令和6年(2024年)に国税不服審判所が公表した裁決を31件収録し、税目・結論・争点を一覧で整理しました。裁判所に持ち込む前段階である「審査請求」で、この1年どんな処分が争われ、どこで納税者の主張が通ったのかを俯瞰できる年度版インデックスです。
収録範囲:令和6年に裁決が出た国税不服審判所の公表裁決(裁決事例集 No.134〜No.137)。
最終更新日:2026年6月27日(現在 31件)。公表裁決は四半期ごとに追加されるため、今後も件数は増えます。
裁決は匿名化されており、課税関係に加え徴収関係(公売・差押え等)も含みます。裁判所の判決をまとめた令和6年 課税関係 税務裁判例まとめ、滞納・徴収局面は令和6年 徴収関係判決まとめとは別シリーズです。
1. 数字で見る令和6年の裁決
裁判所より「審判所」のほうが納税者は救済されやすい
同じ令和6年でも、裁判所の判決と審判所の裁決では結果の傾向が大きく異なります。
令和6年は、裁判所の約8%に対し審判所は約26%。審査請求は費用もかからず、訴訟より納税者の主張が通る余地が大きい——という実務上のセオリーが、この年もデータに表れています。※いずれも公表・収録分に基づく数値です。
2. 税目別の内訳
| 税目 | 件数 | 全部取消 | 一部 | 棄却等 |
|---|---|---|---|---|
| 共通・通則・徴収 | 12 | 1 | 0 | 11 |
| 所得税 | 6 | 0 | 1 | 5 |
| 相続税・贈与税 | 5 | 1 | 0 | 4 |
| 法人税 | 4 | 1 | 2 | 1 |
| 消費税 | 3 | 0 | 1 | 2 |
| その他 | 1 | 0 | 1 | 0 |
3. 処分が覆った8件
令和6年の裁決のうち、全部または一部で原処分が取り消された事例です。「どんな主張が審判所で通ったのか」は実務の指針になります。
工事代金に上乗せして関連会社へ流した支払は「寄附金」か、それとも工事の対価か
裁決 令和6年12月10日
請求人が建設会社・建築士に支払った工事請負代金・業務委託料の一部が、役務提供の実体なく関連法人へ振り込まれていた事案。審判所は、反対給付のない迂回支払は「対価なく移転する資金の贈与」=寄附金に当たるとしつつ、実体ある作業・資材の対価分は寄附金に該当しないとして、原処分の一部を取り消した。…
訴訟の「解決金」は遺留分の弁償金か――更正の特則と除斥期間の関門
裁決 令和6年7月3日
相続をめぐる訴訟で兄から妹(請求人)へ支払われた「解決金」について、原処分庁が全額を遺留分減殺請求に基づく価額弁償金として課税価格に算入する更正処分をした事案。審判所は、解決金の性質は和解調書からも代理人の申述からも不明で、全額が価額弁償金とは断定できないとし、更正の特則(相続税法35条3項1号)の要件を欠く以上、除斥…
台湾法人からの給与、円で受け取ったら「為替換算」は要るのか
裁決 令和6年7月3日
台湾法人から受けた給与の収入金額を円換算すべきかが争われた事案。審判所は、雇用契約・所得明細とも日本円で算定し日本円で送金されており、台湾の税額計算書の外貨表示は現地源泉徴収のための換算にすぎないとして、国外給与は円建てで「外貨建て円払い取引」に当たらず円換算は不要と判断(更正処分は一部取消し)。一方、申告書作成コーナ…
登記済みの借地権を見落とした公売公告――差押通知漏れと記載漏れで取消し
裁決 令和6年9月25日
136-06と同じ滞納会社・別の土地の公売公告に対し、借地権を主張する請求人が取消しを求めた事案。こちらは請求人が借地上建物の相続登記を経由し借地権の対抗要件を備えていた。審判所は、対抗力ある借地権は公売後も消滅せず、請求人は差押通知を受けるべき「知れている者」かつ差押換請求できる第三者なのに差押通知を欠いたこと、公売…
売上を1,000万円以下に偽装して免税事業者を装う――無申告でも重加算税か
裁決 令和6年4月23日
電気通信工事業の個人事業者が、消費税の納税義務を免れるため、約9年間にわたり収支内訳書に売上を1,000万円以下と意図的に過少記載し、免税事業者を装って消費税を無申告にしていた事案。審判所は、これを基準期間の課税売上高を故意に脱漏する仮装隠蔽行為と認め重加算税・7年の除斥期間を是認したが、平成27年課税期間の決定処分の…
固定資産税の評価額がない土地、登録免許税の課税標準はどう決まるか
裁決 令和6年5月27日
固定資産課税台帳に登録価格のない土地の所有権移転登記で、登記官が「類似する不動産」の登録価格を基に課税標準を認定した事案。審判所は、登記官が採用した土地は形状・地積・間口・利用状況等が大きく異なり「類似する不動産」に当たらず、近傍にも類似不動産は存在しないとして、固定資産評価基準に則して算定すべきとし、登記官認定額は過…
死亡保険金はいつの益金か――「死亡日」か「保険会社の支払通知日」か
裁決 令和6年2月26日
前代表者の死亡で受け取った死亡保険金を、保険会社からの支払通知日の属する事業年度の収益に計上した法人の処理が争われた事案。原処分庁は被保険者の死亡日に権利が確定したとして前事業年度の益金算入を主張したが、審判所は、保険金は請求後に免責事由等の審査を経て支払われ死亡時点では支払われないこともあり得、請求手続も遅延していな…
タックスヘイブン税制の所得計算に「信託の受益者課税」は及ぶか
裁決 令和6年3月14日
外国子会社合算税制で、外国関係会社が受けた配当を基準所得金額の計算上「子会社から受ける配当等の額」として控除できるかが争われた事案。配当の前提となるオランダ財団のDR(預託証券)発行スキームについて、審判所は、これが法人税法12条1項の「信託」(受益者等課税信託)に該当し、同項が外国子会社合算税制の基準所得金額計算にも…
4. 令和6年の争点トレンド
重加算税・加算税の賦課要件に加え、令和6年は公売公告・差押え・無益な差押え(徴収法)といった徴収関係や、タックスヘイブン対策税制(外国子会社合算税制)の論点が目立ちました。
5. 令和6年 公表裁決 全31件 一覧
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関連まとめ
まとめ
令和6年の公表裁決31件のうち、原処分が一部以上で取り消されたのは8件(約26%)。裁判所より高い救済率は、審査請求という手続の特性を示しています。重加算税の賦課要件、徴収手続(公売・差押え)、国際課税が令和6年の主な論点でした。本ページは新たな公表分を反映して更新していきます。

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