はじめての方へ ── 設例の前提と、この記事で扱わないこと
設例:架空の製造小売業(3月決算・連結売上高180億円・子会社3社〈製造・EC物流・海外販売〉・経理財務部8人)。製造子会社が原材料を米ドル建てで年1,200万ドル輸入している。海外販売子会社(親会社の100%子会社)は米ドルで決算し、年間の売上高は800万ドル、純資産は600万ドル。親会社は海外販売子会社に長期貸付金300万ドルを持つ(法人税の換算方法の届け出はしていない)。為替予約は振当処理を採っている。予算レートは期首に1本(1ドル140円)。昨年度の実績の平均は146円、輸入のうち予約を付けたのは平均4割で、その平均の予約相場は142円だった。輸入した原材料は、全額が当期の売上原価に入ったものとして簡略化している。数字と相場はすべて学習用の設例で、実際の相場ではありません。
扱わないこと:換算と為替予約の処理の手順はラボとハルカの基礎編・応用編・設例編に任せます。相場の予想、予約の時価の計算、ヘッジの有効性の評価の方法、通貨スワップ・通貨オプション、IFRS(機能通貨)、税効果、税務調整の書き方(税務調整編)は扱いません。
登場人物は学習用のキャラクターで、解説内容は公認会計士・税理士が監修しています。製品名・サービス名は本文に出てきません。
一つの経営課題を、三つの視点で
ハルカの基礎編・応用編・設例編が「外貨建取引を換算し、予約を処理できるようになる」記事なら、この部長編は「為替を、決算のあとの結果から、方針で管理するものにする」記事です。
社内レートを一つに。予算レートと決算の相場を分ける。予約台帳と方針書、二人目の育成
予約の量とタイミングをルールで決める。量を決める人・付ける人・記録する人を分ける
ヘッジ方針・予算レートの決め方・為替の影響の報告・感応度・見直しの条件
自部門の管理者として ── 社内レートと予約の処理を、一つにする
今日は為替です。
昨年度、予算に比べて営業利益が下振れした理由の半分が為替でした。
半分というのは大きいですね。
為替の影響は、いつ分かりましたか。
毎回「円安で原価が上がりました」と、結果を報告しているだけでした。
まず、社内レートはどうなっていますか。
ただ、グループで三つあると比べにくいでしょう。
どれも間違いではないんですよね。
だからこそ、会社として一つに決める理由が要るんですよ。
予約を振り当てた取引だけは、予約相場で計上します。
海外販売子会社の財務諸表を円に直すのは、それとは別のルールですね。
混ぜないように、表を分けます。
予算レートは、社内レートと同じものですか。
予算レートは期首に1本、140円で決めています。
業績を測る物差しです。
予算レートは管理会計の物差しで、決算は取引のときと決算日の相場で作りますよ。
そのずれを「為替の影響」として分けておけば、実力の差と混ざりませんね。
その差を為替の影響として、別の行に出します。
全部の科目はやりません。
為替予約の処理は、どうしていますか。
ただ、取引の前に付けた予約と後で付けた予約で、担当の処理がまちまちでした。
リスク管理の方針を書いた文書は、ありますか。
予約は購買の担当が、相場を見て付けています。
処理の足元の問題でもあるんですね。
これから方針書を作るのは大切ですが、過去の予約も、約定のときに要件を満たしていたかを確かめましょう。
後から作った方針書は、過去の処理の根拠になりませんよ。
示せないものは独立処理で計算し直して、影響額を出します。
足元では、予約の記録も整えたいですね。
予約ごとに、予約日・予約相場・決済日と、どの買掛金か予定の仕入かを書きます。
配分の表も台帳に付けます。
原則の独立処理から振当処理には変えられないので、今の方針を文書にして続けます。
担当の方は、どこまでできていますか。
④まで一人でできて「回せる」とします。
その人が休んだ月は、予約の処理が止まります。
二人目は、どう育てますか。
②までを来年、④までを再来年にします。
台帳は担当と私が二重に見て、責任は私が持ちます。
では、予約を付ける側の話に移りましょうか。
シミュレーション「為替予約の振当」で、プリセット「買掛金に取引後の予約(直先差額は益)」を開いてください。買掛金10,000ドルに取引の後で予約した設例で、振当処理なら当期が為替差損 35,000・翌期が為替差益 5,000、独立処理なら当期が為替差損 40,000・翌期が為替差益 10,000 です。2期の合計はどちらも為替差損 30,000 で、違うのは期の配分と科目の出方だけ。担当ごとに処理が違うと、四半期の為替差損益は比べられなくなります。
予約の設例を開く ▶全社の調整役として ── 予約の量を決める人、付ける人、記録する人を分ける
量もタイミングも、その都度の判断です。
円高に振れそうな月は付けず、円安に振れそうな月に多く付けていました。
それは、ヘッジというより相場を張っているのに近いかもしれませんよ。
担当は会社のためにやっていました。
ただ、相場は当てられない前提で仕組みを作るほうが、担当も守れますよ。
3か月先までの発注予定に、予約残高の目標比率を決めます。
1か月先は80%、2か月先は60%、3か月先は40%です。
100万ドルの月なら、3か月前に40万、2か月前と1か月前に20万ずつです。
発注の予定は、誰が出しますか。
3か月先までの月別のドルの発注予定を、毎月20日までに財務と経理に出してもらいます。
予定取引は、実行される可能性が極めて高いことが前提ですよ。
外れが続く月は、比率を下げます。
その根拠が、そのまま会計の説明にもなりますね。
予約を付けるのは、誰にしますか。
購買は量の根拠を出し、財務は方針の範囲で銀行と約定し、経理は台帳と処理と影響の分析をします。
購買の方は、納得しそうですか。
予約しなかった場合と比べて評価しないことを、先に決めておくといいでしょう。
方針から外れたいときは、私と製造子会社の社長で合意し、合わなければ経営会議で決めます。
海外販売子会社のドルは、どう見ていますか。
子会社の損益を円に直す影響と、輸入の支払いの影響は、性質が違いますよ。
親会社のドルの支払いに充てるお金ではありませんよね。
予約で固定できるのは、実際にドルで払う取引の方ですね。
だから、業績の為替の影響も二つに分けて見せたいですね。
予約の量は、取引の影響だけで考えます。
子会社の純資産の換算は、どう説明していますか。
損益は通りません。
毎期の説明にそのまま使えますよ。
親会社との取引は、親会社が使う相場で換算します。
前提を一つにするのは大事なことですね。
経営層に説明する側として ── 何を判断してもらうか
昨年度は、為替で原価が予算より約5,300万円増えたと、決算のあとに報告しました。
円高の年なら、「なぜ予約したのか」と言われたと思います。
経営層に何を判断してもらいますか。
比率と期間とタイミング、予約の権限と上限を、方針として承認してもらいます。
予約済みの分は予約相場、まだの分は予算を作る時点の先物相場で置いて、加重平均します。
予想を入れると、外れたときに誰の予想だったかの話になります。
三つ目は何ですか。
予算との差を、為替の影響と実力の差に分けて、四半期ごとに出します。
適用レートは、予約済みの分は予約相場、まだの分は実際の相場です。
そのうえで、取引の影響と換算の影響を分けて並べます。
輸入は年1,200万ドルなので、予約がなければ原価が年1,200万円増えます。
1円の円安でも、その3か月で増える原価は120万円です。
円安が続けば、いずれ原価に入りますよ。
その間に値上げや調達の見直しをするかを、経営層に決めてもらいます。
ほかに動くものは、ありますか。
純資産600万ドルは、為替換算調整勘定が600万円増えます。
ただ、売上は期中平均、純資産は期末の相場が1円動いたときの概算ですよ。
表の注に書いておきます。
ほかにはありますか。
会計の為替差益は、申告で減算することになりますよ。
予約しなかった場合より得か損かではなく、方針どおりかで見ることを、経営層にも了承してもらいます。
子会社への投資そのものは、ヘッジしますか。
為替換算調整勘定は感応度の表で見せるだけにして、純資産が1,000万ドルを超えたら検討します。
条件を決めて見送るのは、いい判断でしょう。
予約台帳と為替の影響の分析に、担当二人で月8時間を見込みます。
銀行の予約の枠も、輸入の半年分まで広げてもらいます。
見直しは、いつにしますか。
為替による原価の振れで、粗利率が予算から1ポイント以上ずれた四半期が2回あれば、比率を見直します。
損益への出方は、どう説明しますか。
取引の後に付けた予約の差額は、為替差損益として営業外に出ます。
だから、為替の影響の表は、営業利益と営業外をまたいで見たいですね。
経営課題為替の影響を、決算のあとに「結果」として報告している
- 社内レートと予約の処理を一つにする
- 予約の量を決める人・付ける人・記録する人を分ける
- ヘッジ方針を決めて、為替の影響を分けて報告する
- 社内レート
- 親会社と国内の子会社の外貨建取引を前月末のTTMに統一。予約を振り当てた取引だけは予約相場。在外子会社の財務諸表の換算は別のルール
- 二つの物差し
- 予算レート(期首に1本)は管理会計の物差し
- 決算は取引のときと決算日の相場で作る
- 月次で実績を予算レートでも引き直し、差を為替の影響として別の行に(ドル建ての仕入・海外販売子会社の売上と営業利益)
- 予約台帳
- 予約ごとに予約日・予約相場・決済日・対象を一行
- 同じ決済月の買掛金と予定の仕入をまとめて比例配分
- 処理の方針
- 振当処理を文書にして続ける。前提になるリスク管理の方針書を作る(視点3で承認)
- 過去の予約
- 約定のときに要件を満たしていたかを決裁の記録で確かめる。後から作った方針書は根拠にならない。示せないものは独立処理で計算し直し、影響額を監査法人と協議
- 到達条件
- ①社内レートでの換算と月次
- ②予約の処理
- ③在外子会社の換算と為替換算調整勘定の検算
- ④為替の影響の分析と監査法人への説明 → ④まで一人でできて「回せる」
- 二人目の育成
- 今年:予約台帳の記入
- 来年:②まで、再来年:④まで
- 台帳は担当と部長が二重に確認。責任は部長
- 量とタイミング
- 発注予定に対する予約残高の目標比率:1か月先80%・2か月先60%・3か月先40%(設例)
- 毎月同じ日に、既存の残高を差し引いて不足分だけ追加(100万ドルの月:3か月前40万→2か月前と1か月前に20万ずつ)
- 相場の予想で量を変えない
- 役割
- 購買:月別のドルの発注予定(毎月20日)
- 財務:方針の範囲で銀行と約定
- 経理:台帳・処理・為替の影響の分析
- 予定の仕入
- 過去の発注の実績と比べて確度を確かめた分だけ予約。決算をまたげば繰延ヘッジ損益
- 評価と決め方
- 担当は方針どおりに付けたかで評価する
- 方針から外れたいとき:経理財務部長と製造子会社の社長で合意 → 合わなければ経営会議
- 二つの影響
- 換算の影響(子会社の損益・純資産を円に直す)と取引の影響(ドルの支払い)を分ける。予約の量は取引の影響で考える
- 子会社の月次
- ドルの試算表を親会社と同じ形で。親会社との取引は親会社が使う相場で照合
- 効果の確認
- 年1回、予算レート・予約相場・実績の相場を一つの表に
- ヘッジ方針
- 比率・期間・タイミング・権限と上限(輸入の半年分)を方針として承認
- 予算レート
- 予約済みは予約相場、まだの分は予算編成時の先物相場で加重平均。相場の予想は入れない
- 報告の形
- 予算との差を為替の影響と実力の差に分けて四半期ごとに。為替の影響=(実績の適用レート−予算レート)×実績のドル額(予約済みは予約相場、未予約は実際の相場)
- 感応度
- 1円の円安で輸入の原価は年1,200万円増(向こう3か月は120万円)
- 海外販売子会社の売上800万円増、為替換算調整勘定600万円増、長期貸付金の為替差益300万円
- 売上は期中平均、純資産と貸付金は期末の相場が1円動いたときの概算。輸入は仕入額への影響(売上原価に入る時期は在庫の分ずれる)
- 予約で買えるのは時間。その間に値上げ・調達の見直しを判断
- 予約の評価
- 予約しなかった場合との損得で見ないことを了承してもらう
- 子会社への投資
- 今はヘッジしない。純資産1,000万ドル超で検討
- 時間と予算
- 担当二人で月8時間。予約の枠を輸入の半年分まで(設例)
- 見直し
- 1年後。粗利率が予算から1ポイント以上ずれた四半期が2回あれば比率を見直す
- 損益と税務
- 取引の前の予約:仕入が予約相場で原価に
- 取引の後の予約の差額:為替差損益で営業外
- 為替換算調整勘定は損益を通らない
- 長期貸付金:税務は届け出がなければ発生時換算法 → 申告で調整
実務のひな形 ── 予約台帳・情報の受け渡しルール・経営層向け一枚(Excel・PowerPoint)
以下はすべて架空の会社の記入例です。Excelテンプレートでは記入例を残したまま配り、自社の状況に上書きして使います。
① 予約台帳 ── 予約ごとに、対象・相場・処理を一行で
| 予約 | 対象 | 決済月 | 外貨額(ドル) | 予約日 | 予約相場 | 付けた時期 | 処理 | 会計への出方 | 担当/確認 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 社内レート | 親会社と国内の子会社(在外子会社の財務諸表の換算は別) | 毎月 | — | 前月末 | 前月末のTTM(例 145.20円) | — | 取引発生時の相場に使う(予約を振り当てた取引を除く) | — | 経理が毎月1営業日に公表 |
| FX-01 | 3月5日に計上した輸入の買掛金 | 4月 | 80万 | 3月10日 | 142円 | 取引の後 | 振当処理:直々差額は予約した期、直先差額は決済まで配分 | 為替差損益(営業外) | 財務/経理(台帳)・部長 |
| FX-02 | 5月の発注予定(予定の仕入) | 5月 | 60万 | 3月25日 | 141円 | 取引の前 | 決算日は時価評価して繰延ヘッジ損益。仕入は予約相場の円換算額で計上 | 原価(仕入) | 財務/経理 |
| FX-03 | 6月の発注予定(予定の仕入) | 6月 | 40万 | 3月25日 | 140円 | 取引の前 | 同上(3か月先は40%の段階) | 原価(仕入) | 財務/経理 |
| FX-04 | 7月決済の買掛金70万と発注予定50万 | 7月 | 90万 | 6月25日 | 139円 | 一部は取引の後 | 外貨額で比例配分(振当割合75%)。買掛金に52.5万、予定の仕入に37.5万 | 買掛金の振当分は予約相場、残りは決算時の相場 | 財務/経理・部長 |
| (予約なし) | 4月決済の買掛金の残り | 4月 | 20万 | — | — | — | 決算時の相場で換算 | 為替差損益(営業外) | 経理 |
予約を付けたら翌営業日までに一行を書く。一つの予約を複数の買掛金・予定の仕入に充てるときは、同じ決済月のものをまとめ、外貨額を基礎に比例配分する。予定の仕入は、過去の発注の実績と比べて実行の確度を確かめた分だけを対象にする。社内レートは予算レート(管理会計の物差し)とは別に扱う。Excelでは右側に管理用の列(方針の比率との差・予約日の直物相場・約定書の保存場所・効果の確認日)を加えている。
② 情報の受け渡しルール ── 量を決める人、付ける人、記録する人を分ける
| 資料 | 持っている部署 | 受け取り方 | 期限 | 経理の作業 |
|---|---|---|---|---|
| 月別の発注予定(3か月先まで・ドル額) | 製造子会社の購買 | 財務と経理に同じ表で提出 | 毎月20日 | 予約残高の目標比率(1か月先80%・2か月先60%・3か月先40%)から既存の予約残高を差し引き、不足分を追加予約の額として計算。過去の発注の実績と比べて確度を確認 |
| 為替予約の約定 | 財務 | 銀行の約定書の写しと台帳の一行 | 約定の翌営業日 | 予約台帳への記入、対象への割当て(比例配分) |
| 社内レート | 経理 | 親会社と国内の子会社に公表 | 毎月1営業日 | 前月末のTTMで、外貨建取引の換算をそろえる(在外子会社の財務諸表の換算は別) |
| 海外販売子会社の月次 | 海外販売子会社の経理 | 親会社と同じ形のドルの試算表 | 月末の翌月10日 | 期中平均での換算。親会社との取引は親会社が使う相場で照合 |
| 予算レート | 経営企画・経理 | 予約済みの分は予約相場、まだの分は予算編成時の先物相場で加重平均 | 予算編成時 | 予算の引き直しの物差しにする(相場の予想は入れない) |
| 為替の影響の分析 | 経理 | (実績の適用レート−予算レート)×実績のドル額で計算(適用レートは予約済みが予約相場、未予約が実際の相場)。取引の影響と換算の影響に分ける | 四半期末の翌月15日 | 経営会議の資料(感応度の表を付ける) |
| 予約の効果の確認 | 経理・財務 | 予算レート・予約相場・実績の相場を一つの表に | 年1回(期末) | 方針の見直しの材料にする |
| 方針から外れたいとき | — | 経理財務部長と製造子会社の社長で合意 | 随時 | 合わなければ経営会議で決める |
比率・期限・日付は設例の提案。予約を付けるのは財務で、購買は量の根拠を出し、経理は記録と処理と分析を受け持つ。予約の担当は、予約しなかった場合との比較ではなく、方針どおりに付けたかで評価する。
③ 経営層向け一枚 ── 為替を、方針で決めて、影響を分けて報告する
| ブロック | 載せること | 判断してもらうこと |
|---|---|---|
| 1 課題 | 為替の影響を決算のあとに結果として報告している。昨年度は予算レート140円に対し実績の平均146円、予約は輸入の平均4割(平均の予約相場142円)で、為替による原価の増加は予算比で約5,300万円(設例。1,200万ドル×(142円×40%+146円×60%−140円)。輸入した原材料は全額が当期の売上原価に入ったものとする) | 課題の共有 |
| 2 ヘッジ方針 | 3か月先までの発注予定に対する予約残高の目標比率を1か月先80%・2か月先60%・3か月先40%とし、毎月同じ日に、既存の予約残高を差し引いて不足分だけ追加予約する。予約は財務が方針の範囲で約定し、上限は輸入の半年分。方針から外れるときは経理財務部長と製造子会社の社長で合意し、合わなければ経営会議 | 方針の承認 |
| 3 予約の評価 | 予約しなかった場合より得か損かではなく、方針どおりに付けたかで評価する | 評価の考え方の了承 |
| 4 予算レートの決め方 | 予約済みの分は予約相場、まだの分は予算編成時の先物相場で置き、加重平均する。相場の予想は入れない | 決め方の承認 |
| 5 報告の形 | 予算との差を、為替の影響(実績の適用レートと予算レートの差×実績のドル額。適用レートは予約済みが予約相場、未予約が実際の相場)と実力の差に分けて、四半期ごとに報告する。為替の影響は取引の影響と換算の影響に分ける | 報告の形の承認 |
| 6 感応度 | 1円の円安で:輸入は予約がなければ原価が年1,200万円増(向こう3か月は予約済みの分を除き120万円)。海外販売子会社の売上800万円増、為替換算調整勘定600万円増、長期貸付金の為替差益300万円(営業外)。売上は期中平均、純資産と貸付金は期末の相場が1円動いたときの概算。輸入は仕入額への影響で、売上原価に入る時期は在庫の販売状況で異なる。予約で買えるのは時間で、その間に値上げや調達の見直しを判断する | 値上げ・調達の見直しを判断する場の設定 |
| 7 子会社への投資のヘッジ | 今はしない。為替換算調整勘定は感応度の表で見せる。純資産が1,000万ドルを超えたら検討する | 見送りと条件の承認 |
| 8 時間と予算 | 予約台帳と為替の影響の分析に担当二人で月8時間。銀行の予約の枠を輸入の半年分まで(設例)。二人目の育成:②まで来年、④まで再来年 | 時間と枠の承認 |
| 9 見直しの時期と条件 | 1年後に見直す。為替による原価の振れで粗利率が予算から1ポイント以上ずれた四半期が2回あれば、比率を見直す | 見直しの条件の承認 |
| 10 損益と税務への出方 | 取引の前の予約は仕入が予約相場で原価に、取引の後の予約の差額は為替差損益(営業外)に出る。為替換算調整勘定は損益を通らない。長期貸付金は、税務では届け出がなければ発生時換算法で、会計の為替差損益を申告で調整する | 説明の了承 |
比較欄 ── 昨年度のやり方と、方針どおりの予約(1円の円安の影響・設例)
| 比較項目 | 昨年度(相場を見て都度) | 方針(予約残高の目標80・60・40%) |
|---|---|---|
| 予約の量とタイミング | 月によって2割から8割。担当の判断 | 予約残高の目標比率に足りない分を、毎月同じ日に追加 |
| 向こう3か月の輸入(300万ドル)で増える原価 | 予約が平均4割 → 180万円 | 予約が平均6割 → 120万円 |
| 4か月目以降の輸入 | 予約なし → いずれ原価に入る | 予約なし → いずれ原価に入る(値上げ・調達の見直しを判断する時間を買う) |
| 予算レートの根拠 | 期首に1本(根拠の説明なし) | 予約相場と予算編成時の先物相場の加重平均 |
| 予約の担当の評価 | 結果の損得で言われる | 方針どおりに付けたかで見る |
「1か月先80%・2か月先60%・3か月先40%」「上限は輸入の半年分」「粗利率1ポイント・2回」「純資産1,000万ドル」「月8時間」は設例の数字と社内の目安。予算レート・感応度・予約の比率は管理会計と財務の方針で、会計基準に定めはない。会計基準が求めるのは、振当処理などヘッジ会計を使うときに、リスク管理方針に従った取引であることを取引のときに客観的に示せること(移管指針第2号第3・4項)。
今日のふりかえり
自部門は「社内レートと予約の処理を一つにする」。
全社は「量を決める人、付ける人、記録する人を分ける」。
経営層の視点は、どうなりますか。
外れた四半期があれば、その理由もぜひ聞かせてください。
一次情報・ラボ・前後の回
一次情報
- 企業会計審議会「外貨建取引等会計処理基準」・同注解(1979年6月26日設定、1999年10月22日最終改訂)。取引発生時の相場(注解 注2。前月末などの直近の一定日の相場も可)、振当処理(注解 注6・注7)、在外子会社の換算(三)。
- 企業会計基準委員会 移管指針第2号「外貨建取引等の会計処理に関する実務指針」(2024年7月1日最終改正、2024年11月1日の修正を反映)。振当処理の要件と継続(第3・4項)、予約の比例配分(第7項)、直々差額・直先差額(第8〜10項)、子会社持分のヘッジ(第35項)、在外子会社の資本の換算(第36項)。
- 企業会計基準委員会 移管指針第9号「金融商品会計に関する実務指針」。予定取引のヘッジと繰延ヘッジ損益(第169・170・174項)、複数のヘッジ対象への配分(第173項)。
- 法人税法第61条の8〜第61条の10・同施行令第122条の7(法定換算方法)、法人税基本通達13の2-1-2(取引日の相場とTTM・TTS)。
