潜在株式調整後EPSの希薄化率は何%が普通か|有報19,423件で見る開示事例と5類型

「うちの会社の希薄化率は、他社と比べて大きいのか小さいのか」
「新株予約権しかないのに、注記はこの書き方でよいのか」

——潜在株式調整後1株当たり当期純利益(希薄化後EPS)の注記を作るとき、基準の解説書は計算方法を教えてくれても、相場観は教えてくれません。

そこで本記事では、EDINETに提出された有価証券報告書19,423書類(対象期間中に有価証券報告書を提出した上場会社4,224社、2021年3月期〜2026年4月期)の「(1株当たり情報)」注記を集計し、潜在株式調整後EPSを実際に記載している事例の実像をデータで示します。

結論を先に言えば、次の3点です。

  • 日本基準では記載は4件に1件(23.8%)。会社ベースでも約3社に1社(33.6%)にとどまる
  • 記載がある日本基準の事例でも、希薄化率(基本EPSからの目減り率)の中央値は0.57%。9割は6.16%以下に収まる
  • 希薄化率10%以上は5.7%(上位約6%)と少数派で、その上位はほぼすべて優先株式——つまり事業再生・資本増強ファイナンスを経た会社である

本記事の「希薄化率」について(重要)
本記事の希薄化率は、開示された基本EPSと潜在株式調整後EPSから「(基本EPS − 潜在株式調整後EPS)÷ 基本EPS」で算定した当サイト独自の指標です。会計基準上の公式指標ではなく、潜在株式がすべて権利行使された場合の持分希薄化率(潜在株式数÷完全希薄化後株式数)や、将来の希薄化見込みを示すものでもありません。企業会計基準第2号も、潜在株式調整後1株当たり当期純利益は将来の希薄化を予測するための警告指標ではない旨を述べています(同基準38項)。また集計値は会社・年度ベースであり、同一会社の複数年度を含みます。

計算方法そのものの解説は既存記事(潜在株式調整後EPSの計算方法)1株当たり情報 計算ナビβに譲り、本記事は「実際の開示がどうなっているか」に徹します。

個別事例の注記原文は潜在株式調整後EPS 事例ナビβでそのまま検索・閲覧できます。

目次

解説動画

スライド解説

集計の前提:日本基準とIFRSは分けて読む必要がある

集計に入る前に、絶対に混ぜてはいけない論点があります。日本基準とIFRSでは、そもそも希薄化後EPSを開示するルールが違うという点です。

日本基準では、

  • 潜在株式が存在しない
  • 潜在株式はあるが希薄化効果を有しない
  • 1株当たり当期純損失である

いずれかに該当すれば潜在株式調整後EPSを記載しません(企業会計基準第2号23項ほか)。

これに対しIFRS(IAS第33号)は、損失計上期であっても基本的1株当たり利益と希薄化後1株当たり利益の両方を、損益計算書(または包括利益計算書)の本表に表示することを求めます(IAS 33.66〜69)。しかも両者が同額の場合は1行にまとめて表示することが認められています

この違いは集計結果にそのまま表れました。

会計基準書類数希薄化後EPSの数値を取得できた件数割合
日本基準18,038件4,290件23.8%
IFRS1,349件1,052件78.0%
米国基準36件29件80.6%
合計19,423件5,371件27.7%

ただしIFRSの78.0%を「記載率」と読んではいけません。IFRSでは基本的EPSと希薄化後EPSの表示が求められ、両者が同額の場合には1行での表示も認められています。

本集計の1,052件(78.0%)は、EDINETのXBRLデータから希薄化後EPSの独立した数値を取得できた件数であり、残る22.0%(297件)が非表示であることを意味しません(実際、この297件のうち288件では基本EPSの数値が取得できています)。

一方、日本基準の23.8%は明文の不記載規定に基づく実質的な記載率です。

両者は性格の異なる数字なので、以下では母集団の主役である日本基準(18,038件)を軸に分析し、IFRSは別章で扱います。合計の27.7%も、性格の異なる母集団の合算なので単独では使わないでください。

日本基準の内訳:記載しない3類型が4分の3を占める

区分(日本基準18,038件)件数構成比
潜在株式調整後EPSを記載4,290件23.8%
記載なし①:潜在株式が存在しない10,543件58.4%
記載なし②:1株当たり当期純損失(赤字)1,879件10.4%
記載なし③:潜在株式はあるが希薄化効果なし1,284件7.1%
その他(様式特殊・自動判定不能)42件0.2%

会社ベースで見ると、日本基準のみを採用する3,895社のうち、集計期間中に一度でも潜在株式調整後EPSを記載したのは1,309社(33.6%)。全4,224社ベースでは1,587社(37.6%)です。「件数ベースで4件に1件」「会社ベースで3社に1社」——引用の際はこの2つを混同しないようご注意ください。

そしてこの区分は毎年入れ替わります。

日本基準の会社に限っても、前年は記載なしだった会社が新たに記載を始めたケースが延べ517件、逆に記載を取りやめたケース(赤字転落や新株予約権の失効・行使完了など)が延べ539件ありました。「今年から潜在株式調整後EPSを書くことになった」会社が、集計期間中に延べ500件を超えているということです。

希薄化率の目安:中央値0.57%、9割は6.16%以下【日本基準】

日本基準で希薄化率が算定できる4,289件の分布は、強烈な右裾の長い形をしています。最多層(46.9%)は希薄化率0.5%未満——基本EPSが100円なら潜在株式調整後は99円50銭以上、という「ほぼ誤差」の世界です。

パーセンタイルは75%点が2.10%、90%点が6.16%、95%点が10.87%。実務の物差しとしては、次のように整理できます(グラフ・表とも各区分は「下限以上・上限未満」です)。

自社の希薄化率日本基準・記載事例中の位置実務上の示唆
1%未満約61%が属する最多層ストック・オプション中心の標準的な水準
1%以上5%未満約27%SOの規模が大きい、または転換社債等が併存
5%以上10%未満約6.5%(上位1割圏)社内・IR向けに説明材料を用意しておく目安
10%以上5.7%(上位約6%)優先株式等の大型潜在株式。資本政策自体の説明が必要

平均値は2.85%ですが、これは後述する優先株式の超大型案件に引っ張られた数字であり、「普通の会社」の感覚に近いのは中央値0.57%のほうです。

なお上表の位置づけは分布上の相対順位を示すもので、「何%を超えると必ず投資家から質問される」といった因果を検証したものではありません。

記載パターンを分解する:9つの組合せと、希薄化を生む5類型【日本基準】

注記の「算定上の基礎」に登場する潜在株式の内訳を、日本基準の記載あり4,290件について重複のない組合せ(排他的分類)で集計すると、記載パターンは次のとおりです(子会社・関連会社等の潜在株式は商品横断の論点のため別掲)。

潜在株式の組合せ件数構成比
新株予約権(SO)のみ3,550件82.8%
転換社債型+新株予約権187件4.4%
商品名を特定できず(書式が特殊)199件4.6%
転換社債型のみ88件2.1%
優先株式のみ86件2.0%
優先株式+新株予約権84件2.0%
事後交付型株式報酬(PSU)+新株予約権34件0.8%
事後交付型株式報酬(RSU等)のみ21件0.5%
その他の組合せ41件1.0%

※商品の分類は注記に現れる語句(「新株予約権」「転換社債型新株予約権付社債」等)と「うち書き」行の機械判定によるものです。経済実態の分類ではありません。構成比は小数第2位を四捨五入しているため、合計が100%にならない場合があります。

排他的な商品の組合せは上記の9パターンですが、以下ではこれらを実務上重要な5つの論点に整理して解説します。

①最頻型:新株予約権のみ・分母調整だけ(82.8%)

圧倒的多数はこの型です。自己株式方式により「行使価格が期中平均株価を下回る新株予約権」だけを普通株式増加数に算入し、当期純利益調整額は「-」。注記もシンプルで、うち書きは「(うち新株予約権(株))」の1行だけです。

なお日本基準の記載事例の18.0%は、算入した新株予約権と並んで「希薄化効果を有しないため算定に含めなかった潜在株式の概要」に別の回号を記載しています。行使価格の異なるSOを複数回発行していれば、算入と除外が混在するのはむしろ自然な姿です。

②転換社債型:分子調整が入るメジャー型(関与290件)

転換仮定方式では、期首にすべて転換されたと仮定するため、分母に転換株式数(額面÷転換価格)を加えるとともに、分子に「転換されていれば発生しなかった費用」を税額相当額控除後で足し戻します

ここで足し戻すのは支払利息だけではありません。企業会計基準第2号29項は、支払利息のほか社債金額と発行価額との差額(発行差金等)の当期償却額、利払いに係る事務手数料等の費用も調整対象としています。

ゼロクーポン債でも発行差金の償却があれば調整額はゼロになりません。注記の「当期純利益調整額」に数字が入る代表例です。

③優先株式:希薄化率ランキング上位の正体(関与178件)

件数こそ少ないものの、インパクトは最大です。

転換型優先株式は「潜在株式調整後EPSが基本EPSの半分以下になる」ような大規模希薄化を生みます。優先配当を分子で調整する点も特徴です。分子調整の内訳行を機械抽出できた202書類のうち、優先配当関連の調整があったのは57書類(99行)

行数が書類数を上回るのは、多くの会社が「定時株主総会決議による優先配当額」と「中間優先配当額」の2行に分けて記載しているためです。

④子会社・関連会社等の潜在株式:知られざる上級論点(116書類)

意外に知られていないのがこの類型です。

連結子会社(特に上場子会社)や持分法適用会社がストック・オプションを発行している場合、その株式の希薄化を通じて親会社の連結EPSにも「子会社の潜在株式による調整額」として分子のマイナス調整が入ります(企業会計基準適用指針第4号33項ほか)。

三菱UFJフィナンシャル・グループ、カネカ、関西ペイントなど、大手の連結注記に静かに登場する論点です。

分子調整の内訳行を抽出できた202書類のうち、この型の調整行があったのは116書類(116行)と最大勢力でした(注記本文の語句だけで検出すると106書類。「連結子会社が発行した新株予約権に係る持分変動差額」のように表現が多様なため、検出方法により件数に幅があります)。持分法適用会社の潜在株式による調整(阪急阪神ホールディングスの「うち持分法による投資利益」など)もこの型に含まれます。

子会社上場やスタートアップ子会社へのSO付与を検討する際は、親会社EPSへの影響もセットで押さえておきたいところです。

⑤事後交付型の株式報酬・株式報酬信託

株式報酬のうち潜在株式として扱われるのは、原則として事後交付型(RSU、PSU、事後交付型の譲渡制限付株式報酬など)です。

事前交付型の譲渡制限付株式は交付時点で株式が発行済みとなるため、潜在株式ではなく発行済株式(の一部)として扱われる点が異なります(実務対応報告第41号ほか)。

事例ナビで「譲渡制限株式(RS/RSU)」に分類した事例も、注記上は事後交付分を潜在株式に含めているケースが中心です。

また、類型とは別の横断論点として、日本基準の記載事例の15.2%役員報酬BIP信託・株式給付信託等に言及し、期中平均株式数の計算上「控除する自己株式に含める」旨を注記しています。株式報酬制度を導入した年の注記ドラフトでは、この一文の要否を必ず確認してください。

希薄化率ランキング:上位は「再生ファイナンスの履歴書」

各社が潜在株式調整後EPSを数値で開示した最終年度ベースで、希薄化率が0%以上100%未満の通常レンジにある事例について上位10社を並べると、はっきりした共通点が浮かびます(現在時点の潜在的希薄化ランキングではない点にご注意ください。優先株式が消滅すれば以後は記載自体がなくなります)。

順位会社対象期希薄化率主な潜在株式その後の状況
1ユニチカ2026/388.7%優先株式
2じもとホールディングス2026/385.7%優先株式
3千代田化工建設2026/374.5%優先株式・信託
4河西工業2026/374.2%優先株式・信託
5東京電力ホールディングス2025/367.5%優先株式2026/3は純損失で記載なし
6筑波銀行2026/357.7%優先株式
7日本乾溜工業2025/957.5%優先株式
8高田工業所2023/356.0%優先株式2026/3は潜在株式なしで記載なし
9セーラー万年筆2021/1250.7%優先株式等2025/12は純損失で記載なし
10曙ブレーキ工業2026/349.8%優先株式・新株予約権

※当社機械集計値。すべて日本基準採用会社です。希薄化率が100%以上となる特殊な2件(後述)は本ランキングから除外しています。正確な数値・内容は各社有価証券報告書の原文をご確認ください。

10社すべてに優先株式が絡みます。

経営危機時に金融機関・ファンド・公的機関の引受で発行された転換型優先株式は、普通株式への転換を仮定すると発行済株式数の数倍に相当する株式が生まれることがあり、たとえばユニチカの2026年3月期の注記では、優先株式による普通株式増加数が4億6,201万8千株——期中平均株式数の約8倍規模——にのぼります。

基本EPS 310円33銭に対して潜在株式調整後は34円93銭。潜在株式調整後EPSという1行は、その会社が背負う資本政策の歴史をこれほど雄弁に語るのです。

さらに味わい深いのは「その後」の列です。

高田工業所は2026年3月期には「潜在株式が存在しないため記載していない」に変わりました。優先株式に伴う潜在的な希薄化が解消したということです。

この注記は、危機に入るときだけでなく、そこから抜けるときにも姿を変える——銀行(じもとHD・筑波銀行など公的資金系)、大型プロジェクトの損失を経たプラント会社(千代田化工建設)、事業再生ファンドの支援を受けたメーカー(曙ブレーキ・河西工業)と並ぶこのランキングは、そのままこの10年の日本企業の再生ファイナンス史になっています。

IFRS採用会社はどう違うか

IFRS採用会社(1,349件)は、前述のとおり損失計上期でも基本・希薄化後の両EPSを損益計算書の本表に表示します。希薄化率の水準も日本基準とはまったく異なりました。

指標日本基準(4,289件)IFRS(934件)
中央値0.57%0.14%
90パーセンタイル6.16%2.82%
希薄化率10%以上の割合5.7%1.8%

※両基準とも通常レンジ(基本EPSが正で、希薄化後EPSが0以上かつ基本EPS以下)の事例を対象としています。IFRSの934件は、希薄化後EPSの独立した数値を取得でき、かつ通常レンジに該当した事例であり、IFRS採用会社全体を表すものではありません。

IFRS側の中央値が0.14%と極端に低いのは、「希薄化がほぼゼロでも表示義務がある」ため、日本基準なら記載されない僅少な事例まで母集団に入るからです。

同じ「希薄化後EPS」という言葉でも、母集団の作られ方が違う以上、基準をまたいだ水準の単純比較には注意が必要です。事例を参照する際は、会計基準のフィルタを揃えることをおすすめします。

こぼれ話:19,423件を機械で読むと見えるもの

全量を機械で読むと、人間の目では出会えない光景に出会います。ある上場会社の有価証券報告書には「滞在株式調整後1株当たり当期純利益」という誤記がそのまま開示されていました(潜在→滞在の変換ミス)。

もうひとつ、当初は「データ抽出の誤り」を疑った事例があります。基本EPSはプラスなのに、希薄化後EPSがマイナスという組合せです。

ツバキ・ナカシマの2024年12月期(IFRS)では、基本的1株当たり当期利益22.91円に対し、希薄化後1株当たり当期利益は△2.12円。原文にあたると誤記ではなく、希薄化後利益の算定にあたり当期利益調整額として△1,029百万円が控除された結果でした。

潜在株式に係る分子のマイナス調整が大きければ、プラスの基本EPSがマイナスの希薄化後EPSに転じることは理論上あり得ます(子会社・関連会社等の潜在株式による調整でも同様の現象が起こり得ます)。

まれではあっても、直ちに誤りとは断定できないケースです。

式のうえでは希薄化率109.3%と算定できますが、ベンチマークの分布としては異質なので本記事では通常レンジから除外し、個別事例として扱っています。

もう1件の除外事例は逆に、丸めが生んだ見かけの100%でした。ある会社の基本EPSは0.01円、希薄化後EPSは0.00円。開示される数値が銭単位に丸められている以上、EPSが極端に小さい会社では率の計算そのものが意味を持たなくなります。

開示の世界にも一定の割合でヒューマンエラーは混ざり、同時に「一見おかしいが正しい」数字も存在する——他社事例を参照するときは、最後は原文と根拠(企業会計基準第2号・適用指針第4号の早見表)で確かめる姿勢が大切です。

事例ナビでも、数値が異例のものには「要確認」バッジを付けて機械集計の限界を明示しています。

実務チェックリスト:自社の注記を書くとき

  • 希薄化率が5%以上なら説明材料を準備——日本基準の記載事例のうち上位1割圏です
  • 行使価格>平均株価のSOは算入しないが、「算定に含めなかった潜在株式の概要」への記載は必要。算入・除外の併記は18.0%の事例で見られる普通の姿です
  • 分子調整の要否を商品ごとに確認——CBは支払利息に加え発行差金等の当期償却額・利払いに係る事務手数料等(基準29項)、優先配当、そして見落としやすい子会社・関連会社等の潜在株式
  • 株式報酬は事前交付型と事後交付型を区別。潜在株式として扱うのは原則として事後交付型です
  • 株式報酬信託の自己株式を期中平均株式数から控除する旨の一文(該当する場合)
  • 株式分割・併合をした期は前期数値も遡及修正——日本基準の記載事例の14.6%が分割・併合に言及しています

実際の計算とドラフト作成は1株当たり情報 計算ナビβで自社数値を入力すれば、希薄化判定から有報注記の表まで自動生成できます。

書きぶりに迷ったら事例ナビβで同じ類型の会社を絞り込み、注記原文を見比べるのが近道です。

集計方法とデータの限界

再現性のため、集計の前提を開示します。

  • データ源
    金融庁EDINETに提出された有価証券報告書のXBRL(CSV形式)19,423書類。対象決算期は2021年3月期〜2026年4月期、提出会社数4,224社。集計基準日は2026年8月22日
  • 抽出項目
    主要な経営指標等の基本EPS・潜在株式調整後EPS・1株当たり純資産額の各タグ(日本基準・IFRS・米国基準の各タクソノミに対応)と、「(1株当たり情報)」注記のテキストブロック全文
  • 連結・個別
    連結財務諸表を作成する会社は連結ベース、非連結会社は個別ベースを採用
  • 訂正報告書
    書類単位で集計しており、訂正報告書による事後修正は反映していません
  • 集計単位
    会社・年度ベース。同一会社が最大6年度分含まれるため、継続的に開示する会社ほど分布に重く反映されます(会社ベースの中央値ではありません)
  • 希薄化率の対象範囲
    分布・平均値およびランキングは、基本EPSが正で、希薄化後EPSが0以上かつ基本EPS以下となる通常レンジの事例を対象としました。基本EPSがマイナスの117件(IFRS等で損失期にも表示されるケース)、丸めにより率が100%となる特殊例1件、希薄化後EPSが負に転じる特殊例1件は、個別分析の対象とし、ベンチマーク分布からは除外しています
  • 希薄化率の算定
    開示された(銭単位に丸めた後の)EPS数値から算定しています
  • 分類方法
    注記の定型文言と「うち書き」行を正規表現で機械分類。書式が特殊な会社(日本基準の記載事例の約4.6%)は商品名を特定できず「特定なし」として集計しています

機械集計である以上、個社レベルの誤りは排除できません。引用・意思決定に用いる際は、必ずEDINETの原文をご確認ください。

よくある質問

Q1. 希薄化率は何%から「大きい」と言えますか?

日本基準の記載事例では、1%未満が約61%、5%以上が約12%、10%以上が5.7%です。

5%以上になると上位1割圏に入るため、社内やIRで説明材料を準備する目安になります。ただし優先株式による大型希薄化は率の大小より資本政策そのものの文脈で説明すべきものです。

Q2. 潜在株式調整後EPSを記載しなくてよいのはどんな場合ですか?

日本基準では、
①潜在株式が存在しない
②潜在株式はあるが希薄化効果を有しない(行使価格≧期中平均株価など)
③1株当たり当期純損失である

の3類型です。

当サイト集計では日本基準の約76%(13,706件/18,038件)がこのいずれかに該当します。文言の自動出し分けは計算ナビβが対応しています。なおIFRSでは損失期でも希薄化後EPSの表示が必要です。

Q3. IFRS採用会社の開示はどう違いますか?

IFRS(IAS第33号)では「基本的1株当たり当期利益」「希薄化後1株当たり当期利益」を、注記だけでなく損益計算書(または包括利益計算書)の本表に表示します。

損失計上期にも表示が必要な点が日本基準との最大の違いで、両者が同額であれば1行にまとめた表示も認められます。その結果、希薄化率の分布も日本基準とは大きく異なります(本文参照)。

Q4. データはどこで確認できますか?

本記事の集計元データは潜在株式調整後EPS 事例ナビβで公開しており、商品構成・論点・希薄化率レンジ・会計基準・決算年で5,371件を絞り込み、各社の注記原文(表形式に自動再構成)を閲覧できます。

まとめ

潜在株式調整後EPSの注記は、多数派にとっては「SOの増加株数を1行書くだけ」の静かな開示です。

日本基準の希薄化率の中央値0.57%という数字は、それを裏付けています。

しかし少数派——転換社債、優先株式、子会社・関連会社等の潜在株式、株式報酬信託——に足を踏み入れた瞬間、分子調整や但し書きの論点が一気に増える。この記事の類型と希薄化率の物差しが、自社がどちら側にいるのかを確かめる出発点になれば幸いです。

関連リンク

このテーマで、まだ知りたいことはありませんか?
他社事例、自社の場合の迷い、追加で見たいデータなどを教えてください。多くの実務家に共通する課題は、データ・記事・ツールの形で調査し公開します。
よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

目次