この記事で判断できること:2か所から給与をもらう人の源泉徴収(乙欄適用と確定申告の案内)
国税庁タックスアンサーの「No.2520 2か所以上から給与をもらっている人の源泉徴収」について解説します。
解説動画
副業や掛け持ちで2か所以上から給与をもらう人が増えています。国税庁タックスアンサー No.2520 の内容を、「主たる給与と従たる給与の分かれ目」「乙欄で源泉徴収するときの控除」「年末調整できない給与の精算」の3点に絞って整理します。パートやアルバイトの税額表の欄の決め方は No.2514 をご覧ください。
この記事の結論
2か所以上から給与をもらう人の源泉徴収は、その給与が主たる給与か従たる給与かで変わります。「給与所得者の扶養控除等申告書」を提出した勤務先の給与が主たる給与で甲欄、それ以外の勤務先の給与は従たる給与で乙欄です。
申告書を提出していない勤務先の給与(従たる給与)
乙欄で源泉徴収・年末調整なし
申告書を提出した勤務先の給与(主たる給与)
甲欄で源泉徴収・年末調整の対象
- 1主か従かは給与の多さではなく申告書の提出先で決まります。申告書は1か所にしか提出できません。
- 2主たる給与が小さく控除を引ききれない人は、「従たる給与についての扶養控除等申告書」を出すと、乙欄の税額から扶養親族等1人につき月額表1,610円・日額表50円を控除できます。
- 3従たる給与は原則として年末調整できません。本人が確定申告で所得税と復興特別所得税を精算します。
要点1 「主」か「従」かは、申告書をどこに出したかで決まる
主たる給与とは、「給与所得者の扶養控除等申告書」を提出している人に支払う給与をいい、税額表の甲欄で源泉徴収税額を求めます。従たる給与とは、主たる給与の支払者以外の給与の支払者が支払う給与をいい、税額表の乙欄で求めます。給与の金額や勤務時間の長さは関係ありません。申告書は同時に1か所にしか提出できないので、1か所に提出していればその勤務先が甲欄、他の勤務先はすべて乙欄です。どこにも提出していない場合は、すべての勤務先で乙欄になります。
会社側では、入社時に申告書の提出を受けるかどうかが判定のすべてです。他社に提出済みの人から自社でも受け取ると、2か所で甲欄が使われて源泉徴収が不足します。副業先として採用する場合は、申告書を受け取らずに乙欄で計算します。
要点2 乙欄でも控除できる ── 「従たる給与についての扶養控除等申告書」
乙欄では扶養親族等の数に応じた控除はありません。ただし、主たる給与が小さく、控除を引ききれないと見込まれる人には、従たる給与から控除を受けるための申告書があります。要件は、2か所以上から給与をもらう人で、主たる給与の支払者から支給されるその年中の給与の金額(給与所得控除後)が、次の(1)と(2)の合計額に満たないと見込まれることです。(1)は主たる給与から控除される社会保険料等の額、(2)はその人の障害者控除額、寡婦控除額、ひとり親控除額、勤労学生控除額、配偶者(特別)控除額、扶養控除額、特定親族特別控除額および基礎控除額の合計額です。
この申告書の提出があるときは、月額表の乙欄で給与や賞与の税額を求める場合に、乙欄の税額から申告された扶養親族等1人につき1,610円を控除します。日額表の乙欄では、扶養親族等1人につき50円を控除します。なお、主たる給与の支払者に申告した源泉控除対象配偶者や源泉控除対象親族を年の中途で従たる給与の支払者に申告替えすることはできますが、従たる給与の支払者に申告したものを年の中途で主たる給与の支払者に申告替えすることはできません。
要点3 従たる給与は年末調整されない ── 本人が確定申告で精算する
原則として、従たる給与については年末調整できません。主たる給与は勤務先の年末調整で所得税が精算されますが、従たる給与は乙欄で源泉徴収されたままなので、所得者本人が確定申告をして、所得税および復興特別所得税(令和9年分以後は所得税、防衛特別所得税および復興特別所得税)の精算をする必要があります。
会社側では、乙欄の人を年末調整の対象にしないこと、本人に確定申告が必要になりうることを伝えておくことがポイントです。乙欄は申告書の提出がない前提の税額なので、確定申告で精算すると税額が戻る場合もあります。
要点4 確定申告が「必要な人」の線 ── 20万円のルール
ここからは No.2520 の原文を一歩出て、関連コードの No.1900「給与所得者で確定申告が必要な人」で確認します。給与を2か所以上から受けていて、給与の全部が源泉徴収の対象となる場合、年末調整されなかった給与の収入金額と、各種の所得金額(給与所得、退職所得を除く)との合計額が20万円を超える人は、確定申告をしなければなりません。ただし、給与の収入金額の合計額から所得控除の合計額(雑損控除、医療費控除、寄附金控除、基礎控除を除く)を差し引いた金額が150万円以下で、さらに各種の所得金額(給与所得、退職所得を除く)の合計額が20万円以下の人は、申告は不要です。
この20万円は「年末調整されなかった給与の収入金額」で見ます。従たる給与が年20万円以下で他に所得がなければ所得税の確定申告は不要の扱いですが、申告すれば乙欄で多めに引かれた税額が戻る人は申告できます(還付になる人は申告義務の判定から除かれています)。住民税は別の制度なので、市区町村の案内で確認します。
設例で確かめる
| Aさん:本業に扶養控除等申告書を提出。副業先(月5万円)には提出なし | 本業=主たる給与(甲欄・年末調整)/副業=従たる給与(乙欄・年末調整なし)。本人が確定申告 |
| Bさん:本業(年収90万円)に申告書を提出。扶養親族2人。副業先に「従たる給与についての扶養控除等申告書」を提出 | 副業先は月額表の乙欄の税額から 1,610円 × 2人 = 3,220円 を控除して源泉徴収 |
| Cさん:本業(給与収入2,000万円以下、他の申告義務の要件にも当たらない)に申告書を提出。副業先の給与は年18万円。他に所得なし | 副業先は乙欄で源泉徴収。年末調整されなかった給与の収入金額が20万円以下で、所得税の確定申告は不要の扱い(申告すれば還付される場合は申告できる) |
| 間違い例:Dさんが本業と副業の両方に扶養控除等申告書を提出 | 2か所で甲欄が使われて源泉徴収が不足。申告書は1か所にしか提出できない |
Bさんは主たる給与が小さく控除を引ききれないので、従たる給与の申告書で乙欄から控除を受けています。Cさんは申告義務はありませんが、乙欄の税額を精算したいなら申告できます。Dさんの形は入社時の確認で防ぎます。
例外と注意点
- 申告替えは一方通行主たる給与の支払者に申告した源泉控除対象配偶者や源泉控除対象親族を、年の中途で従たる給与の支払者に申告替えすることはできます。従から主への申告替えは、年の中途ではできません。
- 従たる給与の申告書の要件主たる給与の年間の金額(給与所得控除後)が、社会保険料等と各種の所得控除額の合計に満たないと見込まれる人だけが提出できます。
- 控除は給与にも賞与にも月額表の乙欄を使って給与や賞与の税額を求めるときに、扶養親族等1人につき1,610円を控除します。日額表の乙欄は1人50円です。
よくある間違い
- 給与が多いほうを主たる給与にしている主か従かは申告書の提出先で決まります。金額の大小は関係ありません。
- 副業先でも扶養控除等申告書を受け取っている申告書は1か所にしか提出できません。2か所で甲欄を使うと源泉徴収が不足します。
- 乙欄の人を年末調整の対象にしている従たる給与は原則として年末調整できません。本人が確定申告で精算します。
- 従たる給与の申告書がないのに乙欄から1,610円を引いている控除できるのは「従たる給与についての扶養控除等申告書」の提出があるときだけです。
- 「20万円以下なら何もしなくていい」と案内している所得税の申告義務がない場合でも、乙欄で引かれた税額の還付を受けるには申告が必要です。住民税は別の制度です。
実務の確認手順
- 入社時に申告書の提出先を確認したか他社に提出済みなら自社では受け取らず、乙欄で計算する。
- 甲欄・乙欄の設定を給与ソフトに反映したか乙欄の人は扶養親族等の数による控除がない前提の税額になる。
- 「従たる給与についての扶養控除等申告書」の提出があるかあれば月額表の乙欄の税額から1人1,610円(日額表は50円)を控除する。要件を満たすかも確認する。
- 乙欄の人を年末調整から外したか従たる給与は原則として年末調整できない。本人に確定申告が必要になりうることを伝える。
- 年の中途の申告替えの方向を確認したか主→従はできるが、従→主は年の中途ではできない。
根拠と関連記事
結論欄の評価は TaxJudge 編集部の目安です。頻出度=給与・経理の実務でこの論点に出会う頻度(★5:ほぼ毎月〜★1:まれ)。難易度=基礎:原則を知れば判断できる/標準:例外や他の制度との関係まで見る必要がある/応用:個別事情の判断や複数制度の横断が必要。
根拠:国税庁タックスアンサー No.2520 2か所以上から給与をもらっている人の源泉徴収(令和8年4月1日現在法令等)、所得税法185条・190条・194条・195条、所得税法施行令317条・318条、所得税基本通達194・195-5、国税庁タックスアンサー No.1900 給与所得者で確定申告が必要な人(令和8年4月1日現在法令等)(いずれも2026年10月確認)。先生とハルカは架空の人物で、会話は制度を理解するための学習用です。個別の判断は国税庁の原文と最新の法令で確認してください。
Q&A
読んだ内容の確認用です。質問を押すと答えが開きます(全10問)。
Q1「主たる給与」とはどのような給与を指し、源泉徴収税額はどの税額表を用いて求めますか?答えを見る ▼閉じる ▲
「主たる給与」とは、「給与所得者の扶養控除等申告書」を提出している人に支払われる給与を指します。この場合の源泉徴収税額は、税額表の「甲欄」を使用して算出されます。
Q2「従たる給与」の定義と、その源泉徴収に使用される税額表の区分を説明してください。答えを見る ▼閉じる ▲
「従たる給与」とは、主たる給与の支払者以外の支払者が支払う給与のことを指します。従たる給与を支払う際の源泉徴収税額は、税額表の「乙欄」を使用して算出されます。
Q3「従たる給与についての扶養控除等申告書」を提出できるのは、どのような要件を満たす人に限られますか?答えを見る ▼閉じる ▲
主たる給与の支払者から受ける年間の給与(控除後)が、社会保険料等の額と各種控除(基礎控除、扶養控除等)の合計額に満たないと見込まれる場合に提出できます。これにより、従たる給与からも控除を受けることが可能になります。
Q4「従たる給与についての扶養控除等申告書」を提出した場合、月額表の乙欄からどのように税額が控除されますか?答えを見る ▼閉じる ▲
月額表の乙欄に記載されている税額から、申告された扶養親族等の数に応じて控除を行います。具体的には、扶養親族等1人につき1,610円を差し引くことになっています。
Q5日額表の乙欄を使用して源泉徴収税額を求める際、申告された扶養親族等がいる場合の計算方法を説明してください。答えを見る ▼閉じる ▲
日額表の乙欄を使用する場合は、乙欄に記載された税額から扶養親族等の数に応じた金額を控除します。控除額は扶養親族等1人につき1日50円です。
Q6扶養親族等の「申告替え」について、主たる給与から従たる給与への変更は可能ですか?答えを見る ▼閉じる ▲
はい、可能です。主たる給与の支払者に申告していた源泉控除対象配偶者や源泉控除対象親族(令和7年分までは控除対象扶養親族)を、年の中途で従たる給与の支払者に申告替えすることは認められています。
Q7従たる給与の支払者に申告した扶養親族等を、年の中途で主たる給与の支払者に申告替えすることは可能ですか?答えを見る ▼閉じる ▲
いいえ、認められていません。従たる給与の支払者に一度申告した源泉控除対象配偶者や源泉控除対象親族を、年の中途で主たる給与の支払者に申告替えすることはできません。
Q8従たる給与に関しては、原則として勤務先での年末調整を行うことができますか?答えを見る ▼閉じる ▲
いいえ、原則として従たる給与については勤務先での年末調整を行うことはできません。そのため、支払いの段階では源泉徴収のみが行われます。
Q92か所以上から給与を得ている人が、所得税および復興特別所得税の精算を行うにはどのような手続きが必要ですか?答えを見る ▼閉じる ▲
従たる給与は原則として年末調整されないため、確定申告が必要な場合には、給与所得者本人が複数の給与を合算して確定申告を行い、所得税および復興特別所得税の最終的な精算を行います。申告が必要かどうかの基準(年末調整されなかった給与の収入金額等が20万円を超える場合など)はタックスアンサーNo.1900で確認します。
Q10令和8年分以後の法令において、従来の「控除対象扶養親族」などの呼称はどのように変更される予定ですか?答えを見る ▼閉じる ▲
令和8年分以後は、扶養控除等申告書の「控除対象扶養親族」の欄が「源泉控除対象親族」に改められています。源泉控除対象親族とは、控除対象扶養親族と、生計を一にする年齢19歳以上23歳未満の親族で合計所得金額が58万円超100万円以下の人(一定の特定親族)をいいます。源泉控除対象配偶者は含まれず、別の区分です(国税庁「令和7年度税制改正による所得税の基礎控除の見直し等について(源泉所得税関係)」)。
