例A〜D
📍 ラボの場所:基礎タブ全体
ハルカ
先生、個別の税効果はなんとか分かってきたんですけど、「連結の税効果」と言われると急に霧がかかります。
先生
税効果は、会計の利益と税金の計算のズレを調整して、税金費用を利益に見合う額にする仕組みだよ。連結の税効果は、その上に連結修正の分だけ足すものなんだ。基礎タブの図は、左の表の事例A〜Dの数字で描いてあるよ。
先生
連結修正の場所ごとに1つずつだよ。取得時の時価評価、グループ内の売買、グループ内の貸し借り、子会社株式そのもの。数字は今覚えなくていいよ。各節で使う分だけ、左の図に出てくるんだ。まずは①で、なぜ連結で税効果が出てくるのかから見ていこうか。
📗 基礎 ① ラボの図
基礎 ①
連結の税効果とは? ── 連結修正で生まれる「個別とのズレ」
📍 ラボの場所:基礎タブ ①
ハルカ
そもそも、連結グループに税金はかからないんですよね。なのに、なぜ連結で税効果が出てくるんですか。
先生
左の図を見て。税金を計算して納めるのは、P社やS社といったそれぞれの会社なんだ。S社の個別B/Sでは土地は600のまま。連結B/Sでは支配獲得日の時価900に直すよね。
迷いポイント 連結で土地を900に直したら、税金も900を基準に計算される?
ハルカ
連結の数字が正しいなら、税金も900を基準にしてくれそうです。
先生
税金は、あくまでS社という納税主体の課税所得を基礎に計算するんだ。将来この土地を売ると、連結の利益は個別より300小さいのに、税金はS社の課税所得に合わせて同じだけ払う。このズレを先に負債にしておくのが、繰延税金負債90(300×30%)だよ。
ハルカ
繰延税金負債って、未来から届く請求書を先に冷蔵庫に貼っておく感じですね。
先生
貼る場所は冷蔵庫ではなく連結B/Sだけれど、考え方は近いね。この300を連結財務諸表固有の一時差異と呼ぶんだ。
💡 そうだったのか!
連結修正で資産・負債の金額が個別と変わると、原則として
差 × 税率で繰延税金資産・負債が生まれます。これが連結の税効果です(未実現損益には特則があり、基礎⑤で見ます)。
📗 基礎 ② ラボの図
基礎 ②
どこで生じる? ── 連結手続と税効果の全体マップ
📍 ラボの場所:基礎タブ ②
ハルカ
連結修正って、いろいろありますよね。全部に税効果が付くんですか。
先生
左の全体マップを見て。このラボでは、連結税効果の主な論点を6つの場所に整理しているよ。①時価評価、②投資と資本の相殺消去、③債権・債務の消去、④未実現損益の消去、⑤取得後の子会社への投資、⑥持分の変動なんだ。
迷いポイント 連結修正をすれば、いつも税効果が必要?
先生
そうではないのだよ。②ののれんには税効果を認識しないし、⑤の子会社への投資は、売却の意思決定などの親会社の方針で計上するかが決まるんだ。場所ごとに「計上する・しない」の決まりがあるよ。
ハルカ
マップの下の段ほど、条件がややこしくなっていくんですね。
💡 そうだったのか!
このラボでは、連結の税効果を
6つの場所に整理しています。場所ごとに、資産か負債か・使う税率・計上の条件が違います(応用タブの早見表で一覧にしています)。
📗 基礎 ③ ラボの図
🧾 仕訳で確認
評価差額の計上(税効果考慮前)| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|
| 諸資産(土地など) | 300 | 評価差額 | 300 |
評価差額に係る繰延税金資産・繰延税金負債| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|
| 評価差額 | 90 | 繰延税金負債 | 90 |
事例A:P社がS社の70%を 1,380 で取得。S社の純資産(簿価)1,200、土地の評価増 300、税率 30%。資本連結ラボの事例Aと同じ数字に、税効果を加えています。
基礎 ③
取得時の評価差額 ── 時価評価した差額に税効果を認識する
📍 ラボの場所:基礎タブ ③
ハルカ
事例Aの評価差額は300ですよね。子会社の資本には、300がそのまま入るんですか。
先生
左の図を見て。評価増300には、S社の税率30%で繰延税金負債90を認識するんだ。だから子会社の資本に入る評価差額は、税効果を引いた210。純資産は簿価の1,200と合わせて1,410になるよ。
迷いポイント 評価差額に税効果を認識したら、相手勘定は法人税等調整額?
ハルカ
税効果なら、いつもの法人税等調整額ですよね。
先生
取得時は損益を通さないんだ。左の仕訳のとおり、相手は評価差額(純資産)だよ。だから利益は動かず、そのかわりのれんと非支配株主持分の金額が変わるんだ。
💡 そうだったのか!
取得時の評価差額の税効果は、相手が
評価差額。子会社の資本が1,500→1,410に小さくなり、のれんと非支配株主持分が変わります。
⏱ 30秒だけラボで試す
- シミュレーションの「🏗 取得時の評価差額」で「事例A」を読み込む
- 「子会社の税率(%)」を 30 → 40 にする
👀 繰延税金負債が 90 → 120、のれんが 393 → 414 に増えます。評価差額(税効果後)は 210 → 180 です。
ラボを開く ▶
📗 基礎 ④ ラボの図
🧾 仕訳で確認
投資と資本の相殺消去| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|
| 資本金 | 800 | 子会社株式 | 1,380 |
| 利益剰余金 | 400 | 非支配株主持分 | 423 |
| 評価差額 | 210 | | |
| のれん | 393 | | |
基礎 ④
のれんとの関係 ── 評価増の税効果で のれん が増える
📍 ラボの場所:基礎タブ ④
ハルカ
税効果を入れると、のれんが330から393に増えるんですね。どうしてですか。
先生
左の棒グラフを見て。取得原価1,380は同じまま、子会社の資本が90小さくなるよね。そのうち親会社持分70%の63だけ、差額であるのれんが増えるんだ。残りの27は、非支配株主持分の減少だよ。
迷いポイント のれんにも、繰延税金負債を計上する?
ハルカ
のれんも資産なら、のれんにも税効果を付けたくなります。
先生
のれんと負ののれんには、税効果を認識しないんだ。のれんは差額だから、税効果を認識するとのれんがまた変わって、計算が循環してしまうからだよ。
ハルカ
のれんが太ったのは税金のせいだったんですね。少し同情します。
先生
同情はいらないよ。増えた分も10年で償却するから、のれん償却額は年33から39.3に増えるんだ。
💡 そうだったのか!
評価増の税効果で子会社の資本が減る分、
のれんが増えます(63)。のれんそのものには税効果を認識しません。
📗 基礎 ⑤ ラボの図
🧾 仕訳で確認
未実現利益の消去| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|
| 売上原価 | 360 | 棚卸資産 | 360 |
消去に伴う税効果(売手が納付した税金 = 360 × 30%)| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|
| 繰延税金資産 | 108 | 法人税等調整額 | 108 |
消去額を非支配株主にも負担させる(25%)| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|
| 非支配株主持分 | 90 | 非支配株主に帰属する当期純利益 | 90 |
税効果も非支配株主に配分する| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|
| 非支配株主に帰属する当期純利益 | 27 | 非支配株主持分 | 27 |
事例B:S社(非支配株主25%)→ P社。期末在庫に含まれる未実現利益 360、S社の税率 30%。
基礎 ⑤
未実現利益の消去 ── 売手が払った税金を「前払い」として資産にする
📍 ラボの場所:基礎タブ ⑤
ハルカ
事例Bは、S社がP社に商品を売って、360の利益が在庫に残っている話ですね。
先生
そうだよ。連結では未実現利益360を消去するよね。でも売手のS社は、この360に対する税金をもう納めているんだ。左の図のとおり、連結から見ると税金の前払いだから、繰延税金資産108(360×30%)を計上するんだよ。
迷いポイント 税率は、在庫を持っている買手(P社)の税率?
ハルカ
在庫はP社の手元にあるので、P社の税率ですよね。
先生
ここは売手の税率なんだ。実際に税金を払ったのは売手だから、その額を繰り延べる考え方だよ(繰延法)。だから回収可能性も判断しないし、税率が変わっても直さないんだ。
ハルカ
私、未実現利益を消したら払った税金も戻ってくると思って、還付を楽しみにしていました。
先生
還付は来ないよ。払った税金はそのままだから、連結では前払いとして資産に置いておくんだ。
💡 そうだったのか!
未実現利益の税効果は
売手が払った税金。売手の税率で計算し、回収可能性は判断しません。売手が子会社なら、残り252を持分で分けます(非支配63)。
⏱ 30秒だけラボで試す
- シミュレーションの「🔁 内部取引の消去」で「事例B」を読み込む
- 「売手の売却年度の課税所得の上限」に 200 を入れる
👀 繰延税金資産が 108 → 60(200×30%)に減り、非支配株主の負担は 63 → 75 に増えます。払っていない税金は繰り延べられません。
ラボを開く ▶
📗 基礎 ⑥ ラボの図
🧾 仕訳で確認
消去した債権に対する貸倒引当金を取り消す| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|
| 貸倒引当金 | 90 | 貸倒引当金繰入額 | 90 |
連結固有の将来加算一時差異に係る繰延税金負債| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|
| 法人税等調整額 | 27 | 繰延税金負債 | 27 |
個別で計上した繰延税金資産と相殺(同一納税主体)| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|
| 繰延税金負債 | 27 | 繰延税金資産 | 27 |
基礎 ⑥
債権債務の消去と貸倒引当金 ── 引当金を消すと、税効果も消える
📍 ラボの場所:基礎タブ ⑥
ハルカ
事例Cは、P社がS社向けの債権1,800に貸倒引当金90を積んでいる話ですね。
先生
そうだよ。P社は個別で、この引当金90(損金不算入)に繰延税金資産27を計上しているんだ。連結では債権と債務を消去するから、引当金も取り消すよね。
迷いポイント 引当金を取り消したら、連結では税効果を何も計上しない?
ハルカ
引当金がなくなったなら、税効果もいらない気がします。
先生
左の図の②のとおり、連結の引当金は個別より90小さいから、連結固有の将来加算一時差異になるんだ。個別の繰延税金資産と同額の繰延税金負債27を計上して、同じP社の資産と相殺するよ。
ハルカ
負債を出したと思ったら、すぐ相殺で消えて…手品を見ている気分です。
先生
種はちゃんとあるよ。同じP社の資産と負債だから相殺している、というだけなんだ。結果として、当期純利益は 90−27=63 増えるよ。
💡 そうだったのか!
損金不算入の引当金は、個別で計上した繰延税金資産と
同額の繰延税金負債を計上して相殺します。個別で一部だけ計上していれば、その額と同額です。
⏱ 30秒だけラボで試す
- シミュレーションの「🔁 内部取引の消去」で「事例C」を読み込む
- 「引当金の税効果のうち、個別で計上している割合(%)」を 100 → 50 にする
👀 連結で計上する繰延税金負債が 27 → 13.5 になり、当期純利益への影響は 63 → 76.5 です。
ラボを開く ▶
📗 基礎 ⑦ ラボの図
🧾 仕訳で確認
売却で解消する将来加算一時差異(第23項) 120 × 30%| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|
| 法人税等調整額 | 36 | 繰延税金負債 | 36 |
事例D:第3年度末に全部売却を意思決定。一時差異 120 × 30% = 繰延税金負債 36。
基礎 ⑦
子会社への投資 ── 個別の簿価と、連結上の価額のズレ
📍 ラボの場所:基礎タブ ⑦
ハルカ
子会社株式そのものにも、税効果があるんですか。
先生
左の棒グラフを見て。P社の個別B/Sでは、子会社株式は取得原価1,500のまま。連結上の価額は「子会社の資本の親会社持分+のれんの未償却額」で、利益がたまるたびに動くんだ。事例Dでは3年で120の差になっているね。
迷いポイント 子会社が利益をためたら、毎年その差に税効果を計上する?
ハルカ
差が毎年増えるなら、毎年繰延税金負債も増やすんですよね。
先生
この差は、株式を売るか配当を受け取るまで解消しないんだ。だから売却の意思決定などの親会社の方針で決まるんだよ。事例Dは第3年度末に売却を決めたので、そこで初めて 120×30%=36 を計上しているんだ。
💡 そうだったのか!
投資の一時差異は、
売却や配当の方針で計上するかが決まります。事例Dは、売却を決めた第3年度末に繰延税金負債36を計上します。
⏱ 30秒だけラボで試す
- シミュレーションの「📈 子会社への投資」で「事例D」を読み込む
- 「売却を決めた持分(%)」を 100 → 0 にする
👀 繰延税金負債(上の指標)が 36 → 0 になり、売却年度の連結の税引後の売却損益は 196 → 160 に下がります。前期までに計上していない分の税金が、売却年度にまとめて出てくるからです。
ラボを開く ▶
📗 基礎 ⑧ ラボの図
基礎 ⑧
相手勘定と表示 ── どこに計上し、どう相殺するか
📍 ラボの場所:基礎タブ ⑧
ハルカ
ここまでで、相手勘定が法人税等調整額だったり評価差額だったりしました。何か決まりがあるんですか。
先生
左の図の上を見て。相手勘定は、もとの差額をどこに計上したかに合わせるんだ。原則は法人税等調整額、取得時は評価差額、為替換算調整勘定などはその他の包括利益、持分変動の差額は資本剰余金だよ。
迷いポイント 連結B/Sでは、繰延税金資産と負債を全部まとめて相殺する?
ハルカ
同じ連結グループなら、全部まとめて相殺すればすっきりします。
先生
相殺できるのは同じ会社(納税主体)の資産と負債だけなんだ。左の図の下では、P社は資産110、S社は負債70として、両方が連結B/Sに残るよ。
ハルカ
P社の資産とS社の負債は、グループでも別々の財布なんですね。
💡 そうだったのか!
相手勘定は
もとの差額の計上先に合わせます。表示は
納税主体ごとに相殺し、別の会社どうしは相殺しません。
今日の内容を、ラボで確かめてみませんか?
この記事の図は、すべて連結税効果ラボの画面そのものです。基礎タブを開けば、同じ図を見ながら読み返せます。
連結税効果ラボを開く ▶今日のまとめ ── 迷いポイント早見表
おわりに
今日のふりかえり
先生
今日のまとめだよ。税金は各社の課税所得をもとに計算するから、連結修正で金額を変えたところに、原則として差 × 税率の税効果が生まれる。取得時の評価差額はのれんを変え、未実現利益は売手が払った税金で計算するんだ。
ハルカ
私、週末のパン屋巡りのレシートを家計簿につけているんですけど、まとめ買いした冷凍パンは「まだ食べていないから未実現」にしてもいいですか。
先生
個人の家計に会計基準は要らないけれど、考え方の練習にはなるね。ただ、パンの代金はもう払っているから、未実現なのは「食べる楽しみ」の方だよ。
ハルカ
じゃあ冷凍庫は、楽しみの繰延資産ですね。回収可能性は、判断するまでもなく100%です。
先生
頼もしいね。次の応用編では、評価減の回収可能性や、一部売却のときの税金の行き先を見ていこうか。
参考資料
企業会計基準適用指針第28号「税効果会計に係る会計基準の適用指針」/企業会計基準第28号「『税効果会計に係る会計基準』の一部改正」/企業会計基準第22号「連結財務諸表に関する会計基準」(いずれも企業会計基準委員会)。ラボの事例の数値は、適用指針第28号の設例と同じパターンを独自の数値で組み立てたものです。
このシリーズの記事:応用編/設例・取得時と内部取引編(事例A〜C)/設例・子会社への投資編(事例D〜F)/設例・在外子会社とグループ内の株式売買編(事例G〜I)
連結決算ラボの関連:資本連結ラボ/未実現利益消去ラボ/連結決算ラボ(総合ナビ)
この記事を書いた人
TaxJudge編集部|公認会計士・税理士(実務25年)による企画・監修。会計基準・税法・裁決・有価証券報告書などの一次情報をもとに、検索できるデータベースと計算・判定・文書作成ツールを制作しています。