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外貨建取引ラボ【基礎編】|先生と一緒に図で学ぶ為替差損益・為替予約・在外子会社の換算

外貨建取引ラボ【基礎編】|先生と一緒に図で学ぶ為替差損益・為替予約・在外子会社の換算

無料の学習ツール「外貨建取引ラボ」の読み方ガイドです。ラボの基礎タブを上から順に、先生と生徒の会話形式で見ていきます。登場する会社・為替相場・設例の数値はすべて架空の例です(原典の設例の数値は使っていません)。解説は公認会計士・税理士が監修しています。各行の図はラボの図そのものです。重要な節の最後には、ラボで30秒だけ手を動かす小さな実習を置いています。

今日の事例
導入設例の数字(P社の売掛金と、P社の在外子会社S社)
P社:ドル建ての売掛金1,000ドル(3月1日に売上、5月31日に入金)
取引発生時の相場(3/1)1ドル=120円 → 売掛金 120,000
決算時の相場(3/31)1ドル=125円 → 売掛金 125,000(為替差益 5,000)
決済時の相場(5/31)1ドル=123円 → 入金 123,000(為替差損 2,000)
S社:資本金+取得時の利益剰余金600ドル(支配獲得時 110円 → 66,000)
S社:当期純利益60ドル(期中平均 118円 → 7,080)
S社:期末の純資産660ドル(決算時 125円 → 82,500)
為替換算調整勘定9,420(純資産の部)
はじめに

今日の題材 ── ドル建ての売掛金と、ドルで決算する子会社

📍 ラボの場所:基礎タブ全体・設例・基礎1・9
ハルカ
先生、ドル建ての売掛金は毎月の仕訳で触っています。でも決算のたびに為替差損益が出て、しかも翌期にまた反対の損益が出るので、何をしているのか自信がありません。
先生
今日は2つの題材で考えていこうか。1つはP社のドル建ての売掛金 1,000ドル。もう1つは、P社がドルで決算する子会社S社を持っている場合なんだ。
ハルカ
売掛金は「相場でいくらになるか」、子会社は「ドルの決算書を円にする」話ですね。
先生
そのとおりだよ。前の半分が外貨建取引の換算、後ろの半分が在外子会社の換算。同じ円安でも、片方は損益、片方は純資産に出る。その違いが、今日の一番のポイントなんだ。
ラボの基礎タブを開きながら読むと分かりやすいですラボで開く ▶
📗 基礎 0 ラボの図

どの取引が「外貨建取引」? ボタンで切り替え
物品の売買・役務の授受…取引価額が外国通貨で表示資金の借入・貸付…決済金額が外国通貨で表示社債の発行…券面額が外国通貨で表示前渡金・仮払金/前受金・仮受金…外国通貨による支払・受入デリバティブ取引等…決済金額が外国通貨で表示
外貨建取引=売買価額その他取引価額が外国通貨で表示されている取引(注解(注1))

売掛金・買掛金だけでなく、借入・貸付、社債、前渡金・前受金、デリバティブまで広く含む。

ポイントは「外国通貨で表示されているか」。日本企業どうしの取引でも、ドル建てなら外貨建取引。

基礎 0

このラボの位置づけと対象 ── 外貨建取引の範囲

📍 ラボの場所:基礎タブ 0
ハルカ
外貨建取引は、物品の売買、借入・貸付、社債の発行、前渡金・前受金、デリバティブまで5つも並んでいますね。
先生
取引価額が外国通貨で表示されている取引は、全部が外貨建取引なんだ(注解(注1))。売掛金や買掛金だけの話ではないよ。
迷いポイント 日本の会社どうしの取引なら、外貨建取引にはならない?
ハルカ
相手が国内の商社なら、円の取引として扱えばよいのだと思っていました。
先生
それが、そうではないのだよ。契約で取引価額がドルで表示されていれば、相手が国内の商社でも外貨建取引なんだ。
ハルカ
では、ドルで表示されていても円で払う契約なら、どうなりますか。
先生
そこは会計と税務で分かれるんだ。会計は外貨建取引に当たり得るが、法人税では円払いの約定なら外貨建取引に当たらないよ(法人税基本通達13の2-1-1)。
💡 そうだったのか!
外貨建取引は取引価額が外国通貨で表示されている取引。相手が国内でも、ドル建てなら対象です。外貨表示・円払いの取引は、会計と税務で判定が分かれます。
📗 基礎 1 ラボの図

同じ1,000ドルの売掛金。決算日の相場が動いたら、円の帳簿はどうなる?
取引の事実(ドル建て)売掛金 1,000 ドル相手が払う金額は変わらない3月1日に売り上げ、5月末に回収×相場帳簿(円建て)発生時 120円 → 120,000決算時 125円 → 125,000換算差額 為替差益 5,000ドルの金額は同じでも、円で読む帳簿は決算日の相場で金額が変わる。その差が為替差損益。
外貨額1,000 ドル決算時の相場×125円発生時の円貨−120,000= 換算差額 益 5,000

💡 円安(1ドルの円の値段が上がる)になると、ドル建ての債権は円で見ると増える。債権なら益、債務なら損。

基礎 1

なぜ換算が要るか ── ドルの金額は同じでも、円の帳簿は相場で動く

📍 ラボの場所:基礎タブ 1
ハルカ
売掛金は 1,000ドル のまま変わらないのに、円で見ると 120,000 だったり 125,000 だったりします。
先生
日本の会社は円で帳簿を付けるからね。ドルの金額は同じでも、円に直すたびに相場が違うので、円の金額が動くんだ。その差が為替差損益だよ。
迷いポイント 円安になったら、ドル建ての売掛金は損?
ハルカ
円安はニュースで「悪いこと」のように聞くので、売掛金も損をするのだと思っていました。
先生
ドル建ての債権は、円安だと受け取れる円が増えるので益なんだ。買掛金のような債務は、払う円が増えるので損だよ。向きは債権か債務かで決まるんだ。
ハルカ
同じ円安なのに、売掛金は喜んで、買掛金は落ち込む。帳簿の中で気持ちがすれ違っていますね。
先生
すれ違っているように見えて、同じ相場を見ているだけなんだよ。
💡 そうだったのか!
ドル建ての債権は円安で益、債務は円安で損。外貨の金額は同じでも、円に直すときの相場で円の金額が変わり、その差が為替差損益になります。
⏱ 30秒だけラボで試す
  1. 基礎①の図で「円高になった(115円)」を押す

👀 同じ 1,000ドル の売掛金が 115,000 になり、換算差額は 為替差損 5,000。「変わらない(120円)」なら差額はゼロです。

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📗 基礎 2 ラボの図

3つの箱をクリック。導入設例(売掛金1,000ドル:発生120円 → 決算125円 → 決済123円)で、各段で何をするかを表示します
① 取引発生時発生時の相場で記録② 決算時決算時の相場で換算替え③ 決済時決済額との差が損益導入設例では:1,000ドルの売上を 120円で記録 → 売掛金 120,000。
① 取引発生時:取引発生時の為替相場で円に換算して記録する(基準 一 1)

直物為替相場が原則。合理的な平均相場や、直近の一定日の相場も使える(注解(注2))。

売上・仕入などの取引高と、売掛金・買掛金などの金銭債権債務が、同じ相場で記録される。

換算差額:為替差益 5,000決済差損益:為替差損 2,000取引発生時 120円① 取引発生時円貨 120,000決算時 125円② 決算時円貨 125,000決済時 123円③ 決済時円貨 123,000円/ドル
🧾 導入設例:売掛金1,000ドル(発生120円 → 決算125円 → 決済123円)
取引発生時:売上の計上(発生時の相場 120)
借方金額貸方金額
売掛金120,000売上高120,000
決算時:決算時の相場 125 で換算替え
借方金額貸方金額
売掛金5,000為替差益5,000
決済時:入金(決済時の相場 123)
借方金額貸方金額
現金預金123,000売掛金125,000
為替差損2,000

決算時の換算差額と決済差損益は、どちらも為替差損益。期をまたぐと、前期の差益と当期の差損に分かれる。

基礎 2

3段の流れ ── 取引発生時 → 決算時 → 決済時

📍 ラボの場所:基礎タブ 2
ハルカ
①取引発生時、②決算時、③決済時。3つの箱と、相場の折れ線が並んでいます。
先生
このラボは全部のタブでこの3段を使うんだ。①で発生時の相場 120円 で記録し、②で決算時の相場 125円 に換算替えして為替差益 5,000。③で 123円 で入金して為替差損 2,000 だよ。
迷いポイント 決算で出た為替差益 5,000 は、翌期に取り消す?
ハルカ
決算のときの換算替えは仮の処理で、翌期首に戻してから決済するのだと思っていました。
先生
会計では戻さないんだ。125,000 に換算替えした後の帳簿価額と、入金額 123,000 を比べて、差の 2,000 が当期の為替差損になるよ。
ハルカ
前期の益 5,000 と当期の損 2,000 で、合わせると益 3,000 ですね。
先生
そう、(123 − 120)× 1,000ドル と一致するんだ。2期に分かれても、合計は発生時と決済時の相場の差で決まるんだよ。
💡 そうだったのか!
流れは取引発生時 → 決算時 → 決済時。決算時の換算差額も決済差損益も為替差損益で、2期の合計は(決済時の相場 − 発生時の相場)× 外貨額になります。
⏱ 30秒だけラボで試す
  1. シミュレーション「金銭債権債務」で、プリセット「外貨建売掛金」を選ぶ
  2. 決算時の相場を 125 から 130 にする

👀 決算時の為替差益は 5,000 → 10,000、決済時の為替差損は 2,000 → 7,000。合計の為替差益 3,000 は変わりません。

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📗 基礎 3 ラボの図

「取引発生時の為替相場」は、どの相場を使う?
3/13/53/103/153/203/253/31取引日 3/15 の直物 120.4円取引ごとに、その日の直物為替相場で換算する(原則)
原則:取引が発生した日の直物為替相場(注解(注2))

売上・仕入と売掛金・買掛金を、取引日の相場で同じ金額に換算する。

税務も取引日の相場が原則で、対顧客直物電信売買相場の仲値(TTM)を使う(法人税基本通達13の2-1-2)。

基礎 3

取引発生時の換算 ── 直物為替相場が原則、平均相場や前月末の相場も使える

📍 ラボの場所:基礎タブ 3
ハルカ
取引日の直物相場が原則なのは分かります。でも毎日の相場を調べて仕訳するのは、かなり大変そうです。
先生
だから基準は、合理的な平均相場や、前月末・当月初などの直近の一定日の相場も認めているんだ(注解(注2))。実務では「前月末のTTM」を当月の社内レートにする会社が多いよ。
迷いポイント TTM・TTB・TTS のどれを使うかは、会計基準で決まっている?
ハルカ
会計基準に「仲値を使え」と書いてあるのだと思っていました。
先生
会計基準は「直物為替相場」とだけ定めていて、相場の種類は特定していないんだ。TTMが原則なのは税務の方で(法人税基本通達13の2-1-2)、実務では税務とそろえてTTMを使うことが多いんだよ。
ハルカ
毎日の相場を全部の仕訳に当てるつもりで、相場表を印刷して机に貼ろうとしていました。
先生
その相場表は、前月末の1行だけで足りるんだよ。ただし、決めた方法は継続して使うのが条件なんだ。
💡 そうだったのか!
取引発生時の相場は直物為替相場が原則。合理的な平均相場や前月末などの相場も使え、実務では前月末のTTMが多く使われます。
📗 基礎 4 ラボの図

B/Sの項目をクリック。どの相場で換算する?
資産負債・純資産外国通貨決算時CR外貨預金決算時CR外貨建売掛金決算時CR外貨建貸付金決算時CR棚卸資産(輸入品)発生時HRのまま外貨建有価証券区分による前渡金発生時HRのまま有形固定資産(輸入機械)発生時HRのまま外貨建買掛金決算時CR外貨建借入金決算時CR外貨建社債決算時CR外貨建未払費用決算時CR前受金発生時HRのまま純資産—紺=決算時の相場で換算替え(貨幣性) 灰=取引発生時の相場のまま(非貨幣性) 紫=有価証券(区分ごと)
外貨建売掛金 ── 決算時の為替相場(基準 一 2(1)②)

契約上の債権額が外国通貨で表示されている金銭債権(注解(注4))。

🧾 例:買掛金2,000ドル(発生120円 → 決算125円)
決算時:決算時の相場 125 で換算替え
借方金額貸方金額
為替差損10,000買掛金10,000

負債は円安で円の金額が増えるので為替差損。

基礎 4

決算時の換算 ── 貸借対照表のどこを換算替えするか

📍 ラボの場所:基礎タブ 4
ハルカ
B/Sの項目に「決算時CR」と「発生時HRのまま」が混ざっています。輸入した機械は発生時のままなんですね。
先生
換算替えするのは、外国通貨・外貨建金銭債権債務・外貨建有価証券なんだ。機械や商品のような非貨幣性の資産は、円の取得原価が決まった後は為替で動かさないよ。
迷いポイント 長期の外貨建借入金は、取得時の相場のまま?
ハルカ
返済がずっと先なら、決算のたびに換算替えしなくてもよいのだと思っていました。
先生
会計は長期でも決算時の相場なんだ。1999年の改訂で一本化されたよ。ただし税務は、長期の債権債務だと発生時換算法が法定なので、そこでずれが出るんだ。税務調整編で見ていこうか。
💡 そうだったのか!
決算時の相場で換算替えするのは外国通貨・外貨建金銭債権債務・外貨建有価証券。棚卸資産・固定資産・前渡金は取得時の円貨額のままです。
📝 棚卸資産ラボ【基礎編】(取得原価と期末の評価)記事を読む ▶
📗 基礎 5 ラボの図

為替差損益は、損益計算書のどこに、どう出す?
売上高売上原価販売費及び一般管理費営業利益営業外収益営業外費用経常利益特別損益← 為替差損 5,000(純額・1行)売掛金の差益 5,000 と買掛金の差損 10,000 を相殺→ 純額 損 5,000 を1行で表示(第28項)
売掛金の換算差額益 5,000買掛金の換算差額損 10,000= 為替差損益(純額)損 5,000

💡 決済差損益も換算差損益も「為替差損益」として一本化し、差益と差損を相殺した純額で営業外損益に表示する(第28項)。

基礎 5

為替差損益の表示 ── 営業外損益に純額で1行

📍 ラボの場所:基礎タブ 5
ハルカ
売掛金の為替差益 5,000 と、買掛金の為替差損 10,000 が、純額で営業外費用の「為替差損 5,000」の1行になっています。
先生
換算差額も決済差損益も「為替差損益」として一本にまとめて、差益と差損を相殺した純額で表示するんだ(第28項)。営業外損益の一項目だよ。
迷いポイント 円安で大きな為替差損が出た年は、特別損失にできる?
ハルカ
相場が急に動いた年なら、臨時のものとして特別損失に出したくなります。
先生
相場が大きく動いただけでは営業外損益のままなんだ。特別損益にするのは、経常取引以外の取引から生じて重要な場合や、特殊な要因で異常かつ多額に発生した場合に限られるよ(第28項)。
ハルカ
為替差益と為替差損が相殺されて1行になるなんて、帳簿の中で仲直りしているみたいですね。
先生
仲直りというより、同じ為替相場という1つの原因から出た損益だから、まとめて見せるんだよ。
💡 そうだったのか!
為替差損益は差益と差損を相殺した純額で、営業外損益に1行。特別損益になるのは、経常取引以外で重要な場合や異常かつ多額の場合だけです。
📗 基礎 6 ラボの図

行をクリック。同じ値動き・同じ相場でも、区分で差額の行き先が変わる
区分外貨の金額相場差額の行き先売買目的有価証券外貨の時価決算時CR全部が損益(評価損益)満期保有目的債券外貨の償却原価決算時CR為替差損益(償却額は利息)その他有価証券外貨の時価決算時CR評価差額(純資産)※債券は注10子会社株式・関連会社株式外貨の取得原価取得時HR差額なし(換算替えしない)
外貨の時価5,500 ドル相場×125円取得時の円貨−600,000= 差額 87,500 → 損益 87,500

💡 全部が当期の損益(評価損益)(第12項)。導入設例:100株を@50ドル(120円)で取得、期末の時価@55ドル・125円。

🧾 例:売買目的有価証券(100株@50ドル・120円で取得 → 時価@55ドル・125円)
決算時:時価評価(売買目的)
借方金額貸方金額
売買目的有価証券87,500有価証券評価益87,500

円の時価 687,500 − 取得時 600,000。その他有価証券なら同じ額が評価差額金(純資産)。

基礎 6

外貨建有価証券 ── 4つの区分で、相場と差額の行き先が変わる

📍 ラボの場所:基礎タブ 6
ハルカ
同じ 100株、同じ時価、同じ相場なのに、売買目的なら損益 87,500、その他有価証券なら純資産 87,500、子会社株式なら差額なし。行き先が全部違います。
先生
有価証券は「外貨の金額をどう決めるか」と「どの相場を掛けるか」を区分ごとに決めるんだ。売買目的は時価×決算時で全部損益、その他有価証券は評価差額として純資産、子会社株式は取得時の相場のままだよ。
迷いポイント その他有価証券の為替部分 25,000 だけは、為替差損益にしなくてよい?
ハルカ
時価の変動は評価差額でも、相場の変動の分は為替差損益に出すものだと思っていました。
先生
株式は、為替部分も含めて評価差額として純資産に入れるのが原則なんだ(第16項)。債券に限って、外貨の時価変動分を評価差額、残りを為替差損益にできるよ(第16項ただし書き・注10)。
💡 そうだったのか!
外貨建有価証券は区分ごとに相場と差額の行き先が変わる。売買目的は損益、その他有価証券は純資産(債券は為替部分を損益にできる)、子会社株式は換算替えしません。
⏱ 30秒だけラボで試す
  1. シミュレーション「外貨建有価証券」で、プリセット「売買目的有価証券」を選ぶ
  2. 決算時の相場を 125 から 110 にする

👀 時価は上がっているのに円高なので、損益は 87,500 → 5,000。下の比較表では、満期保有目的(額面)が ▲50,000 の為替差損になります。

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📗 基礎 7 ラボの図

同じ買掛金と為替予約。原則と特例で、何が違う?
買掛金 10,000ドル取引日 120円 → 決算日 123円決算時の相場で換算替え換算差額:為替差損 30,000(買掛金は予約と無関係に動く)為替予約(買予約 123円)デリバティブとして時価評価決算日の先物相場 122円評価損益:為替差損 10,000(正味の債権・債務をB/Sに計上)当期の損益=買掛金の換算差額+予約の評価損益=為替差損 40,000 (ヘッジ会計の要件判定は不要・第168項)
原則:為替予約はデリバティブとして時価評価し、買掛金は決算時の相場で換算する(金融商品基準・第3項、金融商品実務指針第167〜168項)

両方とも損益に出るので、ヘッジの効果は自動的に当期の損益に反映される。この処理はヘッジ会計の対象外で、要件の判定もいらない。

予約の時価は決算日の先物相場で測る。この設例では先物相場 122円 で評価している。

基礎 7

為替予約 ── 原則は独立処理、特例として振当処理

📍 ラボの場所:基礎タブ 7
ハルカ
原則の独立処理は、買掛金の換算差額 為替差損 30,000 と予約の評価損 10,000 で、当期の損益は 損 40,000。特例の振当処理は 損 35,000 です。
先生
為替予約はデリバティブだから、原則は時価評価して損益にするんだ。買掛金も決算時の相場で換算替えするので、両方が損益に出て、ヘッジの効果が自動的に反映されるよ。この処理はヘッジ会計の要件判定もいらないんだ(金融商品実務指針第168項)。
迷いポイント 為替予約をしたら、いつでも振当処理を選べる?
ハルカ
予約した以上は、買掛金を予約相場で固定して表示するのが自然だと思っていました。
先生
振当処理は、ヘッジ会計の要件を満たす場合に「当分の間」認められる特例なんだ(注解(注6)、第3・4項)。会計方針として決めて継続するもので、原則的処理から振当処理への変更は認められないよ。
💡 そうだったのか!
為替予約は原則が独立処理(時価評価)、特例が振当処理。振当処理はヘッジ会計の要件を満たす場合の「当分の間」の特例で、継続適用が条件です。
📗 基礎 8 ラボの図

取引の後で予約したとき、為替予約差額はどう分ける?
直々差額:為替差損 40,000取引発生時 120円取引日(1/31)円貨 1,200,000予約日の直物 124円予約日(2/28)の直物円貨 1,240,000予約相場 123円円/ドル直先差額=(予約相場 123 − 予約日の直物 124)× 10,000ドル = 益 10,000 → 期間配分
取引日の円貨1,200,000予約日の直物で1,240,000直々差額 損 40,000(予約日の期の損益)
予約日の直物で1,240,000予約相場で1,230,000直先差額 益 10,000(期間配分)

💡 直々差額=取引日から予約日までに「すでに起きた」相場変動。直先差額=予約日の直物と予約相場の差で、2通貨の金利差が主な正体(第8・54項)。

🧾 導入設例:買掛金10,000ドル(取引120円 → 予約日の直物124円・予約相場123円 → 2か月で決済)
予約日:直々差額(取引日の相場 120 → 予約日の相場 124)
借方金額貸方金額
為替差損40,000買掛金40,000
予約日:直先差額(予約日の相場 124 → 予約相場 123)を繰り延べる
借方金額貸方金額
買掛金10,000前受収益10,000
決算日:直先差額の当期配分(1/2か月)
借方金額貸方金額
前受収益5,000為替差益5,000
決済日:直先差額の残りの配分(1/2か月)
借方金額貸方金額
前受収益5,000為替差益5,000
決済日:予約相場 123 で決済
借方金額貸方金額
買掛金1,230,000現金預金1,230,000

直々差額 損 40,000 は予約日の期の損益、直先差額 益 10,000 は2か月に配分(当期 益 5,000・翌期 益 5,000)。

基礎 8

直々差額と直先差額 ── 取引の後で予約したときの分け方

📍 ラボの場所:基礎タブ 8
ハルカ
取引日 120円、予約日の直物 124円、予約相場 123円。差額が直々差額 損 40,000 と直先差額 益 10,000 に分かれています。
先生
取引の後で予約すると、為替予約差額を2つに分けるんだ。予約日までに「すでに起きた」相場の変動が直々差額で、予約日の期の損益。予約日の直物と予約相場の差が直先差額で、決済日まで期間配分するよ(注7・第8項)。
迷いポイント 直先差額も、予約した期に全部損益にしてよい?
ハルカ
予約した時点で金額は確定しているので、まとめて損益にした方が簡単だと思いました。
先生
原則は予約日の期から決済日の期まで、日数や月数で配分するんだ。この設例なら 2か月 のうち 1か月 が当期で、5,000 ずつだよ。重要性が乏しければ予約した期の損益にできるんだ(第8項ただし書き)。
ハルカ
直々差額は「もう起きたこと」、直先差額は「これから起きること」。為替予約差額に、過去と未来が同居しているんですね。
先生
未来の方は金利差が正体だから、毎月少しずつ損益に届くんだよ。
💡 そうだったのか!
取引後の予約は、直々差額は予約日の期の損益、直先差額は決済日まで期間配分。翌期分は前受収益・前払費用としてB/Sに残ります。
⏱ 30秒だけラボで試す
  1. シミュレーション「為替予約の振当」で、プリセット「買掛金に取引後の予約」を選ぶ
  2. 予約相場を 123 から 121 にする

👀 直先差額は 益 10,000 → 益 30,000、当期の配分は 5,000 → 15,000。直々差額 損 40,000 は変わりません。

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📗 基礎 9 ラボの図

在外支店は「同じ会社」。換算はどうなる?
外貨建売掛金・現金貨幣性→決算時CR棚卸資産非貨幣性→発生時HR有形固定資産非貨幣性→発生時HR買掛金・借入金貨幣性→決算時CR売上・費用損益項目→期中平均AR(または発生時)換算差額は本店と同じく為替差損益
原則:在外支店の項目は、本店と同じ方法で換算する(基準 二)

支店は本店と同じ会社なので、外貨建金銭債権債務は決算時の相場、棚卸資産・固定資産は取得時の相場。

収益・費用は期中平均相場によることができる(基準 二 1)。

基礎 9

在外支店 ── 本店と同じ方法、非貨幣性項目が小さければ特例

📍 ラボの場所:基礎タブ 9
ハルカ
在外支店は、外貨建売掛金は決算時、棚卸資産や固定資産は発生時のままと、本店と同じ並びです。
先生
支店は同じ会社の一部だからね。本店と同じ方法で換算して、換算差額は為替差損益なんだ(基準 二)。収益・費用は期中平均相場を使えるよ。
迷いポイント 在外支店の換算差額は、為替換算調整勘定になる?
ハルカ
海外にあるなら、子会社と同じように純資産に入れるのだと思っていました。
先生
支店の換算差額は、特例で決算時の相場に一括した場合も含めて、当期の為替差損益なんだ(基準 二 2)。純資産に入れるのは、別の会社である在外子会社の話だよ。
💡 そうだったのか!
在外支店は本店と同じ方法で換算し、差額は為替差損益。非貨幣性項目が小さければ、B/S項目をすべて決算時の相場にする特例があります。
📗 基礎 10 ラボの図

在外子会社の外貨のB/Sを円にすると、なぜ貸借が合わなくなる?
資産 960ドル×決算時 125 = 120,000負債 300ドル ×決算時 125資本 600ドル×取得時 110 = 66,000当期純利益 60ドル ×平均 118 = 7,080為替換算調整勘定 9,420← 貸借の差額(純資産に直接)資産・負債=決算時の相場資本=取得時・利益=発生時(平均)
資産・負債は決算時、資本は取得時、収益・費用は期中平均(基準 三 1〜3)

換算の結果、貸借が合わなくなる。その差額が為替換算調整勘定で、損益ではなく純資産の部(その他の包括利益累計額)に記載する(基準 三 4)。

親会社の投資は取得時の相場で固定されているので、子会社の資本も取得時の相場で換算しないと、資本連結で相殺できない(第36項)。

基礎 10

在外子会社の換算 ── 資産負債は決算時、資本は取得時、差額は為替換算調整勘定

📍 ラボの場所:基礎タブ 10
ハルカ
これ、在外子会社換算ラボでやった形ですね。資産・負債はいまの相場、資本はむかしの相場で換算するので、貸借が合わなくなる。
先生
ちゃんと覚えていたね。資産・負債は決算時 125円、資本は支配獲得時 110円、当期純利益は期中平均 118円 で換算するんだ。差額の 9,420 が為替換算調整勘定だよ(基準 三)。
迷いポイント 為替換算調整勘定 9,420 は、どの項目から出てきた?
ハルカ
貸借の差額なので、どこから出たかは分からないものだと思っていました。
先生
項目ごとに検算できるんだ。資本 600ドル ×(125 − 110)= 9,000 と、当期純利益 60ドル ×(125 − 118)= 420。合計が 9,420 になるよ。
💡 そうだったのか!
在外子会社は資産負債は決算時、資本は取得時、収益費用は期中平均で換算し、差額が為替換算調整勘定。項目ごとに(決算時の相場 − 換算した相場)× 外貨額で検算できます。
⏱ 30秒だけラボで試す
  1. シミュレーション「在外子会社」で、プリセット「100%子会社(円安)」を選ぶ
  2. 決算時の相場を 125 から 110 にする

👀 資本分の差額はゼロになり、為替換算調整勘定は 9,420 → ▲480(利益分 60ドル ×(110 − 118))。円高では純資産を減らす向きに出ます。

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📝 在外子会社換算ラボ【基礎編】(円換算と為替換算調整勘定)記事を読む ▶
📗 基礎 11 ラボの図

同じ1ドル110円→125円の円安で、なぜ売掛金は「損益」、在外子会社は「純資産」?
親会社が直接持つ売掛金 1,000ドル(個別財務諸表)取得時 110円 → 110,000決算時 125円 → 125,000差額 15,000損益計算書:為替差益 15,000子会社の純資産 1,000ドル(100%子会社)(連結財務諸表)取得時 110円 → 資本 110,000決算時 125円 → 純資産 125,000差額 15,000純資産の部:為替換算調整勘定 15,000同じ 1,000ドル・同じ相場の動き(110円→125円)・同じ差額 15,000。違うのは「損益を通すか、純資産に直接入れるか」。
なぜ片方は損益で、片方は純資産なのか

売掛金は近いうちに円に換えて回収する。相場の変動は、回収する円の金額に直接つながるので、当期の損益にする。

在外子会社への投資は、売る予定のない長期の投資。換算差額は現地の経営成績とは無関係で、まだ実現していないので、売却・清算のときまで純資産に置いておく(第42項)。

基礎 11

為替差損益と為替換算調整勘定 ── 同じ円安で、片方は損益・片方は純資産

📍 ラボの場所:基礎タブ 11
ハルカ
同じ 1,000ドル、同じ 110円 → 125円 の円安、同じ差額 15,000。それなのに売掛金は損益計算書、子会社は純資産の部に出ています。
先生
ここがこのラボの核心なんだ。売掛金は近いうちに円で回収するので、相場の変動は回収する円の金額に直接つながる。だから損益にするよ。
迷いポイント 在外子会社の換算差額も、毎期損益にした方が正直?
ハルカ
含み益が出ているなら、利益として見せた方が株主に親切だと思いました。
先生
子会社への投資は売る予定のない長期の投資で、換算差額は現地の経営成績とは無関係なんだ。まだ実現していないので、持分を手放すまで純資産に置いておくよ。
ハルカ
手放したときは、どこへ行くのですか。
先生
支配を失う売却なら売却損益に、支配が続く一部売却なら資本剰余金に行くんだ(第42-2・42-3項)。
ハルカ
売掛金の為替差益は今すぐ損益、子会社の分は手放すまで純資産で待機。同じ 15,000 なのに、片方だけ待合室に入れられているんですね。
先生
待合室から出る日は、株式を手放す日なんだよ。
💡 そうだったのか!
同じ円安でも、外貨建金銭債権債務は損益、在外子会社は純資産。違いは「近く円で決済するか」「長期の投資か」にあります。
📝 資本連結ラボ【応用編】(段階取得・追加取得・一部売却)記事を読む ▶

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この記事の図は、すべて外貨建取引ラボの画面そのものです。基礎タブを開けば、同じ図を見ながら読み返せます。

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今日のまとめ ── 迷いポイント早見表

迷いポイント答えラボ
国内の商社との取引なら外貨建取引にならない?取引価額がドルで表示されていれば外貨建取引(注解(注1))。外貨表示・円払いは会計と税務で判定が分かれる基礎0
円安なら、ドル建ての売掛金は損?債権は円安で益、債務は円安で損基礎1
決算で出た為替差益は翌期に取り消す?取り消さない。換算替え後の帳簿価額と決済額の差が決済差損益(基準 一 3)基礎2
TTM・TTB・TTS は会計基準で決まっている?会計基準は「直物為替相場」とだけ定める。TTMは税務の原則(13の2-1-2)基礎3
長期の外貨建借入金は取得時の相場のまま?会計は長期でも決算時の相場。税務は長期なら発生時換算法が法定基礎4
為替差損が大きい年は特別損失にできる?相場の変動だけなら営業外損益。特別損益は経常取引以外・異常かつ多額の場合だけ(第28項)基礎5
その他有価証券の為替部分は為替差損益?株式は為替部分も評価差額(純資産)。債券だけ為替部分を損益にできる(注10)基礎6
為替予約をしたら、いつでも振当処理?原則は独立処理。振当処理はヘッジ会計の要件を満たす場合の特例で継続適用(注6・第3・4項)基礎7
直先差額は予約した期に全部損益?原則は決済日まで期間配分。重要性が乏しければ予約した期の損益(第8項)基礎8
在外支店の換算差額は為替換算調整勘定?支店は為替差損益(基準 二 2)。純資産に入れるのは在外子会社基礎9
為替換算調整勘定はどこから出たか分からない?項目ごとに(決算時の相場−換算した相場)×外貨額で検算できる基礎10
在外子会社の換算差額も毎期損益にした方が正直?長期の投資で未実現なので純資産。手放すときに損益(支配継続の一部売却は資本剰余金)基礎11
おわりに

今日のふりかえり

先生
今日のまとめだよ。外貨建取引は取引発生時 → 決算時 → 決済時の3つの相場で追い、換算替えした差額は為替差損益。在外子会社は資産負債を決算時、資本を取得時で換算して、差額は為替換算調整勘定として純資産に置くんだ。
ハルカ
在外子会社換算ラボのときは「純資産にためる」だけ覚えていました。今日は、売掛金と並べて見て、なぜ片方が損益で片方が純資産なのか、理由まで言えるようになりました。
先生
理由まで言えれば、持分を手放したときに損益へ出ていく流れも、自然につながるよ。
ハルカ
ただ、円安のニュースを見るたびに「売掛金は喜んで、買掛金は落ち込む」と帳簿の気持ちを想像してしまいそうです。
先生
帳簿に気持ちはないけれど、向きを間違えない練習にはちょうどいいね。次の応用編では、決算時の平均相場、償却原価法、振当処理の対象、在外子会社の資本連結と税務との関係を見ていこうか。

参考資料

企業会計審議会「外貨建取引等会計処理基準」・同注解(1999年10月22日最終改訂)、企業会計基準委員会 移管指針第2号「外貨建取引等の会計処理に関する実務指針」(2024年7月1日最終改正・2024年11月1日修正反映)、企業会計基準第10号「金融商品に関する会計基準」・移管指針第9号「金融商品会計に関する実務指針」(2026年10月16日最終改正。2026年10月改正の適用は2030年4月1日以後開始する事業年度から)。基準確認日:2026年10月20日。ラボの設例は、原典の考え方と同じパターンを独自の数値で組み立てたものです(原典の設例の数値は画面に出していません)。

シリーズ:基礎編/応用編 / 設例編:金銭債権債務編(基礎1〜5)・為替予約編(基礎6・7、応用1〜3)・外貨建有価証券編(基礎8、応用4〜7)・在外子会社編(基礎9、応用8〜13) / 税務調整編 / 関連:在外子会社換算ラボ【基礎編】(円換算と為替換算調整勘定)/資本連結ラボ【基礎編】(投資と資本の相殺消去・のれん・非支配株主持分)/税効果会計ラボ【基礎編】(一時差異・繰延税金資産)

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この記事を書いた人

TaxJudge編集部|公認会計士・税理士(実務25年)による企画・監修。会計基準・税法・裁決・有価証券報告書などの一次情報をもとに、検索できるデータベースと計算・判定・文書作成ツールを制作しています。