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人的資本可視化指針ラボ【部長編①】|連結を回せる人が一人しかいない ── 自部門・全社・経営層、三つの視点で経理財務部長が決めること

人的資本可視化指針ラボ【部長編①】|連結を回せる人が一人しかいない ── 自部門・全社・経営層、三つの視点で経理財務部長が決めること
大野部長の学習ノート学ぶ世界部長編①人的資本可視化指針ラボ
会話大野部長・先生設例架空の製造小売(グロース上場・子会社3社・経理財務部8人)同じ図を学ぶ側からハルカの基礎編・応用編
はじめての方へ ── 設例の前提と、この記事で扱わないこと

設例:架空の製造小売(グロース上場・3月決算・子会社3社・経理財務部8人)。中計は出店拡大・海外展開・製造の内製化。CGコードは基本原則のみが対象で、多様性の目標は自主的な取組として扱います。

扱わないこと:指針の条文の解説はラボとハルカの基礎編・応用編に、数値の集計方法は人的資本開示ベンチマークに任せます。

登場人物は学習用のキャラクターで、解説内容は公認会計士・税理士が監修しています。製品名・サービス名は本文に出てきません。

📙 部長編① 三つの視点
1自部門管理者として誰を、どこまで、どう育てるか成果物:② 5段の試作2全社調整役として誰が何を書き、衝突したら誰が決めるか成果物:① 役割分担表3経営層説明する側として開示の前に、投資の方針を判断してもらう成果物:③ 一枚経営課題は一つ:連結を回せる人が、部長一人(「自分で書けない流れは、人に頼めない」)
はじめに

一つの経営課題を、三つの視点で

この記事について

ハルカの基礎編・応用編が「指針を理解する」記事なら、この部長編は「指針を自分の会社の仕事に変える」記事です。

経営課題
連結決算を回せるのが、部長一人設例の会社(子会社3社・経理財務部8人)では、担当不在で止まる業務が6つある。この属人化を、人的資本の「投資方針」として決め、有報の記載につなげるまでを検討します。
検討する三つの視点
1自部門の管理者として

誰を、どこまで、どう育てるか。育成中の業務をどう守るか

2全社の調整役として

有報の欄ごとに誰が何を書くか。部署の事情が衝突したら誰が決めるか

3経営層に説明する側として

開示の前に、何を判断してもらうか

到達点末尾の「決定事項」と、3つのひな形(役割分担表・5段の流れの試作・経営層向け一枚)
📙 ラボの図 基礎4 「依存」と「影響」

「依存」と「影響」:企業と人材はお互いに頼り、働きかけ合う

企業は人材に頼り(依存)、投資で人材を育てます(影響)。ここからリスクと機会が生まれます。

企業経営戦略ビジネスモデル 人的資本あるべき組織・人材 ① 依存(頼る) 戦略の実現は、必要な人材を確保できるかにかかっている ② 影響(働きかける) 採用・育成・賃金・福利・職場環境への投資 ③ 人的資本関連のリスク・機会 → キャッシュ・フロー、資金調達、資本コスト
依存と影響は一方通行ではない企業は人材に頼り(依存)、投資で人材を育てます(影響)。この循環が将来の業績を左右します。

🔬 「依存」「影響」「リスク・機会」を一つずつ表示する切替操作は、ラボで試せます ラボで開く ▶

視点1

自部門の管理者として ── 誰を、どこまで、どう育てるか

設例:経理財務部8人。連結を回せるのは部長1人。担当不在で止まる業務が6つ。
大野部長
有報の人的資本は、人事と経営企画が持つ話だと思っていました。
経理財務部長が最初にやることは何でしょうか。
先生
大野さん、その前に一つ聞かせてください。
経理財務部の人材戦略を、指針の5段の流れで書いたことはありますか。
大野部長
ありません。
指針は読みましたし、ラボの図も見ました。
ただ、部に戦略はありません。
あるのは中計です。
先生
指針の5段は会社単位ですから、それで正しいですよ。
部に当てはめるのは学習のためです。
中計の柱のどれが、経理に一番効きますか。
大野部長
設例の会社なら、子会社が毎年増える。
連結です。
先生
では、その柱に対して、会社は経理財務部の誰に依存していますか。
大野部長
部長です。
連結を回せるのは一人。
担当が休むと止まる業務が6つある。
先生
基礎4の言い方だと、会社が部長一人に「依存」している状態ですね。
影響のほうはどうですか。
部長は部下に何を与えていますか。
大野部長
……引き継ぎも手順書も、与えていないかもしれません。
自分でやった方が早いので。
先生
そこを正直に書けるのは大きいですよ。
リスクの段は、もう書けていますね。
大野部長
属人化です。
次の段は施策ですが、埋め方が分からない。
採用で埋めるか、育てるか。
先生
選択肢は三つでしょうね。
採用で埋める、育成で埋める、外に出す。
時間軸と、決算日数への影響が違いますよ。
大野部長
採用は即戦力が来れば早い。
ただ連結を一人で回せる人は市場に少ない。
育成なら2年。
外に出すと、仕組みが社内に残らない。
先生
海外子会社の立ち上げで、現地の人が自分で回せる形にしないと続かない、と覚えたんでしたよね。
大野部長
……同じことを、自分の部でやっていなかったわけですね。
育成を主、採用を補助にします。
先生
では指標です。
「連結を回せる人」を1から3へ、と言うとき、何ができたら「回せる」と数えますか。
大野部長
……精算表を組める、でしょうか。
先生
穴がありますね。
精算表は組めても、子会社の数字が合わないときに止まる人は、回せているとは言えないでしょう。
大野部長
確かに。
段階に分けます。
①子会社の数字の回収と照合、②連結精算表の作成、③注記の作成、④監査法人への説明。
④まで一人でできて1人と数える。
先生
それなら中間目標も置けますね。
来期末に②まで2人、3年後に④まで3人、のようにね。
大野部長
置きます。
もう一つ、育成中の決算をどう守るかです。
担当が組んだ精算表を、結局私が全件見直すなら、時間は増えるだけです。
先生
以前見た会社では、育成中の1年目に全件見直しをやめられず、部長の残業だけが増えて育成が止まりました。
見直す範囲を先に決めていなかったんですね。
大野部長
では、チェックリストで担当が自分で確認する。
私は子会社間の不一致や注記など、重要・高リスクの項目を重点的に見ます。
先生
見る範囲は、ずっと固定ですか。
大野部長
いいえ。
担当の習熟度に応じて見直します。
それと締め日を2日前倒しして、戻りの時間を作る。
先生
経営層はたぶん「育てている間、決算は遅くならないか」と聞きますよ。
先に言っておくことですね。
黙って遅くなるのが、一番まずいですよ。
大野部長
決算日数は12日から8日に縮める目標です。
育成の初年度は縮まらないかもしれない。
それを先に伝えます。
🔬 ラボで試す(30秒)

シミュレーションで、プリセット「労働集約型サービスを安定運営する」を選び、リスク・機会に「次世代のリーダー層」、人材戦略に「次世代リーダー育成・サクセッション」、指標に「後継者候補の充足率」を足してください。リスク→施策→指標が一本につながるので、4つの要素の充足度は下がらず、有報の記載イメージに後継者候補の行が加わります(施策だけを足すと「対応先のない施策」「指標のない施策」、指標だけを足すと「関係のない指標」と表示され、充足度が下がります)。経営戦略3年後・人的資本3年後で「整合」、人的資本を1年後にすると「先行しています。……その関係を説明しましょう」の表示に変わることも確かめてください。

ラボのシミュレーションを開く ▶
📙 ラボの図 基礎8 有報のどこに書くか

有価証券報告書のどこに書くのか

2026年3月期からの有報の目次です。「従業員の状況」の場所が第4【提出会社の状況】へ変わりました。

有価証券報告書 第一部【企業情報】第1【企業の概況】 1 主要な経営指標等の推移 (従業員の状況 → 第4へ移動)第2【事業の状況】 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 2 サステナビリティに関する考え方及び取組 ▸ 3 事業等のリスク第4【提出会社の状況】 4 コーポレート・ガバナンスの状況等 5 従業員の状況等 ▸新しい場所第5【経理の状況】 連結財務諸表(人件費は費用の中に) ▸2 サステナビリティに関する考え方及び取組・ガバナンス、リスク管理(必須)・戦略、指標及び目標(重要なものを記載)・人材育成方針・社内環境整備方針と、 その指標・目標・実績(2023年3月期〜)5 従業員の状況等(1)【人材戦略に関する基本方針等】NEW企業戦略と関連付けた人材戦略(連結ベース)NEW従業員給与等の決定方針(2)【従業員の状況】・従業員数、平均年齢・勤続年数・平均年間給与NEW平均年間給与の対前年増減率・女性管理職比率・男性の育児休業取得率・ 男女の賃金の差異(公表義務のある会社)
第4【提出会社の状況】5 従業員の状況等(記載イメージ)2026年3月期から、「従業員の状況」は第4へ移り、2本立てになりました。
・(1) 人材戦略に関する基本方針等:企業戦略と人材戦略、給与等の決定方針を書きます。
・(2) 従業員の状況:平均年間給与の対前年増減率が加わりました。
持株会社は、人材戦略をグループ全体で書きます。さらに「最大人員会社」の給与等の方針と、従業員数・平均年間給与などの数値も示します。
最大人員会社=外国会社を除く連結子会社のうち、従業員数が最も多い会社。その会社の従業員数が連結全体の過半数を超えないときは、次に多い会社も含みます。

🔬 2023年3月期との切替や、行ごとの説明は、ラボで試せます ラボで開く ▶

視点2

全社の調整役として ── 誰が何を書き、衝突したら誰が決めるか

設例:法定の多様性指標は人事部門が公表済み。戦略は経営企画。海外販売子会社がある。
大野部長
次は全社です。
有報の人的資本は、第2の「サステナビリティに関する考え方及び取組」と、第4の「従業員の状況等」に分かれます。
先生
ええ。
2026年3月期から、従業員の状況は第4に移りましたね。
法定の記載事項は、どちらに置きますか。
大野部長
女性管理職比率、男女間賃金差異、男性育休取得率は第4。
従業員給与等の決定方針と、平均年間給与の対前年増減率も第4ですね。
先生
そうです。
第2に書くのは、人材育成と社内環境整備の方針と、それに対応する指標・目標・実績ですね。
従業員数や多様性の指標、給与などは第4の記載を基準にして、第2では必要に応じて参照する形がいいでしょう。
大野部長
数値の持ち主は人事。
戦略は経営企画。
経理が書くのは……。
先生
改訂指針が勧めるのは、財務とのつながりと、連結平均に隠れるものを出すことですよ。
人件費・教育費と、セグメントや子会社別。
それは経理の仕事ですね。
大野部長
海外販売子会社を連結平均に入れると、離職率も賃金も、何も見えなくなります。
現地の定義で出すしかない、と思っていました。
先生
二つに分けると整理できますよ。
現地法令で公表している値は、そのまま尊重する。
グループ管理のために共通の定義でそろえた数字は、別に持てばいいですよ。
大野部長
両方持っていい、ということですか。
先生
ええ。
「公表値を正にする」は、法定の公表値を別の定義で勝手に置き換えない、という意味です。
連結の管理指標まで、提出会社の公表範囲に合わせる必要はありませんよ。
大野部長
では、共通定義で把握できる範囲はそろえ、定義が違う数値は、比較上の限界を注記で説明する。
先生
それで十分でしょうね。
ところで、人事は提出会社の範囲で公表し、経理は連結で把握したい。
この二つがぶつかったら、誰が決めますか。
大野部長
……決める人を決めていませんでした。
有報の取りまとめは経理財務部なので、私が案を決めて、経営会議で確認します。
先生
いいと思います。
役割分担表に「衝突したときの決め方」の行も入れておくといいですね。
以前見た会社は、有報の直前に「この数字は誰のものか」で止まりましたよ。
大野部長
作ります。
欄ごとに責任部署、数値の定義、集計範囲、締切、それと調整者。
3月決算なら、3月末までに定義と範囲、4月に実績値、5月に文章。
先生
一つ補足を。
設例の会社はグロース上場ですから、CGコードは基本原則だけが対象ですね。
原則2-2の多様性の測定可能な目標は、自主的に取り組んでいる前提で書いてください。
📙 ラボの図 応用H 株主還元と人的資本投資

株主還元と人的資本投資は「相反」するのか

株主還元と人的資本投資。改訂版は、両者を対立するものとは見ていません。

人的資本投資中長期の企業価値の向上株主のリターン(還元・株価)両者は相反しない質の高い投資は、企業価値を通じて投資家の利益になる
改訂版の見方人的資本投資で企業価値が上がれば、投資家の利益にもなります。目先の利益は減っても、中長期のリターンにつながるという考え方です。

🔬 「よくある見方:取り合い」との切替は、ラボで試せます ラボで開く ▶

視点3

経営層に説明する側として ── 開示の前に、投資の方針を判断してもらう

設例:育成を主にする方針。取締役会に出せる紙は一枚。
大野部長
役割分担表ができても、取締役会に一枚で出せるか、と自分に聞くと……出せません。
欄が多すぎる。
先生
一枚に載せるのは開示の話ですか。
それとも、投資の話ですか。
大野部長
……開示の話のつもりでした。
先生
順番が逆じゃないかな。
育成を主にするという投資方針を、経営層はまだ判断していませんよね。
開示は、決めた投資を説明するものですよ。
大野部長
では一枚は、判断してもらうことを並べる。
育成を主とする方針の承認、必要な予算と指導時間、決算短縮が進まない期間の扱い、半年後の見直し条件。
先生
社長の視点で言えば、聞きたいのは「いくらかけて、いつ効くのか」と「うまくいかなかったら、いつ分かるのか」でしょうね。
大野部長
予算は研修費が年120万円、私の指導時間が週4時間。
効果は来期末の中間目標で測ります。
先生
半年後には、何人がどこまで届いていればいいですか。
大野部長
育成する2人のうち1人以上が②まで。
2人とも①は単独でできていること。
届いていなければ、採用に切り替えます。
先生
それが一枚の中身ですね。
開示の方針は、その後ろに一行でいいでしょう。
大野部長
有報では法定事項を満たす。
そのうえで重点に説明するのは、比較できる指標3つと、独自指標1つ。
この数は設例の提案です。
先生
ええ、指針に固定の個数はありません。
独自指標の選び方で、一番大事なのは何でしょうか。
大野部長
自社の戦略の進捗を説明できること。
来年も同じ方法で測れること。
先生
その通りですね。
他社と比べられないことは条件ではありませんよ。
候補は何にしますか。
大野部長
「連結を回せる人数」と「店舗長の内部登用率」を並べて、一枚の中で比べます。
今は決めません。
先生
株主還元との関係は、一枚に入れますか。
大野部長
入れます。
人的資本投資は会計上は費用になりますが、経営上は将来の利益を支える投資として捉える。
基礎1の2社の図で説明します。
先生
それなら、取締役会の当日は、私は要りませんね。
決定事項 ── 一つの経営課題を、三つの視点で

経営課題:連結を回せる人が部長一人。育成を主、採用を補助とする投資方針を経営層に判断してもらい、有報の記載につなげる。

  • 自部門:「連結を回せる」=①子会社の数字の回収と照合 ②連結精算表の作成 ③注記の作成 ④監査法人への説明。④まで一人でできて1人と数える。目標は1→3人(3年後)、中間目標は来期末に②まで2人。育成中は担当のチェックリスト+締め日の2日前倒しで守り、部長は重要・高リスク項目(子会社間の不一致・注記など)を重点レビューし、担当者の習熟度に応じて範囲を見直す
  • 全社:役割分担表(欄ごとの責任部署・数値の定義・集計範囲・締切・調整者)。従業員数・多様性の指標・給与等は第4の記載を基準にし(第2の方針・指標・目標・実績は別に記載)、人事部門の公表値を別の定義で置き換えない。グループ管理の共通定義は別に持ち、定義が違う数値は比較上の限界を注記。衝突したときは部長が案を決め、経営会議で確認する
    • 3月末:定義と集計範囲
    • 4月:実績値
    • 5月:文章
    • 6月:開示(3月決算の場合)
  • 経営層:一枚に載せるのは、育成を主とする方針の承認/予算(研修費 年120万円)と指導時間(部長週4時間)/決算短縮が進まない期間の扱い(初年度は12日のまま可)/半年後の見直し条件(育成対象2人のうち1人以上が②まで、2人とも①は単独で可。満たさなければ採用に切り替え)。開示の方針はその後ろに一行(有報では法定事項を満たし、重点に説明するのは比較指標3つ+独自指標1つ=設例の提案)
ひな形

実務のひな形 ── 役割分担表・5段の試作・経営層向け一枚(Excel)

📙 ひな形 テンプレートの構成
① 役割分担と数値の定義記載欄/内容/責任部署/数値の定義・集計範囲/根拠/締切/調整者・確認(法定の第4を基準に)② 5段の流れの試作経営戦略/依存・影響/リスク・機会/人材戦略/指標及び目標(+別欄:実績・説明)③ 経営層向け一枚6ブロック:課題/投資方針/予算と指導時間/決算短縮との関係/見直し条件/開示の方針(一行)Excel 3シート。架空の会社の記入例入り。自社の状況に差し替えて使う

以下はすべて架空の会社の記入例です。Excelテンプレートでは記入例を残したまま配り、自社の状況に上書きして使います。

① 役割分担と数値の定義 ── 従業員数・多様性の指標・給与等は第4を基準に、第2は方針・指標・目標・実績を記載

記載欄内容責任部署数値の定義・集計範囲根拠締切調整者・確認
第4 従業員の状況等/連結従業員数セグメント別の従業員数。臨時従業員の年間平均雇用人員は外書き(一定の場合は省略可)人事(数値)連結。セグメント区分は有報と一致開示府令4月経理
第4/提出会社の従業員数・平均年齢・平均勤続年数・平均年間給与提出会社の数値。平均年間給与の対前年増減率を含む人事(数値)提出会社。給与は賞与・基準外賃金を含む開示府令4月経理
第4/従業員給与等の決定方針人材戦略を踏まえた給与等の決定の考え方人事(経営企画と)文章開示府令5月部長
第4/多様性の指標(女性管理職比率・男性育休取得率・男女間賃金差異)提出会社と連結子会社のうち、公表義務の対象となる会社の数値人事(数値)女性活躍推進法・育児介護休業法の公表値を基準。公表義務のある連結子会社は会社ごとに(任意公表のみは記載義務なし)。別の定義で置き換えない開示府令・女性活躍推進法等4月経理(整合性)
第4/人材戦略に関する基本方針等中計の柱と、依存する人材。基本方針経営企画(人事と)文章。中計と同じ用語を使う開示府令5月部長
第2 サステナビリティ(人的資本)/方針人材育成の方針・社内環境整備の方針。リスク・機会(3つのC)経営企画(人事と共同)文章。第4の基本方針と整合開示府令・改訂指針(5段の流れ)5月部長
第2/方針に対応する指標・目標・実績方針ごとの指標(法定の多様性指標は第4を参照)。独自指標は測定方法と戦略とのつながりを添える人事(数値)・経営企画(目標)提出会社か連結かを指標ごとに明記開示府令・改訂指針4〜5月経理(整合性)
第2/財務とのつながり人件費(研修費を含む内訳)・一人当たり売上の推移。投資としての説明経理財務部連結。有報の数値と一致させる改訂指針(コネクティビティ)4月部長
第2/セグメント・子会社別海外販売子会社の離職率・賃金。共通定義でそろえた管理指標と、現地法令の公表値経理財務部(子会社と)共通定義の範囲は連結で。定義が違う数値は比較上の限界を注記改訂指針(応用C)4月人事
第2/ガバナンス・リスク管理監督する機関(取締役会)・報告頻度・リスクの識別プロセス経営企画文章開示府令5月部長
CG報告書・短信との整合CGコード対応(グロースは基本原則のみが対象。原則2-2の多様性の目標は自主的な取組として)と有報の数値が合っているか経理財務部—CGコード・開示府令5月部長
衝突したときの決め方提出会社の公表範囲(人事)と連結の把握(経理)がぶつかったとき部長が案を決める経営会議で確認—随時経営会議

法定の公表値(女性活躍推進法等)を別の定義で置き換えない。グループ管理のための共通定義は別に持ってよく、定義が違う数値は比較上の限界を注記で説明する。有報では法定事項をすべて満たし、重点項目を絞るのは経営層向けの一枚の中だけ。

② 5段の流れの試作 ── 経理財務部(8人)に当てはめた例

段(指針の5段)全社なら持ち主経理財務部の記入例
① 経営戦略・ビジネスモデル経営企画中計の柱のうち「子会社が毎年増える」=連結。買収も視野
② 人的資本への依存・影響経営企画・人事依存:連結を回せる人が部長一人。影響:引き継ぎ・手順書・指導時間を与えていない
③ 人的資本関連のリスク・機会経営企画・人事リスク:属人化(担当不在で止まる業務6)。機会:子会社が増えても一つの会社として見られる部
④ 人材戦略(施策)人事育成を主、採用を補助。4段階の到達条件/チェックリスト/締め日の前倒し/レビュー体制の運用
⑤ 指標及び目標人事・経理連結を回せる人(④まで)1→3(3年後、中間目標:来期末に②まで2人)/担当不在で止まる業務 6→2
実績・説明(別欄)経理・IR来期末に中間目標の達成状況と、決算日数への影響を説明。半年後の見直し条件に照らして採用への切替を判断

5段は指針の原典どおり(経営戦略→依存・影響→リスク・機会→人材戦略→指標及び目標)。実績・説明は5段の外の別欄。部に当てはめるのは学習のためで、有報に書くのは会社全体の流れ。

③ 経営層向け一枚 ── 開示の前に、投資の方針を判断してもらう

ブロック載せること判断してもらうこと
1 経営課題と依存する人材連結を回せるのが部長一人。担当不在で止まる業務6。中計(出店・海外・内製化)で子会社が増える課題の認識の共有
2 投資方針育成を主、採用を補助。到達条件4段階。目標1→3人(3年後)、中間目標は来期末に②まで2人方針の承認
3 予算と指導時間研修費 年120万円(外部の連結実務研修・教材、2人分)。部長の指導時間 週4時間。締め日の2日前倒し予算と時間の承認
4 決算短縮との関係決算日数12→8日の目標に対し、育成の初年度は12日のままの可能性猶予する期間の扱い
5 見直し条件半年後に、育成対象2人のうち1人以上が②(連結精算表の作成)まで到達し、2人とも①は単独でできていること。満たさなければ採用(即戦力)に切り替える。年2回報告確認時期と切替基準の承認
6 開示の方針(一行)有報では法定事項を満たす。重点に説明するのは比較指標3つ+独自指標1つ(設例の提案)。人的資本投資は会計上は費用、経営上は将来の利益を支える投資重点項目の了承

重点項目を絞るのは、この一枚の中だけ。有報の法定事項は省略できない。「比較指標3つ+独自指標1つ」は設例の提案で、指針に固定の個数はない。

3シート入りのExcelテンプレート(役割分担と数値の定義/5段の流れの試作/経営層向け一枚)Excelをダウンロード
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ハルカ編基礎・応用理解する部長編①この記事仕事に変える部長編②(予定)外部との関係ケース編(予定)自社に当てはめる同じラボの図を、学ぶ側(ハルカ)と、決める側(部長)の両方から読む
おわりに

今日のふりかえり

大野部長
今日の三つの視点を、一言ずつにしておきます。
自部門は「到達条件を決めて、育成中の守り方まで決める」。
全社は「欄の責任者と定義、それと衝突したときの決め方」。
先生
さすがです。
経営層の視点は、どうなりますか。
大野部長
「開示の前に、投資の方針を判断してもらう」。……三つに共通するのは、自分で一度書いてみないと、どれも人に頼めない、ということですね。
先生
人の話を数字にするのは、数字を人の話に戻すことでもありますからね。
参考

一次情報・ラボ・前後の回

一次情報

  • 人的資本可視化指針(改訂版)・別紙・付録①(内閣官房・金融庁・経済産業省。指針・別紙は2026年3月23日、付録①は2026年3月公表)。5段の流れ・4つの要素・3つのC・独自性と比較可能性の原典。
  • 付録②「人的資本に関する開示基準・開示事項例の整理」(内閣官房・金融庁・経済産業省、2026年5月20日公表)。領域別の開示事項例。
  • 金融庁の公表ページ「人的資本可視化指針(改訂版)の公表について」(2026年3月23日公表、2026年5月20日に付録②を追加)。内閣官房の公表ページへのリンクがあります。
  • 企業内容等の開示に関する内閣府令(2026年3月期から「従業員の状況等」は第4【提出会社の状況】。人材戦略に関する基本方針等・従業員給与等の決定方針・平均年間給与の対前年増減率・多様性の指標)。法定の記載事項はこちらで確認する。
  • 女性の職業生活における活躍の推進に関する法律(女性活躍推進法)等に基づく公表項目(女性管理職比率・男女間賃金差異・男性育休取得率)。有報の数値は、公表値を別の定義で置き換えない。
  • コーポレートガバナンス・コード(2026年7月改訂版)。グロース市場は基本原則のみがコンプライ・オア・エクスプレインの対象。多様性の測定可能な目標は原則2-2「社内の多様性の確保」。

ラボ・ツール

ハルカが同じ図を学んだ回(会話記事)

学ぶ世界|人的資本可視化指針ラボ|部長編①
大野部長の学習ノートで、この回を見る / ハルカの学習ノートで人的資本可視化指針ラボの章を見る
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この記事を書いた人

TaxJudge編集部|公認会計士・税理士(実務25年)による企画・監修。会計基準・税法・裁決・有価証券報告書などの一次情報をもとに、検索できるデータベースと計算・判定・文書作成ツールを制作しています。