平成30年(2018年)の徴収関係判決まとめ|取立訴訟・第二次納税義務44件

平成30年(2018年)に出された徴収関係の裁判例44件を整理した年度版インデックスです。更正処分など「課税の当否」を争う課税関係判決とは別に、滞納処分・差押え・取立訴訟・第二次納税義務・詐害行為取消し・納税義務の承継など「徴収」をめぐる争いだけを集めています。各事案名から検索ツールで要旨を開けます。

結論:平成30年の徴収関係で、納税者側が主張を通したのは一部認容1件のみ。
収録44件のうち国側勝訴方向が43件、納税者側が一部認容を得たのは1件(東京高裁・徴収法39条/離婚に伴う財産分与と差押解除)にとどまりました。争点は「差押債権の取立訴訟(徴収法62条・67条)」「第二次納税義務(徴収法39条)」「詐害行為取消し・債権者代位」「徴収権の消滅時効・連帯納付」に集約されます。

1. 数字で見る平成30年の徴収関係判決

44
収録件数
1
納税者側が勝った件数
43
国側勝訴方向
0
却下・訴えの利益なし
23
地方裁判所
11
高等裁判所
6
最高裁判所
31
確定(残り13件は上訴等)

徴収局面では国側勝訴方向が中心で、納税者側の救済は限られます。平成30年は特に差押債権の取立訴訟が多く、勝ち負け以上に「どの論点でどう判断されたか」を確認する実務的価値が中心になります。

2. 徴収関係でよく争われた論点(平成30年)

差押債権の取立訴訟・取立権(国税徴収法62条・67条)

平成30年の徴収関係で圧倒的に多いのが差押債権の取立訴訟・取立権です。給与等の継続収入の差押えと差押え後の弁済・相殺(最高裁三判決/順号2018-12・13・14)、過払金返還請求権(2018-17・34・43)、ゴルフ預託金返還請求権(2018-40・41)、差押えと債権譲渡の競合(2018-42)など、対象債権ごとに論点が細かく分かれました。取立完了により訴えの利益が消滅する点も繰り返し確認されています(2018-22・35)。

第二次納税義務(国税徴収法39条)

第二次納税義務(39条)では、著しく低い額の対価による譲渡や無償譲渡、離婚に伴う財産分与、裁判上の和解による債務免除が争われました(順号2018-4・5・31・33・36)。唯一の一部認容(順号2018-5)も、財産分与と差押解除をめぐる39条事案です。

詐害行為取消し・債権者代位・虚偽表示による徴収保全

滞納者の責任財産を確保するため、債権者代位(民法423条)・詐害行為取消し(424条)・虚偽表示(94条)が用いられた事案です(順号2018-1・38)。滞納処分を逃れるための不動産の仮装譲渡などが問題となりました。

徴収権の消滅時効・中断と相続税の連帯納付義務

徴収権の消滅時効と、その中断(裁判上の請求・催告後の承認)が争点になりました(順号2018-15・30・33)。また相続税法34条の連帯納付義務と督促・差押えの関係(2018-16)も登場しています。

訴えの利益・処分性・無効確認等の訴訟要件/過大還付金の延滞税

滞納処分をめぐり、訴えの利益・処分性・無効等確認の訴えの補充性・差止めといった訴訟要件が数多く争われました(順号2018-7・22・23・28・32・44)。過大還付金に係る延滞税の計算期間(国税通則法60条2項)も複数登場しています(2018-19・37)。

3. 代表的な事例

平成30年の徴収関係判決から、論点ごとの代表例をピックアップしました(先頭は一部認容の事例)。

一部認容順号2018-5

離婚に伴う財産分与が国税徴収法39条の「著しく低い額の対価による譲渡」に当たるか、徴収懈怠と徴収不足額

東京高等裁判所・平成30年2月8日(上告・上告受理申立て)

夫Aから離婚に伴う財産分与で不動産を得た控訴人に対し、東京国税局長が徴収法39条の第二次納税義務を課した控訴審。財産分与のうち相当額(3000万円)を超える部分は不相当に過大で同条の著しく低額譲渡に当たるとし、原審の納付限度額(7724万円)超過部分の取消しを維持して控訴を棄却した事例。

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国側勝訴方向順号2018-12

委託業務報酬債権の差押え・取立てをめぐる取立訴訟(差押後の弁済の対抗・相殺)の上告審

最高裁判所第二小法廷・平成30年3月9日(確定)

滞納会社が被告に対して有する委託業務報酬債権を国が差し押さえ取立てを求めた取立訴訟の上告審。差押後の弁済は国に対抗できず相殺も認められないなどとして取立請求を認容した原判決に対する上告を、理由が民訴法312条・318条の事由に当たらないとして棄却・不受理とした事例。

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国側勝訴方向順号2018-4

国税徴収法39条の第二次納税義務と、第三者割当増資により受けた利益(株式)の評価(DCF法)の適否

仙台地方裁判所・平成30年2月5日(確定)

滞納会社が保有株式の価値を減少させる第三者割当増資の議決権行使をし、原告がその株式を引き受けたとして、仙台国税局長が徴収法39条の第二次納税義務を課した事案。受けた利益(株式)の評価は徴収法98条に基づく個別評価によるべきでDCF法の採用も不合理でないとして、請求を棄却した事例。

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国側勝訴方向順号2018-1

滞納会社の差押え逃れの土地譲渡と債権者代位・詐害行為取消しによる真正な登記名義回復

前橋地方裁判所高崎支部・平成30年1月10日(確定)

国が滞納会社に代位し、差押え逃れのため会社→B→被告と名義移転された土地について真正な登記名義の回復を原因とする所有権移転登記を求めた事案。各売買は通謀虚偽表示で土地は滞納会社に帰属するとして、主位的請求(債権者代位)を認容した事例。

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国側勝訴方向順号2018-16

相続税の連帯納付義務に係る督促処分の無効確認・差押処分の取消しと、前訴請求棄却判決の効力

東京高等裁判所・平成30年3月14日(確定)

兄が滞納した相続税につき相続税法34条の連帯納付義務を負うとして督促・差押えを受けた控訴人が、連帯納付義務を知らせなかった瑕疵があるとして督促の無効確認・差押えの取消しを求めた控訴審。督促処分の違法をいう前訴の請求棄却判決の確定により当該処分が違法でないことが確定しているなどとして控訴を棄却した事例。

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4. 平成30年 徴収関係判決 全44件

全44件の一覧(順号順)を開く/閉じる
結論順号裁判所事案原典
国側勝訴方向順号2018-1前橋地方裁判所高崎支部滞納会社の差押え逃れの土地譲渡と債権者代位・詐害行為取消しによる真正な登記名義回復原典
国側勝訴方向順号2018-2横浜地方裁判所差し押さえた賃料債権の帰属と、賃貸人の地位移転を主張する明渡・不当訴訟をめぐる紛争原典
国側勝訴方向順号2018-3大阪高等裁判所差し押さえた株式・組合持分の帰属(会社法130条1項の株主名簿・中協法17条の承諾)と徴収権の消滅時効原典
国側勝訴方向順号2018-4仙台地方裁判所国税徴収法39条の第二次納税義務と、第三者割当増資により受けた利益(株式)の評価(DCF法)の適否原典
一部認容順号2018-5東京高等裁判所離婚に伴う財産分与が国税徴収法39条の「著しく低い額の対価による譲渡」に当たるか、徴収懈怠と徴収不足額原典
国側勝訴方向順号2018-6横浜地方裁判所小田原支部差押え後に取得した立替金債権を自働債権とする相殺の差押債権者への対抗可否(民法511条)原典
国側勝訴方向順号2018-7東京地方裁判所公売公告処分の無効確認の訴えと行政事件訴訟法36条(補充性)の要件原典
国側勝訴方向順号2018-8那覇地方裁判所第三者納付した税額の還付請求権の消滅時効(国税通則法74条1項)と徴税権濫用の主張原典
国側勝訴方向順号2018-9東京地方裁判所国税通則法46条2項4号「事業につき著しい損失」の判断基準(基本通達46-11-2)と5号該当性原典
国側勝訴方向順号2018-10東京高等裁判所源泉所得税等の徴収権の消滅時効・免除・滞納処分の執行停止と、電話加入権差押え(徴収法48条2項)の効力原典
国側勝訴方向順号2018-11東京高等裁判所医療費控除額が記載された徴収税額変更通知書の勤務先送付とプライバシー侵害(国家賠償)原典
国側勝訴方向順号2018-12最高裁判所第二小法廷委託業務報酬債権の差押え・取立てをめぐる取立訴訟(差押後の弁済の対抗・相殺)の上告審原典
国側勝訴方向順号2018-13最高裁判所第二小法廷委託業務報酬債権の差押え・取立てをめぐる取立訴訟(差押後の弁済の対抗・相殺)の上告審(並行事件)原典
国側勝訴方向順号2018-14最高裁判所第二小法廷委託業務報酬債権の差押え・取立てをめぐる取立訴訟(差押後の弁済の対抗・相殺)の上告審(並行事件)原典
国側勝訴方向順号2018-15東京地方裁判所徴収権の消滅時効中断を目的とする租税債権存在確認請求(裁判上の請求)原典
国側勝訴方向順号2018-16東京高等裁判所相続税の連帯納付義務に係る督促処分の無効確認・差押処分の取消しと、前訴請求棄却判決の効力原典
国側勝訴方向順号2018-17東京簡易裁判所差し押さえた過払金返還請求権の取立てと、貸金業者の悪意の受益者性・過払充当合意原典
国側勝訴方向順号2018-18大分地方裁判所確定申告の無効・差押処分の取消し・申告所得税債務不存在確認・過誤納金・国家賠償をめぐる紛争原典
国側勝訴方向順号2018-19東京高等裁判所過大還付金に係る延滞税の発生(計算期間の起算日)と充当処分・公法上の不当利得原典
国側勝訴方向順号2018-20最高裁判所第一小法廷更正処分の取消し・徴収処分の取消しを併せて争った訴訟の上告審原典
国側勝訴方向順号2018-21那覇簡易裁判所差し押さえた貸金返還請求権の取立てと、差押え後の一部弁済・相殺(手数料債権)の対抗原典
国側勝訴方向順号2018-22東京地方裁判所差押処分・配当処分・交付要求の取消しと、滞納処分の猶予合意・免除合意・信義則原典
国側勝訴方向順号2018-23横浜地方裁判所修正申告の取消しを求める訴えの適法性(私人の公法行為)と差押処分に係る国家賠償原典
国側勝訴方向順号2018-24東京高等裁判所差し押さえた賃料債権の帰属と賃貸人の地位移転・不当訴訟をめぐる紛争の控訴審(順号2018-2の控訴審)原典
国側勝訴方向順号2018-25仙台高等裁判所申告所得税の取消し・修正・差押処分取消し・国家賠償等と更正の請求期間の徒過原典
国側勝訴方向順号2018-26東京地方裁判所差し押さえたゴルフ会員権(預託金返還請求権)の取立てと、年会費を自働債権とする相殺の対抗原典
国側勝訴方向順号2018-27東京地方裁判所譲渡担保に供された債権の弁済供託金還付請求権の取立権確認と、譲渡禁止特約による無効主張の可否原典
国側勝訴方向順号2018-28東京地方裁判所差押処分の差止めの訴えの「重大な損害」要件と、差押処分取消訴訟の審査請求前置(緊急性要件)原典
国側勝訴方向順号2018-29岐阜地方裁判所雑損控除を否認した更正処分に基づく差押え・取立てと過誤納金、差押えの事前通知義務原典
国側勝訴方向順号2018-30東京地方裁判所保証金返還請求権の差押え・取立てと、徴収権の消滅時効の中断(電話加入権・当座預金の差押え)・権利濫用原典
国側勝訴方向順号2018-31最高裁判所第一小法廷離婚に伴う財産分与と第二次納税義務(徴収法39条)をめぐる訴訟の上告審(順号2018-5の上告審)原典
国側勝訴方向順号2018-32東京高等裁判所公売公告処分の無効確認の訴えと行政事件訴訟法36条(補充性)(順号2018-7の控訴審)原典
国側勝訴方向順号2018-33前橋地方裁判所無償贈与と第二次納税義務(徴収法39条)、催告後の承認による徴収権の時効中断(民法153条)と徴収権の濫用原典
国側勝訴方向順号2018-34東京地方裁判所差し押さえた過払金返還請求権の取立てと、取引の一連一体性・悪意の受益者・期限の利益の喪失原典
国側勝訴方向順号2018-35福岡高等裁判所確定申告の無効・差押処分の取消し・誤納金・国家賠償をめぐる紛争の控訴審(順号2018-18の控訴審)原典
国側勝訴方向順号2018-36静岡地方裁判所裁判上の和解による販売手数料債務の免除が国税徴収法39条の「債務の免除」に当たるか、受けた利益の現存原典
国側勝訴方向順号2018-37最高裁判所第二小法廷過大還付金に係る延滞税と不当利得返還をめぐる訴訟の上告審(順号2018-19の上告審)原典
国側勝訴方向順号2018-38さいたま地方裁判所滞納会社の差押え逃れの不動産名義移転と債権者代位による所有権移転登記の抹消原典
国側勝訴方向順号2018-39福島地方裁判所差し押さえ・取り立てた供託金(仮処分の担保)と、取立後にされた相殺の可否(民法509条・相殺適状)原典
国側勝訴方向順号2018-40東京地方裁判所差し押さえたゴルフ預託金返還請求権の取立てと、据置期間延長決議・事情変更の法理・同時履行の抗弁原典
国側勝訴方向順号2018-41東京地方裁判所差し押さえたゴルフ預託金返還請求権(540万円)の取立てと、据置期間延長決議・事情変更の法理・同時履行の抗弁原典
国側勝訴方向順号2018-42東京簡易裁判所債権差押えと債権譲渡の競合・到達先後不明と、供託金還付請求権の案分による取立権の確認原典
国側勝訴方向順号2018-43京都簡易裁判所差し押さえた過払金返還請求権の取立てと、和解契約(民法695条)の確定効・悪意の受益者・期限の利益原典
国側勝訴方向順号2018-44東京高等裁判所修正申告の取消しを求める訴えの適法性(私人の公法行為)と差押処分に係る国家賠償の控訴審(順号2018-23の控訴審)原典

5. 関連まとめ

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まとめ

平成30年の徴収関係判決44件は、納税者側が主張を通したのは一部認容1件という結果でした。徴収局面では国側勝訴方向が中心ですが、差押債権の取立訴訟(徴収法62条・67条)、第二次納税義務(徴収法39条)、詐害行為取消し・債権者代位、徴収権の消滅時効・連帯納付といった論点が、滞納者側の防御の分かれ目になります。

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