均等割・法人税割・事業税の従業者数はなぜ違う?3税目を同時計算で検証

複数の都道府県に拠点がある会社の申告書には、「均等割の従業者数」「法人税割の分割基準の従業者数」「事業税の分割基準の従業者数」という似た言葉が3回出てきます。同じ人数を3か所に書き写せばよいのか、別々に数え直すのか。ここで手が止まった経験はないでしょうか。

結論から言えば、この3つは名前が似ているだけで、役割も判定時点も別のルールです。同じ会社の同じ拠点でも、3税目で違う数字になることがあります。

この記事では3税目の違いを1枚の比較表に整理し、同一の拠点データを3税目で計算するとどれだけ結果がズレるのかを実際の数字で検証します。計算は東京都主税局「分割基準のガイドブック」の公表値を再現できることを確認したロジックによるものです。

後半では、自社の拠点構成で同じ検証を試せる無料ツールも紹介します。

目次

解説動画

スライド解説

結論:3税目の「従業者数」は、役割・判定時点・数え方が異なります

複数拠点の申告でつまずく原因の多くは、次の3つを同じルールだと思い込むことにあります。

  • 役割が違います
    事業税と法人税割では「課税標準を按分する分子」ですが、均等割では按分に使わず、市区町村分の税率区分(50人超か以下か)の判定に使います。
  • 判定時点が違います
    事業税・法人税割は期中の新設・廃止があれば月数按分し、著しい変動があれば各月末平均に切り替わります。均等割は算定期間末日のスナップショットのみです。
  • 数え方が違います
    資本金1億円以上の製造業の工場1.5倍は事業税の分割基準だけの特例です。逆に均等割は、分割基準では対象外の寮等の従業者も人数に含めて市区町村分の50人判定を行います。

さらに事業税だけは業種で分割基準そのものが変わり、一般事業(小売業・サービス業など)は課税標準の2分の1を「事務所等の数」で按分します。その結果、従業者数が全体の1%しかない拠点に事業税の課税標準が25%以上配分されることが起こります。

以下、数字で確認していきます。

なぜ同じ「従業者数」で3つの答えが出るのか

法人事業税は所得(外形法人は付加価値額・資本金等の額も)を都道府県だけに、法人税割は法人税額を都道府県と市区町村の両方に分けます。

そして均等割は、そもそも分けません事務所等や寮等がある自治体ごとに、資本金等の額で決まる定額を存在月数で月割して納めます(総務省|法人住民税総務省|法人事業税)。

「按分する2つ」「按分しない1つ」が同じ申告書に同居し、按分する2つも分割基準が同じではない。この構造が取り違えを生みます。

この違いは資料にも表れます。事業税と法人税割の分割基準は東京都主税局「分割基準のガイドブック」(令和7年8月版)にありますが、均等割の従業者数は同じガイドブックには載っていません。

【3税目横断】従業者数の扱いはここが違う

①役割の違い

実務で問題になる論点ごとに3税目の扱いを並べます。太字が分かれる点です。

論点 法人事業税 法人住民税・法人税割 法人住民税・均等割
何を分けるか 所得(外形法人は付加価値額・資本金等の額も) 法人税額 分けない(定額の税)
配分先 都道府県のみ 都道府県+市区町村 事務所等・寮等のある全自治体
従業者数の役割 按分の分子 按分の分子 市区町村分の税率区分(50人超/以下)判定のみ
業種による違い あり(一般事業=事務所等の数1/2+従業者数1/2/製造業=従業者数のみ。ガス・倉庫・電気供給業・鉄道/軌道事業は別基準) なし(全業種とも従業者数のみ) なし
事務所等の数 各月末日現在の数の合計(1事務所×12か月=12) 数としては使わない 数でなく「存在月数」で月割
判定時点 事業年度終了の日現在 算定期間終了の日現在 算定期間末日のスナップショットのみ
期中の新設 期末人数×新設日からの月数/事業年度月数(1人未満・1月未満とも切上げ) 同左 存在月数で月割(1月未満切捨て・全期間1月未満は1月)
期中の廃止 廃止日の前月末の人数×廃止までの月数/事業年度月数 同左 廃止済み拠点の人数は0として50人判定
著しい変動(最大が最小の2倍超) 各月末人数の平均に切替 同左 なし(期末人数のみ)
工場の1.5倍特例 あり(資本金1億円以上の製造業・期末に存在する工場のみ) なし(等倍) なし(50人判定も実人数)
寮・保養所等(施設) 分割基準の対象外 対象外 課税対象(従業者ゼロでも課税)
寮等の従業者(人数) カウントしない カウントしない 市区町村分の50人判定に含む
アルバイト等 原則として実人数 原則として実人数 一定の特例算定が可能な場合あり
主な根拠 地方税法72条の48 地方税法57条・321条の13 地方税法52条・312条

②判定時点の違い:期中廃止でいちばん割れます

最も扱いが分かれるのが、期中に事務所を閉めたケースです。

法人税割の分割基準では廃止した日の属する月の前月末日現在の人数を使い、廃止日までの月数で按分します。

一方、均等割の税率区分の判定では、算定期間末日に存在しない事務所の従業者数は0とします。

この違いは自治体のQ&Aでも明示されています(日野市|均等割と法人税割の従業者数はいつの時点か)。

さらに事業税では、同じ「期中廃止」でも事務所等の数従業者数で数え方が違います。

事務所等の数は各月末日にあったかで数えるため1月20日廃止なら9か月分、従業者数の按分月数は暦計算で1月未満を切り上げるため10か月です。

1つの廃止から3つの月数が出てくる——ここが最も間違えやすい箇所です。詳細は②従業者の数の算定で解説しています。

③数え方の違い:工場1.5倍は事業税だけです

資本金1億円以上の製造業では、工場の従業者数にその2分の1を加算します(奇数なら1を加えた数の2分の1)。123人の工場なら185人です。この特例は事業税の分割基準にのみ適用され、法人税割にも均等割の50人判定にも影響しません。

工場該当性は事業年度終了の日現在で判定するため、期中廃止した工場は対象外になります。

同じ拠点データを3税目で計算するとどうなるか

ここからは実際の数字で確認します。

前提
・一般事業(小売業)
・資本金5,000万円
・3月決算
・東京都千代田区の本社990人(通年)
・大阪府大阪市の営業所10人(通年)

ケース(大阪営業所を動かす) 事業税の大阪配分 法人税割の大阪配分 均等割の合計
基本形(本社990人・大阪10人) 25.5% 1.0% 38万円
大阪を10人→2人に縮小 25.1%(ほぼ不変) 0.2% 38万円
大阪を10人→51人に(本社から41人異動) 27.6% 5.1% 38万円→40万円(段差)
長野県に保養所を新設 変化なし(対象外) 変化なし(対象外) 38万円→56万円

従業者1%の拠点に、事業税は25.5%配分されます

大阪営業所の従業者数は全体の1%です。ところが一般事業の事業税は課税標準の2分の1を事務所等の数で按分します。事務所等の数は東京12・大阪12の合計24なので、この基準だけ見れば大阪は50%。2分の1ずつで合成すると大阪への配分は25.5%(0.5×50%+0.5×1%)です。

法人税割は従業者数のみで1%のまま、均等割は按分せず各自治体で定額。

1つの拠点表から3つの答えが出るのがこのテーマの本質です。

人を8割減らしても、事業税の配分はほとんど減りません

大阪を10人から2人に縮小すると、法人税割は1%から約0.2%へ減る一方、事業税は25.5%から約25.1%にしか下がりません事務所がある限り「事務所等の数2分の1」の按分は動かないためです。

極端な例が常駐者のいない営業所で、「事務所等の数1・従業者数0」すら成立します。

「50人の崖」:1人の差で均等割だけが跳ねます

本社から41人を大阪へ異動して51人にすると、按分ベースの2税目は人数どおり連続的に動きます。ところが均等割は違います。大阪が50人までなら38万円のままで、51人になった瞬間に40万円。

大阪市分が「50人超」の区分に移り、資本金等5,000万円の標準税率で13万円から15万円へ段差で増えるためです。わずか1人の差で2万円が動く、連続的に効く2税目と階段状に効く1税目の差が最もはっきり出る場面です。

逆に、分割基準がゼロでも均等割だけ発生することがあります

慰安・娯楽のためだけの保養所は、分割基準では事業所等に該当しません。ところが均等割は寮等にも課税されるため、分割基準ゼロでも申告義務が生じますしかも寮等に従業者がいれば、その人数は均等割の50人判定には算入されます。

自社の拠点構成で同じ検証を試せます

ここまでの計算は分割基準ナビ(無料ツール)に拠点を入力して再現できます。

業種・資本金・所得と拠点一覧(都道府県・市区町村・従業者数・開設月・廃止月)を入れると、同じデータが3税目でどう数えられ、どう按分され、いくら課税されるかが並びます。上の4ケースはボタン1つで再現でき、「戻る」で前後を見比べられます。

端数処理の3段構え:公表値877,200円を再現できますか

分割基準の数値が正しくても、端数処理の順番を崩すと税額はズレます。

ガイドブック第3章の計算例(所得36,173千円、事務所等の数は県内36・総数120、従業者数は県内61人・総数150人、東京都の税率)で見ます。

所得の区分 1/2後の金額 事務所等の数で按分 従業者数で按分 分割課税標準額 税率 税額
年400万円以下 2,000千円 599千円 813千円 1,412千円 3.75% 52,900円
400万円超800万円以下 2,000千円 599千円 813千円 1,412千円 5.665% 79,900円
800万円超 14,086千円 4,225千円 5,728千円 9,953千円 7.48% 744,400円
合計 877,200円

端数処理は3段構えです。

  • 第1に、1単位当たりの分割課税標準額は小数点以下のうち総数の桁数に1を足した位以下を切捨て(総数120なら小数点4位以下切捨て)。
  • 第2に、按分後の金額は千円未満を切捨て。
  • 第3に、税額は税率区分ごとに百円未満を切捨てます。

見落とされやすいのが3番目です。

区分ごとに切り捨てず3区分を合計してから百円未満を切り捨てると、この設例では877,400円となり公表値より200円多くなります。金額は小さくとも、公表値と合わない計算は後の照合で原因特定に時間を取られます。第10号様式もこの順序です(東京都主税局|第10号様式 記載の手引)。

この設例はツールの「設例で学ぶ」タブ D-1で1ステップずつ追えます。法人税割に2分の1ずつの二本立てがないことは、同 D-3と見比べると一目で分かります。

申告前に確認する5ステップ

ここまでの内容を申告前の確認手順に落とし込みます。

ステップ1:拠点一覧を「地方税法上の事業所等」の単位で作り直す

組織図や賃貸借契約の単位ではなく、地方税法上の事業所等の単位で並べます。

同一構内・同一区画の建物は原則1つとして扱い、部門ごとに行を分けません。ここを誤ると事務所等の数が二重計上され、一般事業では事業税の配分が丸ごとズレます。

ステップ2:各拠点の「開設日・廃止日」を日付で確定する

月単位ではなく日付で押さえます。同じ廃止日から、事務所等の数(各月末カウント)・従業者数の按分月数(1月未満切上げ)・均等割の存在月数(1月未満切捨て)の3つが出るためです。

移転は「旧拠点の廃止+新拠点の新設」として記録します。

ステップ3:従業者数を給与台帳ではなく「勤務すべき事業所等」で集計する

給与の支払元で集計すると、派遣を受け入れている拠点の人数が漏れます。派遣労働者は派遣先、出向者は出向先で計上します(双方の業務に従事するなら双方に計上)。

無給の非常勤役員・アルバイト・パート含み、国外勤務者や1月以上の病欠者は除きます。

ステップ4:各月末の人数を並べて「2倍超」の変動がないか見る

各月末の人数のうち最大が最小の2倍を超える事業所等は、期末人数ではなく各月末人数の平均(1人未満切上げ)を使います。

期末だけ見ていては気づけないため、月次で人数を残すことが予防策になります。

ステップ5:3税目を並べて、同じ数字を使っていないか点検する

最後に3税目を横に並べ、同じ人数を3か所へ転記していないかを確認します。期中廃止した拠点がある年度、工場を持つ資本金1億円以上の製造業、寮や保養所がある会社は、3税目で数字が分かれるのが自然です。

分割基準ナビの「自社で試算」タブに拠点を入力すると3税目の数え方の違いが1つの表に並ぶため、この点検を機械的に行えます。

間違えたときのコストは「税額の差」だけではありません

分割基準の誤りが厄介なのは、会社全体の税額が変わらなくても問題になる点です。

配分を誤ると、ある自治体では税額不足、別の自治体では納めすぎが同時に生じます。増額となる自治体では修正申告が必要となり、延滞金や加算金が生じる場合があります。一方、減額となる自治体では更正の請求などの調整が必要になることがあり、会社全体の差額を精算すれば終わりというわけにはいきません。

影響範囲は拠点数と自治体数の掛け算で効きます。

5都道府県にまたがる会社で1つ誤れば都道府県分と市区町村分の双方に波及し、税額の差が数万円でも実務工数は膨らみます。金額よりも関係先の多さがコストを決めるのがこの論点の特徴です。

いちばん安い対策は、拠点に異動があった月に日付と人数をメモしておくこと。事後に集め直すのが、もっとも時間を食うからです。

よくある質問(FAQ)

Q1. 期中に本店を他県へ移転しました。期末に事務所がない旧所在県にも申告が必要ですか。

必要です。

事業年度中に2以上の都道府県に事業所等を有していた場合は、各都道府県に課税標準額を分割して申告納付します。旧所在県には移転前の月数分の事務所等の数と、月数按分した従業者数が残ります。「期末に存在する県にだけ申告すればよい」という誤解は、移転初年度に起こりやすい誤りの一つです。

Q2. 均等割の従業者数と、分割基準の従業者数は必ず一致しますか。

必ずしも一致するとは限りません。

通年で拠点の異動も著しい人数変動もなければ一致することもありますが、期中に廃止した拠点があれば均等割の判定は0人、法人税割の分割基準は廃止前月末の人数を月数按分した数です。ほかにも寮等の従業者(均等割の市区町村分だけ含む)、著しい変動(分割基準だけ各月末平均)、工場1.5倍(事業税だけ)があると数字が分かれます。

Q3. 常駐者がいない営業所は、事業所等として申告が必要ですか。

常駐者がいないだけで、直ちに事業所等から外れるわけではありません。

事業所等「人的・物的設備があり、継続して事業が行われている場所」という要件で判定するためです。ただし他に勤務すべき事業所等があり月数日の出張であれば、その営業所の従業者数は0人です。

「事務所等の数は1、従業者数は0」が成立する点が一般事業では重要です。

Q4. 派遣社員は派遣元・派遣先のどちらでカウントしますか。

原則として派遣先で計上します。

給与を支払うのは派遣元ですが、分割基準は支払元ではなく「勤務すべき事業所等」で判定するためです(派遣元の業務にも従事する場合は双方に計上)。派遣の受入れで各月末の人数が大きく動くと、著しい変動として各月末平均に切り替わる場合があります。

Q5. 資本金1億円以下でも外形標準課税の対象になることがあると聞きました。

あります。

2025年(令和7年)4月1日以後開始事業年度からは一定の減資法人が、2026年(令和8年)4月1日以後開始事業年度からは一定の100%子法人等が、資本金1億円以下でも対象となり得ます。判定には前事業年度の対象該当・払込資本の額・完全支配関係の確認が必要で、資本金の額だけでは判断できません。

分割基準自体は変わりませんが、按分する課税標準に付加価値額・資本金等の額が加わります。

まとめ:3税目を「並べて」確認する習慣が誤りを防ぎます

複数拠点の地方税申告でつまずくポイントは、次の4点に集約されます。

  • 3税目の「従業者数」は、役割・判定時点・数え方が違う別のルールです。同じ数字を無条件に3か所へ転記してはいけません。
  • 一般事業の事業税は課税標準の2分の1を事務所等の数で按分するため、従業者1%の拠点に25.5%が配分されます。
  • 期中廃止は最難関で、1つの廃止日から事務所等の数・従業者数の按分月数・均等割の存在月数という3つの月数が出ます。
  • 端数処理は、1単位当たり額(総数の桁数+1位以下切捨て)→按分額(千円未満切捨て)→税額(区分ごとに百円未満切捨て)の順序を守ります。

まずは自社の拠点一覧を、地方税法上の事業所等の単位で1枚に書き出すところから始めてみてください。そのうえで分割基準ナビに入力すれば、3税目の数字が並び、どこがズレるべきでどこが一致すべきかを機械的に点検できます。

なお本記事は一般事業(小売業・サービス業など)と製造業を前提とし、ガイドブックは令和7年8月版によっています(改訂されるため最新版をご確認ください)。また、ガス供給業・倉庫業・電気供給業・鉄道事業/軌道事業には別の分割基準が適用されます。

税額は均等割が標準税率、事業税・法人税割が東京都の税率を前提とした概算です。他自治体では超過課税・不均一課税が適用される場合があるため、実際の申告では所在自治体の税率をご確認ください。

参考一次情報

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