令和5年(2023年)に国税不服審判所が公表した裁決を22件収録し、税目・結論・争点を一覧で整理しました。裁判所に持ち込む前段階である「審査請求」で、この1年どんな処分が争われ、どこで納税者の主張が通ったのかを俯瞰できる年度版インデックスです。
収録範囲:令和5年に裁決が出た国税不服審判所の公表裁決(裁決事例集 No.130〜No.133)。
最終更新日:2026年6月29日(現在 22件)。公表裁決は四半期ごとに追加されるため、今後も件数は増えます。
裁決は匿名化されており、課税関係に加え徴収関係(公売・差押え等)も含みます。裁判所の判決をまとめた令和5年 課税関係 税務裁判例まとめ、滞納・徴収局面は令和5年 徴収関係判決まとめとは別シリーズです。
1. 数字で見る令和5年の裁決
裁判所より「審判所」のほうが納税者は救済されやすい
同じ令和5年でも、裁判所の判決と審判所の裁決では結果の傾向が大きく異なります。
令和5年は、裁判所の約8%に対し審判所は約41%。審査請求は費用もかからず、訴訟より納税者の主張が通る余地が大きい——という実務上のセオリーが、この年もデータに表れています。※いずれも公表・収録分に基づく数値です。
2. 税目別の内訳
| 税目 | 件数 | 全部取消 | 一部 | 棄却等 |
|---|---|---|---|---|
| 共通・通則・徴収 | 6 | 1 | 1 | 4 |
| 所得税 | 6 | 0 | 3 | 3 |
| 相続税・贈与税 | 5 | 0 | 0 | 5 |
| 法人税 | 3 | 1 | 2 | 0 |
| 消費税 | 1 | 1 | 0 | 0 |
| その他 | 1 | 0 | 0 | 1 |
3. 処分が覆った9件
令和5年の裁決のうち、全部または一部で原処分が取り消された事例です。「どんな主張が審判所で通ったのか」は実務の指針になります。
工事代金の計上漏れ――「ずさんな処理」は隠蔽(重加算税)になるか
裁決 令和5年12月4日
建築工事業の法人で、専務取締役が現金で受領した工事代金7件が総勘定元帳に計上されず売上計上漏れとなった事案。原処分庁は隠蔽として重加算税を賦課したが、審判所は、領収証を故意に発行しなかった・控えを故意に破棄したとは認められず、売上高の0.2%弱で規則性もなく、受領金を個人費消したとも認定できないとして、故意の隠匿=「隠蔽」には当たらず重加算税の賦課要件を満たさないとし…
更正通知書の「別表と本文の金額が合わない」――理由不備で全部取消し
裁決 令和5年12月15日
消費税の仕入税額控除を否認する更正処分について、更正通知書に添付した別表では全額否認のように記載しながら、実際は一部を課税仕入れと認めた差額が通知書に記載されておらず、別表記載額と本文の控除対象仕入税額の減少額が一致しなかった事案。審判所は、その記載ではどの取引が否認されどれが容認されたか判別できず、判断過程を検証できないとして理由提示の不備があり、不備は更正処分全体…
インドのLLP等への支払は日印租税条約の「技術上の役務に対する料金」(国内源泉所得)に当たるか
裁決 令和5年8月15日
日本法人(IoT・アプリ開発業)が、自社が99.9%出資するインドのLLP(J社)等に支払った金員について、原処分庁が日印租税条約12条4項の「技術上の役務に対する料金」=国内源泉所得に当たるとして源泉所得税の納税告知をした事案。該当性とグロスアップ計算が争われ、審判所認定額により一部取消しとなった。
分割納付を継続中の滞納者に対する公売公告処分は、公売時期を誤った違法・不当な処分か
裁決 令和5年8月21日
運送業を営む滞納者(請求人)が分割納付誓約書に基づき継続納付している期間中に、原処分庁が請求人所有の不動産に公売公告処分を行った事案。審判所は、違法(裁量の逸脱・濫用)とまではいえないが、分割納付誓約期間内に直ちに公売に付した点で時期の判断が合理性を欠く「不当」な処分として全部取消しとした。
役員給与を返還した後の源泉徴収税額について、更正の請求で還付を受けられるか
裁決 令和5年4月12日
法人の元代表取締役が、役員報酬等の一部を不当利得返還請求訴訟の認容判決により法人へ返還した後、返還分に係る源泉徴収税額が過大だとして所得税等の更正の請求をした事案。審判所は、更正の請求で控除・還付できるのは「正当に徴収された又はされるべき所得税等の額」を超えない範囲に限られるとして、一部取消しとした。
一括取得した土地・建物の建物取得価額は、差引法か固定資産税評価額比あん分法か
裁決 令和5年6月21日
不動産賃貸業の請求人が、一括取得した土地・建物の建物代金を、総額から路線価ベースの土地代金を差し引く「差引法」で算定して法人税の減価償却費・消費税の課税仕入れを計算したのに対し、原処分庁が固定資産税評価額比あん分法で算定すべきとして更正処分をした事案。審判所は物件ごとに合理的な方法を判断し、一部取消しとした。
ネット販売で実在しない会社名等を使用した行為に、重加算税の「隠蔽又は仮装」が認められるか
裁決 令和5年1月27日
会社員が副業のインターネット販売の収益を期限後申告したところ、原処分庁が、実在しない会社名や親族の名を使用するなどの隠蔽仮装があったとして重加算税等を賦課した事案。隠蔽又は仮装の行為も偽りその他不正の行為も認められず、重加算税相当部分が取り消された(一部取消し)。
貸金返還債務の遅延損害金は、どの年分の不動産所得の必要経費に算入されるか
裁決 令和5年3月23日
不動産所得の必要経費に算入した貸金返還債務の遅延損害金について、原処分庁が、算入できるのは遅滞日が当該年分に属する分に限られるとして更正処分をしたのに対し、請求人が分割払の合意があるから支払った日の年分の必要経費に算入すべきと主張した事案。審判所は、各年に債務が確定した額が必要経費になるとして一部取消しとした。
時価より高額な仕入代金の一部は、法人税法上の寄附金に当たるか
裁決 令和5年3月8日
○○販売業の請求人が特定の仕入先からの仕入金額を損金算入していたところ、原処分庁が、その仕入金額は時価相当額より高額で、超過部分は法人税法上の寄附金(実質的な贈与)に当たるとして更正処分をした事案。寄附金該当性は認められたが、時価相当額の認定が一部過大として審判所認定額により一部取消しとなった。
4. 令和5年の争点トレンド
重加算税・加算税の賦課要件に加え、令和5年は公売公告・差押え(徴収法)や、相続税の連帯納付義務・財産評価、国際課税(租税条約・源泉所得)などの論点が目立ちました。
5. 令和5年 公表裁決 全22件 一覧
全22件の一覧(税目順)を開く/閉じる
関連まとめ
まとめ
令和5年の公表裁決22件のうち、原処分が一部以上で取り消されたのは9件(約41%)。裁判所より高い救済率は、審査請求という手続の特性を示しています。重加算税の賦課要件、徴収手続(公売・差押え)、相続税の財産評価・連帯納付、国際課税が令和5年の主な論点でした。本ページは新たな公表分を反映して更新していきます。

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