令和元年(2019年・平成31年分を含む)に出された徴収関係の裁判例33件を整理した年度版インデックスです。更正処分など「課税の当否」を争う課税関係判決とは別に、滞納処分・差押え・取立訴訟・第二次納税義務・詐害行為取消し・納税義務の承継など「徴収」をめぐる争いだけを集めています。各事案名から検索ツールで要旨を開けます。
収録33件のうち国側勝訴方向が30件、納税者側が一部認容を得たのは3件(ファクタリングの善意無重過失・給与振込預金の差押禁止・債権譲渡の重過失)にとどまりました。争点は「差押債権の取立訴訟(債権譲渡・供託・診療報酬)」「差押禁止債権(給与振込預金)」「相続税の連帯納付・相続預金」「徴収権の消滅時効」に集約されます。
1. 数字で見る令和元年の徴収関係判決
徴収局面では国側勝訴方向が中心で、納税者側の救済は限られます。多くが取立訴訟・差押えの適法性を争うもので、勝ち負け以上に「どの論点でどう判断されたか」を確認する実務的価値が中心になります。
2. 徴収関係でよく争われた論点(令和元年)
差押債権の取立訴訟・取立権の確認(債権譲渡・供託・診療報酬)
令和元年の徴収関係で最も多いのが差押債権の取立訴訟・取立権の確認です。譲渡担保と物的納税責任(徴収法24条/順号2019-8)、診療報酬債権の譲渡範囲と対抗要件(2019-11・27・31)、ファクタリング・債権譲渡の善意無重過失(2019-10・32/いずれも一部認容)など、対象債権ごとに論点が分かれました。
差押禁止債権(給与振込預金)と「狙い撃ち」
給与が振り込まれた預金口座を狙い撃ちした差押えが、差押禁止債権の趣旨に反しないかが争われました(順号2019-5・25)。預金債権に変わった後の差押えの可否と、配当・不当利得が論点で、順号2019-25は一部認容となっています。
相続税の連帯納付義務・相続預金
相続税の連帯納付義務と「受けた利益の価額」・遺産分割の合意解除(順号2019-15)、相続預金の差押え・取立てと相続放棄の熟慮期間・遺産分割前の預金債権(2019-33)など、相続をめぐる徴収の論点が登場しました。
徴収権の消滅時効と債務承認・存在確認
徴収権の消滅時効と、確認の利益・債務承認・督促状の送達(順号2019-14・21・24)が繰り返し争点になりました。長期滞納事案での時効管理が実務上の分かれ目です。
仮登記・債権者代位/差押えの競合・公売
仮登記と所有権の帰属・債権者代位による登記請求(順号2019-7・28)、差押えの競合と供託・不当利得(2019-4・23)、公売公告処分の執行停止(2019-26)など、滞納処分と保全をめぐる事案も争われました。
3. 代表的な事例
令和元年の徴収関係判決から、論点ごとの代表例をピックアップしました(先頭は一部認容の事例)。
ファクタリングと譲渡禁止特約・将来債権の特定・国の差押え
東京地方裁判所・平成31年4月15日(確定)
破産会社の運送料債権を譲り受けたファクタリング業者と、同債権を差し押さえた国とが供託金還付請求権の帰属を争った事案。業者は譲渡禁止特約につき善意無重過失で一部債権を取得したが、チャーター取引分等は国の差押えが優先するとした事例。
給与振込預金の狙い撃ち差押えと不当利得(控訴審)
大阪高等裁判所・令和元年9月26日(確定)
給与が振り込まれた預金を差し押さえ取り立てた事案の控訴審。本件差押えは実質的に差押禁止の給与債権を差し押さえたものと同視でき違法として、差押可能額を超える部分につき不当利得2万4404円を認容した(差押え・配当の取消しは訴えの利益を欠き却下、国賠は過失なく棄却)事例。
相続税の連帯納付義務と遺産分割の合意解除・受けた利益の評価時点
大阪地方裁判所・令和元年5月17日(控訴)
相続人が後の遺産分割の合意解除により代償債権を失ったとして相続税の連帯納付義務を争った事案。受けた利益は固有の相続税の納税義務確定時点で評価され、合意解除で遡及消滅せず、督促状も発送されたとして請求を棄却した事例。
譲渡担保権者の物的納税責任と供託金還付請求権の取立権
東京地方裁判所・平成31年3月19日(確定)
国が、滞納者(譲渡担保設定者)の売掛債権に係る供託金還付請求権を差し押さえ、譲渡担保権者の物的納税責任の規定により滞納処分を続行して取立権の確認を求めた事案。請求を認容した事例。
相続預金の差押え・取立てと相続放棄の有効性・遺産分割前の預金
さいたま地方裁判所・令和元年12月24日(確定)
被相続人の滞納国税を徴収するため、国が相続人らの法定相続分に応じた預金債権の持分を差し押さえ取り立てた事案。相続人の一人の相続放棄を有効とし、共同相続人全員の準共有持分を差し押さえれば遺産分割前でも相続人が一人の場合と実質的に異ならず取立てができるとして、取立請求を認容した事例。
4. 令和元年 徴収関係判決 全33件
全33件の一覧(順号順)を開く/閉じる
5. 関連まとめ
まとめ
令和元年の徴収関係判決33件は、納税者側が主張を通したのは一部認容3件という結果でした。徴収局面では国側勝訴方向が中心ですが、差押債権の取立訴訟(債権譲渡・供託・診療報酬)、差押禁止債権(給与振込預金)、相続税の連帯納付、徴収権の消滅時効といった論点が、滞納者側の防御の分かれ目になります。

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